相続が発生した際、ご自宅の敷地が「宅地」と「山林」の2筆にまたがっているケースは珍しくありません。このような場合、相続税申告における土地の評価単位をどのように分ければよいのか、迷われる方も多いのではないでしょうか。今回は、異なる地目が隣接する土地の評価単位の考え方や、具体的な評価方法について詳しく解説いたします。
土地の評価単位の基本的な考え方とは
土地の評価は、原則として地目ごとに分けて行います。しかし、実際の利用状況によっては例外もあります。ここでは基本ルールを確認しましょう。
原則は地目ごとに評価する
土地の評価額を計算する際、まずは登記簿上の地目ではなく、相続開始時点での実際の利用状況である「現況地目」を確認します。国税庁では、宅地、田、畑、山林、原野など9種類の地目を定めており、原則としてこの地目ごとに評価単位を分けます。たとえば、現況が宅地であれば宅地として、山林であれば山林として別々に評価額を計算します。
利用状況による利用の単位
同じ地目であっても、利用状況が異なる場合は別々の評価単位となります。たとえば、1筆の広い宅地の中で、ご自身が住む自宅の敷地として500平方メートルを使用し、他の方に貸し出しているアパートの敷地として300平方メートルを使用している場合、これらは別々に評価します。誰がどのように使っているかが重要なポイントとなります。
取得者ごとに評価単位を分ける
1つの土地を複数の相続人で分割して相続した場合、誰が取得したかによっても評価単位が分かれます。たとえば、1,000平方メートルの土地を長男が600平方メートル、次男が400平方メートルというように分筆して相続したケースでは、長男が取得した部分と次男が取得した部分をそれぞれ独立した評価単位として扱います。
2筆にまたがる宅地と山林の評価単位
それでは、宅地と山林の2筆が隣接している場合、具体的にどのように評価単位を判断するのでしょうか。利用状況に応じた判定方法を解説します。
一体で利用されている場合は一体評価
宅地と山林が2筆にまたがっていても、全体を一つの目的で利用している場合は「一体評価」を行います。財産評価基本通達では、一体として利用されている一団の土地は、そのうちの主たる地目として全体を評価すると定められています。たとえば、自宅の建物が建っている宅地と、その建物とフェンス等で区切られずに庭として使われている山林がある場合、全体を一つの宅地として評価します。
主たる地目の判定方法
一体評価をする際、どの地目をメインとして評価するかを決めるのが「主たる地目」の判定です。これは単に面積が広いかどうかではなく、土地全体の本来の役割や価値で判断します。たとえば、宅地200平方メートルと山林300平方メートルであっても、全体を居住用の敷地として利用している場合、主な目的は居住用となるため、面積の広い山林ではなく、全体を宅地として評価額を計算することになります。
一体評価されないケースとは
すべてのケースで一体評価されるわけではありません。利用状況が明確に異なる場合は、原則通り別々に評価します。たとえば、宅地部分には自宅が建っているものの、隣接する山林部分とは高さ2メートルの擁壁やフェンスで完全に区切られており、山林部分には全く手を付けず放置されているような状況です。また、間に幅員4メートルの公道や水路があるなど、物理的に一体利用が不可能な場合も、宅地と山林を個別に評価します。
評価単位の違いによる評価額のシミュレーション
評価単位の判断が相続税額にどれほど影響を与えるのか、具体的なモデルケースを用いて比較してみましょう。
全体を宅地として一体評価する場合
宅地200平方メートルと山林300平方メートルが一体として利用されており、全体を宅地として評価するケースです。路線価が1平方メートルあたり100,000円の場合、合計500平方メートルの土地全体を宅地として計算します。
| 評価方法 | 評価額の計算例 |
|---|---|
| 一体評価(全体を宅地として評価) | 100,000円×500平方メートル=50,000,000円 |
宅地と山林を別々に評価する場合
フェンス等で区切られており、一体利用が認められず別々に評価するケースです。宅地部分は路線価方式で計算し、山林部分は固定資産税評価額が500,000円、純山林としての倍率が1.1倍と仮定して計算します。
| 土地の種類 | 評価額の計算例 |
|---|---|
| 宅地部分(路線価方式) | 100,000円×200平方メートル=20,000,000円 |
| 山林部分(純山林の倍率方式) | 500,000円×1.1倍=550,000円 |
評価単位が納税額に与える影響
上記のシミュレーションでは、一体評価の場合は全体の評価額が50,000,000円となりますが、別々に評価した場合は宅地が20,000,000円、山林が550,000円となり、合計20,550,000円となります。このように、評価単位をどのように判断するかによって、相続税評価額に約30,000,000円もの大きな差が生じます。誤った判断は過大な相続税の支払いや、税務調査での指摘につながるため、慎重な判定が必要です。
山林の種類別の相続税評価方法
山林を単独で評価することになった場合、山林の種類によって計算方法が異なります。大きく3つの種類に分けられますので、それぞれの特徴を確認しましょう。
純山林と中間山林の評価方法
純山林は市街地から遠く離れた林業地帯などにある山林で、中間山林は別荘地や市街地周辺にある山林です。これらはどちらも倍率方式で評価します。具体的には、相続が発生した年の固定資産税評価額に、国税庁が定める評価倍率を掛けて計算します。たとえば、固定資産税評価額が1,000,000円で倍率が1.5倍であれば、評価額は1,500,000円となります。
市街地山林の宅地比準方式
市街化区域内にある市街地山林は、原則として宅地比準方式で評価します。これは、その山林が宅地であると仮定した場合の1平方メートルあたりの評価額から、宅地に変えるための1平方メートルあたりの造成費用を差し引き、面積を掛けて計算する方法です。たとえば、路線価が1平方メートルあたり80,000円、造成費用が1平方メートルあたり20,000円、面積が500平方メートルの場合、(80,000円-20,000円)×500平方メートルで30,000,000円となります。
宅地化が困難な市街地山林
市街地山林であっても、傾斜度が30度以上あるなど物理的に宅地造成が不可能であったり、造成費用が宅地としての評価額を上回ってしまったりする場合は、宅地への転用が見込めないと判断されます。この場合、近隣の純山林の評価額を基準とした純山林評価を行います。たとえば、宅地比準方式では評価額がマイナスになってしまう土地でも、近隣の純山林の1平方メートルあたりの単価が1,000円であれば、面積500平方メートルを掛けて500,000円として評価します。
評価単位を判定する際の注意点
評価単位を誤ると相続税額に大きな影響が出ます。ご自身で判断する際に気をつけたいポイントをまとめました。
登記簿だけでなく現地を確認する
土地の評価は、登記簿上の地目ではなく、相続開始日時点での実際の利用状況である現況地目で判断します。登記簿上は山林となっていても、実際にはコンクリートで舗装されて駐車場として使われている場合は雑種地として評価しなければなりません。そのため、必ず現地に足を運び、フェンスの有無や実際の使われ方を目視で確認することが不可欠です。
不合理分割とみなされるリスク
相続税を意図的に下げる目的で、本来は一体として利用している土地を不自然な形に分割して相続した場合、税務署から「不合理分割」と指摘されるリスクがあります。たとえば、道路に全く接しない土地をわざと作り出すような分割方法です。このような場合、分割はなかったものとして、分割前の土地全体を一つの評価単位として再計算され、追徴課税を受ける可能性があります。
専門家への相談を検討する
評価単位の判断は、土地の形状や利用状況、物理的な条件などをもとに総合的に行う必要があり、非常に専門的な知識が求められます。判断に迷ったまま自己流で申告してしまうと、本来支払う必要のない高額な税金を納めてしまったり、逆に過少申告として税務調査の対象になったりする恐れがあります。不安な場合は、相続税の専門家に相談することをお勧めします。
まとめ
今回は、2筆にまたがる「宅地」と「山林」の相続税における評価単位の分け方について解説しました。原則は地目ごとに評価しますが、自宅の庭として一体利用されている場合は、全体を宅地として一体評価することになります。評価単位の判断一つで、数千万単位で評価額が変わることもありますので、現地の状況を正しく把握し、慎重に判断することが重要です。
宅地と山林の評価単位に関するよくある質問まとめ
Q.登記簿上で宅地と山林に分かれている土地は別々に評価しますか?
A.原則として地目ごとに別々に評価しますが、フェンス等で区切られず自宅の庭として一体で利用されている場合は、全体を一つの宅地として一体評価します。
Q.宅地と山林を一体評価する場合、どちらの地目で評価しますか?
A.全体を一つの目的として利用している場合、その主な役割である主たる地目で評価します。自宅の敷地として使っている場合は、山林部分の面積が広くても全体を宅地として評価します。
Q.土地の利用状況はいつの時点で判断しますか?
A.相続税の申告においては、亡くなられた日である相続開始日時点での実際の利用状況(現況)に基づいて評価単位や地目を判断します。
Q.市街地山林とはどのような山林ですか?
A.市街化区域内に存在する山林や、宅地の中に介在する山林のことです。原則として、宅地であると仮定した価額から造成費用を差し引く宅地比準方式で評価します。
Q.傾斜がきつい市街地山林も宅地として評価するのですか?
A.傾斜が30度以上あるなど物理的に宅地造成が不可能な場合や、造成費用が宅地としての評価額を上回る場合は、宅地への転用が見込めないと判断され、純山林として評価します。
Q.評価単位の判断を誤るとどのようなペナルティがありますか?
A.評価額を低く申告しすぎた場合、税務調査で指摘を受け、不足分の税金に加えて過少申告加算税や延滞税といったペナルティが課される恐れがあります。