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相続税申告で損しない!動産の評価方法を種類別に徹底解説

2025-03-10
目次

ご家族が亡くなられた後、遺された財産には相続税がかかることがあります。不動産や預貯金だけでなく、故人が大切にされていた家具、自動車、趣味で集めた美術品などの「動産」も、実は相続税の課税対象になるんです。しかし、動産の価値をどのように評価すれば良いのか、迷われる方も多いのではないでしょうか。動産の評価方法は種類によって異なり、正しく評価しないと、本来より高い税金を納めてしまう可能性も。この記事では、相続税申告における動産の評価方法について、種類別にわかりやすく解説していきます。

動産とは?相続税の対象になるもの、ならないもの

まずは、「動産」とは具体的に何を指すのか、そしてどのようなものが相続税の対象になるのかをしっかり理解しておきましょう。

動産の定義

法律上、財産は「不動産」と「動産」に分けられます。土地や建物といった動かせないものが不動産で、それ以外の財産はすべて「動産」に分類されます。つまり、私たちが日常的に使っている家具や家電、衣類、自動車、貴金属、さらにはペットなども動産に含まれるのです。

相続税の対象となる動産の種類

相続税の申告では、財産的な価値があるすべての動産が課税対象となります。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

  • 家庭用財産:テレビ、冷蔵庫、パソコンなどの家電製品、タンス、ソファなどの家具、衣類、食器など
  • 自動車・バイク:故人が所有していた乗用車やバイク
  • 貴金属・宝石:指輪、ネックレス、金地金、宝石類
  • 美術品・骨とう品:絵画、掛け軸、陶磁器、彫刻など
  • 事業用資産:事業で使っていた機械、器具備品、商品在庫など
  • その他:ゴルフ会員権、船舶、ペット(牛馬など)

これらはほんの一例です。故人が所有していたもので、金銭的な価値が見込めるものは基本的にすべて申告が必要だと考えておきましょう。

相続税が課税されない動産

すべての動産に相続税がかかるわけではありません。例外として、お墓や仏壇、仏具、神棚といった「祭祀財産(さいしざいさん)」は、相続税の課税対象外です。これは、ご先祖様を敬うためのものであり、一般的な財産とは性質が異なると考えられているためです。
ただし、純金製の仏像のように、明らかに骨とう品としての価値が高いものや、投資目的で所有していたものは課税対象となる場合がありますので注意が必要です。

動産の基本的な評価方法

動産の価値はどのように決めるのでしょうか。国税庁の「財産評価基本通達」というルールに基づいて、基本的には「時価」で評価します。時価を算出するための主な方法を2つご紹介します。

原則的な評価方法:売買実例価額と精通者意見価格

動産の評価は、原則として「その物が実際にいくらで売れるか」を基準にします。そのために用いられるのが、以下の2つの価格です。

売買実例価額 その動産と同じものが、実際に市場で売買されている価格のことです。中古品販売サイトや買取業者のウェブサイトなどで調べることができます。
精通者意見価格 美術品や骨とう品など、専門的な知識がないと価値が分かりにくいものについて、専門家(鑑定士や美術商など)に鑑定してもらった価格のことです。

まずは、これらの価格を参考にして、相続が開始した日(故人が亡くなった日)時点での時価を調べることが基本となります。

例外的な評価方法:減価償却法による評価

売買実例価額や精通者意見価格がはっきりしない場合もありますよね。そういった場合には、例外的な方法として「減価償却(げんかしょうきゃく)」という考え方を用いて評価します。
これは、「物の価値は時間が経つにつれて減っていく」という考え方に基づいた計算方法です。

評価額 = 新品の小売価額 -(製造から相続開始までの期間に応じた償却費)

償却費の計算には、国が定めた耐用年数と定率法という計算方法を用います。例えば、新車価格が200万円、耐用年数が6年の普通自動車を1年前に購入した場合、ざっくりとですが価値が減った分を差し引いて評価額を計算する、というイメージです。

【種類別】動産の具体的な評価方法

ここからは、動産の種類ごとに、より具体的な評価方法を見ていきましょう。

一般動産(家庭用財産)

家具や家電、衣類などの家庭用財産は、原則として一つひとつ評価します。しかし、すべてのものを個別に評価するのはとても大変ですよね。
そのため、1個または1組の価額が5万円以下のものについては、「家財一式」としてまとめて評価することが認められています。例えば、「家財一式 〇〇万円」といった形で申告します。
実務上は、一般的な家庭であれば10万円~30万円程度で申告することが多いようです。ただし、故人が高級な家具やオーディオセットなどをお持ちだった場合は、その価値に応じて少し高めに評価する必要があります。

自動車

自動車は、中古車市場が確立されているため、評価しやすい動産の一つです。評価額は、中古車買取業者の査定額や、インターネットの中古車販売サイトで同じ車種・年式・走行距離のものがいくらで取引されているか(売買実例価額)を参考に決定します。複数の買取業者から査定を取ったり、オンラインの無料査定を利用したりすると、客観的な価格を把握しやすくなります。

書画骨とう品・美術品

絵画や骨とう品は、価値の判断が非常に難しい財産です。素人判断で価値を決めてしまうと、後から税務署に指摘されるリスクがあります。そのため、これらの評価には美術商や鑑定士などの専門家による鑑定が不可欠です。鑑定を依頼し、「精通者意見価格」として評価額を算出してもらいましょう。鑑定書があれば、税務署に対する信頼性の高い証明となります。

貴金属・宝石

金やプラチナなどの貴金属は、日々価格が変動しています。そのため、相続開始日(故人が亡くなった日)の買取価格を基に評価します。貴金属店のウェブサイトなどで公表されている当日の相場を確認しましょう。指輪やネックレスなどの宝飾品は、貴金属部分と宝石部分の価値を合わせて評価します。宝石の価値がわからない場合は、専門の買取業者に査定を依頼するのが安心です。

事業用の動産の評価方法

故人が事業を営んでいた場合、事業で使っていた動産も相続財産となります。家庭用財産とは評価方法が異なるため、注意が必要です。

たな卸商品等

たな卸商品とは、販売目的で保有している商品や製品、原材料、仕掛品(製造途中のもの)などを指します。これらは種類に応じて評価方法が決められています。

商品・製品 販売価額から、販売にかかる経費や適正な利益、消費税などを差し引いた金額で評価します。
原材料 相続開始時点での仕入価額に、運賃などの付随費用を加えた金額で評価します。

牛馬等

牛や馬、豚などの家畜も動産として評価します。評価方法は、所有の目的によって異なります。

販売目的で所有 「たな卸商品」と同じように、販売価額から経費や利益を差し引いて評価します。
それ以外の目的で所有 ペットや農耕用など、販売目的でない場合は、一般動産と同じく「売買実例価額」や「精通者意見価格」を参考に評価します。

船舶

プレジャーボートなどの船舶も、基本的には自動車と同じように評価します。中古市場での売買実例価額や、専門業者の査定額を参考にします。もしこれらの価格が明らかでない場合は、その船を新品で建造した場合の価額(新造価額)から、建造してからの経過年数に応じた減価償却費を差し引いて評価額を計算します。

動産の評価で注意すべきポイント

最後に、動産の評価を行う上で特に注意していただきたい点を2つお伝えします。

申告漏れに注意!税務調査の対象になりやすい

動産は、預貯金や不動産と比べて一つひとつの金額が小さいことが多いため、「これくらいなら申告しなくても大丈夫だろう」と考えてしまいがちです。しかし、この「申告漏れ」は税務調査で指摘されやすいポイントの一つです。
税務署は、故人の職業や趣味、過去の所得などから、どのような財産を所有していたかをある程度推測できます。例えば、高所得の医師であれば高価な美術品を、車好きの方であれば高級車を所有している可能性がある、といった具合です。申告漏れが発覚すると、本来の税金に加えてペナルティとして過少申告加算税延滞税が課されてしまうため、価値があるものは漏れなく申告しましょう。

専門家の意見(精通者意見価格)の重要性

特に価値の判断が難しい書画骨とう品や宝石類は、自己判断で評価額を決めるのは非常に危険です。安く見積もりすぎれば税務調査で指摘されますし、高く見積もりすぎれば余計な税金を払うことになります。
適正な評価額で申告するためにも、これらの財産については必ず専門家の鑑定を受け、「精通者意見価格」を基に評価するようにしてください。鑑定費用はかかりますが、後のトラブルを防ぎ、適正な納税に繋がります。

まとめ

今回は、相続税申告における動産の評価方法について解説しました。動産と一口に言っても、その種類は多岐にわたり、評価方法も様々です。家庭にある身近なものから、専門的な知識が必要な美術品まで、故人が遺した大切な財産を正しく評価し、申告することが重要です。
特に、5万円を超える価値のある動産や、価値の判断が難しい財産がある場合は注意が必要です。申告漏れや評価誤りを防ぐためにも、この記事を参考に、一つひとつの財産を丁寧に見直してみてください。もし評価方法に迷ったり、手続きに不安を感じたりした場合は、無理せず税理士などの専門家にご相談することをおすすめします。

参考文献

国税庁 第5節 動産の評価

相続税の動産評価に関するよくある質問まとめ

Q. 相続税申告で、家にある動産(家具や家電など)はどうやって評価すればいいですか?

A. 原則として、亡くなった方が持っていた動産と同じ種類・品質の中古品を今買ったらいくらか(時価)で評価します。売買実例価額や専門家の鑑定評価額などを参考にします。

Q. 一つ一つは少額の家財道具もすべて評価しないといけませんか?

A. 個別に評価するのが難しい場合、家財道具一式としてまとめて評価することが認められています。一般的には5万円や10万円といったキリの良い金額で評価することが多いです。ただし、高価なものが含まれている場合は別途評価が必要です。

Q. 自動車の相続税評価額はどのように計算しますか?

A. 亡くなった日の業者間取引価格(買取価格)や中古車市場での売買価格を参考にします。査定業者に査定を依頼したり、インターネットの中古車サイトで同車種・同年式・同程度の状態の車の価格を調べたりして評価額を算出します。

Q. 絵画や骨董品など、価値のわかりにくい動産はどう評価しますか?

A. 美術品や骨董品は、専門の鑑定士に鑑定を依頼して評価額を算出するのが一般的です。鑑定書があれば、その評価額を申告の根拠とすることができます。精通者意見価格とも呼ばれます。

Q. 金やプラチナ、宝石などの貴金属の評価方法を教えてください。

A. 金やプラチナなどの地金は、亡くなった日の買取業者による買取価格を参考に評価します。宝石がついたジュエリーなどは、専門の買取業者に査定を依頼し、その査定額を基に評価します。

Q. 動産を申告しなかった場合、どうなりますか?

A. 税務調査で申告漏れが指摘されると、本来納めるべきだった相続税に加えて、延滞税や過少申告加算税といった追徴課税が発生する可能性があります。価値が不明なものや高額だと思われるものは、専門家に相談して適切に評価・申告することが重要です。

事務所概要
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