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司法書士はなぜ古い戸籍を読める?
謎のスキルを徹底解説!

2025-08-13
目次

相続手続きを進めていると、亡くなったご家族の古い戸籍謄本を取得することがありますよね。でも、いざ見てみると「え、なんて書いてあるの…?」と、くずし字や達筆な毛筆で書かれていて、まるで暗号のように見えてしまうことも。そんな時、司法書士はなぜかスラスラと読んでしまいます。一体どこでそんな特殊なスキルを学んでいるのでしょうか?この記事では、司法書士が古い戸籍の文字を読める理由と、その学習方法について、やさしく解説していきます。

司法書士が古い戸籍を読むのはなぜ?

まず、なぜ司法書士が難解な古い戸籍を読む必要があるのか、その理由から見ていきましょう。これは、司法書士の主要な業務の一つである「相続登記」に深く関係しています。

相続手続きに「出生から死亡までの戸籍」が必須だから

不動産の名義を亡くなった方から相続人に変更する「相続登記」や、銀行預金の解約手続きを行う際には、「亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本」を揃える必要があります。これは、法律上の相続人が誰なのかを正確に確定させるためです。人が生まれてから亡くなるまでには、結婚、離婚、養子縁組、本籍地の移動(転籍)など様々な身分事項の変動があります。その全てを追いかける過程で、明治時代や大正時代に作られた古い戸籍(改製原戸籍除籍謄本)に行き着くことがよくあるのです。

古い戸籍には重要な情報が隠れている

戸籍は、法律の改正によって何度か作り変えられています。特に、紙からデータになったコンピュータ化の際には、それ以前の戸籍に書かれていた情報がすべて新しい戸籍に書き写されるわけではありません。例えば、コンピュータ化される前に離婚した配偶者との間にいた子の情報や、認知した子の情報などが、現在の戸籍謄本からは消えていることがあります。こうした情報を見逃してしまうと、相続人の確定を誤ってしまうという重大なミスにつながりかねません。そのため、古い戸籍を正確に読み解くことが非常に重要なのです。

相続登記の専門家としての責任

司法書士は、不動産登記の専門家です。依頼者から託された大切な財産に関する手続きを、法律に則って正確に行う責任があります。相続人を一人でも見落としたまま登記申請をしてしまうと、その登記は無効となり、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。そのため、古い戸籍の解読は、司法書士にとって避けては通れない、専門家としての必須スキルと言えるのです。

古い戸籍の文字はなぜ読みにくいのか?

では、具体的に古い戸籍の何がそんなに読みにくいのでしょうか。主な原因は3つあります。

手書きの「くずし字」や「変体仮名」

コンピュータ化される前の戸籍は、そのほとんどが手書きです。役所の担当者が毛筆で記載しており、書いた人のクセや、流れるように書かれた「くずし字」が多用されています。また、現代では使われない「変体仮名」(例:「は」→「者」、「い」→「以」など)も頻繁に登場するため、古文書の知識がないと解読は非常に困難です。

旧字・旧字体が使われている

戦後の国語改革以前の戸籍には、現在使われている新字体ではなく、画数の多い「旧字体」が使われています。馴染みのない漢字が出てくると、意味を推測するのも難しくなります。

旧字体 新字体
寿

独特の言い回しや専門用語

昔の戸籍制度で使われていた、現代では耳慣れない言葉も読解を難しくする一因です。例えば、「家督相続」「分家」「廃家」「入籍」「復籍」といった言葉は、その意味を正しく理解していないと、家族関係の変動を正確に把握することができません。

司法書士はどこで戸籍の読み方を学んでいる?

これほど専門的な戸籍の解読スキル。司法書士は一体どこで身につけているのでしょうか。その学習方法の秘密に迫ります。

司法書士試験の勉強では学ばない

実は、司法書士になるための国家試験の科目には、古い戸籍の読解は含まれていません。法律知識を問う試験なので、古文書の読解スキルは問われないのです。ですから、試験に合格したばかりの新人司法書士が、最初から古い戸籍をスラスラ読めるわけではない、というのが実情です。

実務経験を通じてOJTで習得する

ではどうやって学ぶのかというと、そのほとんどが実務を通じての学習(OJT:On-the-Job Training)です。司法書士事務所に就職したり、独立開業したりした後に、実際の相続案件に携わる中で、先輩司法書士から教わったり、自分で古文書の解読に関する本を読んだりしながら、一つひとつの案件をこなしていくことでスキルを磨いていきます。何件も経験を積むうちに、文字のパターンや独特の言い回しに慣れ、徐々に読めるようになっていくのです。

専門の研修やセミナーで学ぶ

日本司法書士会連合会や各地域の司法書士会、あるいは民間の研修団体が、新人司法書士や実務家向けに「戸籍読解」の研修会やセミナーを開催することがあります。こうした研修に参加して、専門的な知識や読解のコツを体系的に学ぶ司法書士も多くいます。

役所の職員さんに教えてもらうことも

どうしても判読が難しい文字に突き当たったときは、最終手段として、その戸籍を発行した市区町村役場の戸籍係に問い合わせることもあります。長年戸籍業務に携わっているベテランの職員さんは、地域の古い地名や文字のクセに精通していることが多く、心強い味方になってくれることがあります。

こんな戸籍は解読が特に難しい!具体例を紹介

司法書士でも頭を悩ませる、特に解読が難しいケースも存在します。

滲みや汚れで判読不能な戸籍

古い戸籍は紙で保管されているため、経年劣化は避けられません。保管状態によっては、インクが滲んだり、虫食いや汚れがあったりして、物理的に文字が読めなくなっていることがあります。こういう場合は、前後の文脈や他の記載から内容を推測するという、まさに考古学のような作業が必要になります。

戦災などによる「焼失・滅失証明書」

第二次世界大戦の空襲や、大きな災害(火事、震災など)によって、役所ごと戸籍が燃えてしまったり、流されてしまったりしているケースがあります。この場合、役所に戸籍を請求しても「該当の戸籍は焼失(滅失)したため交付できません」という内容の証明書(焼失証明書・滅失証明書)が発行されます。これ以上は戸籍を物理的に辿れない、という証明になります。

保存期間経過による「廃棄証明書」

戸籍には法律で定められた保存期間があります。以前は、戸籍に記載されている全員が除籍されてから80年(現在は150年に伸長)で廃棄してもよいとされていました。そのため、古すぎる戸籍は、役所によってすでに廃棄されている場合があります。その際は「廃棄証明書」が発行されます。戸籍が途中で追えなくなると、相続人の確定が困難になるため、法務局での手続きでは「他に相続人はいない」旨を証明する上申書などの追加書類が必要になることがあります。

戸籍の収集・解読は司法書士に任せるのが安心

ここまで読んでいただいて、古い戸籍の収集や解読が、いかに専門的で大変な作業かお分かりいただけたかと思います。ご自身で挑戦するのも一つの方法ですが、時間と手間、そして何より正確性を考えると、専門家である司法書士に任せるのが安心です。

時間と手間を大幅に削減できる

亡くなった方の本籍地が一生同じ場所にあれば良いのですが、結婚や転勤などで何度も転籍していると、その都度、前の本籍地を管轄する役所に戸籍を請求しなければなりません。郵送での請求は、請求書の作成や手数料として定額小為替の用意など、なにかと煩雑です。司法書士は「職務上請求」という特別な権限で戸籍を取得できるため、一般の方が請求するよりもスムーズに収集を進めることができます。

読み間違いのリスクを防げる

一番のメリットは、解読ミスを防げることです。もし相続人を見落として遺産分割協議を行ってしまった場合、その協議は無効となり、すべての手続きをやり直さなければならなくなります。司法書士に依頼すれば、豊富な経験と知識に基づいて正確に戸籍を読み解き、法的に有効な相続手続きを進めることができます。

戸籍が取得できない場合の対応もスムーズ

戸籍が焼失・廃棄されているなど、イレギュラーな事態が発生した場合、どのように手続きを進めればよいか途方に暮れてしまいますよね。司法書士は、そのようなケースでも、上申書の作成など、法務局や金融機関が求める対応を熟知していますので、安心して任せることができます。

まとめ

今回は、「司法書士はなぜ古い戸籍の文字を読めるのか?」という疑問について解説しました。ポイントをまとめると以下の通りです。

  • 司法書士が古い戸籍を読むのは、相続登記などの業務で相続人を正確に確定させるために必須だから。
  • 戸籍の読解スキルは、司法書士試験で学ぶのではなく、ほとんどが実務経験(OJT)の中で習得している。
  • 古い戸籍は「くずし字」「旧字体」「専門用語」などが多く、解読には専門的な知識と経験が必要。
  • 戸籍の収集や解読は時間と手間がかかり、ミスが許されない作業。不安な場合は無理せず司法書士に相談するのが確実で安心な方法。

相続手続きは、多くの方にとって一生に何度も経験することではありません。戸籍の収集や解読でつまずいてしまったら、ぜひお近くの司法書士に相談してみてくださいね。

参考文献

司法書士と古い戸籍の文字に関するよくある質問まとめ

Q. なぜ司法書士は古い戸籍を読む必要があるのですか?

A. 相続手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。古い戸籍は「くずし字」などで書かれていることが多く、正確な相続関係を確定するために読むスキルが不可欠だからです。

Q. 古い戸籍にはどんな難しい文字が使われているのですか?

A. 主に、漢字を崩した書体である「くずし字」や、現在とは異なる字体の仮名「変体仮名」が使われています。これらは専門知識がないと判読が困難です。

Q. 司法書士はどこで古い文字の読み方を学ぶのですか?

A. 資格取得後の新人研修や、日々の実務を通じて学ぶのが一般的です。先輩に教わったり、辞書を片手に格闘したりしながら、実践の中でスキルを磨いていきます。

Q. 司法書士試験に「くずし字」の読解問題は出ますか?

A. いいえ、司法書士試験に古文書の読解問題は出題されません。戸籍読解のような実務スキルは、合格後に習得することが前提となっています。

Q. 司法書士なら誰でも古い戸籍をスラスラ読めるのですか?

A. 相続業務の経験値によって差があります。多くの実務をこなしている司法書士は得意ですが、そうでない場合は苦手なこともあります。個人の経験や学習量によるところが大きいです。

Q. 自分でも古い戸籍の文字を読めるようになりますか?

A. はい、学習すれば可能です。「くずし字解読辞典」の活用や、古文書講座への参加がおすすめです。最近ではAIで解読するアプリなども登場しています。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
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東京都港区赤坂5丁目2−33
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対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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