「亡くなったお母様の遺品を整理していたら、自分以外の子供の存在を示すものが出てきた…」もしそんな事態になったら、突然のことで本当に驚き、どうすれば良いか分からなくなってしまいますよね。この記事では、亡くなったお母様にあなた以外の子供(異父兄弟姉e)がいた場合の探し方、そしてもし探さなかったり、探せなかったりした場合にどうなるのかを、一つひとつ丁寧に解説していきます。不安な気持ちを少しでも軽くするお手伝いができれば幸いです。
亡くなった母に子供がいた!これってどういうこと?
まず、落ち着いて状況を整理しましょう。お母様にあなた以外の子供がいた場合、そのお子さんも法律上の「相続人」になる可能性が非常に高い、ということを知っておく必要があります。これは、相続を進める上でとても大切なポイントになります。
なぜ相続人になるの?
お父様の場合と少し事情が異なります。母親と子供の間の親子関係は、お母様がその子を出産したという事実(分娩の事実)だけで、法的に成立します。お父様のように「認知する」といった特別な手続きは必要ありません。
そのため、お母様が出産したお子さんは、たとえ離婚した前の旦の子供であっても、結婚していない相手との間のお子さんであっても、法律上はあなたと全く同じ立場の「子供」として法定相続人となります。
どんなケースが考えられる?
お母様にあなた以外の子供がいる場合、具体的には以下のようなケースが考えられます。
- あなたのお父様と結婚する前に、別の男性との結婚歴があり、その間に子供がいた。
- 結婚はしていなかったけれど、交際相手との間に子供を産んでいた。
- ご家族が知らない事情で出産し、養子に出すなどしていた。(※特別養子縁組の場合は相続権がなくなります)
いずれのケースでも、その子供はお母様の相続人であることに変わりはありません。
相続分はどうなるの?
相続人となる子供が複数いる場合、遺産の分け方(法定相続分)は子供の人数で均等に割ることになります。例えば、お父様が既に亡くなっていて、相続人が子供だけの場合を考えてみましょう。もし、あなたとお母様の別の子供1人の合計2人が相続人であれば、お母様の遺産のすべてを2人で半分ずつ(1/2ずつ)分けることになります。この権利は、あなたと全く同じです。
どうやって探す?異父兄弟姉妹の探し方
会ったこともない兄弟姉妹を探すなんて、どこから手をつけていいか途方に暮れてしまいますよね。でも、心配しないでください。法的な手続きに沿って進めれば、その方の情報を突き止めることは可能です。ここではその具体的な方法をご紹介します。
まずは戸籍謄本を辿るのが基本
相続手続きのすべての基本は、亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本一式を集めることです。なぜなら、この戸籍一式に、お母様の結婚、離婚、そして誰を産んだかという情報がすべて記録されているからです。これを丁寧に追いかけていくことで、あなたの知らない兄弟姉妹の存在を法的に確定させることができます。
戸籍謄本を集める具体的なステップ
戸籍は、以下の手順で集めていきます。
- まず、お母様の最後の本籍地があった市区町村役場で「除籍謄本(じょせきとうほん)」を取得します。
- 取得した除籍謄本には、その一つ前の戸籍がどこにあったか(転籍元)が書かれています。その情報を頼りに、一つ前の本籍地の役所で戸籍(改製原戸籍など)を請求します。
- この作業を、お母様が生まれた時の情報が記載されている戸籍にたどり着くまで繰り返します。
戸籍の取得には手数料がかかります。一般的な金額は以下の通りです。
書類の種類 | 手数料(1通あたり) |
戸籍謄本 | 450円 |
除籍謄本・改製原戸籍謄本 | 750円 |
戸籍から現在の住所を調べる方法
戸籍謄本で兄弟姉妹の存在がわかったら、次はその方が今どこに住んでいるのかを調べる必要があります。そのために取得するのが「戸籍の附票(ふひょう)」です。
戸籍の附票は、その方の本籍地で取得でき、その戸籍が作られてから現在までの住所の履歴が記録されています。これを取得することで、最新の住所を知ることができ、連絡を取るための第一歩となります。戸籍の附票の取得費用は、市区町村によりますが1通300円程度です。
探さなかったらどうなる?無視するリスク
「正直、会ったこともない人と連絡を取りたくない…」そう思うお気持ちはよく分かります。しかし、相続人である兄弟姉妹の存在を知りながら探さずに手続きを進めてしまうと、後で非常に大きなトラブルに発展する可能性があります。
遺産分割協議が無効になる
遺産をどう分けるかを決める「遺産分割協議」は、法律で相続人全員の参加と合意がなければ成立しないと定められています。もし、一人でも相続人を除外して話し合いを進めても、その遺産分割協議は法的に無効です。つまり、すべての話し合いが白紙に戻ってしまいます。
預貯金の解約や不動産の名義変更ができない
金融機関での預貯金の解約や、法務局での不動産の名義変更(相続登記)といった手続きでは、必ず「相続人全員が誰であるか」を証明する戸籍謄本一式と、「相続人全員が合意した」ことを示す遺産分割協議書の提出が求められます。相続人が一人でも欠けていれば、書類に不備があるとして、すべての手続きがストップしてしまいます。
後から相続分を請求される
もし、あなたが相続手続きを終えた後に、兄弟姉妹が自分の存在と相続権を知った場合、その方はあなたに対して自分の相続分を返すように請求する権利があります。話し合いで解決できなければ、裁判に発展する可能性も十分に考えられます。誠実に対応しないと、関係がさらにこじれてしまう原因になります。
探せなかったらどうする?どうしても見つからない場合
戸籍を辿って住所を突き止め、手紙を送ったけれど返信がない、あるいは住所が不明でどうしても連絡がつかない、というケースもあります。そんな時は、法的な手続きを踏むことで解決の道が開けます。
家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる
行方不明の相続人がいる場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人(ふざいしゃざいさんかんりにん)」の選任を申し立てることができます。これは、行方不明の相続人に代わって財産を管理し、遺産分割協議に参加する代理人を選んでもらう制度です。この不在者財産管理人が協議に参加することで、遺産分割を有効に進めることができます。
手続き | 必要な費用(目安) |
不在者財産管理人選任申立て | 収入印紙800円、郵便切手代、官報公告料(4,816円)、その他に管理人の報酬等として裁判所に納める予納金(数十万円~)が必要になる場合があります。 |
失踪宣告の申し立てを検討する
もし、その兄弟姉妹が7年以上もの間、生きているか亡くなっているか全く分からない状態(生死不明)が続いている場合は、「失踪宣告」を家庭裁判所に申し立てる方法もあります。これが認められると、その方は法律上、死亡したものとみなされ、相続人ではなくなります。ただし、これは要件が非常に厳しく、時間もかかるため、最終手段の一つと考えるのが良いでしょう。
専門家(弁護士・司法書士)に相談する
戸籍の収集や読み解き、裁判所への申し立てなどは、ご自身で行うには専門知識が必要で、時間も手間もかかります。どうして良いか分からなくなってしまったら、相続に詳しい弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。専門家があなたの代理人として、調査から相手方への連絡、法的な手続きまで、すべてをスムーズに進めてくれます。
異父兄弟姉妹が見つかった後の流れ
無事に連絡先が判明したら、いよいよコンタクトを取ることになります。相手の方も突然のことで驚いているはずですから、慎重に進めることが大切です。
まずは手紙でコンタクトを取る
突然電話や訪問をすると、相手を驚かせ、警戒させてしまう可能性があります。まずは、丁寧な言葉遣いの手紙で連絡を取るのが一般的です。手紙には、
- あなたが誰であるか(お母様との関係)
- お母様が亡くなったこと
- 相続手続きを進めるにあたり、あなたも相続人であることが判明したため連絡したこと
などを誠実に書き記しましょう。相手の気持ちを思いやり、冷静な対応を心がけることが、円満な解決への第一歩です。
遺産分割協議を行う
連絡が取れ、お互いに話し合いの準備ができたら、相続人全員で遺産の分け方について話し合う「遺産分割協議」を行います。この時、お母様の財産(預貯金、不動産、有価証券など)と債務(借金など)のすべてを明確にした財産目録を用意し、全員が同じ情報をもとに話し合うことが重要です。
遺産分割協議書を作成する
話し合いがまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」という書面に正確に記載します。この書類に相続人全員が署名し、実印を押すことで、協議が法的に成立した証拠となります。この書類が、その後の金融機関や法務局での手続きに必要不可欠なものとなります。
まとめ
亡くなったお母様にあなた以外の子供がいた場合、どうすれば良いのか、その探し方やリスクについて解説してきましたが、ポイントを整理しましょう。
- 亡くなったお母様にあなた以外の子供がいる場合、その子供も法律上の相続人です。
- 探すには、お母様の出生から死亡までの戸籍謄本を辿り、見つかった兄弟姉妹の「戸籍の附票」で住所を調べます。
- 探さずに遺産分割を進めると、その協議は無効になり、預貯金の解約や不動産の名義変更もできません。
- どうしても探せない場合は、家庭裁判所の手続き(不在者財産管理人選任など)や、弁護士・司法書士といった専門家への相談が必要です。
突然、知らない兄弟姉妹の存在が明らかになり、戸惑いや不安でいっぱいだと思います。ですが、一人で抱え込まず、まずは戸籍を調べて事実を確認することから始めてみてください。そして、もし手続きが難しいと感じたら、ためらわずに専門家の力を借りることも考えてみてくださいね。着実に一歩ずつ進めていくことが、円満な解決につながります。
参考文献
亡くなった母の子供(異母兄弟)の探し方に関するよくある質問まとめ
Q. 亡くなった母に私以外の子供がいるか確認する方法は?
A. 亡くなったお母様の「出生から死亡まで」の連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本を含む)をすべて取得することで確認できます。戸籍には、婚姻・離婚歴や子供の情報がすべて記載されています。
Q. 戸籍で判明した兄弟の現在の連絡先はどうやって探しますか?
A. 判明した兄弟の戸籍をたどり、その本籍地で「戸籍の附票(ふひょう)」を取得します。戸籍の附票には、その人の住民票の移転履歴が記録されているため、現在の住所を調べることができます。
Q. 会ったことのない兄弟を探さないと、どんな問題が起きますか?
A. 法律上、お母様の子供は全員が「法定相続人」となります。そのため、兄弟を探し出して連絡を取らないと、遺産分割協議ができず、預貯金の解約や不動産の名義変更といった相続手続きを一切進めることができません。
Q. 兄弟探しは自分でもできますか?専門家に頼むべきですか?
A. 戸籍の収集はご自身でも可能ですが、複数の役所を回る必要があり、時間と手間がかかります。戸籍の読み方が複雑な場合もあるため、スムーズに進めたい場合は、司法書士や行政書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
Q. 兄弟の住所がわかっても、見つからなかったら相続はどうなりますか?
A. 戸籍の附票に記載の住所に住んでいないなど、行方不明で連絡が取れない場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てる必要があります。選任された管理人が、行方不明の兄弟の代理人として遺産分割協議に参加します。
Q. 見つかった兄弟とは、必ず連絡を取らないといけませんか?
A. はい、遺産分割協議を行うために連絡は必須です。感情的な問題があるかもしれませんが、相続手続き上は避けて通れません。まずは手紙を送るなど、冷静に事実と状況を伝える方法でコンタクトを取るのが一般的です。