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庭も対象?180㎡敷地の特定居住用宅地、特例は110㎡だけじゃない!

2025-05-22
目次

「180㎡の土地に、110㎡のマイホームを建てたけど、残りの庭の部分って相続税でどうなるんだろう?」「特定居住用宅地等の特例って、建物が建っている110㎡だけにしか使えないのかな?」そんな疑問をお持ちではありませんか?大切なご自宅の土地にかかる相続税、少しでも抑えたいですよね。この記事では、ご自宅の敷地のうち、どこまでが特例の対象になるのか、あなたのケースに当てはめて分かりやすく解説します。結論から言うと、庭の部分も特例の対象になる可能性が非常に高いですよ。

特定居住用宅地等の特例の基本をおさらい

まずは、相続税対策の要ともいえる「特定居住用宅地等の特例」について、基本を簡単におさらいしておきましょう。この制度を正しく理解することが、節税への第一歩です。

特定居住用宅地等の特例とは?

特定居住用宅地等の特例とは、亡くなった方(被相続人)が住んでいたご自宅の敷地を相続した場合に、その土地の評価額を最大で80%も減額してくれる、とても大きな節税効果のある制度です。ご家族が相続後も安心してその家に住み続けられるように、という目的で作られています。ただし、この特例が適用できる土地の面積には上限があり、330㎡(約100坪)までと決められています。

なぜ「敷地」の範囲が重要なのか

「特例の対象は建物が建っている部分だけ」と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそうではありません。特例は「被相続人の居住の用に供されていた宅地等」に適用されます。この「居住の用に供されていた」範囲がどこまでなのかが非常に重要です。もし、建物の敷地だけでなく、お庭や駐車場なども含めた土地全体が対象と認められれば、減額される金額が大きく変わり、相続税の負担を大幅に軽減できる可能性があるのです。

特例の対象となる人(取得者)の要件

この特例は、誰が土地を相続しても使えるわけではありません。主に、以下の要件を満たす人が対象となります。ご自身の状況がどれに当てはまるか確認してみてください。

取得者 主な要件
配偶者 特に要件はなく、取得するだけで適用可能です。
同居していた親族 相続税の申告期限までその土地を所有し、その家に住み続ける必要があります。
同居していない親族(いわゆる家なき子) 被相続人に配偶者や同居の相続人がいない、相続開始前3年以内に自分や配偶者名義の家に住んだことがないなど、非常に厳しい要件があります。

【結論】庭も特例の対象!180㎡全体に適用可能です

ご質問の核心部分について、結論を申し上げます。180㎡の敷地にある110㎡の自宅と残りの庭は、一体として利用されていれば、敷地全体である180㎡に特定居住用宅地等の特例を適用することができます。

「一体として利用」がキーワード

税務上の判断で最も大切なのが、建物と庭が「一体として利用」されていたか、という点です。例えば、庭でガーデニングを楽しんだり、お子様やペットの遊び場として使ったり、物干しスペースとして活用したりするなど、日常生活の中で建物と庭が密接に関わっていれば、その庭は「居住の用」の一部とみなされます。社会通念上、庭が自宅の機能の一部を果たしていると判断されれば、特例の対象となるのです。

今回のケースでの具体的な考え方

今回のケースを具体的に見てみましょう。

  • 敷地全体の面積:180㎡
  • 自宅の建築面積:110㎡
  • 庭の面積:70㎡ (180㎡ – 110㎡)

この180㎡の敷地は、特例の限度面積である330㎡を下回っています。そして、70㎡の庭がご自宅と一体で利用されている場合、敷地全体が「居住の用に供されていた宅地」と認められます。その結果、180㎡全体について評価額の80%減額という、大きな恩恵を受けることができるのです。110㎡部分だけが対象になるわけではないので、ご安心ください。

庭以外にも特例の対象になるもの

ご自宅の敷地には、庭以外にも様々なものがありますよね。どこまでが特例の対象になるのか、代表的な例を見ていきましょう。

自家用駐車場

ご自宅の敷地内にある駐車場も、自家用車を停めるために使っているのであれば、建物と一体で利用していると認められ、特例の対象に含まれます。ただし、月極駐車場として第三者に貸している場合は扱いが変わるため注意が必要です。

家庭菜園

ご家族で食べる野菜などを育てる家庭菜園も、一般的には居住用の一部とみなされます。しかし、作った野菜を市場に出荷するなど、事業として農業を行っている場合は「特定事業用宅地等」となり、居住用とは別の要件で判断されることになります。

物置や庭内神し(ていないしんし)

敷地内にある物置も、日常生活の道具などを収納するために使っていれば、一体利用と認められます。一方で、お稲荷様やお地蔵様といった「庭内神し」とその敷地は、そもそも相続税がかからない非課税財産として扱われることがほとんどです。そのため、小規模宅地等の特例を適用するまでもなく、課税の対象外となります。

特例が使えない?注意すべきケース

「一体利用」が基本ですが、状況によっては敷地の一部、あるいは全部が特例の対象外と判断されてしまうこともあります。よくある注意点を確認しておきましょう。

敷地が道路で分断されている場合

例えば、自宅と庭が公道によって物理的に分断されているようなケースでは、一体利用とは認められにくい傾向があります。一つの敷地として利用している実態を客観的に示すことが難しくなるためです。

庭を駐車場として他人に貸している場合

もし庭の一部を駐車場として第三者に貸し付け、賃料収入を得ている場合、その部分は「居住用」ではなく「貸付事業用宅地等」に該当します。この場合、特例の内容が変わってきます。

宅地の種類 限度面積と減額率
特定居住用宅地等 330㎡まで80%減額
貸付事業用宅地等 200㎡まで50%減額

このように、減額率や限度面積が大きく異なるため、敷地の一部でも貸している場合は、どの特例をどのように適用するか慎重な判断が必要です。

特例を適用するための手続き

この特例は、自動的に適用されるわけではありません。正しい手続きを踏むことが不可欠です。

相続税申告が必須

最も重要な注意点は、特例を適用した結果、相続税の納税額がゼロになったとしても、必ず税務署へ相続税の申告書を提出しなければならないということです。この申告を行わないと、特例の適用が認められず、後から多額の税金とペナルティ(延滞税や無申告加算税)が課される恐れがあります。申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。

必要な書類の準備

相続税申告書に加えて、この特例の適用を受けるためには、以下のような書類を添付する必要があります。

  • 小規模宅地等についての課税価格の計算明細書
  • 遺産分割協議書の写し(または遺言書の写し)
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 被相続人の戸籍謄本(除籍謄本)など

これらの書類を漏れなく準備し、期限内に申告を完了させましょう。

まとめ

今回は、「180㎡の敷地に110㎡の自宅がある場合、特定居住用宅地の特例はどこまで使えるか」というテーマについて解説しました。

ポイントは、建物と庭が「一体として利用」されていれば、庭を含めた敷地全体(180㎡)が特例の対象になるということです。今回のケースでは、限度面積330㎡の範囲内ですので、敷地全体の評価額を80%減額できる可能性が非常に高いです。ただし、土地の利用状況によっては判断が分かれることもあります。ご自身のケースで適用できるか不安な場合や、手続きに少しでも迷いがある場合は、相続税に詳しい税理士などの専門家に一度相談してみることを強くおすすめします。正しい知識で、大切な財産をしっかりと守りましょう。

参考文献

国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

特定居住用宅地等の特例に関するよくある質問まとめ

Q. 180㎡の敷地に110㎡の自宅があります。特定居住用宅地等の特例は、180㎡全体に使えますか?

A. はい、敷地全体である180㎡に適用できます。この特例は建物が建っている部分だけでなく、庭などを含めた居住用に使われている宅地全体が対象となります。敷地面積が特例の限度面積330㎡以下であるため、180㎡すべてが減額の対象です。

Q. そもそも「特定居住用宅地等の特例」とはどんな制度ですか?

A. 被相続人(亡くなった方)が住んでいた土地を、配偶者や同居していた親族などが相続した場合に、その土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度です。相続税の負担を大幅に軽減することを目的としています。

Q. 特例が適用される土地の面積に上限はありますか?

A. はい、あります。特定居住用宅地等の特例が適用される面積の上限は330㎡(約100坪)です。ご質問の180㎡は上限内ですので、全体に適用可能です。

Q. 自宅の庭も特例の対象になりますか?

A. はい、なります。庭は自宅と一体で利用される「居住の用に供されている宅地」とみなされるため、特例の対象範囲に含まれます。敷地内の駐車場や物置なども同様です。

Q. 誰でもこの特例を使えるのですか?

A. いいえ、特例を使える人は決まっています。主に、被相続人の配偶者や、被相続人と同居していた親族などが対象となります。一定の要件を満たせば、同居していなかった親族も適用できる場合があります。

Q. この特例を受けるには、何か手続きが必要ですか?

A. はい、自動的に適用されるわけではありません。相続税の申告書に、この特例の適用を受ける旨を記載し、計算明細書などの必要書類を添付して税務署に提出する必要があります。

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