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相続放棄で相続順位が変わる?誰が相続人になるかケース別に解説

2025-03-31
目次

「親が借金を残して亡くなったので相続放棄をしたいけど、そうすると他の親族に迷惑がかかるのかな…?」と不安に思っていませんか?相続放棄をすると、その人は初めから相続人ではなかったことになるため、相続順位が変わり、次の順位の親族に相続権が移ることがあります。知らないうちに借金を背負わせてしまうといったトラブルを防ぐためにも、相続放棄が相続順位にどう影響するのかを正しく理解しておくことがとても大切です。この記事では、相続放棄によって相続順位が変わるのはどんなときか、誰が次に相続人になるのかを、具体的なケースを交えて優しく解説していきますね。

そもそも相続順位ってどう決まるの?

相続放棄の話の前に、まずは誰が相続人になるのか、法律で定められた基本的なルール「法定相続人」の順位についておさらいしましょう。この順番を知っておくことが、相続放棄の影響を理解する第一歩になります。

配偶者は常に相続人

亡くなった方(被相続人)に配偶者(夫または妻)がいる場合、配偶者は常に相続人になります。他の相続人が誰であっても、その立場は変わりません。ただし、法律上の婚姻関係にあることが条件で、内縁関係の場合は相続人にはなれません。

第1順位:子や孫(直系卑属)

配偶者以外の相続人には優先順位があります。最も優先される第1順位は、亡くなった方の「子」です。子が複数いる場合は、全員が同じ第1順位の相続人となります。
もし、子が既に亡くなっている場合は、その子、つまり亡くなった方の「孫」が代わりに相続人になります。これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)と言います。孫も亡くなっている場合は、ひ孫へと権利が移っていきます。

第2順位:親や祖父母(直系尊属)

亡くなった方に子や孫などの直系卑属がいない場合、または全員が相続放棄をした場合に、次の第2順位である「親」が相続人になります。親が既に亡くなっている場合は、「祖父母」が相続人になります。このように、上の世代へさかのぼっていくのが特徴です。

第3順位:兄弟姉妹や甥・姪

第1順位の子や孫、第2順位の親や祖父母もいない、あるいは全員が相続放棄した場合に、ようやく第3順位である「兄弟姉妹」に相続権が回ってきます。
兄弟姉妹が既に亡くなっている場合は、その子である「甥」や「姪」が代襲相続します。ただし、兄弟姉e妹の代襲相続は一代限りで、甥・姪の子どもには相続権は移りません。

法定相続人の順位まとめ
順位 亡くなった方との関係
常に相続人 配偶者
第1順位 子(子が亡くなっている場合は孫、ひ孫…)
第2順位 親(親が亡くなっている場合は祖父母…)
第3順位 兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪)

相続放棄で相続順位が変わるケースを徹底解説!

それでは、本題の「相続放棄で相続順位が変わるケース」について見ていきましょう。誰が相続放棄するかによって、相続権が次に誰へ移るのかが変わってきます。

【ケース1】子が相続放棄をした場合

最も多いのが、第1順位である子が相続放棄をするケースです。例えば、亡くなった親に多額の借金があった場合などが考えられます。
この場合、相続放棄をした子は「初めから相続人ではなかった」とみなされます。子が一人だけでその子が相続放棄をすると、第1順位の相続人がいなくなります。その結果、相続権は第2順位である親(亡くなった方の父母)へと移ります

もし子が複数人いる場合は、少し状況が変わります。例えば子どもが2人いて、そのうち1人だけが相続放棄をしたとします。この場合、相続放棄をしていないもう1人の子が全ての財産(借金も含む)を相続することになり、順位の変動は起こりません。第1順位の相続人が全員相続放棄して初めて、次の順位へと相続権が移るのです。

【ケース2】子も親も相続放棄をした場合

第1順位の子全員が相続放棄をし、次に相続人となった第2順位の親(または祖父母)も全員が相続放棄をしたとします。この場合、第1順位も第2順位も相続人がいなくなるため、相続権は第3順位である兄弟姉妹へと移ります。もし兄弟姉妹が既に亡くなっていれば、その子の甥や姪が相続人になります。
このように、借金などマイナスの財産から逃れるためには、相続権が移った先の親族も順番に相続放棄の手続きをする必要があるのです。

【ケース3】配偶者が相続放棄をした場合

配偶者が相続放棄をした場合は、相続順位そのものが変動するわけではありません。配偶者は「初めから相続人ではなかった」と扱われ、他の相続人(例えば、子)の相続分が増えることになります。例えば、配偶者と子が相続人だった場合、配偶者が相続放棄をすると、子が全ての財産を相続することになります。

相続放棄による相続権の移り変わり
相続放棄した人 次に相続人になる人
子(第1順位)が全員 親・祖父母(第2順位)
子(第1順位)と親・祖父母(第2順位)が全員 兄弟姉e妹(第3順位)
兄弟姉妹(第3順位)が全員 相続人がいなくなる(相続財産清算人の選任へ)

相続放棄と「代襲相続」の違いに注意!

相続の話では「代襲相続」という言葉が出てきて、相続放棄と混同してしまう方もいるかもしれません。この2つは全く違うものなので、しっかり区別しておきましょう。

代襲相続とは?

代襲相続は、本来相続人となるはずだった子や兄弟姉e妹が、相続が始まる前(被相続人が亡くなる前)にすでに亡くなっていた場合に、その人の子ども(孫や甥・姪)が代わりに相続する制度です。

相続放棄では代襲相続は起こらない

ここが重要なポイントです。相続放棄をした人は「初めから相続人でなかった」と扱われます。そのため、例えば親の財産を子が相続放棄した場合、その子の子どもである孫に相続権が移る(代襲相続する)ことはありません
相続放棄をすると相続権は次の「順位」の人に移りますが、代襲相続のように同じ順位の中で下の世代に移ることはない、と覚えておきましょう。

相続放棄はどこまで続く?親族への影響は?

相続放棄をすると決めたら、他の親族への影響を考えることがとても大切です。借金の請求が、ある日突然、何も知らない親戚のもとに届いてしまう、という事態は避けたいですよね。

相続権は甥・姪まで続く可能性がある

前述の通り、相続放棄は連鎖することがあります。第1順位の子から始まり、第2順位の親、そして第3順位の兄弟姉妹へと相続権が移っていきます。もし、兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、甥や姪まで相続権が及ぶ可能性があります。疎遠になっている親戚がいる場合は特に注意が必要です。

次の順位の相続人への連絡は必須!

あなたが相続放棄の手続きをしても、家庭裁判所から次の順位の相続人に「あなたが相続人になりましたよ」という通知が行くことはありません。つまり、あなたが連絡をしない限り、次の相続人は自分が相続人になったことを知らないまま過ごしてしまう可能性があります。
そして、相続放棄ができる期間は原則として「自分が相続人であることを知った時から3ヶ月以内」です。何も知らずにこの期間を過ぎてしまうと、借金を背負わなければならなくなるかもしれません。
このような悲しいトラブルを防ぐためにも、相続放棄をする際は、必ず次の順位の相続人になる可能性のある方へ事前に連絡し、事情を説明するようにしましょう。

相続放棄の手続きと期限

最後に、相続放棄の手続きについて簡単に触れておきます。相続放棄は、口頭で「いりません」と伝えるだけでは成立しません。

3ヶ月の期限(熟慮期間)

相続放棄をするかどうかを決める期間は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」と定められています。この期間を「熟慮期間」と呼びます。この期間を過ぎてしまうと、原則として相続放棄はできなくなってしまうので注意が必要です。

手続きは家庭裁判所で

相続放棄は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄の申述」という手続きを行う必要があります。戸籍謄本などの必要書類を揃えて申述書を提出し、家庭裁判所に受理されることで、法的に相続放棄が認められます。

まとめ

相続放棄をすると、その人は初めから相続人ではなかったことになり、相続順位が変わって次の順位の親族に相続権が移ります。特に借金などのマイナスの財産がある場合、この相続権の移動は親族間で大きな問題に発展しかねません。

大切なポイントをもう一度おさらいします。

  • 第1順位の相続人(子など)が全員相続放棄すると、第2順位(親など)へ相続権が移る。
  • 第2順位も全員が放棄すると、第3順位(兄弟姉e妹など)へ移る。
  • 相続放棄をしても、その人の子が代襲相続することはない。
  • 相続放棄をしたら、必ず次の順位の相続人に連絡することが不可欠。

相続放棄はご自身の権利ですが、他の親族に影響が及ぶ重要な手続きです。もし手続きに不安があったり、誰に連絡すべきか分からなかったりする場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

相続放棄と相続順位に関するよくある質問まとめ

Q.そもそも相続放棄とは何ですか?

A.被相続人(亡くなった方)のプラスの財産もマイナスの財産(借金など)も一切受け継がないための法的な手続きのことです。家庭裁判所への申述が必要です。

Q.相続放棄をすると、相続順位は変わるのですか?

A.はい、変わります。ある順位の相続人全員が相続放棄をすると、その順位の相続人はいなかったことになり、次の順位の人に相続権が移ります。

Q.子供が全員相続放棄した場合、誰が相続人になりますか?

A.第1順位である子供全員が相続放棄すると、第2順位である親や祖父母(直系尊属)が相続人になります。第2順位の人もいなければ、第3順位の兄弟姉妹に移ります。

Q.相続放棄をしたら、その子供(孫)が代わりに相続できますか?

A.いいえ、できません。相続放棄をした人は初めから相続人ではなかったと扱われるため、その人の子供が代わりに相続する「代襲相続」は発生しません。

Q.兄弟姉妹が相続放棄した場合、その子供(甥・姪)に相続権は移りますか?

A.いいえ、移りません。兄弟姉妹が相続放棄した場合も代襲相続は起こらないため、その子供である甥や姪が相続人になることはありません。

Q.次の順位の人に相続権が移ったことを知らせる義務はありますか?

A.法律上の義務はありません。しかし、借金などの負の遺産がある場合、知らせないと後のトラブルに発展する可能性があるため、連絡をしてあげるのが親切です。

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