「相続」という言葉を聞くと、少し難しくて自分には関係ないかな?と感じるかもしれませんね。でも、実は相続は誰にでも起こりうる身近な出来事なんです。そして、準備が不足していると、大切な家族が「争族」とも呼ばれるトラブルに巻き込まれてしまうことも…。そんな悲しい事態を防ぐために、今とても注目されているのが相続診断士という資格です。この記事では、相続診断士がどんな役割を担うのか、資格の魅力や試験について、わかりやすくお話ししていきますね。
相続診断士ってどんな資格?その役割をわかりやすく解説
相続診断士は、一言でいうと「笑顔相続の道先案内人」です。相続に関する幅広い知識を持ち、一般の方が抱える相続の不安や疑問に寄り添い、問題点を整理してくれる専門家です。相続が始まる前、つまり生前の元気なうちから相談に乗り、円満な相続を迎えられるようお手伝いをするのが主な役割なんですよ。
相続の専門家への「橋渡し役」
相続の手続きは、遺産分割協議、税金の申告、不動産の名義変更など、とても複雑です。そして、それぞれの分野で専門家が異なります。例えば、相続税のことは税理士、法律的な争いごとは弁護士、不動産登記は司法書士、といった具合です。
「誰に、何を相談したらいいのかわからない…」という方がほとんどの中、相続診断士はまず相談者のお話をじっくりと伺い、現状を整理します。そして、「あなたの場合、まずは税理士さんに相談するのが良さそうですね」というように、必要な専門家へとスムーズにつないでくれる、まさに「橋渡し役」なんです。相続診断士自身が法律行為や税務申告を行うことはありませんが、中立的な立場で相談者に寄り添い、最適な専門家への道を示してくれます。
なぜ今、相続診断士が必要とされているの?
現代の日本では、高齢化が進み、毎年多くの方が亡くなる「大相続時代」を迎えています。国税庁の統計によると、2022年に亡くなった方は約157万人で、そのうち相続税の課税対象となった被相続人(亡くなった方)の数は約15万人でした。これは全体の約9.6%にあたり、およそ10人に1人が相続税の対象となっている計算です。
また、家庭裁判所のデータを見ると、遺産分割で揉めてしまうケースの約75%が、遺産総額5,000万円以下のご家庭で起きているんです。つまり、相続は「お金持ちだけの問題」ではなく、誰の家庭でも起こりうる身近な課題だからこそ、気軽に相談できる相続診断士の存在がますます重要になっているんですね。
相続診断士は国家資格?
相続診断士は、国家資格ではなく、一般社団法人 相続診断協会が認定する民間資格です。しかし、民間資格だからといって価値が低いわけではありません。この資格を持っているということは、相続に関する民法や税法などの法律知識を体系的に学んだ証になります。金融機関や不動産会社、保険会社など、お客様のお金や資産に関わるお仕事の方が取得することで、お客様からの信頼度がぐっと高まり、より質の高いサービスを提供できるようになります。
相続診断士の資格を取得するメリット
相続診断士の資格を取得すると、仕事の幅が広がったり、お客様からの信頼を得やすくなったりと、たくさんのメリットがあります。また、ご自身の家族にとっても役立つ知識が身につきますよ。
金融・保険業界でのキャリアアップ
生命保険は、相続対策として非常に有効な手段の一つです。例えば、生命保険金には「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があります。相続診断士の知識があれば、こうした制度を活用し、お客様の相続税負担を軽減するための具体的な保険プランを提案できるようになります。お客様一人ひとりの家族構成や資産状況に合わせた、より付加価値の高いコンサルティングが可能になり、キャリアアップにつながります。
不動産業界での信頼性向上
相続財産の中で、不動産が占める割合は非常に大きいことが多いです。相続が発生した際に、「この土地はどうやって分けたらいいの?」「実家を売却した方がいい?」といったご相談は後を絶ちません。相続診断士の資格があれば、相続税の評価額を下げる効果が期待できる「小規模宅地等の特例」などの専門知識を活かして、お客様に有益なアドバイスができます。相続を見据えた不動産の購入や売却の提案ができることで、お客様からの信頼も厚くなるでしょう。
自身の相続や家族のための知識習得
この資格で得られる知識は、仕事だけでなく、ご自身の人生にも直接役立ちます。自分の親の相続や、将来の自分の相続について考えるきっかけになりますし、エンディングノートの書き方や遺言書の重要性も学ぶことができます。大切な家族が相続で揉めることのないよう、元気なうちから準備を進めるための正しい知識は、何物にも代えがたい財産になりますね。
相続診断士の資格試験について
「なんだか難しそう…」と感じるかもしれませんが、試験の概要を知れば、きっと挑戦しやすくなりますよ。受験資格は特にないので、どなたでもチャレンジできます。
試験の形式と合格基準
試験は、パソコンを使って受験するCBT(Computer Based Testing)方式で行われます。全国にあるテストセンターで、自分の都合の良い日時を選んで受験できるのが嬉しいポイントです。試験の詳しい内容は以下の表にまとめました。
試験時間 | 60分 |
問題数 | 60問 |
出題形式 | 多肢選択式(○✕、三肢択一、穴埋め方式) |
合格基準 | 100点満点中70点以上 |
合格率は公表されていませんが、公式テキストの内容をしっかり学習すれば、十分に合格が目指せるレベルだと言われています。
出題範囲と学習方法
試験は、相続に関する幅広い分野から出題されます。主な出題範囲は以下の通りです。
- コンプライアンス(法令遵守)
- 民法(相続編)
- 相続税・贈与税
- 法定相続分や基礎控除額の計算
- 小規模宅地等の特例について
学習は、受験を申し込むと送られてくる公式テキストと、約5時間の講義動画が中心になります。法律や税金に馴染みがない方でも、動画で丁寧に解説してくれるので、安心して学習を進められますよ。
受験料と更新について
相続診断士の資格は、一度取得したらずっと有効というわけではなく、2年ごとの更新が必要です。これは、毎年のように変わる税制や法律に対応できるよう、知識を常に最新の状態に保つためです。費用については以下の通りです。
初回受験料(個人) | 38,500円(税込) ※テキスト代、講義動画、受験料、資格認定料込み |
資格有効期間 | 2年間 |
資格更新料 | 16,500円(税込) ※2年ごと |
もし不合格だった場合の再受験料は16,500円(税込)です。
上級相続診断士との違いは?
相続診断士には、さらに専門性を高めた「上級相続診断士」という上位資格があります。基本的な役割は同じですが、より複雑な案件に対応できる知識と実務能力が求められます。
知識の深さと実務能力
上級相続診断士は、基本的な相続の知識に加え、事業承継対策や自社株の評価、複雑な遺産分割の事例など、より実務的で専門的な内容を学びます。講義動画も約10時間と、通常の相続診断士の倍のボリュームになります。より深く相続について学び、プロフェッショナルとして活動したい方が目指す資格です。
試験内容と費用の比較
試験内容や費用にも違いがあります。合格後は協会の月会費が必要になるなど、資格を維持するためのコストも変わってきます。
項目 相続診断士 上級相続診断士
試験時間 60分 90分
初回受験料 38,500円(税込) 88,000円(税込)
合格後の登録料 不要 11,000円(税込)
月会費 なし 1,018円(税込)
相続診断士の資格はこんな人におすすめ
相続診断士の資格は、特定の職業の方だけでなく、様々な立場の方におすすめできる魅力的な資格です。
顧客と深く関わる仕事をしている方
保険営業、不動産営業、ファイナンシャルプランナー、金融機関の職員など、お客様のライフプランや資産に深く関わるお仕事をしている方には特におすすめです。相続という切り口からお客様の本当のニーズを引き出し、信頼関係を築くための強力な武器になります。
税理士や司法書士を目指している方
将来、税理士や弁護士、司法書士といった士業の専門家を目指している方にとっても、相続分野の全体像を体系的に学ぶための第一歩として非常に有益です。実務に出る前に、相続の基礎知識を固めておくことができます。
ご自身の相続に備えたい方
「専門家として働くわけではないけれど、自分の家族が相続で困らないようにしたい」と考えている一般の方にも、この資格の学習はとてもおすすめです。相続の基本的なルールや手続きの流れを知っておくだけで、いざという時に慌てず、冷静に対応できるようになりますよ。
まとめ
相続診断士は、相続で悩む人々と専門家の架け橋となり、トラブルを未然に防ぐ「笑顔相続の道先案内人」です。複雑でデリケートな相続問題に寄り添い、多くのご家族を笑顔に導く、とても社会的意義のあるやりがいのある資格だということがお分かりいただけたでしょうか。ご自身のキャリアアップのため、そして大切なご家族のために、相続診断士という選択肢を考えてみてはいかがでしょうか。
参考文献
相続診断士に関するよくある質問まとめ
Q.相続診断士とはどんな資格ですか?
A.相続に関する広範な知識を持ち、お客様の相続に関する問題点を整理し、専門家(弁護士、税理士など)への橋渡し役を担う民間の資格です。「争族」を未然に防ぎ、円満な相続を実現するためのサポートを行います。
Q.相続診断士の資格取得は難しいですか?難易度は?
A.相続診断士の資格試験は、合格率が比較的高く、難易度はそれほど高くないとされています。基本的な相続の知識をしっかり学習すれば、独学でも十分に合格を目指せる資格です。
Q.相続診断士の資格を取得するメリットは何ですか?
A.相続に関する専門知識が身につき、お客様への提案の幅が広がります。特に金融、保険、不動産業界などで働く方にとっては、顧客からの信頼度向上やキャリアアップにつながる大きなメリットがあります。
Q.相続診断士はどんな仕事ができますか?
A.相続診断士の資格だけで独立開業するというよりは、現在の仕事に付加価値をつける形で活かされることが多いです。例えば、保険の営業担当者が相続対策の提案をしたり、不動産業者が相続不動産のコンサルティングを行ったりします。
Q.相続診断士とファイナンシャルプランナー(FP)の違いは何ですか?
A.ファイナンシャルプランナー(FP)がライフプラン全般のお金に関するアドバイスを行うのに対し、相続診断士は「相続」の分野に特化しています。相続の初期相談や問題点の洗い出しに強みを持つのが相続診断士です。
Q.相続診断士の資格は意味がないと言われることがあるのはなぜですか?
A.相続診断士は国家資格ではなく民間資格であり、税務申告や法的な手続きといった独占業務がないため、「意味がない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、相続の初期相談窓口として顧客に寄り添い、専門家へ繋ぐ重要な役割を担う価値ある資格です。