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相続税申告書はどこの税務署に提出?基本ルールと迷うケースを解説

2025-04-19
目次

ご家族が亡くなられて、相続の手続きを進めていると、「相続税申告書は、どこの税務署に提出すればいいの?」という疑問が出てきますよね。ご自身の確定申告と同じ税務署でいいのか、それとも別の場所なのか、迷ってしまう方も少なくありません。実は、相続税申告書の提出先は法律で明確に決められていて、どこでも良いわけではないんです。もし間違った場所に提出してしまうと、手続きが遅れたり、ペナルティが発生したりする可能性もあります。この記事では、相続税申告書の正しい提出先や、判断に迷うケースについて、分かりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてくださいね。

相続税申告書の提出先は「亡くなった方」の最後の住所地

相続税申告書の提出先は、「亡くなった方(被相続人)が亡くなった時点での住所地」を管轄する税務署です。これはとても重要なポイントなので、しっかり覚えておきましょう。財産を相続する方(相続人)の住所地を管轄する税務署ではないので、注意してくださいね。

例えば、北海道に住んでいたお父様が亡くなり、相続人である息子さんが東京都在住の場合、相続税申告書を提出するのは、お父様が住んでいた北海道の住所地を管轄する「札幌中税務署」などになります。息子さんが住んでいる東京都の税務署ではありません。

提出先の税務署を調べる方法

「亡くなった方の住所地を管轄する税務署がどこなのか分からない…」という場合は、国税庁のウェブサイトで簡単に調べることができます。郵便番号や住所を入力するだけで、管轄の税務署が表示されるのでとても便利ですよ。

調査方法 国税庁のウェブサイト「国税局・税務署を調べる」から検索
必要な情報 亡くなった方の最後の住所(または郵便番号)

事前に確認しておくと、安心して手続きを進められますね。

申告と納税の期限は10か月以内

相続税の申告と納税には期限があります。「相続の開始があったことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10か月以内」に、申告書の提出と納税の両方を完了させる必要があります。この期限を過ぎてしまうと、本来納めるべき税金の他に「延滞税」や「無申告加算税」といったペナルティが課されてしまうことがあるので、計画的に準備を進めることが大切です。

提出方法は3種類から選べる

相続税申告書の提出方法には、主に3つの選択肢があります。ご自身の状況に合わせて最適な方法を選びましょう。

提出方法 概要と注意点
税務署の窓口へ持参 直接提出する方法です。その場で受付印を押してもらった控えを受け取れるので、提出した証明が残り安心です。開庁時間内に行く必要があります。
郵送 管轄の税務署宛てに郵送する方法です。申告書の控えと切手を貼った返信用封筒を同封すれば、受付印を押した控えを返送してもらえます。申告期限日の通信日付印(消印)有効ですが、ギリギリの場合は郵便局の窓口で手続きするのが確実です。
e-Tax(電子申告) インターネットを利用して申告する方法です。24時間いつでも提出可能で便利ですが、マイナンバーカードやICカードリーダライタなどの事前準備が必要です。

住所地の判断に迷うケースと提出先

亡くなった方の状況によっては、「最後の住所地」がどこなのか判断に迷うことがあります。ここでは、よくある5つのケースとその場合の提出先について解説します。相続税法では、住所を「生活の本拠」としており、住民票の場所と必ずしも一致するわけではありません。

住民票の住所と実際に住んでいた場所が違う場合

住民票を移さずに、別の場所で生活している方もいらっしゃいますよね。この場合、提出先は形式的な住民票の住所ではなく、実際に生活の拠点としていた場所を管轄する税務署になります。「生活の本拠」とは、食事や睡眠など、日常生活の主な拠点となっていた場所を指します。客観的な事実に基づいて判断されるため、公共料金の支払い状況なども参考にされます。

老人ホームで亡くなった場合

ご高齢になり、自宅から老人ホームに移り住んで、そこで亡くなられた場合、基本的にはその老人ホームの所在地を管轄する税務署が提出先となります。生活の拠点が老人ホームに移っていると考えられるためです。ただし、一時的なショートステイなどで、いずれ自宅に戻る予定だった場合は、元の自宅が住所地と判断されることもあります。

単身赴任先で亡くなった場合

単身赴任先で亡くなった場合は、生活の実態によって判断が分かれます。週末や長期休暇には家族のいる自宅に帰っており、生活の基盤が自宅にあると判断されれば、家族が住む自宅の住所地を管轄する税務署が提出先です。一方で、単身赴任が長期間に及び、ほとんど自宅に帰らないような状況であれば、単身赴任先の住所地が生活の本拠とみなされる可能性があります。

自宅が複数あり、行き来していた場合

別荘やセカンドハウスなど、複数の自宅を行き来していた場合は、どちらが主たる生活の本拠であったかを判断する必要があります。滞在日数や生活インフラの状況、地域社会との関わりなど、さまざまな要素から総合的に判断されます。相続税法上、生活の本拠は一つとされているため、よりメインで生活していた方が提出先となります。

海外に居住していて亡くなった場合

亡くなった方が海外に住んでいた場合の提出先は、相続人の状況によって異なります。

  • 相続人が日本国内に住んでいる場合
    この場合は、それぞれの相続人の住所地を管轄する税務署に、各自が申告書を提出します。例えば、アメリカ在住の父が亡くなり、長男が東京、次男が大阪に住んでいる場合、長男は東京の税務署へ、次男は大阪の税務署へ提出することになります。
  • 相続人も海外に住んでいる場合
    相続人も海外在住の場合は、相続人が納税地を定めて、その納税地を管轄する税務署に提出します。例えば、日本国内にある不動産を相続した場合、その不動産の所在地を納税地として定めることが一般的です。

提出先を間違えたらどうなる?

もし相続税申告書の提出先を間違えてしまった場合でも、すぐに不受理となるわけではありません。間違って受け取った税務署から、正しい管轄の税務署へ書類が転送されます。ただし、この転送には時間がかかるため、申告期限に間に合わないリスクが出てきます。
正しい税務署に書類が届いた日が提出日とみなされるため、結果的に期限後申告となり、延滞税や無申告加算税といったペナルティが課される可能性があります。提出先は、必ず事前にしっかりと確認するようにしましょう。万が一間違えてしまったことに気づいた場合は、速やかに提出した税務署と本来の管轄税務署の両方に連絡することをおすすめします。

申告書を提出するときのワンポイントアドバイス

最後に、申告書を提出する際に知っておくと便利なポイントを2つご紹介します。

提出書類は分かりやすくまとめておこう

相続税の申告には、申告書本体のほかに、戸籍謄本や財産の評価に関する資料など、たくさんの添付書類が必要です。これらの書類を整理せずに提出すると、税務署の確認作業に時間がかかったり、問い合わせが増えたりする原因になります。申告書一式と添付書類をそれぞれ分けてクリップやホチキスで留め、何の書類か分かるように付箋や表紙をつけておくと、とても親切でスムーズな処理につながります。

控えには必ず「受付印」をもらおう

相続税申告書を提出したという大切な証拠になるのが、税務署の「受付印(収受日付印)」です。申告書を提出する際は、必ず提出用と同じ内容の「控え」を作成し、持参または郵送して受付印をもらいましょう。

  • 窓口持参の場合:控えを一緒に提出すれば、その場で受付印を押して返却してくれます。
  • 郵送の場合:控えと、切手を貼った返信用封筒を同封しておけば、後日、受付印が押された控えが返送されてきます。

この受付印があることで、金融機関での相続手続きなどがスムーズに進む場合もありますので、忘れずにもらっておきましょう。

納税方法も忘れずに確認を

申告書の提出とあわせて、納税も期限内に行う必要があります。納税方法には以下のようなものがあります。

  • 金融機関または税務署の窓口で現金納付
  • e-Taxを利用した電子納税
  • クレジットカード納付
  • コンビニ納付(納付額30万円以下の場合)

納税は原則として現金一括納付ですが、それが難しい場合には「延納」や「物納」といった制度もあります。これらの制度を利用するには別途申請が必要ですので、もし検討される場合は早めに税務署や税理士に相談してください。

まとめ

今回は、相続税申告書の提出先について解説しました。最後に、大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。

  • 相続税申告書の提出先は、亡くなった方(被相続人)の最後の住所地を管轄する税務署です。
  • 相続人の住所地ではないので、間違えないようにしましょう。
  • 住所地の判断に迷うケース(老人ホーム、海外居住など)では、生活の実態(生活の本拠)がどこにあったかで判断します。
  • 申告と納税の期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
  • 提出先を間違えると期限後申告になるリスクがあるため、国税庁のサイトなどで事前にしっかり確認することが重要です。

相続税の申告は、一生のうちに何度も経験することではないため、戸惑うことも多いかと思います。もし提出先や申告内容で不安な点があれば、管轄の税務署や相続に詳しい税理士などの専門家に相談することをおすすめします。期限内に正しく申告を終えて、安心して次のステップに進んでくださいね。

参考文献

相続税申告書の提出先に関するよくある質問まとめ

Q.相続税申告書は、どの税務署に提出すればよいですか?

A.亡くなった方(被相続人)の最後の住所地を管轄する税務署に提出します。相続人(申告する人)の住所地の税務署ではないので注意が必要です。

Q.提出先の税務署を間違えてしまった場合、どうなりますか?

A.間違った税務署に提出しても正式な提出とは見なされず、正しい税務署へ提出し直す必要があります。提出期限に遅れると加算税などが課される可能性があるため注意してください。

Q.亡くなった人の最後の住所がわからない場合、どうやって調べればよいですか?

A.亡くなった方の「住民票の除票」や「戸籍の附票」を市区町村役場で取得することで、最後の住所地を確認できます。

Q.亡くなった人が海外に住んでいた場合、申告書はどこに提出しますか?

A.相続人の代表者の住所地を管轄する税務署に提出します。相続人全員が海外在住の場合は、納税管理人の住所地を管轄する税務署になります。

Q.管轄の税務署の具体的な場所や連絡先はどうやって調べられますか?

A.国税庁のウェブサイトにある「税務署の所在地などを知りたい方」のページで、亡くなった方の住所地から管轄税務署を検索できます。

Q.相続人が複数いる場合、それぞれが自分の住所地の税務署に提出するのですか?

A.いいえ、相続人が複数いても提出先は1か所です。亡くなった方の最後の住所地を管轄する税務署に、相続人全員の連名で1通の申告書を提出します。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

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