70代、80代になると、健康へのご不安から「もしもの備え」について考える機会が増えますよね。でも、「もう高齢だから」「持病があるから」と、保険への加入を諦めてしまってはいませんか?実は、70代、80代からでもご加入できる生命保険はございます。この記事では、健康状態に不安がある方でも選びやすい保険の種類や、ご自身に合った保険を見つけるためのポイント、そして知っておくと安心な公的制度について、わかりやすく丁寧にご紹介します。これからの人生を安心して過ごすための準備を、一緒に考えていきましょう。
70代・80代の保険、本当に必要?
「周りは入っているみたいだけど、自分にも本当に必要なのかな?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。まずは、ご高齢の方の保険加入状況や、年齢とともにかかりやすくなる病気やケガのリスクについて見ていきましょう。ご自身にとって保険がどのくらい必要なのかを考えるきっかけにしてみてください。
70代・80代の保険加入状況
実際のところ、多くの方が70代、80代になっても生命保険に加入されています。ある調査によると、70代で約8割以上、80代でも約7割の方が何らかの生命保険に加入しているというデータがあります。この数字を見ると、多くの方が老後のリスクに備えて保険を活用されていることがわかりますね。
年齢とともに高まる入院リスク
年齢を重ねると、残念ながら病気やケガで入院する可能性は高まります。特に70代以降は、若い頃と比べて入院率が大きく上昇する傾向にあります。突然の入院は、身体的な負担だけでなく、経済的な負担も伴います。公的な医療制度でカバーされる部分もありますが、それだけでは賄いきれない費用が発生することも少なくありません。
年齢階級 | 入院受療率(人口10万対) |
65~69歳 | 1,510 |
70~74歳 | 2,010 |
75~79歳 | 2,834 |
80~84歳 | 4,264 |
85~89歳 | 6,606 |
※厚生労働省「令和5年 患者調査の概況」を基に作成
保険加入の必要性が低いケースとは?
もちろん、すべての方に手厚い保険が必要というわけではありません。例えば、以下のような方は、保険の必要性が比較的低いかもしれません。
- 十分な貯蓄がある方:急な入院や手術でまとまった出費があっても、ご自身の貯蓄で問題なく対応できる場合です。将来の医療費や介護費用を見越しても余裕があるなら、無理に保険に加入する必要はないでしょう。
- 公的な医療制度で十分カバーできると考える方:日本の公的医療保険は手厚く、特に75歳以上になると自己負担割合が軽減されます。これらの制度を最大限活用すれば、医療費の大部分は抑えられます。
ご自身の貯蓄額や健康状態、そしてどのような老後を送りたいかを考えながら、保険の必要性を判断することが大切です。
持病があっても大丈夫!加入しやすい生命保険の種類
「持病があるから、保険は入れないだろう」と諦めている方も多いのではないでしょうか。ご安心ください。最近では、健康状態に不安がある方でも加入しやすいように、条件が緩和された保険が登場しています。ここでは、代表的な2種類の保険についてご紹介します。
【告知あり】引受基準緩和型保険
引受基準緩和型保険は、通常の保険よりも告知項目が少なく、審査の基準が緩やかに設定されている保険です。「限定告知型保険」とも呼ばれます。健康に少し不安がある方でも加入しやすいのが大きな特徴です。
告知項目は保険会社によって異なりますが、一般的には以下のような3つから5つ程度の簡単な質問に「はい」か「いいえ」で答えるだけです。
告知項目の例 | ・最近3ヶ月以内に、医師から入院や手術をすすめられたことがありますか? ・過去2年以内に、入院をしたことや手術を受けたことがありますか? ・過去5年以内に、がんや肝硬変などで医師の診察・治療・投薬を受けたことがありますか? |
これらの質問にすべて「いいえ」と答えられれば、お申し込みが可能です。ただし、保険料は通常の保険に比べて少し割高に設定されています。また、加入してから1年間など、一定期間内に亡くなられたり入院されたりした場合、受け取れる保険金や給付金が半額になるなどの条件が付くことがあります。
【告知なし】無選択型保険
無選択型保険は、その名の通り、健康状態に関する告知や医師の診査が一切不要な保険です。引受基準緩和型保険にも加入できなかった方でも、年齢などの条件を満たしていれば基本的にどなたでも加入できます。
ただし、メリットばかりではありません。保険料は引受基準緩和型保険よりもさらに割高になります。また、保障される金額も少額に設定されていることが多く、加入後一定期間(例えば2年間)は、病気で亡くなった場合には保険金が支払われず、すでに払い込んだ保険料相当額が戻ってくるだけ、といった制約があるのが一般的です。持病が悪化して入院や手術をしても、保障の対象外となる点にも注意が必要です。無選択型保険は、どうしても他の保険に入れない場合の最後の選択肢として考えると良いでしょう。
後悔しない!70代・80代の生命保険選びのポイント
ご高齢になってから保険を選ぶ際には、若い頃とは違う視点が必要です。月々の保険料負担や、本当に必要な保障は何かをじっくり考えることが大切です。ここでは、保険選びで後悔しないための3つのポイントをご紹介します。
まずは今の保険内容を見直しましょう
もし現在、何らかの保険に加入されているなら、まずはその内容を確認することから始めましょう。保険証券をお手元に用意して、以下の3点を確認してみてください。
- 保障内容:お子様が独立された今、大きな死亡保障は必要ないかもしれません。一方で、医療保障は今のままで十分でしょうか?現在のライフステージに合っているかを見直しましょう。
- 保険料:年金生活の中で、保険料の支払いが負担になっていませんか?終身払いの場合、生涯にわたって保険料を支払い続けることになります。家計とのバランスを確認しましょう。
- 保障期間:いつまで保障が続くかを確認しましょう。「80歳まで」などの定期タイプの場合、保障が切れた後のことを考えておく必要があります。
公的な医療保険制度を上手に活用しましょう
日本では、高齢者の医療費負担を軽減するための手厚い公的制度があります。民間の保険を検討する前に、まずはこれらの制度でどれくらいカバーされるのかを知っておくことが重要です。
75歳以上の方は「後期高齢者医療制度」に加入し、医療費の自己負担は原則1割(現役並み所得者は3割)になります。さらに、「高額療養費制度」により、1ヶ月の医療費の自己負担額には上限が設けられています。
所得区分(75歳以上) | 1ヶ月の自己負担上限額(外来+入院) |
現役並み所得者Ⅲ (年収約1,160万円~) | 252,600円+(医療費-842,000円)×1% |
現役並み所得者Ⅱ (年収約770万~約1,160万円) | 167,400円+(医療費-558,000円)×1% |
現役並み所得者Ⅰ (年収約370万~約770万円) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% |
一般 (年収約156万~約370万円) | 57,600円 |
住民税非課税世帯など | 24,600円 / 15,000円 |
このように、公的制度だけでもかなりの部分がカバーされます。この上で、足りないと感じる部分を民間の保険で補うという考え方が賢い保険選びのコツです。
ライフステージに合った必要な保障を選びましょう
公的制度と現在加入中の保険内容を確認した上で、それでも不安な部分があれば、新たな保険への加入を検討します。ご高齢の方にとって必要性が高いと考えられるのは、主に「死亡保険」「医療保険」「傷害保険」の3つです。次の章で、それぞれの保険について詳しく見ていきましょう。
【目的別】どんな保障を備えるべき?
保険に加入する目的をはっきりさせることが、無駄のない保険選びにつながります。「誰のために」「何のために」保険が必要なのかを具体的に考えてみましょう。
死亡保険:残された家族のために
ご高齢の方が死亡保険に加入する主な目的は、以下の3つです。
- 葬儀費用やお墓の準備:ご自身の葬儀やお墓にかかる費用を準備し、遺されたご家族に負担をかけないようにするためです。葬儀費用の平均は約120万円前後と言われており、これを一つの目安にすると良いでしょう。
- 遺された配偶者の生活費:ご自身が亡くなることで、世帯の年金収入が減ってしまう場合があります。遺される配偶者が生活に困らないよう、当面の生活費として保険金を残すという目的です。
- 相続税対策:生命保険の死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があります。例えば、相続人が配偶者と子供2人の合計3人なら、1,500万円までの死亡保険金には相続税がかかりません。預貯金で遺産を遺すよりも、税負担を軽減できる可能性があります。
医療保険・がん保険:高額な医療費に備える
公的制度でカバーされない医療費に備えるのが、医療保険やがん保険の役割です。特に以下のような費用は全額自己負担となるため、注意が必要です。
- 差額ベッド代:個室や少人数の病室を希望した場合にかかる費用です。高額療養費制度の対象外となります。1日あたりの平均額は6,000円を超えており、入院が長引くと大きな負担になります。
- 先進医療の技術料:厚生労働大臣が認めた高度な医療技術にかかる費用で、全額自己負担です。がん治療で用いられる陽子線治療や重粒子線治療など、数百万円かかるケースもあります。
- 入院中の食事代や雑費:食事代の一部や、パジャマ、日用品などの購入費用も自己負担です。
これらの費用が心配な方は、医療保険やがん保険で備えておくと安心です。
傷害保険:思わぬケガに備える
ご高齢になると、転倒による骨折など、日常生活での思わぬケガのリスクが高まります。傷害保険は、このような急なケガによる入院や通院、手術などに特化した保険です。
医療保険とは違い、病気は保障の対象外ですが、その分、保険料が職業や年齢に左右されにくいという特徴があります。健康状態の告知が不要な商品も多く、持病がある方でも加入しやすいのが魅力です。ケガへの備えを手厚くしたい方におすすめの保険です。
70代・80代の保険に関するよくある質問
ここでは、ご高齢の方の保険選びに関するよくあるご質問にお答えします。
70歳を過ぎてから入れる安い保険の選び方はありますか?
保険料を安く抑えるには、保障を必要なものだけに絞り込むことが大切です。まずは公的医療保険制度でカバーされる範囲をしっかり理解し、貯蓄で賄えない部分だけを保険で補うようにしましょう。例えば、大きな死亡保障は不要と考え、葬儀費用分の少額な死亡保険にしたり、入院保障も日額5,000円程度に設定したりすることで、保険料を抑えることができます。
70歳を過ぎても入れる終身型の死亡保険はありますか?
はい、ございます。70歳を過ぎてからでも加入できる終身死亡保険はあります。特に、持病をお持ちの方向けの引受基準緩和型の終身保険は、多くの保険会社が取り扱っています。保険料は少し割高になりますが、一生涯の保障を確保できますので、相続対策やお葬式代の準備をしたい方には適しています。
死亡保険は何歳まで入るべきですか?
死亡保険に何歳まで加入すべきかという決まりはありません。保険に加入する目的によって異なります。例えば、「お葬式代を残したい」という目的であれば、一生涯保障が続く終身保険が適しています。「配偶者が一人で生活できるようになるまでの数年間だけ」ということであれば、保険期間が10年などの定期保険を選ぶのも一つの方法です。ご自身の目的が達成された時点で、保険を見直す(解約する)という考え方もあります。
まとめ
70代、80代からの保険選びは、若い頃とは異なる視点が求められますが、決して難しいものではありません。大切なのは、ご自身の状況を正しく理解し、本当に必要な保障を見極めることです。最後に、この記事のポイントを振り返ってみましょう。
- 70代、80代でも多くの方が生命保険に加入しており、年齢や持病を理由に諦める必要はありません。
- 健康に不安がある方は、告知項目が少ない「引受基準緩和型保険」や、告知不要の「無選択型保険」という選択肢があります。
- 保険を選ぶ前に、後期高齢者医療制度や高額療養費制度といった手厚い公的制度の内容を理解しておくことが重要です。
- 「葬儀費用」「遺された家族の生活費」「相続対策」「医療費への備え」など、何のために保険が必要なのか目的を明確にしましょう。
- 年金の範囲内で無理なく支払える保険料で、必要な保障をバランス良く準備することが賢い選択です。
この記事が、皆さまの安心なセカンドライフに向けた保険選びの一助となれば幸いです。ご自身の希望やご家族への想いを大切に、最適な備えを見つけてくださいね。
参考文献
No.1126 医療費控除の対象となる入院費用の具体例|国税庁
70代・80代向け生命保険のよくある質問まとめ
Q.70代や80代でも新しく生命保険に加入できますか?
A.はい、加入できます。高齢者向けのプランが多数あり、80代後半まで申し込める商品もあります。ただし、年齢が上がるほど選択肢は少なくなり、保険料も高くなる傾向があります。
Q.持病や通院歴があっても入れる保険はありますか?
A.はい、あります。「引受基準緩和型保険」や「無選択型保険(告知なしの保険)」といった、健康状態に関する条件が緩やかな商品が選択肢になります。
Q.「告知あり」と「告知なし」の保険の違いは何ですか?
A.「告知あり」は健康状態を申告する通常の保険です。一方、「告知なし(無選択型)」は簡単な質問のみで加入できますが、保険料が割高で、加入初期の保障が制限される場合があります。
Q.高齢者向けの保険は、主にどのような目的で利用されますか?
A.主に、ご自身の葬儀費用やお墓の準備、残されたご家族への負担軽減、相続対策などの目的で利用される方が多いです。
Q.保険料は月々どのくらいになりますか?
A.保険料は年齢、性別、保障内容、健康状態によって大きく異なります。数千円から加入できるプランもありますが、複数の保険会社から見積もりを取り、比較検討することが重要です。
Q.保険を選ぶ際のポイントを教えてください。
A.まず保険に加入する目的を明確にし、次に月々の予算を決めましょう。その上で、ご自身の健康状態に合った商品(告知の要否など)を複数比較することが大切です。