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難聴は認知症のサイン?聞こえにくさの原因と今日からできる対策

2025-01-28
目次

最近、「テレビの音が大きいと言われる」「会話が聞き取りにくいことがある」と感じていませんか?その「聞こえにくさ」、もしかしたら難聴の始まりかもしれません。そして、この難聴が、実は認知症と深く関係していることが近年の研究で明らかになってきました。この記事では、難聴がなぜ認知症のリスクを高めるのか、その原因と具体的な対策、そして認知症予防の鍵となる補聴器の正しい使い方まで、専門的な情報をわかりやすく丁寧にご説明しますね。

難聴が認知症の危険因子になるって本当?

「耳の聞こえと脳の働きが関係あるなんて」と驚かれるかもしれません。しかし、2020年に世界的に権威のある医学雑誌で発表された報告では、予防可能な認知症の危険因子のうち、難聴が最も大きな割合を占めていると指摘されました。つまり、聞こえの問題に早期に対処することが、将来の認知症予防につながる可能性があるのです。

なぜ難聴と認知症が関係するの?

難聴が認知症のリスクを高める理由には、主に3つの仮説が考えられています。

1つ目は、脳への刺激が減ってしまうことです。耳から入ってくる音の情報は、脳にとって大切な刺激です。難聴になると、その刺激が脳に届きにくくなり、音を処理する脳の領域の働きが低下します。その結果、脳全体の機能低下や萎縮につながってしまうのではないかと考えられています。

2つ目は、社会的な孤立です。会話が聞き取りにくくなると、人と話すのが億劫になったり、聞き返すのが申し訳なく感じたりして、次第にコミュニケーションを避けるようになってしまいます。人との交流が減ると、脳への刺激がさらに少なくなり、うつ状態にもなりやすくなるため、認知機能が低下しやすくなるのです。

3つ目は、脳のエネルギーを過剰に使ってしまうことです。聞き取りにくい音を一生懸命に理解しようとすることで、脳はたくさんのエネルギーを消費します。その結果、記憶や思考といった他の認知機能に使うべきエネルギーが不足してしまい、認知機能の低下を招くという説です。

どのくらいの難聴がリスクになるの?

研究によると、ごく軽度の難聴であっても、認知症の発症リスクは高まることが示されています。「まだ大丈夫」と思える段階でも、注意が必要なのです。あるアメリカの研究では、難聴の程度と認知症の発症リスクの関係が次のように報告されています。

難聴の程度 認知症発症リスク(健聴者との比較
軽度難聴 約2倍
中等度難聴 約3倍
高度難聴 約5倍

このように、難聴の程度が重くなるほど、認知症のリスクも高まることがわかります。

あなたの「聞こえにくさ」の原因は?

難聴の原因は一つではありません。「年のせいだから仕方ない」と思われがちですが、加齢以外にもさまざまな要因が考えられます。ご自身の聞こえにくさがどれに当てはまるか、考えてみましょう。

加齢性難聴

最も多いのが加齢性難聴です。年齢を重ねるにつれて、音を感じ取る内耳の有毛細胞という細胞が傷ついたり、数が減ったりすることで起こります。一般的に高い周波数の音から聞こえにくくなるのが特徴で、「さ行」や「か行」などの子音が聞き取りにくくなります。実はこの変化は30代頃から少しずつ始まっていると言われています。

生活習慣病との関係

意外に思われるかもしれませんが、糖尿病高血圧脂質異常症といった生活習慣病も難聴の原因になります。これらの病気は動脈硬化を引き起こし、内耳にある細い血管の血流を悪くしてしまいます。血流が悪くなると、有毛細胞に十分な栄養が届かなくなり、機能が低下してしまうのです。

騒音性難聴

工事現場のような大きな騒音に長時間さらされる職場環境や、イヤホンやヘッドホンで大音量の音楽を聴き続ける習慣も、耳にダメージを与えます。これを騒音性難聴といい、若い世代でも増えています。大きな音は、音を感じ取る有毛細胞を直接傷つけてしまうため、注意が必要です。

難聴を放置しない!今日からできる対策

一度傷ついてしまった聴覚細胞を元に戻すのは難しいのが現状です。しかし、適切な対策をとることで、難聴の進行を遅らせたり、聞こえの不便さを改善したりすることは可能です。大切なのは、聞こえにくさを放置しないことです。

まずは耳鼻咽喉科で専門医の診断を

「最近、聞こえにくいかも?」と感じたら、まずは耳鼻咽喉科を受診しましょう。「年のせい」と自己判断してしまうと、中耳炎や耳垢の詰まりなど、治療すれば治る病気を見逃してしまう可能性もあります。専門医による正確な聴力検査を受け、難聴の原因や程度を正しく把握することが対策の第一歩です。

生活習慣の改善

耳の健康は、全身の健康とつながっています。特に、動脈硬化を防ぐことは難聴予防にも効果的です。塩分や脂肪分の多い食事を控え、バランスの良い食事を心がけましょう。ウォーキングなどの有酸素運動を習慣にすることや、禁煙も重要です。健康的な生活は、耳への血流を良くし、聞こえを守ることにつながります。

騒音から耳を守る

日常生活の中で、耳をいたわる習慣をつけましょう。電車の中など騒がしい場所で音楽を聴く際は、つい音量を上げがちになるので注意が必要です。周囲の騒音をカットしてくれるノイズキャンセリング機能付きのイヤホンを利用するのも良い方法です。仕事などでどうしても大きな音を避けられない場合は、耳栓やイヤーマフを正しく使用して、耳への負担を減らしましょう。

認知症予防の鍵「補聴器」の正しい使い方

難聴が進行し、日常生活に支障が出てきた場合には、補聴器の使用が有効な対策となります。補聴器は、単に音を大きくするだけでなく、脳への音の刺激を増やし、コミュニケーションを円滑にすることで、認知症予防にもつながると期待されています。

補聴器が認知症リスクを低減する仕組み

補聴器を使うことで、これまで聞こえにくかった会話や生活音が再び脳に届くようになります。これにより、脳が活性化され、認知機能の低下を防ぐ効果が期待できるのです。また、会話がスムーズにできるようになることで、家族や友人とのコミュニケーションが再び楽しくなり、社会的な孤立を防ぐことにもつながります。これが結果的に、認知症の進行を抑える一助となるのです。

補聴器選びの重要ポイント

ここでとても大切なことがあります。それは、補聴器はメガネのように、買ってすぐに快適に使えるものではないということです。ご自身の聞こえの状態に合わせて、きめ細かな調整(フィッティング)が必要になります。そのため、自己判断で通信販売などで購入するのは絶対に避けてください。

補聴器を考える際は、まず耳鼻咽喉科の「補聴器相談医」という専門の医師に相談しましょう。その上で、医師の指導のもと、「認定補聴器専門店」で専門の技能者と一緒に、ご自身の聞こえや生活スタイルに合った補聴器を選びます。購入後も、2〜3ヶ月かけて何度も調整を行い、脳が補聴器の音に慣れるためのトレーニングをすることで、ようやく自分に合った「聞こえ」が手に入るのです。

補聴器の購入に使える公的支援

補聴器は決して安いものではありませんが、購入の際に利用できる公的な支援制度があります。事前に知っておくことで、経済的な負担を軽減できます。

制度 内  容
障害者総合支援法 難聴の程度が基準を満たし、身体障害者手帳が交付された場合、「補装具費支給制度」を利用できます。原則として購入費用の1割負担で補聴器を手に入れることができます。
医療費控除 補聴器相談医が「治療のために補聴器が直接必要である」と判断した場合、購入費用が医療費控除の対象となることがあります。確定申告の際に「補聴器適合に関する診療情報提供書」の写しが必要になります。
自治体の助成制度 お住まいの市区町村によっては、高齢者の補聴器購入に対して独自の助成金制度を設けている場合があります。役所の高齢福祉課などに問い合わせてみましょう。

認知症の前段階「MCI」と難聴

認知症は、ある日突然発症するわけではありません。「軽度認知障害(MCI)」と呼ばれる、正常と認知症の中間の段階があります。このMCIの段階で難聴に適切に対処することが、認知症への進行を防ぐために非常に重要です。

MCI(軽度認知障害)とは?

MCIとは、本人や家族から「物忘れが増えた」などの訴えがあり、記憶力などの認知機能に軽度の低下が見られるものの、日常生活は自立して送れる状態を指します。いわば、認知症の”予備軍”ともいえる段階です。MCIの人が全員認知症になるわけではなく、この段階で適切な対策を行うことで、健常な状態に戻ったり、認知症への進行を遅らせたりできる可能性があります。

早期発見と対策の重要性

もしご自身やご家族に物忘れと聞こえにくさの両方が見られる場合、それは重要なサインかもしれません。MCIの段階で補聴器を使用して「聞こえ」を改善し、会話や社会参加を積極的に行うことは、脳に良い刺激を与え、認知機能の維持・向上につながります。聞こえの問題を解決することが、MCIから認知症への進行を食い止めるための有効な一手になるのです。

まとめ

この記事では、難聴認知症の密接な関係について解説してきました。大切なポイントをもう一度振り返ってみましょう。

  • 難聴は、単なる「聞こえの問題」ではなく、認知症の重要な危険因子です。
  • 聞こえにくさを感じたら、「年のせい」と諦めずに、まずは耳鼻咽喉科の専門医に相談しましょう。
  • 生活習慣の改善や騒音対策は、難聴の進行を遅らせるために有効です。
  • 適切な補聴器の使用は、聞こえを改善するだけでなく、脳を活性化させ、社会的なつながりを保つことで、認知症予防にもつながります。

あなたの「聞こえ」は、これからの人生を豊かに過ごすための大切な宝物です。少しでも気になることがあれば、それはご自身の未来のための重要なサインと捉え、ぜひ早めの行動を心がけてくださいね。

参考文献

国立長寿医療研究センター「知的な能力と難聴の関係」

国立長寿医療研究センター「補聴器を使用すると認知機能低下を予防できる?」

J-STAGE「難聴と認知症に関する臨床研究:補聴器を用いた認知症予防への展望」

難聴と認知症のよくある質問まとめ

Q. どのくらいの聞こえにくさで病院に行くべきですか?

A. 「テレビの音が大きいと家族に言われる」「会話中によく聞き返すようになった」「後ろから呼ばれても気づかないことがある」など、日常生活で少しでも不便を感じ始めたら、一度耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。早期発見が大切です。

Q. 補聴器はいくらくらいしますか?

A. 補聴器の価格は、機能や性能によって幅広く、片耳で5万円程度のものから50万円以上するものまで様々です。一般的には15万円~30万円程度のものが選ばれることが多いです。必ず専門家と相談し、ご自身の聞こえや生活スタイル、予算に合ったものを選びましょう。

Q. 補聴器をつけ始めると、すぐによく聞こえるようになりますか?

A. いいえ、すぐには快適に聞こえるようにはなりません。補聴器を通して入ってくる音に脳が慣れるまで、数週間から数ヶ月のトレーニング期間が必要です。その間、専門家による数回の調整(フィッティング)を受けながら、少しずつ慣らしていくことが重要です。

Q. 補聴器は片耳だけでも良いですか?

A. 基本的には、両耳とも難聴がある場合は、両耳に装用することが推奨されます。両耳で聞くことで、音の方向感がつかみやすくなったり、騒がしい場所での言葉の聞き取りが改善されたりする効果があります。医師や専門家と相談して決めましょう。

Q. 家族が難聴を認めず、補聴器を使いたがりません。どうすれば良いですか?

A. ご本人が難聴を認めたがらないケースは少なくありません。まずは無理強いせず、「聞こえにくいと、会話が楽しめなくてもったいないよ」「最近の研究では認知症の予防にもなるらしいよ」など、ご本人の生活の質(QOL)向上や健康につながるメリットを優しく伝えてみてください。一緒に耳鼻咽喉科に相談に行ってみるのも良い方法です。

Q. 若くても難聴になりますか?

A. はい、なります。大きな音で音楽を聴き続けることによる「騒音性難聴」や、ストレスが原因とされる「突発性難聴」など、若い世代でも起こりうる難聴はあります。耳の聞こえに違和感があったら、年齢に関わらず早めに専門医に相談することが大切です。

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