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相続税申告で必須!上場株式の評価明細書の書き方を徹底解説

2025-01-27
目次

ご家族が亡くなられて、上場株式を相続することになったけれど、相続税の申告で「上場株式の評価明細書」という書類が必要だと知って、どう書けばいいのかお困りではありませんか?専門用語が多くて難しそうに感じるかもしれませんが、ポイントさえ押さえれば、ご自身で作成することも十分可能ですよ。この記事では、上場株式の評価明細書の書き方を、ステップごとに優しく、そして詳しく解説していきますね。

上場株式の評価方法の基本ルール

相続税の計算において、上場株式をいくらで評価するかはとても重要です。この評価額が、納める相続税の金額に直接影響するからなんです。国税庁では、納税者が不利にならないように、いくつかの評価方法の中から最も有利なもの(つまり、株価が一番低くなるもの)を選べるルールを設けています。まずは、その基本的なルールから見ていきましょう。

4つの株価から一番低いものを選ぶ

上場株式の相続税評価額は、次の4つの時点での株価のうち、最も低い価格を使って計算することができます。これはとても大切なポイントなので、しっかり覚えておきましょう。

評価の基準となる時点 内  容
① 課税時期(亡くなった日)の終値 亡くなられたその日の、取引が終了した時点での株価です。
② 課税時期の月の毎日の終値の月平均額 亡くなられた月の、毎日の終値を合計し、その月の日数で割った平均株価です。
③ 課税時期の前月の毎日の終値の月平均額 亡くなられた月の、1ヶ月前の月平均株価です。
④ 課税時期の前々月の毎日の終値の月平均額 亡くなられた月の、2ヶ月前の月平均株価です。

例えば、亡くなられたのが5月15日だった場合、5月15日の終値、5月の月平均額、4月の月平均額、3月の月平均額を比べて、一番安い株価を評価額として採用できるということです。もし複数の銘柄の株式を相続した場合は、それぞれの銘柄ごとにこの4つの株価を比較して、一番有利なものを別々に選んで大丈夫ですよ。

課税時期に株価がない場合(土日祝日など)

亡くなられた日が土曜日、日曜日、祝日などで証券取引所がお休みだった場合、その日の終値はありませんよね。そのような場合は、課税時期に最も近い日の終値を「課税時期の終値」として使います。例えば、土曜日に亡くなられた場合は、その前日の金曜日の終値を使います。もし3連休の真ん中の日のように、亡くなられた日の前と後の両方に同じだけ近い取引日がある場合は、その両日の終値の平均額を使いますので、覚えておいてくださいね。

株価の小数点以下の取り扱い

株価の計算をしていると、月平均額などで「1,234.56円」のように小数点以下の端数が出ることがあります。相続税の評価額を計算する際は、この円未満の端数は切り捨てて計算してOKです。これは国税庁の「上場株式の評価明細書」にも記載されている正式なルールなので、安心して切り捨てて、整数で計算を進めてください。

必要な株価の調べ方

評価のルールがわかったら、次は実際に4つの株価を調べる必要があります。調べ方には、証券会社に依頼する方法と、自分でインターネットを使って調べる方法があります。どちらも難しくないので、ご自身に合った方法を選んでくださいね。

証券会社から「残高証明書」を取り寄せる

最も確実で簡単な方法は、故人が取引をしていた証券会社に連絡して、「相続開始日(亡くなった日)時点の残高証明書」を発行してもらうことです。このとき、相続手続きで必要であることを伝え、「相続税評価額の計算に必要な4つの時点の株価がわかる資料も欲しい」とお願いすると、多くの証券会社では対応してくれます。
残高証明書の取得には、通常、以下の書類が必要になります。

  • 被相続人が亡くなったことがわかる書類(除籍謄本など)
  • 請求者が相続人であることがわかる書類(戸籍謄本など)
  • 請求者の本人確認書類(運転免許証のコピーなど)

必要書類は証券会社によって異なる場合があるので、事前に電話などで確認しておくとスムーズですよ。

インターネットで自分で調べる方法

ご自身で株価を調べることも可能です。公的な機関のウェブサイトを利用すれば、信頼性の高い情報を無料で手に入れることができます。

調べたい株価 調べられるサイトの例
課税時期(亡くなった日)の終値 Yahoo!ファイナンスなどの株価情報サイトで、銘柄名や証券コードを検索し、過去の株価を日付指定で確認できます。
各月の終値の月平均額 日本取引所グループ(JPX)のウェブサイトで公開されている「月間相場表(株式相場表)」で、各銘柄の月平均終値を確認することができます。

ご自身で調べる場合は、銘柄や日付を間違えないように、慎重に確認しながら進めてくださいね。

上場株式の評価明細書の書き方【記載例】

4つの株価が揃ったら、いよいよ「上場株式の評価明細書」を作成します。この書類は、どの株価を使って評価額を計算したのかを税務署に示すためのものです。国税庁のウェブサイトから書式をダウンロードして、調べた数値を書き写していきましょう。

評価明細書の入手方法

「上場株式の評価明細書」の書式(PDFファイル)は、国税庁のウェブサイトからいつでもダウンロードできます。印刷して手書きで記入するか、PDF編集ソフトを使えばパソコンで入力することも可能です。下記のリンクから入手してくださいね。
国税庁|上場株式の評価明細書

各項目の記入方法

評価明細書の書き方は、項目に沿って数字を埋めていくだけなので、とてもシンプルです。以下に、各項目の書き方を解説します。

項  目 記入内容
銘柄 相続した株式の会社名(例:〇〇株式会社)を記入します。
取引所等の名称 その株式が上場している証券取引所名(例:東京)を記入します。
数量 相続した株式の数(例:1,000株)を記入します。
課税時期の最終価格 調べた4つの株価のうち、①亡くなった日の終値を記入します。
最終価格の月平均額(3段) 上から順に、②課税時期の月、③前月、④前々月の月平均額を記入します。
単価 上記4つの価格のうち、最も低い金額を記入します。円未満は切り捨てます。
評価額 「数量」×「単価」で計算した金額を記入します。これが相続税評価額となります。

例えば、A社の株を1,000株相続し、4つの株価がそれぞれ1,500円、1,450.8円、1,480.2円、1,420.5円だったとします。この場合、最も低いのは1,420.5円なので、単価は「1,420円」と記入します。評価額は「1,000株 × 1,420円 = 1,420,000円」となります。

相続税申告書への転記方法

評価明細書が完成したら、そこで計算した評価額を相続税申告書に書き写します。主に「第11表の付表2」と「第11表」という2つの書類に記入することになります。

第11表の付表2への記載

「第11表の付表2 相続税がかかる財産の明細書(有価証券用)」は、相続した有価証券の詳細を記入する書類です。ここに、評価明細書の内容を転記します。

  • 種類:株式
  • 細目:上場株式
  • 銘柄:株式の銘柄名を記入します。
  • 所在場所:証券会社の名称と支店名を記入します。
  • 数量:保有株数を記入します。
  • 単価:評価明細書で採用した最も低い株価を記入します。
  • 価額:計算した評価額を記入します。

第11表への記載

「第11表 相続税がかかる財産の合計表」は、預貯金や不動産など、すべての相続財産を一覧にして合計額を計算する書類です。「第11表の付表2」で計算した有価証券の合計額を、この第11表の「有価証券」の欄に転記します。

上場株式を相続するときの注意点

最後に、評価明細書の作成以外にも、上場株式を相続する際に注意しておきたい大切なポイントをいくつかご紹介します。申告漏れなどを防ぐために、ぜひ確認してくださいね。

配当期待権・未収配当金を忘れずに申告

亡くなられたタイミングによっては、配当金を受け取る権利も相続財産になります。これには「配当期待権」と「未収配当金」の2種類があり、申告漏れが多いので注意が必要です。

  • 配当期待権:配当の権利が確定する「基準日」の翌日から、配当金の支払いが確定する「配当確定日」までの間に亡くなられた場合に発生します。これは、将来受け取れるであろう配当金に対する権利のことで、予想される配当金額から源泉徴収税(20.315%)を差し引いた額を評価額として申告します。
  • 未収配当金:配当金の支払いが確定した後に亡くなられたけれど、まだその配当金を受け取っていなかった場合に発生します。こちらは、受け取るはずだった配当金の額面金額をそのまま申告します。

端株(単元未満株)の確認も重要

「端株(はかぶ)」とは、株式を売買する際の最低単位(通常100株)に満たない株式のことです。この端株は、証券会社の残高証明書に記載されないことがあるため、見落としがちです。故人のもとに届いていた「配当金計算書」を確認してみましょう。所有株数の欄に100で割り切れない数字が記載されていれば、端株を保有している可能性があります。これも立派な相続財産なので、忘れずに申告してくださいね。

亡くなる直前に売却した株式の取り扱い

故人が亡くなる直前に株式を売却していた場合、注意が必要です。株式の売買は、実際に売買が成立してからお金や株式の受け渡しが完了するまでに数日かかります。もし、売却の契約は成立しているけれど、受け渡しが完了する前に亡くなられた場合、その株式は相続財産にはなりません。その代わり、「売却代金を受け取る権利(未収入金)」を相続したことになります。この場合、4つの株価から有利なものを選ぶ評価方法は使えず、売却契約時の金額で申告する必要があるので、間違えないようにしましょう。

まとめ

今回は、上場株式の評価明細書の書き方について、詳しく解説しました。ポイントをもう一度おさらいしましょう。

  • 上場株式の評価額は「亡くなった日の終値」「亡くなった月・前月・前々月の終値の月平均額」の4つの中から最も低い価格を選んで計算する。
  • 株価は証券会社の残高証明書や、インターネットの公的なサイトで調べることができる。
  • 評価明細書は、国税庁のウェブサイトから書式をダウンロードし、調べた株価と計算結果を記入すれば完成する。
  • 配当期待権や端株など、申告漏れしやすい財産にも注意が必要。

一つひとつのステップを丁寧に進めれば、決して難しい作業ではありません。この記事が、あなたの相続税申告の一助となれば幸いです。もし、どうしても不安な点や難しいと感じる部分があれば、税理士などの専門家に相談するのも一つの良い方法ですよ。

参考文献

国税庁|No.4632 上場株式の評価

国税庁|上場株式の評価明細書

上場株式の評価明細書に関するよくある質問まとめ

Q. 上場株式の評価明細書とは何ですか?

A. 相続税や贈与税の申告で、所有する上場株式の価値を計算するための書類です。税務署に提出し、課税価格を正しく算出するために必要となります。

Q. 株式の評価に使う株価はいつの時点のものですか?

A. 原則として、課税時期(相続開始日など)の終値、課税時期の月の終値の月平均額など、4つの基準価格のうち最も低い価格を選択して評価します。

Q. 評価明細書の様式はどこで入手できますか?

A. 国税庁のホームページからダウンロードできます。ご自身で作成することも可能ですが、計算が複雑なため税理士に依頼するのが一般的です。

Q. 複数の証券会社に口座がある場合、明細書は分けますか?

A. 分ける必要はありません。すべての証券会社の株式をまとめて、銘柄ごとに1枚の評価明細書に記載します。

Q. 「銘柄コード」や「上場取引所」はどこで調べればいいですか?

A. 証券会社の取引残高報告書や、インターネットの株価情報サイトで確認できます。銘柄コードは4桁の数字で、銘柄ごとに決まっています。

Q. 配当金も評価明細書に書く必要がありますか?

A. 配当金を受け取る権利が確定しているものの、まだ支払われていない「配当期待権」は、株式本体とは別に評価して記載する必要があります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

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