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【初心者向け】社会保険と生命保険の違いを徹底解説!加入目的から税金まで

2025-11-09
目次

「社会保険」と「生命保険」、どちらも私たちの生活に関わる大切なものですが、その違いをはっきりと説明するのは難しいかもしれませんね。「何がどう違うの?」「両方入る必要あるの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。この記事では、そんな社会保険と生命保険の根本的な違いから、保障内容、保険料、そして税金のことまで、分かりやすく丁寧にご説明します。それぞれの役割を正しく理解して、ご自身やご家族に合った最適な備えを考えるきっかけにしてくださいね。

社会保険と生命保険の基本的な違い

まず、一番大きな違いは、加入が義務任意かという点です。社会保険は国が運営する公的な制度で、一定の条件を満たすすべての国民に加入義務があります。一方、生命保険は民間の保険会社が提供する商品で、加入するかどうかは個人の判断に委ねられています。それぞれの目的と特徴を表で見てみましょう。

項目 社会保険
加入義務 義務(強制加入)
運営主体 国・地方公共団体など
目的 国民生活の安定と福祉の向上(最低限の生活保障)
項目 生命保険
加入義務 任意(自由選択)
運営主体 民間の保険会社
目的 個人のライフプランに合わせたリスクへの備え(上乗せの保障)

社会保険とは?- 国のセーフティネット

社会保険は、私たちが病気やケガ、失業、老齢、介護といった人生のリスクに直面したときに、国がお互いを支え合うための仕組みです。これは強制加入の制度で、日本に住む以上、誰もが何らかの形で関わっています。具体的には、以下の5つの保険から成り立っています。

  • 健康保険:医療機関にかかったときの医療費負担を軽減します。
  • 年金保険:老後の生活や、障害を負ったとき、亡くなったときに年金が給付されます。
  • 介護保険:介護が必要になったときにサービスを受けるための保険です。
  • 雇用保険:失業したときや育児・介護で休業するときに給付が受けられます。
  • 労災保険:仕事中や通勤中のケガや病気に対して給付が受けられます。

会社員の方は、これら保険料の多くが給与から天引きされる形で納めています。

生命保険とは?- 個人のための備え

生命保険は、民間の保険会社が提供する金融商品で、加入は任意です。社会保険だけではカバーしきれない、より個人的で多様なリスクに備えることを目的としています。例えば、「もし自分が亡くなったら、残された家族の生活費はどうしよう」「がんになったときの治療費が心配」といった、一人ひとりの不安やライフプランに合わせて、保障内容や保険金額を自由に設計できるのが特徴です。

死亡保険、医療保険、がん保険、個人年金保険など、目的別にさまざまな種類の商品があります。

目的と役割の違いを整理

社会保険と生命保険の役割を家に例えると分かりやすいかもしれません。社会保険は、家でいう「基礎」や「土台」の部分です。国がすべての人に最低限の安心を提供してくれます。しかし、その土台だけでは、個々の家庭の状況に合わせた十分な備えとはいえません。

そこで登場するのが生命保険です。これは、家の「柱」や「屋根」、「家具」にあたる部分。社会保険という土台の上に、自分の家族構成や収入、将来の夢に合わせて、「もっと手厚い保障がほしい」「特定の病気に備えたい」といったニーズを補う役割を果たします。つまり、社会保険でカバーしきれない部分を、生命保険で上乗せして備えるという関係性なのです。

保障内容はどう違うの?

では、具体的に「もしも」の事態が起こったとき、それぞれの保障内容はどのように違うのでしょうか。代表的なケースで比較してみましょう。

病気やケガをしたときの保障

急な病気やケガで入院・手術が必要になった場合、社会保険と生命保険では保障のされ方が異なります。

社会保険(健康保険) 生命保険(医療保険など)
・医療費の自己負担軽減
かかった医療費の自己負担は原則3割(年齢や所得による)になります。

・高額療養費制度
1か月の医療費の自己負担額には上限があり、超えた分は払い戻されます。(例:年収約370〜770万円の方で、自己負担上限額は約8万円+α)

・傷病手当金
病気やケガで会社を連続4日以上休んだ場合、給与のおよそ3分の2が最長1年6か月にわたって支給されます。(※国民健康保険には原則ありません)

・入院給付金
入院1日あたり5,000円や10,000円など、契約に応じた金額が支払われます。

・手術給付金
受けた手術の種類に応じて、入院給付金の10倍、20倍といった給付金が支払われます。

・先進医療特約など
健康保険が適用されない先進医療の技術料など、高額になりがちな費用をカバーできます。

社会保険のおかげで医療費の大部分はカバーされますが、差額ベッド代や食事代、交通費などは自己負担です。生命保険は、こうした社会保険では足りない実費負担分や、治療中の収入減少を補う役割があります。

働けなくなったときの保障

病気やケガが原因で長期間働けなくなってしまった場合も、両方の制度からサポートが受けられます。

社会保険(障害年金など) 生命保険(就業不能保険など)
・障害年金
病気やケガで法令により定められた障害の状態になった場合に、障害の程度に応じて「障害基礎年金」や「障害厚生年金」が支給されます。

・傷病手当金
前述の通り、最長1年6か月間の所得を補償します。

・就業不能給付金
医師の診断により所定の就業不能状態が続いた場合に、毎月10万円、20万円といった契約した金額が、回復するまで(または保険期間満了まで)受け取れます。

・所得補償保険
就業不能保険と似ていますが、比較的短い期間の就業不能状態を補償する商品が多いです。

特に自営業やフリーランスの方は、会社員のような傷病手当金がないため、民間の就業不能保険で備えることの重要性が高まります。

亡くなったときの保障

万が一、一家の働き手が亡くなってしまった場合、遺された家族の生活を支えるための保障です。

社会保険(遺族年金) 生命保険(死亡保険)
・遺族年金
亡くなった方によって生計を維持されていた遺族(子のある配偶者や子など)に、「遺族基礎年金」や「遺族厚生年金」が支給されます。

(例:子1人の配偶者が受け取る遺族基礎年金は、年間約102万円 ※令和6年度)

・死亡保険金
契約時に定めた保険金額(例:1,000万円、3,000万円など)が、指定された受取人(配偶者や子など)に一括または分割で支払われます。

葬儀費用やお墓の費用、残された家族の当面の生活費、子どもの教育資金など、まとまった資金を準備できます。

遺族年金は遺された家族の生活の基盤となりますが、それだけで以前と同じ生活水準を維持するのは難しい場合も少なくありません。生命保険は、遺族年金だけでは不足する分を補い、家族が望むライフプランを実現するための資金となります。

保険料の決まり方と支払い方法

毎月支払う保険料がどのように決まるのかも、両者で大きく異なります。

社会保険料の計算方法

社会保険料は、個人のリスクではなく、主に収入に基づいて計算されます。具体的には、毎月の給与や賞与を一定の区切りで分けた「標準報酬月額」や「標準賞与額」に、定められた保険料率を掛けて算出されます。つまり、収入が高い人ほど保険料も高くなる仕組みです。

また、会社員の場合、健康保険料や厚生年金保険料は会社と本人が半分ずつ負担(労使折半)してくれるという大きなメリットがあります。

生命保険料の計算方法

生命保険料は、大勢の人の加入データ(死亡率や入院率など)を基にした「予定死亡率」「予定利率」「予定事業費率」という3つの要素で決まりますが、個人の保険料は以下の要素によって変わります。

  • 年齢:若いほど保険料は安くなります。
  • 性別:一般的に男性の方が女性より保険料は高くなる傾向があります。
  • 健康状態:健康な人ほど保険料が安くなる「健康割引」などがあります。
  • 保障内容・保険金額:保障を手厚くするほど、保険金額を高くするほど保険料は上がります。

このように、個人のリスクの高さに応じて保険料が算出されるのが特徴です。支払い方法も月払、半年払、年払などから選べます。

税金面での違いも重要!控除について

支払った保険料は、年末調整や確定申告で所得から差し引くことができ、税金の負担を軽くする効果があります。この「控除」の仕組みも、社会保険と生命保険で違いがあります。

社会保険料控除

ご自身が支払った健康保険料、国民年金保険料、介護保険料などの社会保険料は、その年に支払った全額が所得控除の対象となります。例えば、年間に50万円の社会保険料を支払った場合、課税対象となる所得からまるまる50万円を差し引くことができます。所得税率が20%の方なら、約10万円の節税につながる非常に効果の大きい控除です。

生命保険料控除

生命保険料も所得控除の対象になりますが、社会保険料のように全額ではなく、上限額が定められています。控除は「一般生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」の3つの区分に分かれており、それぞれで計算した控除額を合計します(2012年1月1日以降の契約の場合)。

年間の支払保険料(新制度) 所得税の控除額
20,000円以下 支払保険料の全額
20,001円~40,000円 支払保険料 × 1/2 + 10,000円
40,001円~80,000円 支払保険料 × 1/4 + 20,000円
80,001円以上 一律 40,000円

3つの区分を合計した所得税の控除額の上限は12万円、住民税の上限は7万円となります。全額控除の社会保険料と比べると効果は限定的ですが、それでも重要な節税策の一つです。

保険金を受け取ったときの税金

保険金や給付金を受け取ったとき、税金がかかるかどうかも大きなポイントです。

社会保険の給付金は原則非課税

病気やケガで受け取る傷病手当金や高額療養費、失業したときの失業手当、出産育児一時金など、社会保険から受け取る給付金のほとんどは非課税です。これらは生活を保障するための給付金であるため、税金がかからないようになっています。ただし、老後に受け取る老齢年金は「雑所得」として課税対象になります。

生命保険の保険金には税金がかかる場合がある

生命保険から受け取る保険金は、その種類や受け取り方によって税金がかかる場合があります。特に死亡保険金は、「誰が保険料を払っていたか(契約者)」「誰が保険の対象だったか(被保険者)」「誰がお金を受け取るか(受取人)」の関係によって、かかる税金の種類が変わります。

契約者・被保険者・受取人の関係 かかる税金の種類
契約者(夫)・被保険者(夫)・受取人(妻) 相続税
契約者(夫)・被保険者(妻)・受取人(夫) 所得税(一時所得)
契約者(夫)・被保険者(妻)・受取人(子) 贈与税

ただし、死亡保険金を相続税の対象として受け取る場合、「500万円 × 法定相続人の数」という生命保険独自の非課税枠が利用できます。これは預貯金などにはない大きなメリットで、相続対策としても生命保険が活用される理由の一つです。

まとめ

今回は、社会保険と生命保険の違いについて、様々な角度から見てきました。最後にポイントを整理しましょう。

  • 社会保険は、国による強制加入の制度。国民生活の土台を支える最低限の保障。保険料は収入に応じて決まり、支払った保険料は全額が所得控除の対象。
  • 生命保険は、民間保険会社による任意加入の商品。社会保険の上乗せとして、個人のニーズに合わせて備える保障。保険料は個人のリスクに応じて決まり、支払った保険料は一定額まで所得控除の対象。

社会保険は私たちの生活に不可欠なセーフティネットですが、それだけですべてのリスクに万全に対応できるわけではありません。社会保険でどれくらいの保障が受けられるのかを理解した上で、ご自身のライフプランや家族への想いを実現するために、不足する部分を生命保険で計画的に補っていく。この両輪のバランスを考えることが、将来への安心につながる第一歩と言えるでしょう。

参考文献

国税庁 No.1140 生命保険料控除

国税庁 No.1750 死亡保険金を受け取ったとき

日本年金機構 遺族年金

社会保険と生命保険のよくある質問まとめ

Q. そもそも社会保険と生命保険の大きな違いは何ですか?

A. 社会保険は国が運営する公的な保険で、加入が法律で義務付けられています。一方、生命保険は民間の保険会社が提供する私的な保険で、加入は任意です。

Q. 加入は強制ですか?選べますか?

A. 社会保険は、会社員など一定の条件を満たすと加入が義務付けられています(強制加入)。生命保険は、個人の判断で自由に加入・非加入を選べます(任意加入)。

Q. それぞれ何のために加入するのですか?

A. 社会保険は、病気、ケガ、老齢、失業など生活の基本的なリスクに備えるためのものです。生命保険は、死亡保障や貯蓄、特定の病気への備えなど、個人のニーズに合わせて保障を上乗せするために加入します。

Q. 社会保険に入っていれば、生命保険は必要ないですか?

A. 必ずしもそうとは言えません。社会保険は最低限の保障(セーフティネット)であり、個人のライフプランによっては保障が不足する場合があります。生命保険は、その不足分を補う役割を果たします。

Q. 保険料はどのように決まりますか?

A. 社会保険の保険料は主に収入(給与)に基づいて決まります。生命保険の保険料は、年齢、性別、健康状態、保障内容などによって個別に設定されます。

Q. 税金の控除はありますか?

A. はい、どちらもあります。支払った社会保険料は全額が「社会保険料控除」の対象になります。生命保険料は、一定の金額まで「生命保険料控除」として所得から差し引かれます。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

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