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相続にかかるお金はいくら?税金・手続き費用の目安を徹底解説!

2025-09-07
目次

ご家族が亡くなられて相続が始まると、「税金はかかるのかな?」「手続きにはどれくらい費用が必要なんだろう?」と、お金のことで不安に感じますよね。相続には、相続税などの税金だけでなく、さまざまな手続き費用がかかります。この記事では、相続にかかるお金の全体像を、税金と手続き費用に分けて、できるだけ具体的に、そして優しく解説していきます。ご自身のケースでどのくらいのお金が必要になるか、目安を知る手助けになれば嬉しいです。

相続でかかるお金は大きく分けて2種類

相続で必要になるお金は、大きく分けると「税金」と「手続き費用」の2つに分類できます。それぞれがどんなものなのか、まずは全体像をつかんでいきましょう。この2つの違いを理解するだけでも、頭の中がスッキリ整理されますよ。

必ずかかるわけではない「税金」

相続にかかる税金の代表格は「相続税」です。ただ、この相続税は、遺産を相続したすべての人にかかるわけではありません。亡くなった方(被相続人)が遺した財産の総額が、法律で定められた「基礎控除額」という非課税枠を超える場合にのみ、納税の義務が発生します。
その他にも、不動産を相続した場合には、名義変更の際に「登録免許税」がかかります。また、相続した不動産を売却して利益が出た場合には、「譲渡所得税」という税金がかかることもあります。

手続きをスムーズに進めるための「手続き費用」

手続き費用には、役所で戸籍謄本などを取得するための実費や、専門家へ支払う報酬などがあります。相続手続きはとても複雑で専門的な知識が必要になる場面が多いため、多くの方が専門家の力を借ります。例えば、相続税の申告は税理士に、不動産の名義変更(相続登記)は司法書士に、そして相続人同士で話し合いがまとまらない場合は弁護士に依頼することが一般的です。これらの専門家への報酬が、手続き費用の中では大きな割合を占めることになります。

遺産から差し引ける費用とできない費用

相続にかかった費用のうち、故人が残した借金や未払金、そして葬儀費用などは、遺産の総額から差し引くことができます。これを「債務控除」と呼びます。遺産総額からこれらの費用を差し引くことで、相続税の課税対象となる金額が減り、結果的に相続税の負担を軽くすることができます。
一方で、相続税の申告を依頼した税理士への報酬や、不動産の相続登記にかかった費用、遺産分割で揉めた際の弁護士費用などは、残念ながら遺産総額から差し引くことはできません。

相続税はいくらかかる?計算方法と税率

相続で最も気になるのが「相続税」かもしれません。相続税は、遺産の金額が大きくなるほど税額も高くなります。ここでは、そもそも相続税がかかるのかどうかを判断する基準と、具体的な計算の流れ、そして税率について分かりやすく解説します。

相続税がかかるのは遺産が「基礎控除額」を超える場合

相続税には、「この金額までなら税金はかかりませんよ」という非課税の枠があり、これを「基礎控除額」と呼びます。この基礎控除額は、以下の計算式で求められます。

【基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)】

遺産の総額がこの基礎控除額よりも少なければ、相続税はかからず、税務署への申告も原則として不要です。まずは、ご自身のケースで法定相続人が何人になるかを確認し、基礎控除額がいくらになるか計算してみましょう。

法定相続人の数 基礎控除額
1人(例:配偶者のみ、子1人) 3,600万円
2人(例:配偶者と子1人) 4,200万円
3人(例:配偶者と子2人) 4,800万円
4人(例:配偶者と子3人) 5,400万円

相続税の計算ステップ

相続税の計算は、少し複雑なステップを踏みます。全体の流れは以下のようになっています。

  1. 遺産の総額を計算する:預貯金、不動産、有価証券などのプラスの財産から、借金などのマイナスの財産を差し引きます。生命保険金や死亡退職金も、一定の非課税枠を超えた分は遺産総額に含まれます。
  2. 課税遺産総額を算出する:遺産の総額から基礎控除額を差し引きます。
  3. 相続税の総額を計算する:課税遺産総額を、いったん法定相続分で分けたと仮定して、各相続人の取得金額を計算し、それぞれの金額に税率をかけて税額を算出します。そして、全員の税額を合計して「相続税の総額」を求めます。
  4. 各人が納める税額を計算する:算出した「相続税の総額」を、実際に財産を相続した割合に応じて割り振り、各人が最終的に納める税額が決まります。配偶者控除などの税額軽減の特例が使える場合は、ここからさらに差し引かれます。

相続税の税率

相続税の税率は、法定相続分に応じた取得金額によって10%から55%までの8段階に分かれています。取得する金額が大きくなるほど、税率も高くなる「累進課税」という仕組みになっています。

法定相続分に応ずる取得金額 税率
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15%
5,000万円以下 20%
1億円以下 30%
2億円以下 40%
3億円以下 45%
6億円以下 50%
6億円超 55%

相続税以外にかかる税金

相続では、相続税の他にも税金が発生する場面があります。特に不動産を相続した場合には、いくつかの税金がかかる可能性があるので知っておきましょう。

不動産の名義変更に必要な「登録免許税」

故人名義の土地や家などの不動産を相続した場合、その名義を相続人に変更する「相続登記」という手続きを法務局で行う必要があります。この相続登記を申請する際に納める税金が「登録免許税」です。
税額は、不動産の固定資産税評価額に対して0.4%の税率で計算されます。例えば、固定資産税評価額が3,000万円の土地を相続した場合、登録免許税は12万円(3,000万円 × 0.4%)となります。

相続した不動産を売却したときの「譲渡所得税」

相続した不動産を使う予定がなく、売却することもあるかと思います。もし、その不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合には、その利益に対して「譲渡所得税(所得税と住民税の合計)」が課税されます。
この税金の計算でポイントになるのが、相続した不動産を売却した場合、相続税の申告期限から3年以内に売却すると、支払った相続税の一部を不動産の取得費に加算できる「取得費加算の特例」という制度があることです。この特例を使うことで、売却益を圧縮し、譲渡所得税の負担を軽減できる場合があります。

専門家に依頼する場合の費用相場

相続手続きは、ご自身で行うことも不可能ではありませんが、非常に手間がかかり、専門的な知識も求められるため、多くの方が専門家に依頼します。ここでは、各専門家に依頼した場合の一般的な費用相場について見ていきましょう。

税理士費用(相続税申告)

相続税の申告が必要な場合に、税金の計算や申告書の作成を税理士に依頼するための費用です。報酬の相場は、一般的に「遺産総額の0.5%~1.0%」と言われています。例えば、遺産総額が8,000万円の場合、税理士費用は40万円~80万円程度が目安となります。
ただし、これはあくまで目安です。土地の評価が複雑であったり、相続人の数が多かったり、非上場株式が含まれていたりすると、作業量が増えるため追加の報酬が発生することがあります。依頼する前には、必ず見積もりを取って、料金体系を確認することが大切です。

司法書士費用(相続登記)

不動産の名義変更(相続登記)を司法書士に依頼する場合の費用です。報酬額は、不動産の数や評価額、手続きの複雑さなどによって変わりますが、一般的なケースであれば7万円~15万円程度が相場です。この報酬とは別に、先ほど説明した登録免許税や、戸籍謄本などの取得実費が必要になります。

弁護士費用(遺産分割協議・調停)

相続人同士での遺産分割の話し合いがまとまらず、トラブルに発展してしまった場合に弁護士に依頼するための費用です。弁護士費用は、相談料、着手金、成功報酬などで構成されており、依頼する内容によって大きく異なります。
一般的に、法律相談は30分5,000円~1万円程度。遺産分割協議の代理や調停を依頼する場合、着手金として20万円~50万円程度、そして解決時に得られた経済的利益に応じて10%~20%程度の成功報酬がかかることが多いです。

その他にかかる手続き費用

税金や専門家への報酬の他にも、相続手続きを進める上で必要となる細かな費用があります。見落としがちですが、合計するとまとまった金額になることもあるので、あらかじめ把握しておきましょう。

必要書類の取得費用

相続手続きでは、故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や、相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書、住民票、不動産の固定資産評価証明書など、たくさんの公的な書類を集める必要があります。これらの書類は、それぞれ発行手数料がかかります。相続関係が複雑で、取得する戸籍謄本の数が多くなると、合計で数万円にのぼることもあります。

書類の種類 手数料の目安(1通あたり)
戸籍謄本 450円
除籍謄本・改製原戸籍謄本 750円
住民票の写し 300円程度
印鑑登録証明書 300円程度
固定資産評価証明書 300円~400円程度

葬儀費用

葬儀費用は、相続が開始して最初にかかる大きな出費の一つです。この葬儀費用は、相続税を計算する際に遺産総額から差し引くことができます。対象となるのは、お通夜や告別式にかかった費用、火葬や埋葬、納骨にかかった費用、お寺へのお布施など、葬儀に直接関連する費用です。
ただし、注意点として、香典返しにかかった費用や、墓石や墓地の購入費用、初七日や四十九日などの法要にかかった費用は、葬儀費用とはみなされず、控除の対象にはなりません。

まとめ

相続にかかるお金について、税金と手続き費用に分けて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。相続にかかる費用は、遺産の総額や種類、相続人の数など、ご家庭の状況によって大きく異なります。
特に相続税については、まず「3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)」という基礎控除額の計算式を使って、ご自身のケースで納税が必要になりそうかを確認することが第一歩です。その上で、税理士や司法書士などの専門家に支払う費用も考慮に入れ、全体でどのくらいのお金が必要になるのかを把握しておくと安心です。
相続手続きは、慣れないことばかりで戸惑うことも多いかと思います。もし少しでも不安に感じることがあれば、一人で抱え込まずに、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。きっと、あなたの心強い味方になってくれるはずです。

参考文献

国税庁: No.4155 相続税の税率

国税庁: No.4126 相続財産から控除できる債務

国税庁: No.4129 相続財産から控除できる葬式費用

財務省: 親が亡くなりました。遺産を相続する場合にどのような税金がかかるのですか?

相続にかかる費用・税金のよくある質問まとめ

Q. 相続税は必ずかかるのですか?

A. いいえ、必ずかかるわけではありません。遺産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合のみ課税対象となります。多くの場合、基礎控除額内に収まり相続税はかかりません。

Q. 相続税以外にはどのような費用がかかりますか?

A. 主に、戸籍謄本などの書類取得費用、不動産の名義変更(相続登記)にかかる登録免許税、専門家(税理士、司法書士、弁護士など)に依頼した場合の報酬などがあります。

Q. 相続手続きを専門家に依頼した場合の費用はどのくらいですか?

A. 依頼内容や遺産の規模によって大きく異なります。一般的に、相続税申告なら遺産総額の0.5%〜1.0%、不動産の名義変更(相続登記)なら司法書士に数万円〜十数万円が目安とされています。事前に見積もりを取りましょう。

Q. 不動産を相続したときの名義変更(相続登記)にかかる費用は?

A. ご自身で行う場合は、登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)と必要書類の取得費用がかかります。司法書士に依頼する場合は、それに加えて数万円〜の報酬が必要です。

Q. 手続き費用を安く抑える方法はありますか?

A. 専門家への報酬を抑えるために、ご自身で手続きを行うことが最も費用を抑える方法です。ただし、手続きは複雑で時間がかかるため、財産が多い場合や相続関係が複雑な場合は、専門家に依頼する方がスムーズに進むこともあります。

Q. 預貯金の解約や名義変更に費用はかかりますか?

A. 金融機関での手続き自体に手数料はかかりません。ただし、手続きに必要な戸籍謄本や印鑑証明書などを取得するための実費はかかります。

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