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相続税で迷わない!定期金に関する権利の評価明細書の書き方ガイド

2025-01-23
目次

ご家族が亡くなられて相続手続きを進める中で、「定期金に関する権利の評価明細書」という書類が必要になることがあります。特に、故人が個人年金保険などを受け取っていた場合、この権利も大切な相続財産になります。でも、専門的な書類でどう書けばいいのか不安に思いますよね。この記事では、「定期金に関する権利の評価明細書」の書き方について、準備から具体的な記入方法、注意点まで、一つひとつ丁寧に解説していきます。一緒に確認していきましょう。

「定期金に関する権利の評価明細書」とは?

まずは、この書類がどういうものなのか、基本から押さえておきましょう。「定期金に関する権利の評価明細書」とは、相続税の申告をするときに、個人年金保険のように「定期的に金銭を受け取れる権利」がどれくらいの価値を持つのかを計算し、税務署に報告するための公式な書類です。この書類を作成することで、相続財産としての価値を明確にすることができます。

なぜこの書類が必要なの?

現金や預貯金であれば、その金額がそのまま財産の価値になります。しかし、個人年金などの定期金は、将来にわたって分割で受け取る権利なので、「今現在の価値」に換算して評価する必要があります。この評価額が相続税の計算の基礎になるため、法律で定められた方法で正しく計算し、書類として提出することが義務付けられているのです。

どんな時に作成するの?

この明細書が必要になるのは、主に次のようなケースです。

  • 亡くなった方(被相続人)が、生命保険会社などと契約した個人年金保険を受け取っていた。
  • 生命保険の死亡保険金を、一時金ではなく年金形式で受け取る契約になっていた。
  • そのほか、一定期間または生涯にわたって定期的に給付金を受け取る権利があった。

これらの権利を相続人が引き継いだ場合に、評価明細書の作成が必要となります。

明細書はどこで手に入る?

「定期金に関する権利の評価明細書」の様式は、国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。PDF形式で提供されているので、ご自宅のプリンターで印刷して手書きで作成することも、パソコンで直接入力することも可能です。税務署の窓口でもらうこともできますよ。

評価明細書を書く前の準備

明細書をスムーズに書き進めるためには、事前の準備がとても大切です。必要な情報を集めておくことで、計算や記入で迷うことが少なくなります。まずは、手元に揃えておきたい書類を確認しましょう。

必要な書類一覧

評価額を計算するためには、契約内容を証明する客観的な資料が必要です。保険会社などに連絡して、以下の書類を取り寄せましょう。

書類の種類 確認する内容
保険証券や契約内容通知書 証券番号、契約者、被保険者、受取人、給付内容など
相続開始日時点の解約返戻金額証明書 もし相続開始日に解約した場合に受け取れる金額
相続開始日時点の一時金額証明書 年金の代わりに一時金で受け取る場合の金額
年金支払通知書など 今後の給付額、給付期間、契約の予定利率など
戸籍謄本など 被相続人の死亡日(相続開始日)の確認

保険会社への問い合わせポイント

手元の書類だけでは情報が足りないことも多いです。特に、評価額の計算に不可欠な「相続開始日時点の解約返戻金額」や「予定利率」は、保険会社に直接問い合わせて確認する必要があります。電話や書面で問い合わせる際には、「相続税申告のために、被相続人〇〇が亡くなった令和〇年〇月〇日時点の情報を教えてください」と伝え、以下の3つの金額を必ず確認しましょう。

  1. 相続開始日時点の解約返戻金の額
  2. 年金に代えて受け取れる一時金の額
  3. 評価額の計算に必要な予定利率

これらの情報は評価額を決定する上で非常に重要ですので、書面で回答をもらっておくと安心です。

「定期金に関する権利の評価明細書」の具体的な書き方

準備が整ったら、いよいよ明細書を記入していきましょう。国税庁の様式に沿って、上から順番に解説しますね。

上部(基本情報)の記入欄

まず、書類の上部には基本的な情報を記入します。

  • 税務署名・整理番号: 提出先の税務署名を記入します。整理番号は税務署から通知があれば記入します。
  • 被相続人の氏名: 亡くなった方の氏名を記入します。
  • 相続開始日: 亡くなった年月日を記入します。

権利の内容を記入する欄

次に、「定期金給付契約に関する権利の明細」の欄を埋めていきます。ここは保険証券などの契約書類を見ながら正確に転記しましょう。

  • 定期金に関する権利の種類: 「個人年金保険」など、具体的な種類を記入します。
  • 定期金支払者の名称及び所在地: 「〇〇生命保険株式会社」のように保険会社の正式名称と本社所在地を記入します。
  • 証券番号等: 保険証券に記載されている番号を記入します。
  • 契約年月日: 契約が成立した年月日を記入します。
  • 契約者、被保険者又は被共済者、当初定期金受取人: それぞれ契約書に記載されている氏名を記入します。
  • 相続開始後の定期金受取人: 権利を相続した方の氏名を記入します。

評価額の計算欄

ここが最も重要な部分です。「評価額の計算」欄では、定められた3つの方法で金額を算出し、その中で最も高い金額を評価額として採用します。それぞれの計算方法については、次の章で詳しく見ていきましょう。

定期金の種類別!評価額の計算方法

定期金の評価額は、相続税法という法律で計算方法が決められています。最終的な評価額は、次の3つの金額のうち、一番高い金額になります。

  1. 解約返戻金の額:相続開始日に契約を解約した場合に支払われる金額
  2. 一時金の額:定期金に代えて一時金で受け取れる場合に、その一時金の金額
  3. 種類に応じた計算額:定期金の種類(有期・無期・終身)ごとに定められた方法で計算した金額

この3つを比較することが、正しい評価のポイントです。

有期定期金の場合

「10年間」「65歳から75歳まで」のように、受け取れる期間が決まっているのが有期定期金です。この場合の計算方法は以下の通りです。

計算式:1年間の平均給付額 × 残りの期間と予定利率に応じた複利年金現価率

例えば、年間100万円をあと10年受け取れる契約で、予定利率が1.0%の場合、国税庁が公表する複利年金現価率(令和6年なら9.471)を使って計算します。計算額は「100万円 × 9.471 = 947万1,000円」となります。この金額と、解約返戻金、一時金を比較して最も高い額が評価額です。

無期定期金の場合

期間の定めなく永続的に受け取れる権利ですが、実際の契約でこのケースはほとんどありません。

計算式:1年間の平均給付額 ÷ 予定利率

もし年間60万円の給付で予定利率が1.5%なら、「60万円 ÷ 0.015 = 4,000万円」が計算上の評価額となります。

終身定期金の場合

受取人が亡くなるまで生涯にわたって受け取れるのが終身定期金です。計算には「平均余命」を使います。

計算式:1年間の平均給付額 × 平均余命と予定利率に応じた複利年金現価率

平均余命は、厚生労働省が公表している「完全生命表」で確認します。例えば、相続した方が50歳男性(平均余命32.84年)の場合、その平均余命に近い年数の複利年金現価率を使って計算します。

評価明細書作成時の注意点

最後に、明細書を作成する上で特に気をつけたいポイントをまとめました。間違いやすい部分なので、しっかり確認してくださいね。

評価額は3つのうち最も高い金額を選ぶ

これは最も重要なルールです。税金を安くしたいからといって、3つのうち一番低い金額を選んではいけません。必ず3つの金額(解約返戻金、一時金、種類に応じた計算額)をすべて算出し、その中で最も高い金額を最終的な評価額として記載してください。これを間違えると、後の税務調査で指摘され、追加の税金(延滞税など)が発生する可能性があります。

複利年金現価率や平均余命は正しい資料で確認する

評価額の計算に使う「複利年金現価率」や「平均余命」は、ご自身で勝手に決められるものではありません。複利年金現価率は国税庁のウェブサイトで、平均余命は厚生労働省の「完全生命表」で、相続があった年の正しい数値を確認しましょう。これらの数値は毎年更新されることがあるので、最新の情報を参照することが大切です。

給付事由が発生していない場合

故人がまだ年金を受け取る前で、保険料を支払っている途中だった場合はどうなるのでしょうか。この「給付事由が発生していない」ケースでは、評価方法が異なり、原則として相続開始日までに払い込んだ掛金の額が評価額となります。この場合は、保険会社から「払込保険料証明書」などを取り寄せて評価します。

まとめ

「定期金に関する権利の評価明細書」の作成は、少し複雑に感じるかもしれませんが、手順に沿って一つひとつ進めれば必ず完成できます。大切なポイントは、①契約内容を正確に把握し、②保険会社に必要な情報を確認し、③定められた3つの方法で評価額を計算して最も高い金額を記載することです。もし計算方法が難しいと感じたり、ご自身での作成に不安がある場合は、無理せず税理士などの専門家に相談することも検討してくださいね。正しい申告で、安心して相続手続きを終えましょう。

参考文献

定期金に関する権利の評価明細書のよくある質問まとめ

Q.「定期金に関する権利」とは具体的に何ですか?

A.個人年金保険のように、契約に基づき一定期間または生涯にわたって定期的にお金を受け取れる権利のことです。この権利は相続財産とみなされ、相続税の課税対象となります。

Q.「定期金に関する権利の評価明細書」はどこで入手できますか?

A.国税庁のウェブサイトから最新の様式をダウンロードできます。また、税務署の窓口でも入手可能です。

Q.評価明細書の「定期金の種類」の選び方を教えてください。

A.契約内容によって異なります。「終身定期金」は被保険者が亡くなるまで受け取れるもの、「有期定期金」は契約で定められた一定期間受け取れるものです。保険証券などで契約内容をご確認ください。

Q.評価額の計算に使う「利率」はどのように調べればよいですか?

A.国税庁のウェブサイトで公表されている「基準年利率」を使用します。契約した時期によって適用される利率が異なるため、契約時期に対応する利率を必ず確認してください。

Q.評価明細書を作成する際に、他にどんな書類が必要ですか?

A.年金証書や保険証券など、契約内容(1年間の受取額、残りの期間、受取人の情報など)がわかる書類を手元に準備してください。これらの情報を基に明細書を作成します。

Q.作成した評価明細書は、いつ・どこに提出すればよいですか?

A.相続税の申告書に添付し、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する税務署へ提出します。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。