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認知症で成年後見人を立てる費用は誰が負担?申立てから報酬まで解説

2025-03-21
目次

ご家族が認知症になり、財産管理や契約手続きが難しくなったとき、成年後見制度の利用を考える方は多いでしょう。しかし、同時に「費用は一体いくらかかるの?」「その費用は誰が払うの?」という不安も大きいのではないでしょうか。成年後見制度を利用するには、申立て時の初期費用と、制度を利用し続けるための継続的な費用がかかります。この記事では、認知症で成年後見人を立てる場合の費用について、誰が負担するのかという疑問を中心に、具体的な金額や内訳、費用が払えないときの対処法まで、分かりやすく解説していきます。

成年後見制度でかかる費用の種類と負担者

成年後見制度を利用する際にかかる費用は、大きく分けて2種類あります。それは、制度を開始するための「申立て費用」と、制度が続いている間ずっと発生する「後見人への報酬」です。そして、この2つの費用は、負担する人が異なります。まずは全体像を把握しましょう。

申立てにかかる「初期費用」

成年後見制度を利用するためには、まず家庭裁判所に「成年後見開始の申立て」を行う必要があります。この手続きにかかる費用が「申立て費用」です。収入印紙代や郵便切手代、診断書の作成費用などが含まれ、手続きを自分で行うか、専門家に依頼するかで金額が変わってきます。この申立て費用は、原則として申立てを行った人(申立人)が負担します。

制度利用中に発生する「継続的な費用(後見人への報酬)」

無事に成年後見人が選任され、制度の利用が始まると、後見人の仕事に対して報酬を支払う必要があります。この報酬は、後見人がいる限り、つまりご本人が亡くなるまで発生し続ける費用です。この後見人への報酬は、ご本人の財産を守るための制度であるため、原則としてご本人(被後見人)の財産から支払われます。

【具体的にいくら?】申立てにかかる初期費用の内訳

それでは、申立て時にかかる初期費用には、具体的にどのようなものがあり、いくらくらいかかるのでしょうか。ご自身で手続きを行う場合、合計で1万円~2万円程度、医師による鑑定が必要になるとさらに5万円~10万円程度が追加でかかります。

家庭裁判所に支払う費用

家庭裁判所での手続きに直接必要となる費用です。収入印紙や郵便切手で納めます。

費用の種類 金額の目安
申立手数料 800円(収入印紙)
後見登記手数料 2,600円(収入印紙)
連絡用の郵便切手 3,000円~5,000円程度

※郵便切手の金額は、申立てをする家庭裁判所によって異なりますので、事前に確認が必要です。

書類準備にかかる費用

申立てには、ご本人の状況を証明するための様々な書類が必要です。これらの書類の取得にも費用がかかります。

書類の種類 金額の目安
医師の診断書 5,000円~10,000円程度
ご本人等の戸籍謄本・住民票 1通あたり300円~450円程度
登記されていないことの証明書 1通300円
不動産の登記事項証明書など 財産に応じて数百円~

【場合による】鑑定費用

申立ての際に提出する診断書だけではご本人の判断能力の程度を判断するのが難しい場合に、家庭裁判所が医師に鑑定を依頼することがあります。鑑定が行われる場合、その費用として5万円から10万円程度が別途必要になります。鑑定が必要かどうかは裁判所が判断しますが、全てのケースで必要となるわけではありません。

専門家(弁護士・司法書士)に依頼した場合の費用

成年後見の申立て手続きは複雑で、必要書類も多岐にわたるため、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することもできます。専門家に依頼した場合、上記の実費に加えて、報酬が発生します。

報酬額は事務所によって異なりますが、目安としては10万円から20万円程度です。

【月々の支払いは?】成年後見人への報酬

成年後見制度が開始されると、ご本人が亡くなるまで後見人への報酬が発生します。この報酬は、後見人が家庭裁判所に「報酬付与の申立て」を行い、裁判所が決定した金額を、ご本人の財産から支払うことになります。

報酬額はどうやって決まる?

後見人への報酬額は、家庭裁判所がご本人の財産額に応じて決定します。明確な基準はありませんが、東京家庭裁判所が示している目安が参考になります。

管理財産額 基本報酬の月額目安
1,000万円未満 2万円
1,000万円以上5,000万円未満 3万円~4万円
5,000万円以上 5万円~6万円

さらに、不動産の売却や遺産分割協議など、特別な業務を行った場合には、基本報酬に加えて「付加報酬」が上乗せされることもあります。

親族が後見人になる場合は報酬なし?

ご家族やご親族が成年後見人になることも可能です。その場合、家庭裁判所に報酬付与の申立てをしなければ、報酬は発生しません。親族が後見人になるケースでは、無報酬で引き受けることも多いようです。ただし、財産管理の責任は重く、家庭裁判所への定期的な報告義務もあるため、負担は決して軽くありません。そのため、あえて報酬付与の申立てを行い、正当な報酬を受け取ることもできます。

成年後見監督人がつくと追加費用が発生

親族が後見人になった場合など、家庭裁判所が必要と判断したときには、後見人の業務を監督する「成年後見監督人」が選任されることがあります。成年後見監督人には弁護士などの専門家が就任することが多く、その場合、後見人への報酬とは別に監督人への報酬も発生します。監督人への報酬の目安は、月額1万円から3万円程度です。

費用の負担者は誰?原則と例外を整理

ここで、費用の負担者について改めて整理しましょう。「誰が払うのか」は、費用の種類によって異なります。

申立て費用は「申立人」が負担するのが原則

家庭裁判所への申立てにかかる費用(印紙代、切手代、診断書代など)は、原則として、申立てを行った人(申立人)が負担します。例えば、ご本人の長男が申立人となった場合は、長男がこれらの費用を支払うことになります。

後見人への報酬は「本人(被後見人)」の財産から支払う

制度が始まった後に発生する成年後見人や成年後見監督人への報酬は、支援を受けるご本人の財産から支払われます。これは、成年後見制度がご本人の財産と権利を守るための制度だからです。申立人や他の家族が負担する必要はありません。

費用が払えない場合の対処法

「申立て費用を払うのが難しい」「本人の財産が少なくて報酬が払えない」といった経済的な理由で制度の利用をためらう方もいらっしゃるかもしれません。そのような場合には、公的な助成制度を利用できる可能性があります。

市区町村の「成年後見制度利用支援事業」

多くの市区町村では、経済的に困窮している方のために「成年後見制度利用支援事業」という制度を設けています。この制度を利用すると、申立て費用や後見人への報酬の一部または全部を助成してもらえます。対象となる方の要件(収入や資産など)や助成内容は自治体によって異なりますので、まずはお住まいの市区町村の役所(福祉課など)に問い合わせてみましょう。

法テラスの費用立替制度

法テラス(日本司法支援センター)では、経済的に余裕のない方のために、無料の法律相談や、弁護士・司法書士への費用の立替制度を行っています。申立てを専門家に依頼したいけれど費用が心配な場合に利用を検討できます。ただし、これは助成ではなく「立替え」なので、原則として分割で返済する必要があります。利用には収入などの条件がありますので、詳しくは法テラスにご相談ください。

まとめ

認知症の方のために成年後見人を立てる際の費用について、誰が負担するのかを中心に解説しました。

・申立てにかかる初期費用は、原則「申立人」が負担します。
・制度開始後の後見人への報酬は、原則「本人」の財産から支払われます。
・初期費用は数万円、報酬は月額2万円~6万円が目安です。
・費用が払えない場合は、市区町村や法テラスの支援制度を利用できる可能性があります。

成年後見制度は、ご本人とご家族の安心を守るための大切な制度です。費用のことで不安を感じたら、まずは市区町村の相談窓口や地域包括支援センター、専門家などに相談してみることをお勧めします。

参考文献

成年後見人の費用に関するよくある質問まとめ

Q.成年後見人の費用は、最終的に誰が負担するのですか?

A.成年後見人の費用は、原則として後見を受けられるご本人(被後見人)の財産から支払われます。親族が負担する義務はありません。

Q.成年後見人にかかる費用には、どのような種類がありますか?

A.大きく分けて2種類あります。一つは、家庭裁判所への「申立て費用」。もう一つは、後見人が選任された後に支払う「後見人への報酬」です。

Q.申立てにかかる費用の相場はいくらくらいですか?

A.収入印紙や切手代などで約1万円程度です。ただし、医師の診断書作成費用や、場合によっては鑑定費用(5万~10万円程度)が別途必要になることがあります。

Q.後見人への報酬はいくらくらいですか?誰が決めるのですか?

A.報酬額は、家庭裁判所がご本人の財産額や後見人の仕事内容を考慮して決定します。目安として、管理財産額に応じて月額2万円~6万円程度が一般的です。

Q.本人の財産が少なく、費用が払えない場合はどうなりますか?

A.自治体によっては、申立て費用や後見人への報酬を助成する制度があります。お住まいの市区町村の役所や地域包括支援センターに相談してみてください。

Q.親族が後見人になった場合でも、報酬は発生しますか?

A.親族が後見人になった場合、報酬を受け取らないケースも多いです。しかし、家庭裁判所に報酬付与の申立てを行い、許可されれば報酬を受け取ることも可能です。

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