相続や不動産取引で土地や建物の情報を調べる際、「地図証明書」と「図面証明書」という言葉が出てきます。名前が似ているので「何が違うの?」と混乱してしまう方も多いのではないでしょうか。実はこの2つ、証明してくれる内容が全く違うんです。ここでは、それぞれの証明書がどんなもので、何がわかるのか、そしてどうやって取得するのかまで、分かりやすく解説していきますね。
地図証明書と図面証明書の違いを一覧でチェック!
まずは、2つの証明書の大きな違いをざっくりとつかみましょう。目的や記載されている内容が全く違うことが分かります。相続や不動産取引では、これらの書類を適切に使い分けることがとても大切ですよ。
証明書の種類 | 主な内容と目的 |
地図証明書 | 土地の位置、大まかな形状、隣接する土地との関係(いわゆる公図)を知りたいときに使います。土地の全体像を把握するための書類です。 |
図面証明書 | 土地の正確な寸法や面積(地積測量図)、建物の形や敷地内の配置(建物図面)など、個別の不動産の詳細な情報を確認したいときに使います。 |
「地図証明書」ってどんな書類?
では、「地図証明書」について、もっと詳しく見ていきましょう。この証明書は、ひと言でいうと、土地の「全体像」を把握するための地図の写しです。隣地との関係性を確認するのに欠かせない書類です。
地図証明書でわかること(公図)
地図証明書として交付されるのは、一般的に「公図(こうず)」と呼ばれるものの写しです。公図を見ると、調査したい土地がどこにあって、どんな形をしていて、周りにどんな土地(地番)があるのか、その位置関係が一目でわかります。隣の土地の地番もわかるので、例えば隣接地との境界を確認したいときや、相続した私道がどの地番にあたるのかを調べたいときにも役立ちます。
2種類の地図「14条地図」と「地図に準ずる図面」
実は、公図にはその精度によって2つの種類があるんです。どちらの種類かによって、情報の信頼性が変わってきます。
地図(法第14条第1項地図) | 国土調査などに基づいて作成された、測量精度が非常に高い地図です。境界の位置が座標値で記録されており、現地での復元が可能です。信頼性が高く、土地の境界を正確に知るための基本資料となります。 |
地図に準ずる図面 | 明治時代の地租改正の際に作られた図面(旧土地台帳附属地図)が元になっていることが多く、測量精度は14条地図に劣ります。土地の形状や方位、縮尺が必ずしも正確ではない場合がありますが、隣接関係を把握する上では十分に役立ちます。現在、多くの地域ではまだこの「地図に準ずる図面」が使われています。 |
どちらの地図かは、取得した証明書の「分類」という欄に「地図(法第14条第1項)」や「地図に準ずる図面」と記載されているので、確認してみてくださいね。
地図証明書の注意点
特に「地図に準ずる図面」の場合、図面に書かれている土地の形状や境界線が、実際の土地の状況と必ずしも一致しないことがあります。あくまで「土地のおおまかな位置関係を示す図面」として参考にし、正確な境界を知りたい場合は、次に説明する「地積測量図」などの図面証明書と合わせて確認することが重要になります。
「図面証明書」ってどんな書類?
次に、「図面証明書」です。こちらは、土地や建物の「詳細な情報」がわかる書類の総称で、いくつかの種類があります。地図証明書がエリア全体の地図だとすれば、図面証明書は個別の不動産の設計図のようなイメージです。ここでは代表的なものをご紹介しますね。
土地の正確な情報がわかる「地積測量図」
「地積測量図(ちせきそくりょうず)」は、一筆の土地の正確な面積(地積)、形状、各境界点間の距離が記された図面です。土地家屋調査士が測量して作成します。土地を売買する際や、お隣さんとの境界をはっきりさせたいとき、分筆(土地を分ける)するときなどに、非常に重要な役割を果たします。ただし、すべての土地に備え付けられているわけではないので注意が必要です。特に昭和40年頃より前に分筆や地積更正の登記がされていない土地には、存在しない場合があります。
建物の形や配置がわかる「建物図面・各階平面図」
「建物図面(たてものずめん)」は、建物が敷地のどの位置に建てられているかを示す図面です。一方、「各階平面図(かくかいへいめんず)」は、建物の各階の形状や寸法、床面積が記載されています。この2つは通常、1枚の用紙にまとめられています。建物の新築登記や増築登記の際に提出される書類で、未登記の増築部分がないかなどを確認する際にも役立ちます。こちらも、古い建物には備え付けられていないことがあります。
その他の図面証明書
他にも、土地がどのように利用されているかを示す「土地所在図(とちしょざいず)」や、他人の土地を通行する権利(地役権)がある場合に作られる「地役権図面(ちえきけんずめん)」などがあります。これら個別の不動産に関する詳細な図面をまとめて「図面証明書」と呼んでいます。
証明書の取得方法と手数料
地図証明書も図面証明書も、不動産の詳細がわかる重要な書類ですが、誰でも取得することができます。主な取得方法は2つです。
法務局の窓口で請求する
一番確実な方法が、法務局の窓口で直接請求する方法です。不動産の所在地を管轄する法務局だけでなく、全国どこの法務局でも取得できます。窓口に備え付けの請求書に必要事項を記入し、手数料分の収入印紙を貼って提出します。
取得方法 | 法務局の窓口で交付請求 |
手数料 | 1通 450円 |
オンラインで請求する
法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を利用すれば、自宅やオフィスのパソコンから請求できます。手数料はインターネットバンキングなどで電子納付するため、法務局へ行く手間が省け、手数料も少し安くなるのがメリットです。証明書の受け取りは、郵送か、指定した法務局の窓口かを選べます。
オンライン請求(郵送で受取) | 1通 430円 |
オンライン請求(法務局で受取) | 1通 410円 |
【参考】登記情報提供サービス
「まずは内容を確認したいだけ」という場合には、「登記情報提供サービス」が便利です。オンラインで図面をPDF形式で閲覧でき、手数料も最も安価です。
サービス名 | 登記情報提供サービス |
手数料 | 1不動産あたり 365円 |
ただし、このサービスで取得したPDFには法的な証明力はありません。金融機関への提出や登記申請など、公的な手続きで証明書が必要な場合は、必ず法務局で「地図証明書」や「図面証明書」を取得してくださいね。
令和5年から始まった地図データの無料公開とは?
2023年1月23日から、法務省が保有する地図データ(登記所備付地図)が「G空間情報センター」というサイトを通じて無料で一般公開されるようになりました。これは画期的なことですが、利用するにはいくつか注意点があります。
無料データと証明書の違い
この無料データは、民間企業などがデータを加工して、まちづくりや防災、研究、新しいサービス開発などに利用することを主な目的としています。そのため、法務局の証明機能はありません。つまり、公的な手続きなどで「地図証明書」が必要な場合は、これまで通り有料で法務局から取得する必要があります。無料データは地図証明書の代わりにはならない、ということを覚えておきましょう。
利用するには専門知識が必要?
公開されているデータは「地図XML形式」という特殊な形式です。これを見るためには、データを地図の形に変換する専門的なソフトウェア(コンバータ)や地理情報システム(GIS)の知識が必要になります。一般の方が「ちょっと土地の位置関係を確認したい」という目的で気軽に閲覧するのは少し難しいかもしれません。そのため、個人の方が土地の情報を確認したい場合は、これまで通り法務局で証明書を取得するのが確実で簡単な方法と言えます。
まとめ
「地図証明書」と「図面証明書」の違い、お分かりいただけましたでしょうか?最後にポイントを整理しておきましょう。
- 地図証明書(公図)は、土地の全体像と隣地との位置関係を把握するためのもの。
- 図面証明書(地積測量図や建物図面など)は、土地や建物の詳細な寸法や形状を知るためのもの。
相続や不動産取引では、まず「地図証明書」で土地の全体像をつかみ、境界の確認など、より詳しい情報が必要になったら「図面証明書」を取得するという流れが一般的です。どちらも法務局やオンラインで誰でも取得できますので、目的に合わせて正しく使い分けて、不動産調査をスムーズに進めてくださいね。
参考文献
地図証明書と図面証明書の違いは?不動産登記のよくある質問まとめ
Q. 地図証明書と図面証明書の一番の違いは何ですか?
A. 地図証明書は、土地の区画や地番といった「場所の全体像」を示す地図(法14条地図や公図)の写しです。一方、図面証明書は、特定の土地や建物の正確な「形状・寸法・面積」を示す図面(地積測量図や建物図面など)の写しです。証明する目的が異なります。
Q. 地図証明書とは、具体的にどのようなものですか?
A. 法務局が管理する、土地の位置や隣接地との境界(筆界)の概要がわかる公的な地図の写しのことです。不動産取引や相続の際に、対象となる土地の場所や隣接関係を確認するために使われます。
Q. 図面証明書にはどんな種類がありますか?
A. 主に、土地の正確な面積や形状、測量結果がわかる「地積測量図」や、建物の位置・形状・各階の床面積がわかる「建物図面・各階平面図」などがあります。必要に応じて取得する図面を選びます。
Q. どんな時に地図証明書を、どんな時に図面証明書を取得しますか?
A. 広い範囲で土地の配置や隣接地との関係を知りたい場合は「地図証明書」を、特定の土地や建物の正確な寸法や面積、形状といった詳細な情報が必要な場合は「図面証明書」を取得します。
Q. 地図証明書や図面証明書はどこで取得できますか?
A. 全国の法務局の窓口で誰でも取得できます。また、「登記・供託オンライン申請システム」を利用すれば、オンラインで請求し、郵送で受け取ることも可能です。
Q. 証明書の取得にかかる費用はいくらですか?
A. 1通あたり450円です(法務局窓口での請求の場合)。オンライン請求の場合は料金が異なります。手数料は改定されることがあるため、最新の情報は法務局のウェブサイトでご確認ください。