税理士法人プライムパートナーズ

不動産所得700万円の節税!資産管理会社は株式会社?合同会社?徹底比較!!

2025-05-24
目次

不動産所得が700万円を超えてくると、所得税の負担がだんだん重く感じられますよね。そんな時、有効な選択肢の一つが「資産管理会社」を設立して、不動産を法人で管理する方法です。特に、建物を法人名義にする「建物所有会社方式」は、大きな節税効果が期待できます。でも、いざ会社を作ろうと思っても、「株式会社と合同会社、どっちを選べばいいんだろう?」と迷ってしまう方は少なくありません。この記事では、不動産所得700万円の方が資産管理会社を設立する際に、ご自身の状況に最適な会社形態を選べるよう、株式会社と合同会社それぞれの特徴やメリット・デメリットを分かりやすく徹底比較します。

なぜ不動産所得700万円で資産管理会社を検討するの?

そもそも、なぜ「不動産所得700万円」が資産管理会社の設立を考える一つの目安になるのでしょうか。それには、個人の税金と法人の税金の仕組みの違いが大きく関係しています。法人化することで得られる、主に3つのメリットを見ていきましょう。

所得税と法人税の「税率の差」で節税できる

個人の所得にかかる所得税は、所得が増えるほど税率も高くなる「累進課税」という仕組みです。不動産所得700万円の場合、所得税と住民税を合わせると約33%の税率が適用されます(課税所得695万円超900万円以下の部分)。一方、資本金1億円以下の中小法人の場合、所得800万円以下の部分にかかる法人実効税率は約25%前後です。このように、個人で高い税率を適用されるよりも、法人として低い税率で利益を残すほうが、手元に残るお金を増やせる可能性があります。この税率が逆転し始めるのが、所得が700万円〜900万円あたりなので、多くの方がこのタイミングで法人化を検討し始めます。

経費として認められる範囲が広がる

法人化すると、個人事業主の時よりも経費として計上できる範囲が広がります。これも大きな節税メリットです。例えば、以下のようなものが経費として認められやすくなります。

  • 役員報酬:ご自身やご家族を役員にし、給与として支払うことで会社の経費にできます。
  • 社宅:ご自身の住まいを会社名義で借り上げ、一定の家賃を会社に支払うことで、家賃の一部を会社の経費にできます。
  • 生命保険料:会社を契約者として生命保険に加入し、保険料の一部または全額を経費にできます(保険商品によります)。
  • 出張手当(日当):出張旅費規程を作成すれば、物件視察などで出張した際に、実費とは別に日当を支給し、それを経費にできます。

これらの経費を活用することで、会社の利益を圧縮し、結果的に法人税の負担を軽減することができます。

所得を分散して家族全体の税負担を軽くする

不動産所得700万円をすべてご自身一人の所得として受け取ると高い所得税率が適用されてしまいますが、ご家族を資産管理会社の役員にして役員報酬を支払うことで、所得を分散できます。例えば、ご自身が400万円、配偶者が300万円というように所得を分ければ、それぞれに適用される所得税率が下がり、家族全体で支払う税金の総額を抑えることができます。これは、将来の相続税対策として、計画的に資産を次の世代へ移していく効果も期待できる、とても有効な方法です。

資産管理会社「株式会社」と「合同会社」の基本を比較

資産管理会社を設立する場合、ほとんどの方が「株式会社」か「合同会社」のどちらかを選びます。この2つの会社形態は、設立にかかる費用や手間、運営のルール、そして社会的な信用度などに違いがあります。どちらが良い・悪いということではなく、あなたの目的によって最適な選択が変わってきます。まずは、基本的な違いを表で比べてみましょう。

比較項目 株式会社
設立費用(目安) 約22万円~
設立費用(目安) 約6万円~
社会的信用度 高い
社会的信用度 株式会社に比べると低い
意思決定の方法 株主総会(原則、出資額に応じた議決権)
意思決定の方法 社員総会(原則、出資者1人につき1票)
役員の任期 最長10年(任期満了ごとに登記が必要)
役員の任期 なし(登記の更新不要)
決算公告の義務 必要
決算公告の義務 不要
経営の自由度 法律の制約が多く、比較的低い
経営の自由度 定款で自由に設計でき、高い

社会的信用と将来性を重視するなら「株式会社」

株式会社は、日本で最も一般的な会社形態であり、その知名度の高さから社会的な信用度が高いのが最大の魅力です。資産管理会社を長期的な視点で運営していきたい場合に多くのメリットがあります。

メリット:金融機関からの融資に有利

今後、資産管理会社として金融機関から融資を受けて新たな物件を購入するなど、事業規模を拡大していきたいと考えている場合、株式会社の社会的信用度が有利に働くことがあります。決算公告の義務があるなど、情報開示性が高い点も、金融機関からの信頼を得やすい一因と言えるでしょう。

メリット:将来の事業承継がスムーズ

株式会社では、「株式」という形で会社の所有権が明確になっています。そのため、将来、お子さんやお孫さんへ事業を引き継ぐ「事業承継」が非常にスムーズです。株式を贈与または相続することで、会社の経営権を円滑に移転させることができます。議決権の種類を工夫するなど、柔軟な承継プランを設計しやすいのも特徴です。

デメリット:設立・維持コストが高め

良いことばかりではありません。株式会社は合同会社に比べて、設立費用が高額になります。法務局に納める登録免許税が最低でも15万円、さらに公証役場で定款の認証を受けるための手数料が約5万円かかります。また、役員の任期(最長10年)が満了するたびに変更登記が必要で、その都度数万円の費用が発生するなど、運営していく上でのコストと手間がかかる点は覚悟しておく必要があります。

コストと自由度を重視するなら「合同会社」

合同会社は2006年に導入された比較的新しい会社形態で、Apple Japanなど有名な大企業でも採用されています。設立の手軽さと運営の柔軟性が大きな特徴で、個人の資産管理には非常に適しています。

メリット:設立・維持コストが圧倒的に安い

合同会社の最大のメリットは、何と言ってもコストの安さです。設立時の登録免許税は最低6万円からで、株式会社で必要な定款認証も不要です。そのため、株式会社の半分以下の費用で会社を設立できます。さらに、役員の任期がなく、決算公告の義務もないため、設立後のランニングコストも安く抑えられます。「まずはスモールスタートで始めたい」という方には最適な選択肢です。

メリット:自由で柔軟な会社運営が可能

合同会社は「会社の憲法」ともいわれる定款で、会社のルールをかなり自由に決めることができます。例えば、利益の配分を出資額に関係なく、会社の貢献度に応じて決めたり、意思決定のルールを柔軟に設定したりすることが可能です。家族経営のような、実態に合わせたオーダーメイドの会社運営がしやすいのが魅力です。

デメリット:社会的信用度がやや低い

新しい会社形態であるため、株式会社に比べると社会的信用度や知名度はまだ低いのが実情です。そのため、金融機関によっては、融資の際に株式会社よりも慎重な審査が行われる可能性がゼロではありません。ただし、資産管理会社の場合は、会社の信用度だけでなくオーナー個人の資産背景も重視されるため、一概に不利になるとは言えません。

【結論】不動産所得700万円のあなたに合うのはどっち?

結局、どちらを選べば良いのでしょうか。それは、あなたが資産管理会社を設立する「目的」によって決まります。ご自身の状況に当てはまるケースを参考にしてみてください。

ケース1:将来、事業を拡大し、融資も積極的に活用したいなら「株式会社」

「不動産投資をさらに拡大していきたい」「将来的には不動産以外の事業も手がけるかもしれない」といったビジョンをお持ちであれば、社会的信用度が高い株式会社がおすすめです。金融機関や取引先との関係構築において、その信頼性がプラスに働く場面が多いでしょう。

ケース2:とにかくコストを抑えて、手軽に節税を始めたいなら「合同会社」

「難しいことは抜きにして、まずは法人化による節税メリットを早く享受したい」「運営の手間やコストは最小限にしたい」という方には、設立・維持コストが安い合同会社がぴったりです。個人事業の延長のような感覚で、気軽に法人化の第一歩を踏み出せます。

ケース3:家族への円滑な資産承継を一番に考えるなら「株式会社」

ご自身の資産を、将来揉めることなくスムーズにお子さんたちへ引き継がせたい、という目的が強いのであれば、株式で所有権を明確にできる株式会社が適しています。相続時の財産分割がしやすく、「争続」を避けるための仕組みを作りやすいのが大きな利点です。

まとめ

不動産所得700万円の方が「建物所有会社方式」で資産管理会社を設立する場合、株式会社と合同会社にはそれぞれに明確なメリットとデメリットがあります。

  • 将来の事業拡大や融資、円滑な事業承継を重視するなら「株式会社」
  • 設立・運営コストの安さと経営の自由度を優先するなら「合同会社」

これが基本的な選び方の指針になります。大切なのは、目先の設立費用だけで判断するのではなく、5年後、10年後、そして相続時まで見据えた長期的な視点で、ご自身のライフプランや事業計画に合った会社形態を選ぶことです。どちらの形態が最適か最終的な判断に迷う場合は、税理士などの専門家に相談し、シミュレーションをしてもらうことをお勧めします。

参考文献

資産管理会社設立(株式会社vs合同会社)のよくある質問まとめ

Q. そもそも不動産所得700万円で資産管理会社を設立するメリットは何ですか?

A. 個人の所得税・住民税は所得が増えるほど税率が上がりますが、法人税率は一定です。不動産所得700万円の場合、法人化することで個人の高い税率から法人の低い税率が適用され、手元に残るお金を増やせる可能性があります。また、経費にできる範囲が広がるなどの節税メリットもあります。

Q. 資産管理会社を設立するなら、株式会社と合同会社のどちらが良いですか?

A. コストを抑えてスピーディーに設立し、柔軟な経営をしたいなら「合同会社」、将来的な事業拡大や融資を視野に入れ、社会的信用度を重視するなら「株式会社」がおすすめです。目的や状況に合わせて選びましょう。

Q. 設立費用はどちらが安いですか?

A. 合同会社の方が圧倒的に安いです。株式会社の設立には最低でも約20万円かかりますが、合同会社なら最低6万円から設立できます。設立コストを抑えたい場合は合同会社が有利です。

Q. 会社の運営のしやすさに違いはありますか?

A. 合同会社の方が運営の自由度が高く、手間がかかりません。株式会社には役員の任期(最長10年)があり、任期ごとに登記が必要です。また、決算公告も義務付けられています。一方、合同会社にはこれらの義務がありません。

Q. 融資の受けやすさや社会的信用度に差はありますか?

A. 一般的に株式会社の方が社会的信用度が高いと認識されています。そのため、金融機関から融資を受ける際や、新たな取引先と契約する際には、株式会社の方が有利に働くことがあります。

Q. 結局、不動産所得700万円のケースではどちらがおすすめですか?

A. まずは設立・維持コストが安く、運営も柔軟な「合同会社」から始めるのがおすすめです。将来的に事業規模が大きくなり、さらなる信用度が必要になったタイミングで株式会社へ組織変更(株式会社化)することも可能です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

税理士と
30分オンラインMTG
下記よりご都合の良い時間をご確認ください。