個人事業主の方で青色申告をしていると、事業が赤字(純損失)になった場合に、その損失を翌年以降に繰り越せる「繰越控除」という大きなメリットがありますよね。でも、「赤字で納税額もゼロだから…」と、うっかり確定申告を忘れてしまった経験はありませんか?今回は、繰越欠損金がある状態で2年間申告していなかった場合、その大切な繰越欠損金がどうなってしまうのか、そしてどうすればその権利を守れるのかを、分かりやすく解説していきます。
青色申告の繰越欠損金(純損失の繰越控除)とは?
まずは基本のおさらいから始めましょう。「純損失の繰越控除」とは、青色申告をしている個人事業主や法人が、事業で生じた赤字(純損失)を、翌年以降の黒字と相殺できる制度のことです。この制度のおかげで、将来の税負担を軽くすることができます。
繰越控除が使える条件
このお得な制度を利用するには、いくつかの大切なルールがあります。特に重要なのが以下の3つです。
- 損失(赤字)が発生した事業年度に、青色申告で確定申告をしていること。
- その確定申告を、期限内(通常は3月15日まで)に提出していること。
- そして、損失を繰り越している間は、毎年連続して確定申告書を提出し続けること。
そうなんです、今回のテーマの鍵となるのが、この「毎年連続して申告する」という部分なんです。
繰越控除の期間と具体例
繰り越しができる期間は、個人と法人で異なります。
| 対象 | 繰越可能期間 |
| 個人事業主 | 純損失が生じた年の翌年以後3年間 |
| 法人 | 欠損金が生じた事業年度の翌事業年度以後10年間(※) |
(※平成30年4月1日前に開始した事業年度で生じた欠損金の繰越期間は9年間です。)
例えば、ある個人事業主が1年目に150万円の赤字を出し、その後、黒字に転換したとします。繰越控除を使うと、翌年以降の所得から赤字分を差し引けるので、課税対象となる所得が減り、結果的に所得税や住民税を節税できるというわけです。
繰越控除は節税の強い味方
事業を始めたばかりの頃は、なかなか黒字化が難しいこともありますよね。そんな時に発生した赤字を、将来の利益が出た時のために取っておけるのが繰越控除の最大のメリットです。この制度があることで、事業者は安心して事業の立て直しに集中できるのです。
2年間申告していなかった!繰越欠損金はどうなる?
「連続して申告が必要」と聞いて、ドキッとした方もいらっしゃるかもしれません。「2年間も申告していなかったら、もう繰越欠損金は使えないの?」と不安になりますよね。でも、結論から言うと、諦めるのはまだ早いです。救済策がありますので、ご安心ください。
原則としては繰越控除は途切れてしまう
繰越控除のルール上、「連続して確定申告書を提出」していないと、その時点で繰越控除の権利は途切れてしまいます。つまり、2年間申告していなかった場合、その間に繰越欠損金を引き継ぐ手続きがされていないため、原則としてはその後の年に損失を繰り越すことはできなくなってしまいます。
救済策は「期限後申告」
ここで登場するのが「期限後申告」です。申告していなかった2年分の確定申告を、今からでも行うことで、「連続して申告している」という状態を作り出すことができます。たとえ所得がゼロで納税額が発生しない「ゼロ申告」であっても、繰越欠損金を引き継ぐためには、この申告手続きが不可欠なのです。
期限後申告は、本来の申告期限(法定申告期限)から5年以内であれば行うことが可能です。ですので、2年間の無申告であれば、十分に間に合います。
期限後申告の具体的な手続きと注意点
では、実際にどうやって手続きを進めればよいのでしょうか。申告していなかった2年分の確定申告書を作成し、税務署に提出します。
申告に必要な書類
期限後申告でも、通常の確定申告と同じ書類が必要です。特に、繰越欠損金の申告には以下の書類が重要になります。
- 確定申告書
- 青色申告決算書
- 確定申告書第四表(損失申告用)
この第四表は、損失額を翌年以降に繰り越すために使う専門の書類です。前年から繰り越された損失額や、その年に発生した所得、そして翌年へ繰り越す損失額などを記載します。ゼロ申告の場合でも、この第四表を提出することで、損失を次の年へ引き継ぐ意思表示になります。
期限後申告の注意点
期限後申告には、いくつか注意すべき点があります。
| ペナルティについて | 所得がゼロで納税額がなければ、無申告加算税や延滞税は基本的にかかりません。 |
| 青色申告特別控除 | 最大65万円(または55万円)の青色申告特別控除は、期限内申告が条件です。そのため、期限後申告の場合は10万円の控除しか適用されません。 |
今回のケースのように所得がゼロの場合は、特別控除の金額が減っても納税額に影響はありませんが、制度として覚えておきましょう。
法人の場合の繰越欠損金
法人の場合も、基本的な考え方は個人事業主と同じです。欠損金が発生した事業年度に青色申告を行い、その後も連続して確定申告書を提出することで、欠損金を繰り越すことができます。もし申告していない事業年度があれば、その期間の期限後申告を行う必要があります。
個人事業主との大きな違いは、繰越期間の長さです。法人の場合は原則として10年間も繰り越せるため、より長期間にわたって節税効果を期待できます。
なぜゼロ申告でも毎年申告が必要なのか
「税金を納める必要がないなら、申告しなくてもいいのでは?」と思ってしまう気持ちも分かります。しかし、青色申告者にとって、確定申告は単に税金を納めるための手続きではありません。
繰越控除のような税制上の特典を受けるためには、「私はルールに従ってきちんと事業内容を報告していますよ」という証明として、毎年申告を続けることが求められるのです。所得が赤字やゼロであっても、申告をすることで初めて、将来の黒字に備える権利を維持できる、と考えておきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。青色申告の繰越欠損金がある状態で2年間申告をしていなくても、すぐに諦める必要はありません。申告していなかった期間の期限後申告を行うことで、大切な繰越欠損金を引き継ぎ、将来の節税に繋げることが可能です。
今回のポイントをまとめます。
- 繰越欠損金を引き継ぐには、毎年連続した確定申告が必要。
- 2年間無申告でも、期限後申告をすれば繰越欠損金は引き継げる可能性が高い。
- 所得がゼロの「ゼロ申告」でも、繰越控除の権利を維持するためには申告が不可欠。
- 期限後申告は法定申告期限から5年以内に行うこと。
確定申告は少し面倒に感じるかもしれませんが、青色申告のメリットを最大限に活かすためにはとても重要な手続きです。もし手続きに不安がある場合は、管轄の税務署や税理士などの専門家に相談してみてくださいね。
参考文献
青色申告の繰越欠損金に関するよくある質問まとめ
Q. 青色申告で2年間無申告でした。繰越欠損金はもう使えませんか?
A. 諦めないでください。申告していなかった2年分の期限後申告を行うことで、繰越欠損金を引き継げる可能性があります。
Q. 繰越欠損金の繰越控除を受けるための条件は何ですか?
A. 損失が出た年に青色申告をしていることと、その後も毎年連続して確定申告書を提出していることが条件です。
Q. 期限後申告をするとペナルティはありますか?
A. 納税額がなければ、基本的に無申告加算税や延滞税はかかりません。ただし、青色申告特別控除は65万円(または55万円)ではなく10万円になります。
Q. ゼロ申告(所得が0円)でも確定申告は必要ですか?
A. はい、繰越欠損金の控除を将来にわたって受け続けるためには、所得が0円でも毎年確定申告をする必要があります。
Q. 個人の場合、繰越欠損金は何年間繰り越せますか?
A. 青色申告をしている個人事業主の場合、純損失(赤字)を翌年以後3年間繰り越すことができます。
Q. 申告を忘れていた場合、いつまでに期限後申告をすればよいですか?
A. 期限後申告は、法定申告期限から5年以内であれば行うことができます。