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親が亡くなり実家が空き家に…どうすれば良い?後悔しないための判断プロセス

2025-02-22
目次

ご親族が亡くなられ、心よりお悔やみ申し上げます。深い悲しみの中、実家が空き家になってしまい、これからどうすれば良いのか、途方に暮れていらっしゃるかもしれませんね。思い出の詰まった家だからこそ、簡単には決められないものです。しかし、空き家をそのままにしておくと、様々な問題が起こる可能性もあります。この記事では、あなたが後悔しない選択をするために、冷静に状況を整理し、ご自身に合った方法を見つけるための「思考プロセス」を丁寧にご紹介します。一緒に一つひとつ考えていきましょう。

まずは現状把握!空き家を放置するリスクとは?

「少し落ち着いてから考えよう」と思うお気持ちはよく分かります。ですが、空き家問題は、時間が経つほど対応が難しくなるケースが多いのが現実です。まず、なぜ早めの行動が大切なのか、空き家を放置することの具体的なリスクから見ていきましょう。

資産価値の低下と老朽化

人が住まなくなった家は、驚くほど早く傷んでしまいます。換気がされないことで湿気がこもり、カビやシロアリが発生しやすくなります。雨漏りや壁のひび割れといった小さな不具合も、放置すれば大きな修繕が必要なダメージにつながりかねません。建物の老朽化は、不動産としての資産価値を大きく下げてしまう直接的な原因となります。

維持費と税金の負担

誰も住んでいなくても、実家を所有しているだけで費用はかかり続けます。毎年課税される固定資産税や都市計画税はもちろん、火災保険料、水道や電気の基本料金、庭があれば草木の手入れ費用なども必要です。これらの維持費は、年間で見ると数十万円になることもあり、経済的な負担としてのしかかってきます。

「特定空き家」に指定される危険性

特に注意したいのが、「特定空き家」に指定されるリスクです。これは「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づくもので、倒壊の危険があったり、衛生上・景観上の問題があったりする空き家が対象となります。

特定空き家に指定されると、以下のような厳しい措置が取られる可能性があります。

  • 固定資産税の優遇措置が解除され、税額が最大6倍になる
  • 自治体から修繕や解体の助言・指導・勧告・命令が出される
  • 命令に従わない場合、最大50万円の過料が科される
  • 最終的には行政代執行により強制的に解体され、その費用(数百万円)が所有者に請求される

こうしたリスクを避けるためにも、早めに方針を決めることがとても大切なのです。

どうする?空き家になった実家の4つの選択肢

空き家になった実家には、主に4つの選択肢があります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、ご自身の状況と照らし合わせてみましょう。

選択肢①:売却する

最も一般的な選択肢の一つが「売却」です。維持管理の手間や費用から解放され、まとまった現金を得られるのが最大のメリットです。ただし、売却で利益(譲渡所得)が出た場合は、所得税と住民税がかかります。

しかし、相続した空き家の売却には、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」という税金の優遇制度があります。一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できるため、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。

空き家特例の主な適用要件
対象となる家屋 相続開始の直前まで被相続人(亡くなった方)が一人で住んでいたこと。昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
売却の条件 家屋を耐震リフォームして売るか、家屋を取り壊して土地だけを売ること。売却代金が1億円以下であること。

※制度には細かい要件がありますので、詳しくは国税庁のホームページをご確認ください。

選択肢②:賃貸に出す

実家を手放したくない場合や、立地が良い場合には「賃貸」も有効な選択肢です。家賃収入として継続的な収益が見込めます。ただし、貸し出すためには、キッチンや浴室などのリフォームに数百万円の初期投資が必要になることがほとんどです。また、入居者が見つからない空室リスクや、入居者とのトラブル対応、建物の修繕といった管理の手間がかかることも覚悟しておく必要があります。

選択肢③:解体して更地にする

建物が古すぎて売却も賃貸も難しい場合は、「解体」して更地にする方法があります。更地にすることで管理が楽になり、土地として売却しやすくなったり、駐車場など別の用途で活用しやすくなったりするメリットがあります。

一方で、木造家屋の場合、1坪あたり3万円~5万円程度の解体費用がかかります。また、更地にすると固定資産税の「住宅用地の特例」が適用されなくなるため、税額が3倍から4倍に上がってしまうという大きなデメリットも知っておきましょう。

選択肢④:自分で住む・利用する

もちろん、ご自身やご家族が実家に住むという選択肢もあります。思い出の家を守り、住み慣れた土地で暮らせるという精神的なメリットは大きいでしょう。ただし、快適に住むためにはリフォームが必要になる場合が多く、現在の住まいとの兼ね合いや通勤・通学の問題なども考慮する必要があります。

判断の思考プロセス:自分に合った選択肢を見つけるには

4つの選択肢をご紹介しましたが、「結局どれを選べばいいの?」と迷ってしまいますよね。ここからは、ご自身の状況に合わせて最適な選択をするための思考プロセスをステップごとに解説します。

ステップ1:実家の状況を客観的に確認する

まずは感情を一度横に置いて、実家を「不動産」として客観的に評価してみましょう。

  • 立地:最寄り駅からの距離、周辺の商業施設、学校や病院などの利便性
  • 建物の状態:築年数、雨漏りやシロアリの有無、過去の修繕履歴
  • 権利関係:相続人は誰か、土地や建物の名義は誰になっているか

これらの情報を整理することで、売却しやすい物件なのか、賃貸の需要はありそうか、といった判断の土台ができます。

ステップ2:相続人間の意向をまとめる

実家の相続人が複数いる場合、これが最も重要なステップです。自分一人の考えで話を進めてしまうと、後で大きなトラブルに発展しかねません。「売りたい人」「残したい人」「住みたい人」など、それぞれの考えや事情があるはずです。必ず全員で集まって話し合いの場を設け、全員が納得できる方向性を見つけましょう。

ステップ3:経済的な状況と将来のライフプランを考える

次に、ご自身の経済状況や将来設計と照らし合わせます。

  • 維持費や固定資産税を払い続ける余裕はあるか?
  • 子どもの教育費や老後資金など、まとまったお金が必要な予定はあるか?
  • 将来、実家のある場所に戻って住む可能性はあるか?

これらの問いに答えていくことで、どの選択肢が自分のライフプランに合っているかが見えてきます。

手続きの進め方と注意点

方針がある程度決まったら、具体的な手続きに進みます。ここでは特に重要な注意点をお伝えします。

相続登記は義務化されています

不動産を相続したら、その名義を被相続人(亡くなった方)から相続人へ変更する「相続登記」が必要です。これまで任意でしたが、2024年4月1日から義務化されました。正当な理由なく手続きを怠ると10万円以下の過料が科される可能性があります。不動産の売却や賃貸を行うにも、相続登記が完了していることが大前提となりますので、必ず行いましょう。

費用の目安を知っておこう

どの選択肢を選ぶにしても、様々な費用がかかります。事前に大まかな目安を知っておくと安心です。

主な手続きにかかる費用の目安
相続登記 登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)+司法書士報酬(5万円~15万円程度)
不動産売却 仲介手数料(売買価格の3%+6万円+消費税が上限)+印紙税など
建物解体 木造:1坪あたり3万円~5万円程度。30坪の家なら90万円~150万円程度。

専門家への相談も検討しよう

相続や不動産の手続きは複雑で、専門的な知識が必要です。悩んだときは、一人で抱え込まずに専門家に相談しましょう。

  • 不動産会社:売却や賃貸の査定、市場の動向について相談
  • 司法書士:相続登記の手続きを依頼
  • 税理士:相続税や譲渡所得税など、税金に関する相談

専門家の力を借りることで、手続きをスムーズに進め、思わぬ失敗を防ぐことができます。

まとめ

親が亡くなり、実家が空き家になったときの対応は、精神的にも時間的にも大きな負担がかかります。しかし、最も大切なのは「問題を先送りにせず、放置しないこと」、そして「家族全員でしっかりと話し合うこと」です。まずは実家の現状を把握し、それぞれの選択肢のメリット・デメリットを理解した上で、ご家族の状況や将来のライフプランに合った最善の方法を見つけてください。この記事が、あなたの後悔のない「実家じまい」への第一歩となれば幸いです。

参考文献

親が亡くなった後の実家・空き家問題|よくある質問まとめ

Q.親が亡くなり実家が空き家に。まず何から始めればいいですか?

A.まずは相続人の確定と遺産分割協議を行い、実家の名義を誰にするか決めましょう。これが決まらないと売却も賃貸もできません。並行して、火災保険の加入状況の確認や、ライフライン(電気・ガス・水道)の契約見直しも進める必要があります。

Q.空き家をそのまま放置するデメリットはありますか?

A.はい、多くのデメリットがあります。固定資産税などの維持費がかかり続けるだけでなく、建物の老朽化、倒壊や火災のリスク、不法侵入などの防犯上の問題、近隣トラブルの原因になる可能性があります。特定空き家に指定されると税金が上がる場合もあります。

Q.空き家になった実家の選択肢には何がありますか?

A.主な選択肢は「売却する」「賃貸に出す」「自分や親族が住む」の3つです。その他、建物を解体して更地にする、更地を駐車場として活用するなどの方法もあります。それぞれのメリット・デメリットを比較し、ご自身の状況に合わせて判断することが重要です。

Q.実家を売却する場合の注意点は何ですか?

A.まずは複数の不動産会社に査定を依頼し、実家の価値を把握することから始めましょう。相続した不動産の売却には、税金の特例が使える場合があります(例:空き家譲渡所得の3,000万円特別控除)。適用要件を事前に確認しておくことをおすすめします。

Q.実家を賃貸に出す場合の注意点は何ですか?

A.貸し出すためには、リフォーム費用などの初期投資が必要になる場合があります。また、入居者募集や家賃管理、トラブル対応などを不動産管理会社に委託するのが一般的です。安定した家賃収入が期待できますが、空室になるリスクも考慮しておきましょう。

Q.建物を解体して更地にするのはどうでしょうか?

A.建物の老朽化が激しく、活用が難しい場合に有効な選択肢です。ただし、解体費用がかかる点と、更地にすると固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、税額が高くなる可能性がある点に注意が必要です。売却のしやすさは土地の立地条件によります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

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