個人事業主やフリーランスの方なら一度は耳にする「青色申告」。でも、なぜ「青色」って言うんだろう?と疑問に思ったことはありませんか?実はその名前には、ちゃんとした歴史的な背景と意味が込められているんです。この記事では、青色申告の「青」の語源や由来、そして白色申告との違いやメリットまで、わかりやすく解説していきますね。
青色申告の「青」の語源と気になる由来
青色申告の「青」という色には、どんな意味が込められているのでしょうか。ここでは、青色申告という名前が付けられた歴史的な背景や語源について、いくつかの説をご紹介します。
「青色」は信頼と誠実さの象徴
最も有力な説は、「青」という色が持つイメージに由来するというものです。青色は、青空のように澄んでいて、誠実さや信頼性を象徴する色とされています。戦後の税制改革で、きちんと帳簿をつけて正直に納税する人を優遇する制度を作るにあたり、その信頼性を「青」という色で表現したと言われています。納税者が正しく申告しているという「お墨付き」のような意味合いがあったのかもしれませんね。
シャウプ勧告と「青空のようにすっきり」
青色申告制度は、1949年(昭和24年)に発表された「シャウプ勧告」という税制改革案が基になっています。これは、第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の指導のもと、カール・シャウプ博士を中心とする使節団が日本の税制を調査してまとめたものです。シャウプ博士が「日本人は青色にどんなイメージを持ちますか?」と尋ねたところ、「青空のようにすっきりした気持ちのいい色です」という答えが返ってきたことから、「青色申告」と名付けられた、というエピソードが伝えられています。新しい時代のクリーンな税制度というイメージを込めたかったのかもしれません。
昔の申告用紙が青色だった?
もう一つの説として、実際に使われていた申告用紙の色に由来するというものがあります。制度が始まった当初、青色申告者には青色の申告用紙が配られていたため、そのまま「青色申告」と呼ばれるようになった、と言われています。ちなみに、現在では所得税の申告書は青色ではありませんが、法人税の申告書(別表一)は今でも青色が使われています。この名残が、今でも「青色申告」という名前で親しまれている理由の一つなんですね。
青色申告と白色申告の違いって?
確定申告には「青色申告」の他に「白色申告」もあります。この二つは一体何が違うのでしょうか。名前の由来だけでなく、具体的な手続きや受けられるメリットに大きな違いがあります。ここでは、それぞれの特徴を比較しながら見ていきましょう。
名前の由来は「青」との対比
青色申告が特別な制度として導入されたため、それ以外の従来の申告方法を区別する必要がありました。そこで、青色に対する色として「白色」が選ばれ、「白色申告」と呼ばれるようになりました。白色の用紙が使われていたわけではなく、あくまで青色申告という特別な制度との対比で名付けられたんですね。「白」には、特典のない、ごく一般的な申告方法という意味合いが込められています。
帳簿付けの方法が違う
最も大きな違いは、帳簿の付け方です。青色申告で最大のメリットである65万円控除を受けるためには、「複式簿記」という正規の簿記の原則に従った詳細な記帳が必要です。一方、白色申告は「単式簿記」という簡易な方法での記帳が認められています。家計簿のようなイメージで、お金の出入りを記録するだけでも大丈夫です。
| 申告方法 | 帳簿の付け方 |
| 青色申告(65万円控除) | 複式簿記(正規の簿記) |
| 青色申告(10万円控除) | 簡易簿記 |
| 白色申告 | 簡易簿記(単式簿記) |
ただし、2014年からは白色申告でも記帳と帳簿の保存が義務化されたので、手間が全くかからないというわけではなくなりました。
事前の手続きが必要かどうか
青色申告を始めるには、事前に税務署へ「所得税の青色申告承認申請書」を提出し、承認を受ける必要があります。原則として、青色申告をしたい年の3月15日までに提出しなければなりません。年の途中で開業した場合は、事業開始の日から2か月以内が提出期限です。一方、白色申告は特に事前の手続きは必要なく、確定申告の際に白色申告書で提出すれば大丈夫です。
知っておきたい!青色申告の大きなメリット
手間がかかるイメージのある青色申告ですが、それを上回るたくさんの税制上のメリットがあります。ここでは、個人事業主の方が受けられる代表的な特典を具体的にご紹介します。賢く節税するために、ぜひ知っておきましょう。
最大65万円の青色申告特別控除
青色申告の最大の魅力は、「青色申告特別控除」です。所得から最大で65万円を差し引くことができます。
| 控除額 | 主な要件 |
| 65万円 | ・複式簿記での記帳 ・貸借対照表と損益計算書を添付 ・期限内申告 ・e-Taxでの申告 または 優良な電子帳簿保存 |
| 55万円 | ・複式簿記での記帳 ・貸借対照表と損益計算書を添付 ・期限内申告 ※e-Tax申告や電子帳簿保存を行わない場合 |
| 10万円 | ・簡易簿記での記帳 |
例えば、課税所得が400万円の場合、所得税率が20%だとすると、65万円の控除を受けることで、所得税だけでも13万円(65万円×20%)も節税できる計算になります。住民税も合わせると、さらに大きな節税効果が期待できますね。
赤字を3年間繰り越せる(純損失の繰越控除)
事業が赤字になってしまった場合でも、青色申告ならその損失額を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。これを「純損失の繰越控除」といいます。例えば、ある年に100万円の赤字が出て、翌年に200万円の黒字が出たとします。この場合、前年の赤字100万円を差し引いて、黒字100万円に対してのみ税金がかかるようになります。事業を始めたばかりの時期など、赤字が出やすい時にとても助かる制度です。
家族への給与を経費にできる(青色事業専従者給与)
生計を一つにする家族(配偶者や15歳以上の親族)に支払った給与を、全額必要経費にできるのも大きなメリットです。「青色事業専従者給与に関する届出書」を事前に提出し、仕事内容に見合った適正な金額であることが条件ですが、家族に事業を手伝ってもらっている場合には大きな節税につながります。白色申告の場合は、事業専従者控除として配偶者で最大86万円、その他親族で最大50万円までしか控除が認められません。
30万円未満の資産を一括で経費に(少額減価償却資産の特例)
通常、パソコンや機材など10万円以上のものを購入した場合、一度に経費にはできず、何年かに分けて経費計上する「減価償却」という手続きが必要です。しかし、青色申告者であれば、取得価額が30万円未満の減価償却資産であれば、購入した年に全額を経費として計上できます(年間合計300万円まで)。これにより、設備投資をした年の税負担を大きく軽減することができます。
青色申告をするためのステップ
青色申告のメリットがわかったところで、実際に始めるための手順を確認しておきましょう。難しい手続きではないので、ポイントを押さえて準備を進めれば大丈夫です。
税務署に「青色申告承認申請書」を提出
まずは、あなたの納税地を管轄する税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。この書類は国税庁のホームページからダウンロードできますし、税務署の窓口でもらえます。
| 提出期限 | 対象者 |
| 申告する年の3月15日まで | すでに事業を行っている人 |
| 事業を開始した日から2か月以内 | その年の1月16日以降に新規開業した人 |
同時に「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)も提出しておきましょう。
日々の取引を帳簿に記録する
申請が済んだら、日々の取引をきちんと帳簿につけていきます。65万円の特別控除を目指すなら複式簿記での記帳が必要です。今は便利な会計ソフトがたくさんあるので、簿記の知識に自信がなくても、指示に従って入力していけば自動で複式簿記の帳簿を作成してくれます。領収書や請求書などの書類は、きちんと整理して7年間保存しておきましょう。
確定申告書を作成して提出
1年間の帳簿付けが終わったら、その内容をもとに「青色申告決算書」と「確定申告書」を作成します。青色申告決算書は、損益計算書と貸借対照表などで構成されています。会計ソフトを使っていれば、これらの書類も自動で作成してくれるのでとても便利です。作成した書類は、翌年の2月16日から3月15日までの申告期間内に税務署に提出します。65万円控除を受けるためには、e-Taxでの電子申告がおすすめです。
青色申告の注意点
メリットの多い青色申告ですが、いくつか注意しておきたい点もあります。事前に確認して、スムーズに申告できるようにしましょう。
まず、期限内に申告することが非常に重要です。たとえ1日でも申告期限に遅れてしまうと、65万円(または55万円)の特別控除は受けられなくなり、10万円の控除しか適用されません。さらに、2年連続で期限後申告になると、青色申告の承認が取り消されてしまう可能性もあります。また、帳簿の作成や保存を怠ったり、税務調査で不正が発覚した場合も、承認が取り消されることがありますので、日々の記帳を誠実に行うことが大切です。
まとめ
今回は、「青色申告」の「青」の語源や由来について深掘りしてみました。「誠実さ」や「信頼」の象徴として名付けられた背景を知ると、より一層、丁寧な記帳と申告を心がけようという気持ちになりますね。青色申告は、複式簿記での記帳など少し手間はかかりますが、最大65万円の特別控除や赤字の繰り越しなど、それを上回る大きな節税メリットがあります。今は会計ソフトを使えば、簿記の知識がなくても比較的簡単に帳簿が作成できます。個人事業主やフリーランスとして活動していくなら、ぜひ青色申告にチャレンジして、賢く事業を運営していきましょう。
参考文献
青色申告の「青」の意味に関するよくある質問まとめ
Q.青色申告の「青」にはどんな意味があるの?
A.青色申告の「青」は、空のように「澄み切った」「明瞭な」という意味が込められています。模範的で正確な帳簿付けを推奨する象徴的な色として採用されました。
Q.青色申告の語源や由来は何ですか?
A.青色申告制度は、1949年のシャウプ勧告を基に導入されました。その際、ドイツで優良な申告書用紙が青色だったことに由来するという説が有力です。
Q.なぜ申告書の色が「青」と「白」に分かれているのですか?
A.「青色申告」が特別な申請と正規の簿記に基づく優遇制度であるのに対し、「白色申告」はそれ以外の申告を指します。区別を分かりやすくするために、対照的な色が使われています。
Q.青色申告と白色申告で、実際に使う用紙の色は違うのですか?
A.いいえ、現在では申告用紙そのものの色が青や白に分かれているわけではありません。「青色」「白色」はあくまで制度上の名称です。
Q.青色申告はいつから始まった制度ですか?
A.青色申告制度は、第二次世界大戦後の税制改革の一環として、1950年(昭和25年)分の所得税から導入されました。
Q.青色申告にするとどんなメリットがあるのですか?
A.最大65万円の特別控除を受けられたり、赤字を3年間繰り越せたり、家族への給与を経費にできたりするなど、税制上の大きな優遇措置を受けられるのが最大のメリットです。