税理士法人プライムパートナーズ

非上場株式の相続は代償分割で!後継者と他の相続人が揉めないための論点

2025-03-05
目次

非上場会社のオーナー経営者様にとって、ご自身の会社の株式を誰にどのように相続させるかは、事業承継における最大の課題の一つです。特に、後継者となるお子様と、経営に関与しないお子様がいる場合、財産の分け方でトラブルになるケースは少なくありません。今回は、このような状況で非常に有効な遺産分割方法である「代償分割」について、非上場株式を相続させる際の具体的な論点や税金の問題、注意点をわかりやすく解説します。

非上場株式の相続で代償分割が選ばれる理由

会社の財産というと、現預金や不動産をイメージしがちですが、オーナー経営者様にとって最も価値のある財産はご自身が保有する会社の非上場株式です。しかし、この非上場株式は、預貯金のように簡単に分割したり、上場株式のように市場で売却したりすることが難しいため、遺産分割の際にトラブルの原因となりやすいのです。そこで活用されるのが「代償分割」という方法です。

後継者に株式を集中させ、経営権を安定させるため

会社の経営を安定して次世代に引き継ぐためには、議決権の大部分を後継者が保有する必要があります。もし株式が複数の相続人に分散してしまうと、経営方針を巡って意見が対立し、重要な意思決定が滞るなど、会社の経営に支障をきたす恐れがあります。代償分割は、後継者が非上場株式をすべて相続し、経営権を一本化するための有効な手段です。

他の相続人との公平性を保つため

後継者が会社の全株式を相続すると、他の相続人は「自分には何もないのか」と不満を抱く可能性があります。代償分割は、株式を相続した後継者が、その株式の価値に見合う金銭(代償金)を他の相続人に支払うことで、相続人間の公平を保つことができます。これにより、相続トラブルを防ぎ、円満な事業承継を実現しやすくなります。

換価分割や共有分割が現実的でないため

非上場株式の分割方法には、他に「換価分割(売却して現金で分ける)」や「共有分割(複数の相続人で共有する)」があります。しかし、非上場株式は買い手を見つけるのが極めて困難なため、換価分割は現実的ではありません。また、前述の通り、共有分割は経営の不安定化を招くため避けるべきです。このような理由から、消去法的に見ても代償分割が最適な選択肢となるケースが多いのです。

代償分割の基本的な仕組み

代償分割は、特定の相続人が遺産(この場合は非上場株式)を法定相続分を超えて取得する代わりに、他の相続人に対して金銭などを支払うことで精算する分割方法です。例えば、相続人が長男(後継者)と長女の2人で、遺産が評価額1億円の非上場株式のみだった場合を考えてみましょう。法定相続分に従うと、それぞれ5,000万円ずつ相続する権利があります。この場合、長男が1億円の株式をすべて相続し、その代わりとして長女に5,000万円の代償金を支払う、というのが代償分割です。

誰が誰に支払うのか?

代償分割では、非上場株式など分割しにくい財産を多く取得した相続人(通常は後継者)が、財産を少なく取得した、あるいは全く取得しなかった他の相続人に対して、その不足分を補う形で支払いを行います。

支払う人 非上場株式を相続した後継者
受け取る人 非上場株式を相続しなかった他の相続人

何を支払うのか?(代償財産)

代償として支払われる財産(代償財産)は、現金で支払われるのが一般的です。しかし、株式を相続した後継者に十分な現金がない場合は、後継者個人が所有する不動産や上場株式などを代償財産として渡すことも可能です。ただし、現金以外の資産で支払う場合は、後継者に「譲渡所得税」が課税される可能性があるため注意が必要です。

【最重要】代償金の決め方と非上場株式の評価

代償分割を円滑に進める上で最も重要かつ、最もトラブルになりやすいのが「代償金の金額」を決めるプロセスです。代償金の額は、相続する非上場株式の評価額に基づいて計算されますが、この株式の評価方法が一つではないため、相続人間で意見が対立しやすいのです。

非上場株式の相続税評価額

相続税を計算する際の非上場株式の評価は、国税庁が定める「財産評価基本通達」に基づいて行われます。会社の規模などに応じて、主に以下の方法で評価されます。

類似業種比準価額方式 事業内容が類似する上場企業の株価を基に評価する方法
純資産価額方式 会社の総資産から負債を差し引いた純資産額を基に評価する方法

これらの方法で計算された価額が、相続税申告の基礎となる相続税評価額です。

遺産分割協議で使われる評価額

重要なのは、相続税評価額が必ずしも遺産分割協議で使われるとは限らない、という点です。相続人間の話し合いでは、会社の収益性や将来性を加味した「時価」を基準にすることが公平だと考えられることもあります。一般的に、相続税評価額よりも時価の方が高くなる傾向があり、どちらを基準にするかで代償金の額が大きく変わります。

  • 代償金を支払う後継者:評価額を低くしたい(相続税評価額を主張)
  • 代償金を受け取る他の相続人:評価額を高くしたい(時価を主張)

このように利害が対立するため、どの評価額を基にするかについて、事前に相続人全員で納得のいくまで話し合い、合意形成を図ることが不可欠です。

代償分割における税金の論点

代償分割を行う際には、相続税、贈与税、所得税という3つの税金が関係してきます。それぞれの税金の基本的な考え方を正しく理解しておくことが、予期せぬ税負担を避けるために重要です。

相続税の計算方法

代償分割を行った場合、各相続人の相続税の課税価格は以下のように計算されます。この計算方法は、遺産分割協議で基準とした株式の評価額によって変わる可能性があるため、注意が必要です。

  • 代償金を支払った人(後継者)の課税価格
    = 相続した財産の価額 - 支払った代償金の額
  • 代償金を受け取った人の課税価格
    = 相続した財産の価額 + 受け取った代償金の額

例えば、相続税評価額8,000万円の株式を相続した後継者が、他の相続人に3,000万円の代償金を支払った場合、後継者の相続税課税価格は5,000万円(8,000万円 – 3,000万円)として計算されます。

贈与税がかかるケースとは?

代償分割は、あくまで遺産分割の一環であるため、原則として代償金の支払いに贈与税はかかりません。しかし、以下の2つのケースでは贈与とみなされ、贈与税が課税されるリスクがあります。

  1. 遺産分割協議書に代償分割である旨の記載がない場合:単なる個人間の金銭のやり取りとみなされてしまう可能性があります。
  2. 代償金の額が過大である場合:相続分を補うために必要な金額を明らかに超える部分については、贈与とみなされる可能性があります。

譲渡所得税がかかるケースとは?

前述の通り、代償金を現金ではなく、後継者個人が所有する不動産などの資産で支払った(現物で代償した)場合、注意が必要です。この場合、税務上は「後継者が自身の資産を時価で売却し、その売却代金で代償金を支払った」ものとみなされます。そのため、その資産の取得費よりも時価が高い場合には、差額(譲渡益)に対して譲渡所得税が課税されます。

代償分割を成功させるための注意点

非上場株式の相続における代償分割を円満かつスムーズに進めるためには、いくつかの重要なポイントがあります。特に生前からの準備が成功の鍵を握ります。

後継者の納税資金・代償金支払能力の確保

後継者は、非上場株式にかかる相続税と、他の相続人に支払う代償金の両方を準備しなければなりません。その金額は数千万円から数億円にのぼることもあります。オーナー経営者様は、ご自身の生前から、死亡保険金の活用や、役員退職金の支給などを計画的に準備し、後継者が資金繰りに困らないように対策を講じておくことが極めて重要です。

遺産分割協議書への記載方法

代償分割を行う際は、その内容を遺産分割協議書に明確に記載することが必須です。後々のトラブルや税務上のリスクを避けるため、以下の項目を具体的に盛り込みましょう。

  • 誰がどの非上場株式を相続するのか
  • 株式を相続する代償として、誰が誰に対し、いくらの代償金を支払うのか
  • 代償金の支払方法(一括または分割)と支払期限

この記載が、税務署に対して贈与ではないことを証明する重要な証拠となります。

専門家への相談の重要性

非上場株式の評価、税額の計算、遺産分割協議書の作成など、代償分割には非常に専門的で複雑な手続きが伴います。相続が発生してから慌てるのではなく、生前の段階から事業承継に詳しい税理士などの専門家に相談し、最適なプランを立てておくことを強くお勧めします。専門家のアドバイスを受けながら進めることで、法務・税務の両面から安全で円滑な事業承継が可能になります。

まとめ

非上場会社のオーナー様にとって、後継者へ円滑に事業を引き継ぎ、同時に他のご家族との関係も良好に保つことは、経営者人生の集大成とも言える重要な仕事です。代償分割は、この難題を解決するための非常に有効な手法です。しかし、その成功は、生前からの周到な準備にかかっています。ご自身の会社の株式価値を把握し、後継者のための資金計画を立て、相続人全員での対話を重ねること。そして、早い段階で信頼できる専門家をパートナーとすることが、後悔のない事業承継と円満な相続の実現につながります。

参考文献

国税庁 No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算

国税庁 No.4638 取引相場のない株式の評価

非上場株式の代償分割に関するよくある質問

Q. 代償分割とは簡単に言うと何ですか?

A. 後継者など特定の相続人が、非上場株式などの分けにくい遺産をまとめて相続する代わりに、他の相続人に対して法定相続分に相当するお金(代償金)を支払うことで、公平に遺産分割を行う方法のことです。

Q. 非上場株式の価値(評価額)はどうやって決めるのですか?

A. 相続税の計算では国税庁のルール(財産評価基本通達)に基づいて評価しますが、遺産分割の話し合いでは、相続人全員が合意すれば、会社の時価などを基準にすることも可能です。この評価額が代償金の額を決める基礎になるため、非常に重要なポイントです。

Q. 代償金を支払うお金がない場合はどうすればいいですか?

A. 会社オーナーが生前に、後継者を受取人とする生命保険に加入したり、役員退職金を準備したりして、納税資金や代償金の原資を確保しておく対策が一般的です。相続発生後に資金が足りない場合は、金融機関からの借り入れも選択肢になりますが、計画的な準備が不可欠です。

Q. 代償金に贈与税はかかりますか?

A. いいえ、原則として贈与税はかかりません。ただし、遺産分割協議書に「代償分割であること」を明記していない場合や、代償金の額が不相当に高額な場合は、贈与とみなされ課税されるリスクがあります。

Q. 遺産分割協議書には何を書けばいいですか?

A. 「後継者である〇〇が非上場株式すべてを相続する。その代償として、〇〇は他の相続人△△に対し、金〇〇円を令和〇年〇月〇日までに支払う」といったように、誰が何を相続し、誰が誰に、いくらを、いつまでに支払うかを具体的に明記することが重要です。

Q. いつまでに代償金を支払う必要がありますか?

A. 法律で定められた期限はありません。相続人間の話し合い(遺産分割協議)によって自由に決めることができます。支払いが遅れるとトラブルの原因になるため、遺産分割協議書に支払期限を明記し、それを守ることが大切です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

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