税理士法人プライムパートナーズ

非上場株式の会社規模判定早見表!
大・中・小会社の区分を徹底解説

2025-06-10
目次

相続や事業承継で非上場株式を受け継ぐことになったとき、「この株式の価値はいくらなんだろう?」と疑問に思いますよね。非上場株式の評価はとても複雑で、その第一歩が「会社の規模」を判定することなんです。会社の規模によって評価方法がガラリと変わり、結果的に相続税額にも大きな影響を与えます。この記事では、非上場株式の会社規模である「大会社」「中会社」「小会社」の判定方法を、早見表を使って分かりやすく解説します。

非上場株式の会社規模とは?なぜ判定が必要?

相続財産に非上場株式が含まれている場合、その価値を正しく評価して相続税を計算する必要があります。上場株式のように市場価格がないため、国税庁が定めたルールに従って評価額を算出します。その際、会社の規模を「大会社」「中会社」「小会社」のいずれかに分類することが、評価のスタートラインになるんです。

会社規模は3種類!大会社・中会社・小会社

非上場株式を評価する会社は、その規模に応じて次の3つに分類されます。会社の状況によって、どの区分に当てはまるかが決まります。

大会社 規模が最も大きい会社
中会社 大会社と小会社の中間に位置する会社
小会社 規模が比較的小さい会社

この分類は、会社の資本金の大きさではなく、従業員数総資産価額取引金額といった要素で客観的に判定されます。

会社規模で株式の評価方法が変わる

なぜ会社規模の判定が重要かというと、規模によって使うべき株式の評価方法が異なるからです。評価方法には大きく分けて「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」があり、会社規模ごとに以下のように定められています。

大会社 原則として類似業種比準方式で評価します。
中会社 類似業種比準方式純資産価額方式を併用して評価します。
小会社 原則として純資産価額方式で評価します。

評価方法の違いは相続税額に大きく影響

「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」では、算出される株価が大きく異なることがよくあります。一般的に、類似業種比準方式の方が純資産価額方式よりも株価が低く評価される傾向にあります。つまり、会社の規模判定を間違えると、本来よりも高い税金を納めることになったり、逆に過少申告になったりする可能性があるのです。だからこそ、正確な会社規模の判定が非常に大切なんですね。

会社規模を判定する3つの要素

会社の規模は、「従業員数」「総資産価額」「取引金額」という3つの要素を基準に判定します。それぞれの具体的な内容を見ていきましょう。

要素① 従業員数

判定で使う従業員数は、課税時期の直前期末以前1年間において、継続して勤務していた従業員の数です。正社員だけでなく、パートやアルバイトの方も含まれますが、数え方に少しルールがあります。

継続勤務従業員 週の労働時間が30時間以上の従業員は、1人としてカウントします。
それ以外の従業員 1年間の合計労働時間を、年間平均労働時間(1,800時間)で割った数が人数になります。(小数点以下は切り捨て)

この2つを合計した人数が、判定に使う従業員数となります。

要素② 総資産価額(帳簿価額)

総資産価額は、課税時期の直前に終了した事業年度末日時点での、会社の貸借対照表に記載されている資産の合計額(帳簿価額)を指します。相続税評価額に置き換える必要はなく、決算書の数字をそのまま使って判定します。

要素③ 直前期1年間の取引金額

取引金額とは、課税時期の直前期末以前1年間における、その会社の事業目的である収入金額(売上高)のことです。不動産の売却収入など、本業とは関係ない臨時的な収入は含めません。会社の事業内容に応じた収入金額で判断します。

業種区分によって判定基準が変わる

先ほどご紹介した3つの要素の判定基準は、会社の業種によって数値が異なります。そのため、会社規模を判定する前に、まず会社の業種を区分する必要があります。

業種区分は3種類

業種は、日本標準産業分類を基に、以下の3つに大きく分けられます。

卸売業 他の事業者から購入した商品を、性質や形状を変えずに他の事業者へ販売する事業。
小売・サービス業 個人や家庭へ商品を販売したり、サービスを提供したりする事業。医療法人もここに分類されます。
上記以外の業種 製造業、建設業、不動産業、金融業など、上記の2つに当てはまらない業種。

どの業種に該当するかは、国税庁が公表している「日本標準産業分類の分類項目と類似業種比準価額計算上の業種目との対比表」で確認できます。

兼業している場合の業種判定

会社が複数の事業を行っている(兼業している)場合は、直前期末以前1年間の取引金額が最も多かった業種を、その会社の業種として判定します。例えば、卸売業と小売業の両方を行っている会社なら、売上高が大きい方の業種の基準を使って会社規模を判定することになります。

【早見表】会社規模の判定基準

それでは、業種ごとの具体的な判定基準を早見表で確認しましょう。この表を使って、ご自身の会社がどの規模に該当するかチェックしてみてください。

卸売業

会社の規模 判定基準
大会社 従業員数が70人以上
または
総資産価額20億円以上(従業員35人超)
または
取引金額30億円以上
中会社 (大会社に該当せず)
総資産価額7,000万円以上(従業員5人超)
または
取引金額2億円以上30億円未満
小会社 総資産価額7,000万円未満
または
従業員数が5人以下
かつ
取引金額2億円未満

小売・サービス業

会社の規模 判定基準
大会社 従業員数が70人以上
または
総資産価額15億円以上(従業員35人超)
または
取引金額20億円以上
中会社 (大会社に該当せず)
総資産価額4,000万円以上(従業員5人超)
または
取引金額6,000万円以上20億円未満
小会社 総資産価額4,000万円未満
または
従業員数が5人以下
かつ
取引金額6,000万円未満

卸売業、小売・サービス業以外の業種

会社の規模 判定基準
大会社 従業員数が70人以上
または
総資産価額15億円以上(従業員35人超)
または
取引金額15億円以上
中会社 (大会社に該当せず)
総資産価額5,000万円以上(従業員5人超)
または
取引金額8,000万円以上15億円未満
小会社 総資産価額5,000万円未満
または
従業員数が5人以下
かつ
取引金額8,000万円未満

※従業員数と総資産価額の要件には「(従業員数が〇人以下の会社を除く。)」といった細かい条件がありますが、上記の表は分かりやすさを優先して簡略化しています。正確な判定には国税庁の通達をご確認ください。

会社規模の判定手順を具体例で解説

判定基準がわかったところで、次は実際の判定手順を見ていきましょう。判定には少し特殊なルールがあるので、注意が必要です。

判定の優先順位

会社規模の判定には、以下の優先順位があります。

ステップ1:従業員数で判定
まず、従業員数が70人以上かどうかを確認します。70人以上であれば、他の要素に関わらず、その会社は大会社に決定します。

ステップ2:従業員数が70人未満の場合
従業員数が70人未満の場合は、少し複雑な判定になります。

  1. 「総資産価額及び従業員数」の基準で、どの規模(大・中・小)に該当するかを判定します。
  2. 「取引金額」の基準で、どの規模に該当するかを判定します。
  3. 上記の1と2の結果を比較し、規模が大きい方を最終的な会社規模として採用します。

ここで注意したいのが、1の「総資産価額及び従業員数」の判定です。これは、総資産価額の基準と従業員数の基準をそれぞれ見て、規模が小さい方を採用するというルールになっています。

具体的な判定シミュレーション

言葉だけだと難しいので、具体的な例で見てみましょう。

【例】
・業種:卸売業
・従業員数:15人
・総資産価額:3億円
・取引金額:25億円

<判定手順>
従業員数での判定
従業員数は15人で70人未満なので、ステップ2に進みます。

「総資産価額及び従業員数」の判定
卸売業の早見表を見ると、

  • 総資産価額3億円 → 中会社(7,000万円以上)
  • 従業員数15人 → 中会社(5人超)

この2つの結果は同じ「中会社」なので、この基準での判定は「中会社」となります。
(もし結果が異なった場合は、小さい方の規模を採用します。例えば、総資産価額が中会社、従業員数が小会社なら、「小会社」として扱います。)

「取引金額」の判定
卸売業の早見表を見ると、

  • 取引金額25億円 → 中会社(2億円以上30億円未満)

この基準での判定は「中会社」となります。

最終的な会社規模の決定
②の結果(中会社)と③の結果(中会社)を比較します。両方とも中会社なので、この会社の最終的な規模は「中会社」と判定されます。

もし、②の結果が「小会社」、③の結果が「中会社」だった場合は、大きい方である「中会社」が採用されます。

まとめ

今回は、非上場株式の評価に欠かせない「大会社・中会社・小会社」の判定方法について、早見表を使いながら解説しました。この判定は、相続税額に直結する非常に重要な手続きです。

会社規模の判定は、従業員数、総資産価額、取引金額の3つの要素業種区分によって決まります。判定手順には少し複雑なルールがありますが、この記事でご紹介した流れに沿って一つひとつ確認していけば、ご自身の会社の規模を把握できるはずです。

ただし、非上場株式の評価は専門的な知識が必要で、誤りが許されません。少しでも不安な点があれば、相続に詳しい税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。正確な評価で、安心して相続手続きを進めましょう。

【参考文献】

非上場株式の会社規模判定に関するよくある質問まとめ

Q. そもそも、なぜ非上場株式の会社規模を判定する必要があるのですか?

A. 相続や贈与で非上場株式の価値を計算(評価)するためです。会社規模(大会社・中会社・小会社)によって、国が定めた評価方法の計算ルールが変わるため、正確な株価を算出するために判定が不可欠です。

Q. 会社規模(大会社・中会社・小会社)は何を基準に判定するのですか?

A. 主に「従業員数」「総資産価額(帳簿価額)」「直前期末以前1年間の取引金額」の3つの要素で判定します。従業員数が70人以上かどうかでまず大まかに分かれ、その後、総資産価額と取引金額を業種別に定められた基準と照らし合わせて最終的に判定します。

Q. 判定基準の「従業員数」にパートやアルバイトも含まれますか?

A. はい、含まれます。継続して勤務するパートやアルバイトの方も、労働時間に応じた人数に換算して従業員数に加える必要があります。詳しい計算方法は専門家への確認をおすすめします。

Q. 自分の会社が「大会社」「中会社」「小会社」のどれに当たるか、簡単にわかる方法はありますか?

A. 国税庁のウェブサイトで公開されている「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」の第4表を使うと判定できます。従業員数、総資産価額、取引金額を記入するだけで、自社の規模がどの区分に該当するかがわかるようになっています。

Q. 会社規模の判定は、いつの時点の数値を使いますか?

A. 原則として、課税時期(相続なら亡くなった日、贈与なら贈与した日)の「直前期末」の決算数値を使用します。例えば、3月決算の会社で8月に相続が発生した場合、直前の3月末時点の数値で判定します。

Q. 大会社と判定されると、株価の評価で有利・不利はありますか?

A. 一概に有利・不利とはいえませんが、評価方法が大きく変わります。大会社は上場企業を参考にする「類似業種比準価額方式」が原則となり、株価が低く評価される傾向があります。一方、小会社は純資産を基にする「純資産価額方式」が原則で、資産が多い会社は株価が高くなる傾向があります。

事務所概要
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