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地積区分表とは?相続税の土地評価で使う見方と使い方を解説

2025-01-15
目次

ご家族から土地を相続されたとき、「地積区分表」という言葉を初めて耳にした方もいらっしゃるかもしれませんね。この表は、特に形が整っていない「不整形地」の価値を正しく評価し、相続税を計算するために欠かせない、とても大切なツールなんです。

「なんだか難しそう…」と感じるかもしれませんが、ご安心ください。この記事では、地積区分表とは何か、そしてどのように使って土地の評価額が決まるのかを、図や表を使いながら、一つひとつ丁寧に解説していきます。この記事を読めば、相続税申告における土地評価の基本がきっと分かりますよ。

地積区分表は不整形地の評価で使う大切なツール

相続税を計算するとき、土地の価値を金額に換算する「土地評価」という作業が必要になります。この土地評価において、地積区分表は特に「不整形地」の評価で重要な役割を果たします。

そもそも不整形地ってどんな土地?

不整形地(ふせいけいち)とは、その名の通り、形が整っていない土地のことです。きれいな正方形や長方形ではない、いびつな形の土地を指します。例えば、三角形の土地や、道路に接する部分が狭く奥に長い「旗竿地(はたざおち)」、L字型の土地などがこれにあたります。

なぜ不整形地は評価額が下がるの?

不整形地は、正方形や長方形の土地(整形地)と比べて、使い勝手が悪いことが多いです。家を建てようとしてもデッドスペースが生まれやすかったり、建築に制限がかかったりするため、同じ面積の整形地と比べると利用価値が低いと判断されます。そのため、相続税の計算では、その土地の使いにくさを考慮して評価額を減額する「評価減」が認められているんです。この評価減の割合を計算するために、地積区分表や後述する不整形地補正率表が使われます。

地積区分表の役割とは?

地積区分表の役割は、評価する土地の「規模」を判定することです。土地は、その地域(地区区分)や広さ(地積)によって、評価の仕方が少し変わります。地積区分表は、土地の所在地と面積をもとに、その土地が「A」「B」「C」のどの規模に分類されるかを判定するための表です。このA・B・Cの区分によって、最終的に評価額を減額する割合(不整形地補正率)が変わってくるため、非常に重要なステップになります。

地積区分表の見方と使い方【3ステップで解説】

それでは、実際にどのように地積区分表を使って不整形地の評価を進めるのか、具体的な流れを見ていきましょう。大きく分けて3つのステップで進めていきます。

ステップ1:あなたの土地の「地区区分」を調べる

まず最初に、評価対象の土地がどの「地区区分」に属しているかを調べます。地区区分とは、国税庁が土地の利用状況に応じて定めた分類のことで、「普通住宅地区」や「普通商業・併用住宅地区」など7つの種類があります。これは、国税庁のホームページで公開されている「路線価図」で確認することができます。

ステップ2:土地の面積と地区区分から「地積区分」を判定する

次に、ステップ1で調べた「地区区分」と、評価する土地の「面積(地積)」を使って、地積区分表に当てはめます。この表を見ることで、あなたの土地がA、B、Cのどれに該当するかが分かります。例えば、「普通住宅地区」で面積が450㎡の土地なら、地積区分は「A」になります。

ステップ3:「かげ地割合」を計算して不整形地補正率を求める

最後に、土地の形のいびつさの度合いを示す「かげ地割合」を計算します。かげ地割合とは、その不整形地をすっぽり囲む長方形(想定整形地)を描いたときに、土地からはみ出す部分(かげ地)が、長方形全体に占める割合のことです。このかげ地割合と、ステップ2で判定した地積区分(A, B, C)を使って、「不整形地補正率表」から評価額にかける補正率を求めます。この補正率が低いほど、評価額が大きく下がることになります。

地区区分ってどうやって調べるの?

地積区分表を見るための第一歩は、「地区区分」を正確に把握することです。ここでは、その調べ方と種類について詳しく見ていきましょう。

路線価図で確認しよう

地区区分は、国税庁のウェブサイトで公開されている「路線価図・評価倍率表」で確認できます。路線価図とは、道路ごとに1㎡あたりの土地の評価額(路線価)が示された地図のことです。路線価の数字の周りに記号が記載されており、その記号が地区区分を表しています。

記号 地区区分
円で囲まれている ビル街地区
ひし形で囲まれている 高度商業地区
四角で囲まれている 繁華街地区
何も囲まれていない 普通住宅地区
横長の楕円で囲まれている 普通商業・併用住宅地区
縦長の楕円で囲まれている 中小工場地区
六角形で囲まれている 大工場地区

地区区分の種類と特徴

地区区分は、その地域の特性を表しています。例えば「普通住宅地区」は一般的な住宅街、「高度商業地区」は容積率の高い大規模なビルが立ち並ぶ地域を指します。土地の利用価値が地域によって異なるため、このように区分けして評価方法を調整しているのです。

地積区分表の具体的な見方

地区区分が分かったら、いよいよ地積区分表を使って、土地の規模を判定します。表の見方はとてもシンプルですよ。

地積区分表を見てみよう

こちらが国税庁が定めている地積区分表です。縦軸に「地区区分」、横軸に「地積区分(A, B, C)」が並んでいます。

地区区分 地積区分
高度商業地区 A: 1,000㎡未満 / B: 1,000㎡以上1,500㎡未満 / C: 1,500㎡以上
繁華街地区 A: 450㎡未満 / B: 450㎡以上700㎡未満 / C: 700㎡以上
普通商業・併用住宅地区 A: 650㎡未満 / B: 650㎡以上1,000㎡未満 / C: 1,000㎡以上
普通住宅地区 A: 500㎡未満 / B: 500㎡以上750㎡未満 / C: 750㎡以上
中小工場地区 A: 3,500㎡未満 / B: 3,500㎡以上5,000㎡未満 / C: 5,000㎡以上

※大工場地区は原則として不整形地補正を行いません。

具体例で確認!地積区分の判定方法

例えば、相続した土地が「普通住宅地区」にあり、面積が「400㎡」だったとしましょう。上記の表の「普通住宅地区」の行を見てください。「500㎡未満」は地積区分「A」に該当しますね。したがって、この土地の地積区分は「A」と判定できます。もし同じ地区で面積が600㎡なら「B」、800㎡なら「C」となります。

不整形地の評価額を計算してみよう

地積区分が判定できたら、最終的な評価額の計算に進みます。ここでは、具体的な数字を使って計算の流れを見てみましょう。

計算の流れをおさらい

不整形地の評価額は、以下の式で計算するのが基本です。
整形地とした場合の評価額 × 不整形地補正率 = 不整形地の評価額

この「不整形地補正率」を求めるために、地積区分表が必要だったわけです。

具体例:普通住宅地区の土地を評価する場合

先ほどの例を引き続き使ってみましょう。

  • 地区区分:普通住宅地区
  • 土地の面積(不整形地):400㎡
  • 想定整形地の面積:500㎡
  • 整形地とした場合の評価額:5,000万円

1. 地積区分を判定する
地積区分表から、普通住宅地区で400㎡の土地は地積区分「A」と分かります。

2. かげ地割合を計算する
かげ地割合 = (想定整形地の地積 – 不整形地の地積) ÷ 想定整形地の地積
(500㎡ – 400㎡) ÷ 500㎡ = 0.2
つまり、かげ地割合は20%です。

3. 不整形地補正率表で補正率を探す
「普通住宅地区」「地積区分A」「かげ地割合20%」の条件で不整形地補正率表を見ると、補正率は「0.94」となります。

4. 評価額を計算する
5,000万円(整形地とした場合の評価額) × 0.94(不整形地補正率) = 4,700万円

このように、不整形地補正を行うことで、評価額が300万円下がりました。これが相続税の節税につながるのです。

不整形地補正率表の見方

不整形地補正率は、地区区分ごとに表が分かれています。以下は普通住宅地区の抜粋です。

かげ地割合 地積区分
A / B / C
10%以上 0.98 / 0.99 / 0.99
15%以上 0.96 / 0.98 / 0.99
20%以上 0.94 / 0.97 / 0.98
25%以上 0.92 / 0.95 / 0.97

まとめ

今回は、相続税の土地評価で使われる「地積区分表」について詳しく解説しました。地積区分表は、不整形地の評価額を正しく計算し、適切な評価減を受けるために不可欠なツールです。一見複雑に見えるかもしれませんが、ステップを追って確認していけば、仕組みをご理解いただけたのではないでしょうか。

地積区分表を使って土地の規模を判定し、かげ地割合を計算して不整形地補正率を適用することで、相続税の負担を軽減できる可能性があります。ただし、想定整形地の取り方やかげ地割合の計算は専門的な知識が必要で、少しの間違いが評価額に大きく影響することもあります。

もし、ご自身の土地の評価に不安を感じたり、計算が難しいと感じたりした場合は、無理せず相続税に詳しい税理士などの専門家にご相談することをおすすめします。専門家の力を借りることで、安心して適正な申告ができますよ。

参考文献

財産評価基準書 宅地及び宅地の上に存する権利の評価についての画地調整

地積区分表のよくある質問まとめ

Q. 地積区分表とは何ですか?

A. 地積区分表は、相続税や贈与税の申告で土地を評価する際に使用される書類です。一団の土地を評価単位ごとに区分し、それぞれの面積や利用状況を明確にするために作成します。

Q. なぜ地積区分表を作成する必要があるのですか?

A. 土地の評価額を正しく計算するために必要です。特に、複数の利用形態が混在する土地や、形状が複雑な土地の場合、評価単位を明確に分けることで、正確な相続税評価額を算出できます。

Q. 地積区分表は誰が作成するのですか?

A. 相続税申告を行う相続人自身や、依頼を受けた税理士が作成するのが一般的です。土地家屋調査士や不動産鑑定士に作成を依頼する場合もあります。

Q. 地積区分表はどのような時に必要になりますか?

A. 主に相続税や贈与税の申告で、土地の財産評価を行う際に必要となります。特に広大な土地や、複数の地番にまたがる土地、利用状況が複雑な土地の評価には不可欠です。

Q. 地積区分表の作成にはどのような資料が必要ですか?

A. 公図、地積測量図、登記簿謄本(登記事項証明書)、住宅地図などが必要です。これらの資料をもとに、土地の形状、面積、利用状況などを確認し、表を作成します。

Q. 地積区分表は自分で作成できますか?

A. 簡単な土地であればご自身で作成することも可能ですが、土地の評価単位の判断は専門的な知識を要します。評価が複雑な場合や正確性に不安がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。

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