税理士法人プライムパートナーズ

駐車場の相続税評価額はいくら?
計算方法と節税の特例を徹底解説

2025-05-25
目次

ご家族が残してくれた大切な財産の中に「駐車場」が含まれている場合、「相続税はいくらになるんだろう?」と不安に感じていらっしゃるかもしれませんね。実は、駐車場の相続税評価額は、その駐車場の種類や使われ方によって計算方法が大きく異なります。でも、ご安心ください。中には評価額をぐっと抑えられる特例も用意されています。この記事では、駐車場の相続税評価額について、さまざまなケースを想定しながら、計算方法や節税につながるポイントを分かりやすく解説していきます。

駐車場の相続税評価額はどう決まる?基本の考え方

まず、相続税を計算するためには、亡くなった方(被相続人)が残した財産一つひとつの価値を評価する必要があります。この評価額を「相続税評価額」といいます。駐車場として使っている土地も、もちろん評価の対象です。駐車場の評価は少し複雑ですが、基本となるポイントを押さえていきましょう。

駐車場の評価は「雑種地」が基本

土地には、登記簿上で「宅地」や「畑」、「山林」といった地目が定められていますが、相続税評価では、登記簿上の地目よりも「実際の利用状況」が重視されます。駐車場として利用されている土地は、多くの場合、どの地目にも当てはまらない「雑種地(ざっしゅち)」として評価されるのが一般的です。雑種地の評価は、その土地の近くにある似たような土地(例えば宅地)の価額を基準に、場所や形などの条件の違いを考慮して計算されます。

評価方法は2種類!路線価方式と倍率方式

土地の評価には、国税庁が定めた基準に基づいて計算する方法が2つあります。どちらを使うかは、その土地が面している道路に「路線価」が設定されているかどうかで決まります。

評価方式 内容
路線価方式 道路に面する土地1㎡あたりの価額(路線価)を基に計算します。主に市街地で用いられます。計算式は「路線価 × 土地の面積 × 各種補正率」です。
倍率方式 路線価が定められていない地域で用いられます。土地の固定資産税評価額に、国税庁が定める一定の倍率を掛けて計算します。

誰が運営してる?駐車場の利用状況で評価は変わる

駐車場の相続税評価額を大きく左右するのが、「誰がその駐車場を運営しているか」という点です。土地の所有者ご自身が運営しているのか、それとも駐車場運営会社に土地を貸しているのかで、評価方法がまったく異なります。

ケース1:土地所有者が自分で経営(月極駐車場など)

土地の所有者が、利用者と直接契約を結んで運営している月極駐車場などは、「自用地(じようち)」として評価されます。自用地とは、所有者自身が自由に使用できる土地のことです。これは、土地そのものを貸しているというより、「自動車の保管サービス」を提供しているという契約とみなされるためです。そのため、土地の権利に制限がないと判断され、評価額の減額はなく、比較的高くなる傾向があります。

ケース2:駐車場業者が一括借上げ(コインパーキングなど)

土地をコインパーキング運営会社などに貸し、業者が設備を設置して運営している場合、これは「土地の賃貸借」にあたります。この場合、土地は「賃借権の目的となっている雑種地」として評価されます。土地所有者の権利が業者の賃借権によって制限されるため、その分、自用地評価額から一定額が控除され、評価額が低くなります。

ケース3:自宅の敷地内にある駐車場

ご自宅の敷地内にある自家用車用の駐車場は、自宅の敷地と一体のものとして扱われ、地目は「宅地」として評価されます。自宅と一体で評価されるため、後述する特例で大きな減額を受けられる可能性があります。ただし、自宅と道路を挟んで向かい側にある駐車場などは、別々の土地(雑種地)として評価される場合もあるので注意が必要です。

相続税を抑える鍵!小規模宅地等の特例

相続税の負担を大きく軽減できる制度として「小規模宅地等の特例」があります。これは、亡くなった方の事業や居住に使われていた土地について、一定の要件を満たせば評価額を大幅に減額できるというものです。貸駐車場も、この特例の対象になる可能性があります。

貸付事業用宅地等としての適用要件

貸駐車場がこの特例の対象となる「貸付事業用宅地等」に該当するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。特に重要なのが、土地の上に「構築物」があることです。

  • 土地の上にアスファルト舗装や砂利敷き、フェンス、車止めなどの構築物があること。
  • 相当の対価(賃料)を得て、事業として継続的に貸し付けられていること。
  • 相続人が申告期限までその駐車場事業と土地を引き継ぎ、保有し続けること。

どのくらい減額されるの?

上記の要件を満たす「貸付事業用宅地等」に該当した場合、200㎡までの部分について、相続税評価額が50%減額されます。これは非常に大きな節税効果があります。

自宅駐車場ならさらに有利!特定居住用宅地等

ご自宅の敷地内にある駐車場の場合は、さらに有利な「特定居住用宅地等」の適用を受けられる可能性があります。この場合、330㎡までの部分について、評価額がなんと80%も減額されます。ただし、亡くなった方と同居していた親族が相続するなど、適用にはより厳しい要件があります。

注意!特例が使えない「青空駐車場」とは?

「小規模宅地等の特例」を適用するためには、土地の上に事業用の「構築物」があることが絶対条件です。この点を満たしていないと、特例は使えません。

特例の対象外となるケース

最も注意が必要なのが、いわゆる「青空駐車場」です。これは、更地にただロープを張って区画を分けていたり、コンクリートブロックの車止めを置いただけだったりする駐車場のことを指します。このような駐車場は、土地の上にしっかりとした構築物がないと判断され、小規模宅地等の特例の対象外となってしまいます。また、親族に無償や非常に安い金額で貸している場合も、事業とは認められず対象外です。

砂利敷きは認められる?

アスファルトやコンクリート舗装がなくても、駐車場全体にしっかりと砂利が敷き詰められ、区画が明確にされていれば、構築物があると認められる可能性は高いです。ただし、長年手入れがされておらず、砂利が土に埋もれてしまっているような状態だと、構築物とは認められないリスクもあります。生前の適切な管理が重要になります。

業者に貸す場合の評価額計算(賃借権の評価)

コインパーキング業者などに土地を貸している場合は、自用地としての評価額から「賃借権」の価額を差し引いて評価額を計算します。これにより、土地所有者自身で運営するよりも評価額が下がります。

賃借権の種類で評価が変わる

賃借権の評価は、その権利の強さによって変わります。具体的には、「地上権に準ずる賃借権」と「それ以外の賃借権」に分かれます。一般的なコインパーキングの一括借上げ契約は、権利関係が比較的弱い「それ以外の賃借権」に該当することがほとんどです。

賃借権の種類 特徴の例
地上権に準ずる賃借権 賃借権の登記がある、権利金や一時金の支払いがあるなど、借主の権利が強いもの。
それ以外の賃借権 上記以外のもので、一般的な駐車場の土地賃貸借契約。

具体的な計算方法

「それ以外の賃借権」が設定されている土地の評価額は、以下の計算式で求められます。

評価額 = 自用地評価額 × (1 - 法定地上権割合 × 1/2)

「法定地上権割合」は、賃貸借契約の残存期間によって国税庁が定めています。例えば、残存期間が10年以下であれば5%となります。

賃借権の残存期間 法定地上権割合
10年以下 5%
10年超15年以下 10%
15年超20年以下 20%
20年超25年以下 30%

例えば、自用地評価額が5,000万円で、契約の残存期間が8年の場合、評価額は 5,000万円 × (1 – 5% × 1/2) = 4,875万円 となります。

まとめ

駐車場の相続税評価額について、ポイントを振り返ってみましょう。

  • 駐車場の評価は、誰が運営しているか、そして土地の状態がどうなっているかで大きく変わります。
  • 土地所有者自身が運営している場合は「自用地」として評価され、評価額は高めになりがちです。
  • 駐車場業者に土地を貸している場合は、賃借権の分だけ評価額が下がります。
  • 節税の最大の鍵は「小規模宅地等の特例」です。適用できれば評価額を50%または80%も減額できます。
  • 特例を使うには、アスファルト舗装やしっかりとした砂利敷きなどの「構築物」が必須です。青空駐車場は対象外なので、生前の対策が何より重要です。

駐車場の相続税評価は、さまざまなルールが絡み合い、判断が難しい部分も少なくありません。もしご自身のケースでどう評価すればよいか迷われたら、相続に詳しい税理士などの専門家に相談することをおすすめします。大切な財産をきちんと次の世代へ引き継ぐために、正しい知識で備えましょう。

参考文献

国税庁 No.4627 貸駐車場として利用している土地の評価

国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

国税庁 No.4628 市街化調整区域内の雑種地の評価

駐車場の相続税評価額に関するよくある質問まとめ

Q. 駐車場の相続税評価額はどのように計算するのですか?

A. 駐車場の相続税評価額は、原則としてその土地の評価額(路線価方式または倍率方式)で計算します。アスファルト舗装や精算機などの構築物がある場合は、それらの固定資産税評価額から減価償却費を引いた価額も加算されます。

Q. 月極駐車場とコインパーキングで評価方法は違いますか?

A. 土地としての基本的な評価方法(路線価方式・倍率方式)は同じです。ただし、事業形態や設備の状況によって、「小規模宅地等の特例」の適用可否が変わることがあります。

Q. 駐車場にアスファルト舗装がある場合、評価額は上がりますか?

A. はい、評価額は上がります。アスファルト舗装やフェンス、機械装置などは「構築物」として扱われ、その評価額が土地の評価額に上乗せされるためです。

Q. 駐車場の相続で「小規模宅地等の特例」は使えますか?

A. はい、一定の要件を満たせば「貸付事業用宅地等」として、200㎡を上限に評価額を50%減額できる特例が適用できる可能性があります。

Q. 「小規模宅地等の特例」を駐車場で使うための要件は何ですか?

A. 被相続人が事業として駐車場経営を行い、相続人がその事業を引き継いで申告期限まで継続することが主な要件です。また、土地上にアスファルト舗装などの構築物があり、事業的規模と認められる必要があります。

Q. 青空駐車場(砂利敷きなど)の場合、評価はどうなりますか?

A. アスファルト舗装などの構築物がない砂利敷きの駐車場は、基本的に更地と同じ「自用地」として評価されます。この場合、事業とは認められにくく、「小規模宅地等の特例」の適用は難しいケースが多くなります。

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