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相続税申告で発覚!過去の贈与税申告漏れ、どう対処する?

2025-02-08
目次

相続税の申告準備で故人の預金通帳を何年も遡って確認していると、「あれ?このお金の動き、もしかして贈与にあたるかも…」と、過去の贈与税の申告漏れに気づくことがあります。突然の発見に、どうすれば良いのか不安になりますよね。でも、大丈夫です。気づいた今が、正しく対処する絶好の機会です。この記事では、なぜ申告漏れが発覚するのか、そして見つかったときにどうすればよいのかを、優しく丁寧にご説明しますね。

贈与税の申告漏れはなぜ発覚するの?

「家族間のお金のやり取りなんて、税務署にはわからないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、特に相続が発生したタイミングでは、税務署はかなり詳しくお金の流れを調査します。ここでは、申告漏れが発覚する主な理由を見ていきましょう。

相続税の税務調査で過去の履歴が調べられる

相続税の税務調査では、亡くなった方(被相続人)の財産だけでなく、相続人の預金口座も調査の対象になります。通常、亡くなる前3年から7年、場合によっては10年近く遡って、不自然なお金の動きがないかを確認します。その過程で、被相続人から相続人へ大きな金額が動いているにもかかわらず贈与税の申告がされていない場合、申告漏れが発覚するのです。

税務署はKSKシステムで資金の流れを把握

税務署は、KSK(国税総合管理)システムという強力なデータベースを持っています。このシステムには、個人の過去の確定申告の内容や、不動産の売買、生命保険金の受け取りなど、お金に関する様々な情報が記録されています。税務署はこのKSKシステムや金融機関への照会権限を使い、個人の資産状況やお金の流れを詳細に把握できるため、「収入に見合わない預金がある」「高額な資産を購入している」といった点から、贈与の事実を突き止めることができるのです。

名義預金と判断されるリスク

申告漏れの贈与が、そもそも「贈与」として成立していない「名義預金」と判断されるケースもあります。これは、例えば親が子どもの名義で口座を作り、親自身がその通帳や印鑑を管理してお金を貯めていたような場合です。この場合、その預金は子どものものではなく、亡くなった親の財産(相続財産)とみなされます。名義預金と判断されると、贈与税の時効は関係なく、相続税の課税対象となってしまうため、注意が必要です。

贈与税の申告漏れに気づいたらまず何をすべき?

過去の申告漏れに気づいたとき、一番大切なのは「速やかに自主的に申告すること」です。見て見ぬふりをしたり、時効を待ったりするのは得策ではありません。ここでは、具体的に何をすべきかを確認しましょう。

自主的な申告「期限後申告」と「修正申告」

申告漏れに気づいたら、過去の贈与について正しい申告手続きを行います。これには2つのケースがあります。

  • 期限後申告:贈与税の申告義務があったにもかかわらず、一度も申告をしていなかった場合に行う手続きです。
  • 修正申告:一度申告はしたものの、申告した金額が本来納めるべき税額より少なかった場合に行う手続きです。

どちらの場合も、税務署から指摘を受ける前に自主的に行うことで、後述するペナルティを軽くすることができます。

贈与税の時効はいつ?

贈与税には時効があり、これを「除斥期間」といいます。時効が成立すると、国は贈与税を課税する権利を失います。

原則の時効 贈与税の申告期限の翌日から6年
悪質なケースの時効 意図的に税金を免れようとした場合、時効は7年に延長

贈与税の申告期限は、贈与を受けた年の翌年3月15日です。例えば、2018年5月10日に贈与を受けた場合、申告期限は2019年3月15日。その翌日である2019年3月16日から6年後の、2025年3月15日に時効が成立します。しかし、相続税調査などで発覚する可能性が高いため、時効の成立を待つのは非常にリスクが高いと言えるでしょう。

申告漏れに伴うペナルティ(追徴課税)

もし贈与税の申告漏れを税務署に指摘された場合、本来納めるべき贈与税に加えて、ペナルティとしていくつかの税金(追徴課税)が課せられます。自主的に申告すれば、これらのペナルティは軽くなります。

無申告加算税

期限内に申告をしなかった場合に課される税金です。

税務調査の通知前に自主的に申告した場合 納付すべき税額の5%
税務調査の通知後、調査前に申告した場合 納付すべき税額の50万円までは10%、50万円を超える部分は15%
税務調査後に申告した場合 納付すべき税額の50万円までは15%、50万円を超える部分は20%

過少申告加算税

申告した税額が本来より少なかった場合に課されます。税務調査の通知前に自主的に修正申告すれば、この加算税はかかりません。

税務調査の通知後、調査前に申告した場合 追加で納める税額の5%(※)
税務調査後に申告した場合 追加で納める税額の10%(※)

※追加で納める税額が、当初の申告税額と50万円のいずれか多い額を超える場合、その超える部分の税率は15%になります。

重加算税

事実を隠蔽したり、書類を偽造したりして意図的に税金を免れようとした、最も悪質なケースに課される重いペナルティです。

過少申告の場合 追加で納める税額の35%
無申告の場合 納付すべき税額の40%

延滞税

法定納期限(贈与を受けた年の翌年3月15日)までに税金を納めなかった場合に、利息に相当するものとして課されます。納付が遅れるほど日割りで増えていきます。税率は年によって変動しますが、納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは年「7.3%」と「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合、2ヶ月を経過した日以降は年「14.6%」と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合となります。

自主的に申告するメリット

ペナルティの話を聞くと不安になるかもしれませんが、裏を返せば、自主的に申告することには大きなメリットがあるということです。

ペナルティが軽減される

最大のメリットは、ペナルティを最小限に抑えられることです。特に、税務調査の通知が来る前に自主的に期限後申告をすれば、無申告加算税は本来の15%や20%から5%にまで大幅に軽減されます。過少申告加算税に至っては、ゼロになります。延滞税はかかってしまいますが、1日でも早く納付することでその額を抑えることができます。

精神的な安心感が得られる

「いつ税務署から連絡が来るのだろう…」と不安を抱えながら過ごすのは、精神的にも良くありません。申告漏れという問題をきちんと清算することで、安心して相続手続きに集中できます。過去の誤りを正し、すっきりとした気持ちで次のステップに進むことができるのは、大きなメリットです。

期限後申告・修正申告の手続きと相談先

では、実際に申告はどのように進めればよいのでしょうか。ご自身で行う方法と、専門家に相談する方法があります。

自分で手続きする場合

贈与税の申告書は、国税庁のウェブサイトにある「確定申告書等作成コーナー」で作成できます。過去の年分の申告書も作成可能です。作成した申告書は、贈与を受けた人の住所地を管轄する税務署に提出します。不明な点があれば、税務署に電話で問い合わせたり、窓口で相談したりすることもできますが、一般的な書き方の説明が中心で、個別の具体的な計算まで手伝ってもらうのは難しいでしょう。

税理士に相談するメリット

過去の贈与税申告は複雑になることも多いため、相続税や贈与税に詳しい税理士に相談するのが最も安心で確実な方法です。税理士に依頼すれば、以下のメリットがあります。

  • 正確な贈与税額とペナルティ(加算税・延滞税)を計算してくれる
  • 複雑な申告書の作成や提出を代行してくれる
  • 税務署からの問い合わせにも適切に対応してくれる
  • 相続税申告と合わせて、全体的に有利なアドバイスをもらえる可能性がある

費用はかかりますが、手間や時間を節約でき、何よりも正確さと安心感を得られます。

まとめ

相続税申告の準備中に過去の贈与税申告漏れが見つかると、焦ってしまうかもしれません。しかし、大切なのは気づいた時点ですぐに行動することです。時効を待つのはリスクが高く、税務署から指摘されてしまうと、重いペナルティが課せられてしまいます。税務調査の連絡が来る前に自主的に「期限後申告」または「修正申告」をすれば、ペナルティを大幅に軽くすることができます。ご自身での手続きが不安な場合は、迷わず税理士などの専門家に相談しましょう。問題を正しく解決し、心穏やかに相続手続きを進めてくださいね。

参考文献

贈与税の申告をされる方へ|国税庁

令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし|国税庁(PDF)

No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|国税庁

相続税申告と過去の贈与税申告漏れに関するよくある質問

Q. 相続税の調査で過去の預金移動を調べていたら、贈与税の申告漏れを見つけました。どうすればよいですか?

A. すぐに贈与税の期限後申告をしてください。自主的に申告することで、ペナルティ(無申告加算税など)が軽減される可能性があります。税務調査で指摘される前に対応することが重要です。

Q. 贈与税の申告漏れには、どのようなペナルティがありますか?

A. 本来納めるべき贈与税に加え、ペナルティとして「無申告加算税」や、納付が遅れた日数に応じた「延滞税」が課されます。税務調査で悪質と判断されると、さらに重い「重加算税」が課される場合もあります。

Q. 贈与税の時効は何年ですか?時効を過ぎていれば申告は不要ですか?

A. 贈与税の時効は原則6年(悪質な場合は7年)ですが、相続税の計算では「相続開始前3年(順次延長され最大7年)以内」の贈与は相続財産に加算されます。そのため、贈与税の時効が成立していても、相続税の申告には含める必要があります。

Q. 贈与税の申告漏れを自主的に申告するメリットは何ですか?

A. 税務調査で指摘される前に自主的に期限後申告をすると、無申告加算税の税率が大幅に軽減されます。また、延滞税も申告・納税が早いほど少なく済みます。ペナルティを最小限に抑えるためにも、早めの対応が重要です。

Q. 申告漏れしていた贈与が、年間110万円の基礎控除の範囲内でした。この場合も何か対応は必要ですか?

A. 1年間の贈与額の合計が110万円以下であれば、原則として贈与税はかからず申告も不要です。しかし、相続税の申告では「相続時精算課税制度」の適用を受けている場合や、「相続開始前3〜7年以内の贈与」に該当する場合は、110万円以下でも相続財産に加算して申告する必要があります。

Q. 過去の贈与税の申告漏れについて、誰に相談すればよいですか?

A. 贈与税や相続税に詳しい税理士に相談することをおすすめします。複雑な税金の計算や申告書の作成、税務署への対応などを正確に行ってくれます。まずは専門家の意見を聞いてみましょう。

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