パスポートの申請や相続手続きなどで「戸籍謄本」や「戸籍抄本」が必要になったとき、「どっちを取得すればいいの?」と迷った経験はありませんか?名前は似ていますが、実は証明される内容に違いがあります。この記事では、戸籍謄本と戸籍抄本の違いから、それぞれの使い分け、取得方法まで、わかりやすく解説します。これを読めば、もうどちらを取得すべきか迷わなくなりますよ。
戸籍謄本と戸籍抄本の基本的な違い
まず、戸籍謄本と戸籍抄本の最も大きな違いは、「証明される人の範囲」です。簡単に言うと、「全員分」か「一人(または一部の人)分」かの違いなんですね。それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
戸籍謄本(こせきとうほん)とは?
戸籍謄本は、その戸籍に入っている全員の身分事項(出生、婚姻、死亡など)を証明する書類です。戸籍は「夫婦と未婚の子」を一つの単位として作られるので、例えばご夫婦とお子さん二人の4人家族であれば、その4人全員の情報が記載されています。現在は多くの自治体で戸籍がコンピュータ化されており、その場合の正式名称は「戸籍全部事項証明書」といいます。内容は戸籍謄本とまったく同じです。
戸籍抄本(こせきしょうほん)とは?
一方、戸籍抄本は、その戸籍に入っている人のうち、一人または複数人など、一部の人の情報だけを抜き出して証明する書類です。先ほどの4人家族の例でいうと、「お子さん一人の情報だけ」や「ご夫婦二人の情報だけ」が必要な場合に取得するのが戸籍抄本です。こちらもコンピュータ化された戸籍では、「戸籍個人事項証明書」という名称で呼ばれています。
一目でわかる!違いのまとめ表
違いを分かりやすく表にまとめてみました。
種類 | 内容 |
戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) | 戸籍に記載されている全員分の証明 |
戸籍抄本(戸籍個人事項証明書) | 戸籍に記載されている人のうち一部の人(一人でも可)の証明 |
どちらを選べばいい?シーン別の使い分け
では、具体的にどのような場面でどちらが必要になるのでしょうか。手続きによって求められる書類が違うので、しっかり確認しておきましょう。
戸籍謄本が必要になる主なケース
家族関係全体の証明が必要な手続きでは、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)を求められることが一般的です。
- 相続手続き:被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や、相続人全員が記載された戸籍謄本が必要です。
- 婚姻届:本籍地以外の役所に婚姻届を提出する場合に必要です。
- パスポートの申請:初めて申請する場合や有効期限が切れた場合など、身分関係の確認のために必要です。
- 公正証書遺言の作成:相続人を特定するために必要となります。
戸籍抄本が必要になる主なケース
個人の身分事項だけを証明すればよい手続きでは、戸籍抄本(戸籍個人事項証明書)で足りることがあります。
- 資格の登録・変更:特定の国家資格などで、本籍地の確認のために個人の証明として使用される場合があります。
- 年金手続き:受給手続きの際に、個人の身分関係を証明するために必要となることがあります。
ただし、最近では手続きの簡略化やマイナンバー制度の活用により、戸籍抄本の提出を求められる場面は減ってきています。「どちらか分からない」と迷った場合は、戸籍謄本を取得しておくと安心です。もちろん、一番確実なのは、事前に提出先へどちらの書類が必要かを確認することですよ。
戸籍謄本・戸籍抄本の取得方法
戸籍謄本も戸籍抄本も、取得方法や手数料は同じです。どこで、どのように取得できるのか見ていきましょう。
取得できる場所
戸籍に関する証明書は、原則として本籍地のある市区町村役場で取得します。取得方法は主に3つです。
- 役所の窓口で請求:直接、本籍地の役所へ行って請求します。
- 郵送で請求:本籍地が遠い場合に便利です。役所のホームページなどから請求書をダウンロードし、必要書類と一緒に郵送します。
- コンビニで取得:マイナンバーカードがあれば、全国のコンビニエンスストアのマルチコピー機で取得できます(本籍地の自治体がコンビニ交付サービスに対応している必要があります)。
取得に必要なものと手数料
取得の際に必要なものと手数料は以下の通りです。
項目 | 内容 |
請求できる人 | ・本人 ・配偶者 ・直系の親族(父母、祖父母、子、孫など) ・代理人(委任状が必要) |
必要なもの(窓口の場合) | ・交付請求書(窓口にあります) ・本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど) ・手数料 ・委任状(代理人が請求する場合) |
手数料 | 1通 450円(戸籍謄本・抄本ともに同額です) |
※相続手続きなどで必要になる「除籍謄本」や「改製原戸籍謄本」は、1通750円です。
2024年3月から便利に!戸籍の広域交付制度
2024年3月1日から、戸籍法の一部が改正され、戸籍の広域交付制度がスタートしました。これにより、戸籍謄本の取得がさらに便利になりました。
広域交付のメリット
これまでは本籍地でしか取得できませんでしたが、この制度により、自分の本籍地から遠く離れた市区町村の窓口でも、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)を取得できるようになりました。例えば、本籍地が北海道で、現在東京にお住まいの方でも、お近くの役所で取得できます。また、相続手続きで複数の戸籍謄本が必要な場合も、一つの窓口でまとめて請求できるため、手間が大幅に削減されます。
広域交付の注意点
とても便利な制度ですが、いくつか注意点があります。
- 請求できるのは、本人、配偶者、直系の親族(父母、子など)のみです。代理人や郵送での請求はできません。
- 戸籍抄本(戸籍個人事項証明書)は広域交付の対象外です。
- 窓口に行く方の顔写真付きの本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)が必須です。健康保険証などでは受付できません。
詳しくは、法務省のホームページもご確認ください。
よくある質問(Q&A)
最後によくあるご質問にお答えします。
戸籍謄本に住所は載っていますか?
いいえ、戸籍謄本や抄本に現在の住所は記載されません。戸籍は身分関係を証明するもので、住所の履歴は「戸籍の附票(こせきのふひょう)」という別の書類で証明します。住所の証明が必要な場合は、戸籍謄本とあわせて戸籍の附票も取得しましょう。
兄弟の戸籍は取れますか?
結婚すると親の戸籍から出て、夫婦で新しい戸籍が作られます。そのため、兄弟姉妹は直系の親族ではないため、原則として本人からの委任状がなければ取得できません。ただし、ご自身の相続手続きで、兄弟姉妹の戸籍が必要であるといった正当な理由がある場合は、請求が認められることもあります。
まとめ
戸籍謄本と戸籍抄本の違いについて、ご理解いただけましたでしょうか。ポイントを最後にもう一度おさらいしましょう。
- 戸籍謄本は「全員」の証明、戸籍抄本は「一部の人」の証明。
- 相続手続きなど家族関係の証明には戸籍謄本が必要になることが多い。
- 手数料はどちらも1通450円で同じ。
- どちらが必要か迷ったら、提出先に確認するのが一番確実。
- 2024年3月からの広域交付制度で、本籍地以外でも戸籍謄本が取得できるようになり便利になった。
これらの違いをしっかり理解して、ご自身の用途に合った書類をスムーズに取得してくださいね。
戸籍謄本と戸籍抄本のよくある質問まとめ
Q. 戸籍謄本と戸籍抄本の根本的な違いは何ですか?
A. 戸籍謄本は、その戸籍に入っている「全員」の身分事項を証明するものです。一方、戸籍抄本は、戸籍に入っている人のうち「一部の人(一人または複数人)」の身分事項だけを証明するものです。「全部」か「一部」かが大きな違いです。
Q. どちらを取得すればよいか迷ったときはどうすればいいですか?
A. 提出先が「誰の」「どのような情報」を必要としているかによって決まります。例えば、パスポート申請では個人の情報で済むため戸籍抄本、相続手続きなど家族関係全体の証明が必要な場合は戸籍謄本を求められるのが一般的です。提出先に確認するのが最も確実です。
Q. 手数料に違いはありますか?
A. いいえ、ほとんどの市区町村で戸籍謄本(全部事項証明書)と戸籍抄本(個人事項証明書)の交付手数料は同額です。一般的には1通450円です。
Q. 「全部事項証明書」「個人事項証明書」という言葉も聞きますが、違いは何ですか?
A. 戸籍がコンピュータ化されている場合、戸籍謄本は「戸籍全部事項証明書」、戸籍抄本は「戸籍個人事項証明書」が正式名称となります。現在ではほとんどの自治体でコンピュータ化されているため、こちらの名称で呼ばれることが多くなっています。内容は同じものです。
Q. 戸籍謄本や戸籍抄本はどこで取得できますか?
A. 原則として、本籍地のある市区町村の役所窓口で取得できます。窓口に行けない場合は、郵送で請求したり、マイナンバーカードを利用してコンビニのマルチコピー機で取得(対応自治体のみ)したりすることも可能です。
Q. 誰でも他人の戸籍謄本や抄本を取得できますか?
A. いいえ、プライバシー保護のため、取得できるのは原則として本人、その配偶者、直系の親族(父母、祖父母、子、孫など)に限られます。それ以外の人が代理で取得する場合は、委任状が必要です。