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預貯金の相続手続き完全ガイド|必要書類・期限・リスクを解説

2026-02-02
目次

大切な方が亡くなられた後、悲しみの中で多くの手続きに追われることになります。その中でも、故人の預貯金の相続は避けて通れない重要な手続きです。しかし、「何から始めればいいの?」「どんな書類が必要?」「期限はあるの?」といった疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。この記事では、預貯金の相続手続きの流れから必要書類、期限、そして知っておくべきリスクまで、わかりやすく解説していきますので、一緒に一つずつ確認していきましょう。

預貯金の相続手続き、まず何から始める?

大切な方が亡くなられたら、その方が持っていた預貯金口座の相続手続きが必要になります。金融機関は、口座の名義人が亡くなったことを知ると、その口座を「凍結」します。まずはこの「口座凍結」について理解することが、手続きの第一歩になります。

故人の預貯金口座は凍結される

ご家族が亡くなったことを金融機関に伝えると、その方の名義になっている預貯金口座は、一時的に凍結されます。市区町村役場に死亡届を提出しただけでは、自動的に金融機関に連絡がいくわけではありません。ご遺族からの申し出や、新聞のお悔やみ欄などで金融機関が死亡の事実を知ったタイミングで凍結されるのが一般的です。

口座が凍結されるとどうなる?

口座が凍結されると、その口座に関する一切の取引ができなくなります。具体的には、以下のようなことができなくなりますので注意が必要です。

取引内容 できなくなること
出金 キャッシュカードや通帳での引き出し、窓口での払い戻し
入金・振込 他の口座からの振込受け取り(給与、年金、家賃収入など)
自動引落 公共料金、クレジットカード、ローンなどの支払いの引き落とし

公共料金などの引き落とし口座に指定している場合は、速やかに支払方法の変更手続きを行いましょう。

なぜ口座は凍結されるのか?

金融機関が口座を凍結するのには、大切な理由があります。それは、相続トラブルを防ぐためです。口座が凍結されることで、亡くなった時点での預貯金額が確定され、相続人の誰かが勝手にお金を引き出してしまうといった事態を防ぐことができます。これは、故人の大切な財産を、正当な相続人で公平に分けるための重要な措置なのです。

預貯金を相続する手続きの具体的な流れ

預貯金の相続手続きは、おおむね以下の流れで進んでいきます。故人が複数の金融機関に口座を持っていた場合は、それぞれの金融機関で手続きが必要になることを覚えておきましょう。

STEP1:金融機関への連絡と残高確認

まず、故人が口座を持っていた銀行や信用金庫、郵便局などの金融機関に、口座名義人が亡くなったことを連絡します。連絡方法は電話や窓口訪問が一般的です。このとき、通帳やキャッシュカードを手元に用意しておくと、口座番号などをスムーズに伝えられます。連絡後、金融機関から今後の手続きについて案内があります。同時に、相続財産を正確に把握するために「残高証明書」の発行を依頼しましょう。これは、亡くなった日時点での預貯金残高を証明する重要な書類です。

STEP2:相続人と相続財産の確定

次に、誰が相続人になるのかを確定させる必要があります。そのために、故人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)を集めます。これにより、法的に誰が相続人であるかが証明されます。同時に、預貯金以外にどのような財産(不動産、有価証券など)や債務(借金など)があるのか、財産調査を行い、相続財産の全体像を把握します。

STEP3:遺産分割協議

遺言書がない場合、相続人全員で遺産の分け方を話し合います。これを「遺産分割協議」と呼びます。預貯金を誰がどのくらい相続するのかを決め、全員が合意したら、その内容を「遺産分割協議書」という書面にまとめます。この遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、実印を押印する必要があります。

STEP4:金融機関での手続き(払い戻し・名義変更)

必要書類がすべて揃ったら、金融機関の窓口で払い戻しや名義変更の手続きを行います。金融機関所定の依頼書に記入し、集めた書類と一緒に提出します。書類に不備がなければ、通常1週間から2週間ほどで、指定した相続人の口座にお金が振り込まれたり、口座の名義が変更されたりします。

状況別!預貯金相続の必要書類一覧

預貯金の相続手続きで必要になる書類は、遺言書の有無などによって異なります。ここでは、状況別に必要な書類をまとめました。金融機関によって多少異なる場合があるため、手続きの前に必ず該当の金融機関に確認してくださいね。

全てのケースで共通して必要になる書類

まずは、どのような場合でも基本となる書類です。

書類名 説 明
金融機関所定の相続届(払戻請求書など) 金融機関の窓口でもらうか、ウェブサイトからダウンロードします。
被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本等 出生から死亡までの連続したものが必要です。
相続人全員の戸籍謄本(または戸籍抄本) 相続人であることを証明するために必要です。
相続人全員の印鑑証明書 発行後3ヶ月や6ヶ月以内など、有効期限が定められていることが多いです。
被相続人の通帳・キャッシュカード・証書など 口座を特定するために必要です。紛失している場合はその旨を伝えます。
手続きをする代表相続人の実印と本人確認書類 運転免許証やマイナンバーカードなどです。

遺言書がある場合

遺言書に基づいて手続きをする場合は、上記の共通書類に加えて以下の書類が必要になります。

書類名 説 明
遺言書(原本) 公正証書遺言以外の場合、家庭裁判所の「検認」が必要です。
検認調書または検認済証明書 自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合に必要です。(法務局保管制度利用時を除く)
遺言執行者がいる場合は、その方の印鑑証明書と実印 家庭裁判所で選任された場合は「選任審判書謄本」も必要です。

遺言書がなく、遺産分割協議書がある場合

遺言書がなく、相続人全員の話し合いで遺産の分け方を決めた場合は、共通書類に加えて以下の書類を提出します。

書類名 説 明
遺産分割協議書 相続人全員の署名と実印の押印があるものが必要です。

相続人が1人の場合や、法定相続分どおりに分ける場合は、遺産分割協議書が不要なケースもあります。

家庭裁判所の調停・審判で決まった場合

相続人間の話し合いがまとまらず、家庭裁判所の手続きで分け方が決まった場合は、共通書類と以下の書類が必要です。

書類名 説 明
調停調書謄本または審判書謄本 家庭裁判所が発行する証明書です。
審判確定証明書 審判によって決まった場合に必要となることがあります。

期限はある?預貯金相続の注意点とリスク

「預貯金の相続手続きはいつまでにやればいいの?」と心配になる方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、手続きの期限や、放置した場合のリスクについて解説します。

預貯金相続手続き自体に明確な期限はない

実は、金融機関での預貯金の相続手続きそのものには、「いつまでに」という法律上の明確な期限はありません。 しかし、だからといって手続きを後回しにするのはおすすめできません。時間が経つと、相続人が亡くなってさらに相続関係が複雑になったり、必要書類の取得が難しくなったりする可能性があるからです。

相続税の申告・納付期限は10ヶ月以内

注意すべきなのは、相続税の申告・納付期限です。相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告と納税が必要になります。この期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内と定められています。納税資金を故人の預貯金から支払う予定の場合は、この期限に間に合うように手続きを完了させる必要があります。

手続きをしないとどうなる?休眠預金のリスク

手続きをしないまま長期間放置すると、その口座は「休眠預金」として扱われる可能性があります。銀行預金の場合、最後の入出金から10年以上取引がないと休眠預金となり、預金保険機構に移管されることがあります。移管後も払い戻しは可能ですが、通常の手続きよりも時間や手間がかかることがあります。大切な財産を守るためにも、早めに手続きを済ませましょう。

勝手な引き出しはトラブルのもと

口座が凍結される前に、葬儀費用などの支払いのためにATMで現金を引き出すことがあるかもしれません。しかし、他の相続人の同意なく預金を引き出すと、遺産を使い込んだと疑われ、相続人間のトラブルに発展するリスクがあります。また、預金を引き出して自分のために使ってしまうと、借金などのマイナスの財産も含めてすべて相続する「単純承認」をしたとみなされ、後から相続放棄ができなくなる可能性も。やむを得ず引き出す場合は、必ず他の相続人に相談し、何のためにいくら使ったのか、領収書などをきちんと保管しておくことが重要です。

遺産分割前でも大丈夫!相続預金の払戻し制度

「遺産分割協議が長引いて、当面の生活費や葬儀費用の支払いに困ってしまう…」そんなときに役立つのが「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」です。2019年7月から始まったこの制度について、詳しく見ていきましょう。

制度の概要と目的

この制度は、遺産分割が終わっていなくても、相続人が単独で、故人の預貯金の一部を金融機関から払い戻せるようにするものです。葬儀費用の支払いや、故人に扶養されていた遺族の当面の生活費などを確保することを目的としています。

払い戻せる金額の上限

この制度で払い戻せる金額には上限があります。計算方法は以下の通りです。

(相続開始時の預貯金残高) × 1/3 × (払戻しを求める相続人の法定相続分)

ただし、注意点として、一つの金融機関から払い戻せる上限額は150万円と定められています。例えば、A銀行に900万円の預金があり、払い戻しを求める相続人(子)の法定相続分が1/2の場合、計算上は「900万円 × 1/3 × 1/2 = 150万円」となり、上限額である150万円を引き出すことができます。

払戻し制度を利用する方法

この制度を利用するには、金融機関の窓口で手続きが必要です。一般的に、以下の書類の提出を求められます。

書類名 説 明
被相続人の除籍謄本、戸籍謄本など 死亡の事実が確認できるものが必要です。
手続きをする相続人の戸籍謄本など 被相続人との関係がわかるものが必要です。
手続きをする相続人の本人確認書類と印鑑証明書 運転免許証やマイナンバーカードなどです。

必要書類は金融機関によって異なる場合がありますので、事前に必ず問い合わせて確認しましょう。

まとめ

今回は、預貯金の相続手続きについて、流れや必要書類、注意点などを詳しく解説しました。大切な方が残してくれた財産をきちんと受け継ぐためには、正しい知識を持って、一つずつ着実に手続きを進めることが大切です。手続きは複雑に感じるかもしれませんが、この記事のポイントをまとめると以下のようになります。

  • 金融機関に死亡の連絡をすると口座は凍結される。
  • 遺言書の有無で手続きの流れや必要書類が変わる。
  • 相続税の申告が必要な場合、期限は10ヶ月以内
  • 手続きをしないと休眠預金になるリスクがある。
  • 困ったときは相続預金の払戻し制度が利用できる。

預貯金の相続手続きは、他の相続手続きとも関連してきます。もし手続きに不安を感じたり、相続人同士で話し合いがまとまらなかったりする場合は、弁護士や司法書士、税理士といった専門家に相談することも検討してみてください。きっとあなたの力になってくれるはずです。

参考文献

一般社団法人 全国銀行協会 預金相続の手続に必要な書類

国税庁 相続税の申告のしかた 

預貯金の相続手続きに関するよくある質問まとめ

Q.亡くなった人の預金口座が凍結されるのはなぜですか?

A.金融機関が口座名義人の死亡を知ると、相続トラブルを防ぐために口座を凍結します。相続手続きが完了するまで、入出金や引き落としはできなくなります。

Q.預貯金の相続手続きに必要な書類は何ですか?

A.一般的に、亡くなった方の戸籍謄本(出生から死亡まで)、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書、遺産分割協議書または遺言書などが必要です。金融機関によって異なるため事前に確認しましょう。

Q.預貯金の相続手続きはいつまでに終えなければいけませんか?

A.預貯金の手続き自体に明確な期限はありません。しかし、相続税の申告が必要な場合は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があるため、それに合わせて進めるのが一般的です。

Q.遺産分割協議書は必ず必要ですか?

A.遺言書がある場合や法定相続分どおりに分ける場合は不要なこともありますが、多くの金融機関で提出を求められます。相続トラブルを防ぐためにも作成をおすすめします。

Q.相続手続きをせずに預金を放置するとどうなりますか?

A.長期間放置すると休眠預金となり、預金保険機構に移管される可能性があります。また、相続人の代替わりなどで権利関係が複雑になり、手続きがより困難になるリスクがあります。

Q.相続人の一人が協力してくれない場合、預金の解約はできますか?

A.原則として、預貯金の解約には相続人全員の同意と実印が必要です。協力が得られない場合は、家庭裁判所での遺産分割調停などを検討する必要があります。

事務所概要
社名
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住所
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税理士 島本 雅史

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