税理士法人プライムパートナーズ

生前贈与の非課税枠を徹底解説!
知らないと損する6つの特例と注意点

2025-06-11
目次

「将来の相続税が心配…」「生きているうちに子どもや孫に財産を渡したい」そうお考えの方にとって、生前贈与はとても有効な手段です。でも、「贈与には高い税金がかかるのでは?」という不安もありますよね。ご安心ください。国が定めた非課税制度を上手に活用すれば、贈与税の負担をゼロにしながら、大切な資産を次の世代へ引き継ぐことが可能です。この記事では、生前贈与で使える6つの非課税制度について、具体的な金額や条件を交えながら、誰にでも分かりやすく解説していきます。

生前贈与とは?賢く活用するメリット

生前贈与とは、ひとことで言うと「生きているうちに、自分の財産を誰かに無償で譲り渡すこと」です。亡くなった後に財産が引き継がれる「相続」とは違い、贈与する側(贈与者)の意思で、好きなタイミングで、好きな相手に財産を渡せるのが大きな特徴です。この生前贈与を計画的に行うことで、将来の相続に備えることができます。

生きているうちに財産を渡せる自由度の高さ

生前贈与最大のメリットは、その自由度の高さです。相続では、法律で定められた相続人(法定相続人)が財産を引き継ぐのが基本ですが、生前贈与なら、お子さんやお孫さんはもちろん、お世話になった方など、相続人以外の人にも財産を渡すことができます。また、「子どもの結婚やマイホーム購入のタイミングで」「孫の進学費用として」など、相手が必要としている時に、必要な資金を援助できるのも魅力です。

将来の相続税の負担を軽くできる

生前贈与を計画的に行うと、将来発生する相続税の節税につながります。相続税は、亡くなった方が遺した財産の総額が「基礎控除額」という一定の金額を超えた場合に課税されます。生前に財産を贈与しておくことで、亡くなった時点での財産(相続財産)を減らし、結果として相続税の課税対象額を抑えることができるのです。非課税制度をうまく使えば、贈与税を支払うことなく、将来の相続税負担を軽減できます。

相続時のトラブルを未然に防ぐ

財産をめぐる相続トラブルは、残念ながら少なくありません。「誰がどの財産をどれだけもらうか」で、家族関係がこじれてしまうことも。生前贈与であれば、財産を渡す本人が存命のうちに手続きを行うため、「なぜこの人にこの財産を渡したいのか」という想いを直接伝えることができます。家族の合意を得ながら進めることで、将来の「争続」を避け、円満な資産承継を実現しやすくなります。

誰でも使える!暦年贈与の基礎控除

生前贈与の非課税制度の中で、最も基本的で多くの方が利用するのが「暦年贈与」です。これは、贈与税の基礎控除を利用した方法で、コツコツと資産を移転したい場合に非常に有効です。

年間110万円まで非課税の仕組み

暦年贈与では、財産をもらった人(受贈者)1人につき、年間110万円まで贈与税がかかりません。この「年間」とは、その年の1月1日から12月31日までの期間を指します。例えば、父親が3人の子どもにそれぞれ110万円ずつ贈与した場合、子どもたちはそれぞれ110万円まで非課税枠内なので、贈与税はかかりません。この方法を10年間続ければ、税金を払うことなく合計3,300万円(110万円×3人×10年)もの資産を移転できる計算になります。

ただし、注意点があります。この110万円の非課税枠は「もらった人」基準で計算されます。例えば、1人の子どもが父親から100万円、母親から100万円を同じ年にもらった場合、合計200万円の贈与を受けたことになり、基礎控除110万円を超えた90万円分が贈与税の課税対象となります。

注意!定期贈与とみなされるケース

毎年同じ時期に同じ金額を贈与し続けると、税務署から「初めからまとまった金額を贈与する約束(例えば、1,000万円を10年間に分けて贈与する約束)があった」と判断され、「定期贈与」とみなされることがあります。この場合、贈与の合計額(この例では1,000万円)に対して一度に贈与税が課されてしまうリスクがあります。

このリスクを避けるためには、贈与の都度、贈与契約書を作成することが重要です。契約書を作成することで、毎年独立した贈与であることを客観的に証明できます。また、毎年贈与額や贈与日を変えたり、振り込みで記録を残したりすることも有効な対策です。

2024年改正!相続開始前7年以内の贈与は要注意

2024年1月1日から税制が改正され、注意すべきルールが変更されました。それは「生前贈与加算」の期間延長です。これは、贈与者が亡くなる前の一定期間内に行われた贈与は、なかったことにして相続財産に足し戻して相続税を計算するというルールです。

これまでは「死亡前3年以内」の贈与が対象でしたが、改正により「死亡前7年以内」に延長されました。つまり、亡くなる直前に駆け込みで贈与をしても、節税効果がなくなってしまう期間が長くなったのです。ただし、延長された4年分(死亡前3年超~7年以内)の贈与については、合計100万円までは加算対象外となります。生前贈与は、より一層、早くから計画的に始めることが重要になっています。

まとまった資産を渡すなら!相続時精算課税制度

「子どもが家を建てるから、まとまったお金を援助したい」「会社の株式を後継者に渡したい」など、一度に大きな金額を贈与したい場合に活用できるのが「相続時精算課税制度」です。これは、原則として60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫へ贈与する場合に選択できる制度です。

最大2,500万円の特別控除+年間110万円の基礎控除

この制度の最大の魅力は、生涯で2,500万円までの贈与が非課税になる特別控除枠があることです。さらに、2024年1月1日からは、この2,500万円の特別控除とは別に、年間110万円の基礎控除が新設されました。この新しい基礎控除は非常に強力で、年間110万円以下の贈与であれば、贈与税の申告も不要で、将来、贈与者が亡くなった際の相続財産に加算する必要もありません。

制度のポイント 解説
特別控除枠 2,500万円 贈与者1人につき、生涯にわたって利用できる非課税枠です。2,500万円を超えた分には一律20%の贈与税がかかります。
基礎控除枠 110万円/年 2024年新設。毎年110万円までの贈与なら贈与税がかからず、相続財産への加算も不要です。

どんな人におすすめ?メリットとデメリット

この制度は、将来値上がりが予想される不動産や自社株などを早めに贈与しておきたい場合に特に有効です。なぜなら、相続財産に加算される際の価額は「贈与時の価額」で固定されるため、贈与後にどれだけ値上がりしても相続税には影響しないからです。

ただし、大きなデメリットもあります。それは、一度この相続時精算課税制度を選択すると、同じ贈与者からの贈与については二度と暦年贈与に戻すことができない点です。どちらの制度が有利になるかは、ご家庭の資産状況や将来設計によって大きく変わるため、選択する前には税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

目的が決まっているなら!用途限定の非課税特例

お子さんやお孫さんのライフイベントに合わせて資金を援助したい場合、目的を限定することで大きな非課税枠が使える特例制度があります。これらは期間限定の制度も多いので、タイミングを逃さず活用したいところです。

住宅取得等資金の贈与(最大1,000万円非課税)

父母や祖父母から、子や孫がマイホームを新築・購入・増改築するための資金援助を受ける場合に使える特例です。省エネ性能などが高い「質の高い住宅」であれば最大1,000万円、それ以外の一般住宅でも最大500万円まで贈与税が非課税になります。この制度は2026年12月31日までの贈与が対象です。

教育資金の一括贈与(最大1,500万円非課税)

30歳未満の子や孫へ、教育資金としてまとまったお金を贈与する場合に使える特例です。金融機関に専用の口座を開設するなどの手続きが必要ですが、最大1,500万円まで非課税で贈与できます。学校の入学金や授業料のほか、塾や習い事の費用も対象となります(学校等以外への支払いは500万円が上限)。この制度は2026年3月31日までの贈与が対象です。

結婚・子育て資金の一括贈与(最大1,000万円非課税)

18歳以上50歳未満の子や孫へ、結婚や子育てのための資金をまとめて贈与する場合の特例です。こちらも金融機関での手続きが必要で、最大1,000万円まで贈与税がかかりません。結婚式の費用や新居への引越し費用、出産費用や子どもの医療費などが対象です(結婚関連の費用は300万円が上限)。この制度は2025年3月31日までの贈与が対象です。

夫婦間で使える!配偶者控除(おしどり贈与)

長年連れ添った配偶者に感謝の気持ちを込めて、安心して暮らせる住まいを贈りたい。そんな想いを実現できるのが、通称「おしどり贈与」とも呼ばれる配偶者控除です。

最大2,000万円が非課税になる仕組み

この特例を使うと、夫婦間で居住用の不動産、またはそれを取得するための資金を贈与した場合に、暦年贈与の基礎控除110万円とは別に、最高2,000万円までの配偶者控除が受けられます。つまり、合計で最大2,110万円まで贈与税がかからずに、自宅の所有権を配偶者に移すことができるのです。

適用を受けるための3つの条件

この特例を受けるには、主に以下の3つの条件を満たす必要があります。贈与税がゼロになる場合でも申告は必要なので注意しましょう。

  • 婚姻期間が20年以上であること。
  • 贈与する財産が、自分が住むための居住用不動産またはその購入資金であること。
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その不動産に実際に住んでおり、その後も住み続ける見込みであること。

まとめ

今回は、生前贈与で使える6つの非課税制度をご紹介しました。どの制度も、将来の相続税負担を軽減し、円満な資産承継を実現するための強力なツールです。

制度名 非課税限度額の目安
暦年贈与 年間110万円
相続時精算課税制度 生涯2,500万円 + 年間110万円
住宅取得等資金の贈与 最大1,000万円
教育資金の一括贈与 最大1,500万円
結婚・子育て資金の一括贈与 最大1,000万円
配偶者控除(おしどり贈与) 最大2,000万円

大切なのは、ご自身の資産状況やご家族のライフプランに合わせて、最適な制度を計画的に利用することです。特に、生前贈与加算の期間が7年に延長された今、早めに準備を始めることがより重要になっています。どの制度を使えばよいか迷ったときや、手続きに不安がある場合は、税理士などの専門家に相談してみることをお勧めします。賢く制度を活用して、大切な資産と想いを次の世代へつないでいきましょう。

参考文献

生前贈与の非課税に関するよくある質問まとめ

Q. 生前贈与で税金がかからない金額はいくらですか?

A. 年間110万円までなら贈与税はかかりません。これを「暦年贈与」といいます。毎年1月1日から12月31日までの1年間に、一人の人が受け取った財産の合計額に対して適用されます。

Q. 2024年から生前贈与の制度が変わったと聞きました。何が変わりましたか?

A. 大きな変更点は2つです。1つは、亡くなる前の贈与が相続財産に加算される期間が「3年以内」から「7年以内」に延長されたこと。もう1つは、「相続時精算課税制度」に年間110万円の基礎控除が新設され、より利用しやすくなったことです。

Q. 110万円の非課税枠の他に、大きな金額を非課税で贈与する方法はありますか?

A. はい、目的別の特例制度があります。「住宅取得等資金の贈与(最大1,000万円非課税)」、「教育資金の一括贈贈与(最大1,500万円非課税)」、「結婚・子育て資金の一括贈与(最大1,000万円非課税)」などです。それぞれ適用には条件があります。

Q. 非課税の範囲内で贈与するときの注意点はありますか?

A. 毎年同じ日に同じ金額を贈与すると、定期贈与とみなされ一括で課税されるリスクがあります。対策として、贈与の都度「贈与契約書」を作成したり、贈与する金額や時期を毎年変えたりすることが有効です。

Q. 子供名義の口座にお金を入金しておけば贈与になりますか?

A. いいえ、それだけでは「名義預金」とみなされ、贈与として認められない可能性があります。贈与を成立させるには、お金をあげた・もらったという双方の合意があり、もらった側がそのお金を自由に使える状態になっていることが重要です。

Q. 相続時精算課税制度とは何ですか?

A. 原則60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫へ贈与する際に選択できる制度です。累計2,500万円までの贈与が非課税になりますが、贈与者が亡くなった際にその贈与額は相続財産に加算して相続税が計算されます。財産を早く次の世代へ渡したい場合に有効な手段です。

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