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寄付した金額は相続財産?相続税が非課税になる特例を徹底解説!

2025-03-28
目次

ご家族が亡くなられて相続が発生したとき、「故人の遺志を継いで、社会に貢献できる団体に財産の一部を寄付したい」と考える方もいらっしゃるかもしれませんね。また、相続税の負担を少しでも軽くしたいという思いから、寄付を検討することもあるでしょう。
でも、「寄付したお金って、そもそも相続財産として扱われるの?」「相続税はかかるの?」といった疑問が浮かびますよね。
この記事では、相続財産を寄付した場合の税金の扱いについて、専門的な言葉をできるだけ使わずに、わかりやすく解説していきます。

寄付した金額は相続財産に含まれる?

結論から言うと、相続人が受け取った財産から寄付を行った場合、その寄付した金額も一度は相続財産として扱われます。ですが、ご安心ください。ある一定の要件を満たすことで、その寄付した財産は相続税の課税対象から外れる(非課税になる)という特別なルールがあるんです。これを「寄付金控除の特例」と呼んだりします。つまり、最終的には「寄付した分は相続財産に含めずに相続税を計算して良いですよ」ということになるんですね。この特例を上手に活用することで、社会貢献をしながら相続税の負担を軽減できる可能性があります。

相続税が非課税になる「寄付金控除の特例」とは

相続した財産から寄付をした場合に使えるこの特別なルールのことを、一般的に「寄付金控除の特例」と呼びます。正確に言うと、寄付した財産の価額を、相続税を計算する元となる金額(課税価格)に含めなくてよいという制度です。これにより、課税対象となる相続財産の総額が少なくなるので、結果として納める相続税額も減る、という仕組みになっています。ただし、この特例を受けるためには、「誰が、いつまでに、どこへ寄付するのか」といった細かいルールが決められているので、一つひとつ確認していくことが大切ですよ。

「遺言による寄付」と「相続人による寄付」の違い

寄付には大きく分けて2つのパターンがあります。一つは、亡くなった方(被相続人)が遺言書で「私の財産の一部を〇〇法人に寄付してください」と意思表示をしていた「遺言による寄付(遺贈寄付)」です。もう一つは、相続が始まった後に、財産を受け取った相続人の方がご自身の意思で「この中から寄付をしよう」と決めて行う「相続人による寄付」です。今回ご説明している相続税の非課税特例が適用されるのは、原則として後者の「相続人による寄付」の場合に限られます。遺言による寄付は、亡くなった方自身の行為とみなされるため、この特例の対象外となってしまう点には注意が必要ですね。

寄付金が相続税の非課税対象になるための3つの要件

相続財産からの寄付で非課税の特例を受けるには、3つの大切な要件をすべて満たす必要があります。どれか一つでも抜けてしまうと、残念ながら特例は受けられませんので、ここでしっかり確認しておきましょう。

要件1:相続または遺贈で取得した財産からの寄付であること

寄付する財産は、亡くなった方から相続や遺贈によって受け継いだ財産そのものでなければなりません。ここがとても重要なポイントです。例えば、相続で受け取った土地を売却して手に入れたお金から寄付をしたり、相続した預金とは別の、ご自身がもともと持っていた預金から寄付をしたりした場合は、この特例の対象にはなりません。「相続した財産を、そのままの形で寄付する」ということを覚えておいてくださいね。

要件2:相続税の申告期限までに寄付をすること

寄付を実行するタイミングも決められています。相続税の申告期限までに寄付を完了させなければなりません。相続税の申告期限は、「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」です。この期限を1日でも過ぎてから寄付をしても、非課税の特例は適用されなくなってしまいます。相続が始まると、いろいろな手続きで慌ただしくなりがちですが、寄付を考えている場合は、この10ヶ月という期限をしっかり意識して、早めに手続きを進めることが大切です。

要件3:国や特定の法人など、決められた先に寄付をすること

寄付先も、どこでも良いというわけではありません。この特例の対象となるのは、国や地方公共団体、特定の公益法人など、社会への貢献度が高いと国に認められている団体に限られます。どのような団体が対象になるのか、次の見出しで具体的に見ていきましょう。

非課税の対象となる寄付先

せっかく社会貢献のために寄付をしても、寄付先が特例の対象外だったら、税金の面ではメリットを受けられません。国税庁によって定められている、主な対象団体は以下の通りです。

対象となる団体の具体例

具体的には、以下のような団体への寄付が非課税の対象となります。応援したい団体がこの中に含まれているか、確認してみてくださいね。

寄付先の種類 具体例
国・地方公共団体 国、都道府県、市区町村(いわゆる「ふるさと納税」もこれに含まれます)
特定の公益法人 独立行政法人、公益社団法人・財団法人(日本赤十字社など)、社会福祉法人、学校法人など
認定NPO法人 都道府県や指定都市から認定を受けた特定非営利活動法人

これらの団体は、教育や科学の振興、社会福祉への貢献など、公益を目的として活動していることが特徴です。

対象とならない団体の例

一方で、残念ながら以下のような団体への寄付は、相続税の非課税特例の対象にはなりません。

  • 認定を受けていないNPO法人
  • 一般社団法人・一般財団法人
  • 宗教法人(お世話になったお寺や神社など)
  • 町内会や自治会、同窓会など

故人が大切にしていたお寺や、個人的に応援している活動団体へ寄付したいというお気持ちはとても尊いものですが、税金の特例を受けるためには、その団体が法律上の対象となっているかどうかを事前にホームページなどで確認することがとても重要です。

寄付をした場合の手続きと必要書類

この非課税特例は、自動的に適用されるわけではありません。特例を受けるためには、相続税の申告書を税務署に提出するという手続きが必要です。たとえ寄付をしなかった場合に相続税がかからない(基礎控除額以下になる)ようなケースでも、この特例を使って課税価格を計算したい場合は、申告が必須となりますのでご注意ください。

相続税申告書への記載

相続税の申告書の中に、寄付した財産について記載する欄があります(第14表など)。そこに、寄付した財産の種類や価額、寄付先の名称などを正確に記入します。この書類に「特例の適用を受けます」と記載して提出することで、税務署にその意思を伝えることになります。

申告に必要な添付書類

申告書に加えて、実際に寄付をしたことを証明するための書類を添付する必要があります。寄付先の団体から発行してもらう、主に以下の内容が記載された書類です。

  • 寄付を受けた旨の記載
  • 寄付が行われた年月日
  • 寄付した財産の内容(「現金100万円」など)と、その価額
  • 寄付された財産の使い道

一般的には「寄付金受領証明書」や「領収書」といった名前の書類ですね。この証明書がないと特例は受けられませんので、寄付をしたら必ず発行してもらい、申告まで大切に保管しておきましょう。

寄付する際の注意点

相続財産からの寄付は、社会貢献にもつながる有意義な行為ですが、いくつか知っておいていただきたい注意点があります。後から「こんなはずじゃなかった…」とならないように、事前に確認しておきましょう。

不動産や株式の寄付は「みなし譲渡所得税」に注意

現金ではなく、土地や建物、株式といった資産を「法人」に寄付する場合には、特に注意が必要です。もし、その資産を昔取得した時よりも価値が上がっている(含み益がある)場合、寄付した時点でその利益が確定したとみなされて、所得税(みなし譲渡所得税)が課されることがあります。相続税は非課税になっても、別で思わぬ所得税がかかってしまう可能性がありますので、不動産などの資産を寄付する場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続税対策としての効果は限定的?

この特例は、あくまで「寄付した分」が非課税になる制度です。つまり、手元に残る財産を減らさずに相続税だけを安くする方法ではありません。1,000万円寄付すれば、その1,000万円分は課税対象から外れますが、手元の財産も1,000万円減ることになります。純粋な節税目的というよりは、「社会に役立ててほしい」という気持ちが第一にあって、その結果として税金の負担も少し軽くなる、と考えるのが良いでしょう。

寄付によって親族が利益を受けると適用除外に

寄付をしたご本人やそのご親族が、寄付先の法人を実質的に支配していたり、その寄付によって特別な利益を受けたりするような場合は、税逃れとみなされて特例が適用されないことがあります。例えば、寄付をした法人が運営している施設を、親族が通常よりも格安で利用できる、といったケースがこれにあたります。

まとめ

今回は、「寄付した金額は相続財産になるのか?」というテーマについて、非課税になる特例を中心にご紹介しました。最後に、大切なポイントをもう一度おさらいしておきましょう。

ポイント 内   容
基本的な考え方 相続財産から寄付した場合、一定の要件を満たせばその寄付分は相続税の課税対象から外れる(非課税になる)。
主な3つの要件 ①相続した財産そのものを、②相続税の申告期限(10ヶ月)までに、③国や特定の公益法人などに寄付すること。
誰の意思か 原則として相続人が自らの意思で行う寄付が対象。遺言による寄付は対象外。
手続き 特例を受けるには、必ず相続税の申告が必要。寄付の証明書も忘れずに添付する。

相続財産からの寄付は、故人やご自身の想いを社会に役立てるとても素晴らしい方法です。ただ、税金の特例を受けるには、今回ご説明したように少し複雑なルールがあります。もしご自身での判断に迷ったり、手続きに不安を感じたりした場合は、税理士などの専門家に相談しながら、安心して手続きを進めてくださいね。

参考文献

国税庁 No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき

国税庁 No.4108 相続税がかからない財産

寄付と相続財産のよくある質問まとめ

Q.生前に寄付したお金は、相続財産に含まれますか?

A.いいえ、原則として含まれません。生前に故人の財産から離れているため、相続の対象外となります。

Q.遺言によって寄付されたお金は、相続財産になりますか?

A.はい、一度故人の相続財産として計上されます。その上で、遺言に従って指定の団体へ寄付(遺贈)されます。

Q.寄付をすると相続税は安くなりますか?

A.はい、安くなる場合があります。生前寄付で財産を減らす方法や、相続財産から特定の団体へ寄付することで相続税が非課税になる特例制度を利用する方法があります。

Q.相続人が相続した財産から寄付した場合、相続税はどうなりますか?

A.相続税の申告期限までに国や認定NPO法人などに寄付した場合、その寄付した財産は相続税の課税対象から外れる特例があります。

Q.生前の寄付が相続財産とみなされないためには、何に注意すべきですか?

A.寄付が確実に行われたことを証明できる客観的な証拠(領収書や振込明細など)を保管しておくことが重要です。

Q.相続財産から寄付する場合、どんな団体への寄付なら相続税が非課税になりますか?

A.国や地方公共団体、特定の公益社団法人・財団法人、認定NPO法人など、法律で定められた団体への寄付が対象となります。

事務所概要
社名
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