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通路拡幅部分の地積算定方法とは?相続税評価の減額ポイント解説

2025-01-12
目次

ご家族から土地を相続したとき、その土地が道路に少ししか接していない場合がありますよね。そういった土地は、使い勝手が悪いため、相続税を計算するときの評価額が低くなる可能性があります。その評価減の計算で重要になるのが「通路拡幅部分の地積の算定方法」です。少し難しく聞こえるかもしれませんが、これは建物を建てるために必要な通路を確保するという仮定で行う計算のことです。この記事では、通路拡幅部分の地積の計算方法から、それがどのように相続税評価額に影響するのかまで、優しく丁寧に解説していきますね。

接道義務を満たさない宅地と通路拡幅の考え方

土地の価値を決めるとき、道路にどのように接しているかはとても大切なポイントです。特に相続税の土地評価では、「接道義務」というルールが深く関わってきます。まずは、通路拡幅の計算が必要になる「接道義務を満たさない宅地」とは何か、基本から見ていきましょう。

相続税評価の基本「接道義務」ってなあに?

接道義務」とは、建物を建てる敷地が、法律で定められた道路に一定の長さ以上接していなければならない、という建築基準法上のルールのことです。これは、火災が起きたときの消防活動や、日々の安全な通行を確保するためにとても重要なんです。

具体的には、原則として「幅員4メートル以上の建築基準法上の道路に、2メートル以上接していること」が求められます。この義務は、都市計画区域や準都市計画区域内にある土地に適用されます。また、自治体によっては、さらに厳しい独自のルールを条例で定めていることもあります。例えば、東京都では「東京都建築安全条例」により、路地状部分の長さが20メートルを超える場合は、3メートル以上の間口が必要になるなど、地域ごとの確認が欠かせません。

「無道路地」と「接道義務を満たさない宅地」の違い

評価が下がる土地には、似たような言葉がいくつかあります。「無道路地」と「接道義務を満たさない宅地」もその一つです。どちらも建物の建築や建て替えに制限がかかるため評価額は下がりますが、少し意味が違います。

種類 特  徴
無道路地 建築基準法上の道路に全く接していない宅地のことです。
接道義務を満たさない宅地 道路には接しているものの、その間口が2メートル未満など、法律や条例の要件を満たしていない宅地のことです。

今回のテーマである「通路拡幅」の計算は、主に後者の「接道義務を満たさない宅地」の評価で使われます。

なぜ通路拡幅部分の評価が必要なの?

では、なぜ通路を拡幅するという仮定で計算するのでしょうか。それは、接道義務を満たしていない土地は、そのままだと建物を建てられないなど、利用価値が大きく制限されているからです。その土地を有効活用するためには、隣の土地の一部を買い取るなどして、法律で定められた間口(例えば2メートル)を確保する必要がありますよね。

そこで相続税評価では、その「通路を拡幅するためにかかる費用」に相当する金額を、土地の評価額から差し引くことで、利用が制限されているというマイナス面を評価額に正しく反映させるのです。この考え方が、通路拡幅部分の評価の基本となります。

通路拡幅部分の地積を算定する4つのステップ

それでは、具体的に通路拡幅部分の地積の算定方法を4つのステップに分けて見ていきましょう。一つひとつ順番に確認すれば、決して難しくありませんよ。

ステップ1:法律で定められた「必要な間口」を確認する

最初に、その土地がある地域のルールを確認します。建築基準法では原則2メートルですが、先ほどお話ししたように、自治体の条例でより広い間口が求められる場合があります。例えば、路地状敷地(旗竿地)の場合、通路部分の長さによって必要な間口が変わることが多いです。土地がある市区町村の役所(建築指導課など)に問い合わせて、その土地に適用される「必要な間口」の長さを正確に把握しましょう。

ステップ2:拡幅しなければいけない「幅」を計算する

次に、どれくらいの幅を拡幅する必要があるのかを計算します。計算はとてもシンプルです。

計算式:必要な間口 − 現在の間口 = 拡幅する幅

例えば、必要な間口が2メートルで、実際の土地の間口が1.6メートルだった場合は、2メートル − 1.6メートル = 0.4メートルとなり、0.4メートル分の幅を拡幅する必要があるとわかります。

ステップ3:通路の「奥行き(長さ)」を決める

拡幅する通路の奥行き(長さ)は、どこまでの距離にするかを決めます。一般的には、道路から宅地の本体部分(家が建っている、または建てられる四角い部分)に至るまでの距離となります。いわゆる旗竿地であれば、竿の部分の長さがこの「奥行き」にあたります。

ステップ4:通路拡幅部分の「地積」を計算する

最後に、ステップ2で計算した「拡幅する幅」と、ステップ3で決めた「通路の奥行き」を掛け合わせることで、通路拡幅部分の地積(面積)が算出できます。

計算式:拡幅する幅 × 通路の奥行き = 通路拡幅部分の地積

例えば、拡幅する幅が0.4メートル、通路の奥行きが15メートルであれば、0.4メートル × 15メートル = 6平方メートルが通路拡幅部分の地積となります。

通路拡幅部分の価額を計算して評価額に反映させよう

通路拡幅部分の地積が計算できたら、次はその価値、つまり「価額」を算出して、最終的な土地の評価額を計算します。ここが節税のクライマックスです。

通路拡幅部分の価額の計算式

通路拡幅部分の価額は、以下の式で計算します。ここで使う路線価は、その土地が面している道路に設定された「正面路線価」です。

計算式:正面路線価 × 通路拡幅部分の地積 = 通路拡幅部分の価額

例えば、正面路線価が1平方メートルあたり200,000円で、通路拡幅部分の地積が6平方メートルなら、200,000円 × 6平方メートル = 1,200,000円となります。この120万円が、土地の評価額から差し引ける金額になります。

ここで大切なポイントは、この計算では奥行価格補正などの各種補正は行わないということです。あくまで正面路線価に地積を掛けるだけのシンプルな計算です。

無道路地評価における控除額の上限

完全に道路に接していない「無道路地」を評価する場合、通路を開設する費用(通路部分の価額)を控除できますが、これには上限が設けられています。具体的には、「不整形地補正などを行った後の宅地の価額の40%」までしか控除できません。

一方、今回解説している「接道義務を満たしていない宅地」の通路「拡幅」部分の価額控除については、この40%ルールが厳密に適用されるわけではありません。しかし、評価の考え方としては無道路地に準じるため、実務上はこのルールも念頭に置いておく必要があります。

具体的な評価額の計算の流れ

実際に評価額を出す流れを、簡単な表にまとめてみました。

項目 計算内容
①土地本来の評価額(各種補正後) まずは、通路拡幅のことは考えずに、不整形地補正などを適用して土地全体の評価額を計算します。
②通路拡幅部分の価額 先ほど計算した「正面路線価 × 通路拡幅部分の地積」で、控除額を算出します。
③最終的な評価額 ①の評価額から、②の価額を差し引きます。この金額が相続税の課税対象となる評価額です。

この計算により、土地の利用制限が評価額にしっかりと反映され、相続税の負担を適正にすることができるのです。

通路拡幅部分の算定で失敗しないための注意点

通路拡幅部分の地積算定は、手順通りに進めれば難しくありませんが、いくつか注意しておきたいポイントがあります。ここを押さえないと、評価額を間違えてしまう可能性があるので、しっかり確認しましょう。

どの道路から拡幅するか

土地が複数の道路に接する可能性がある場合、どの道路から通路を拡幅するかによって正面路線価が変わり、評価額に影響が出ることがあります。このような場合は、原則として「実際に利用している路線」や「最も合理的に通路を開設できる路線」を基準に考えるのが基本です。どちらを選ぶべきか判断に迷う場合は、専門家のアドバイスを求めるのが安心です。

自治体の条例を必ず確認すること

これは何度もお伝えしていますが、非常に重要なポイントです。接道義務は建築基準法だけでなく、各自治体の条例でより厳しい基準(例えば、必要な間口が3メートル以上など)が設けられていることが少なくありません。土地の所在地の役所のウェブサイトを確認したり、建築指導課などに直接問い合わせたりして、最新の条例の内容を必ず確認するようにしてください。

隣接地と一体利用できる場合は評価減ができない

もし、通路として拡幅する部分にあたる隣接地を、土地の所有者自身が持っている場合や、今回の相続によって同じ人が所有することになる場合は注意が必要です。このケースでは、わざわざ通路部分を買い取る必要がなく、一体として利用できるため、通路拡幅による評価減は適用できません。これは見落としがちなポイントなので、土地の所有関係をしっかり確認しましょう。

土地評価が難しいと感じたら専門家へ相談を

ここまで通路拡幅部分の地積の算定方法について解説してきましたが、土地の相続税評価は、これ以外にも不整形地補正やがけ地補正など、さまざまな専門的なルールが絡み合ってきます。どの補正を適用できるかの判断や、複雑な形状の土地の計算は、専門家でないと難しい場合がほとんどです。

もし計算を間違えてしまうと、相続税を本来より多く納めてしまったり、逆に少なく申告してしまい後から税務調査で指摘され、延滞税などのペナルティが課せられたりするリスクもあります。少しでも不安に感じたら、土地評価に詳しい税理士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家に依頼すれば、適用できる評価減を漏れなく適用し、適正な評価額を算出してくれるので安心ですよ。

まとめ

今回は、通路拡幅部分の地積の算定方法について、その考え方から具体的な計算手順、注意点まで詳しく解説しました。最後に、大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。

  • 道路への間口が狭いなど「接道義務」を満たさない宅地は、評価額を減額できる可能性があります。
  • 評価減の計算では、法律で定められた間口まで通路を拡幅すると仮定します。
  • 通路拡幅部分の地積は「拡幅する幅 × 通路の奥行き」で計算します。
  • 評価額から控除できる金額は「正面路線価 × 通路拡幅部分の地積」で算出します。
  • 計算の前提となる接道義務のルールは、必ず自治体の条例も確認しましょう。

土地の評価は、相続税額に直接影響する非常に重要な作業です。この記事が、あなたの土地の適正な評価に役立てば嬉しいです。もし手続きで迷うことがあれば、一人で悩まず専門家の力を借りることも検討してくださいね。

参考文献

通路拡幅部分の地積算定に関するよくある質問まとめ

Q.建築基準法のセットバック(通路拡幅)とは何ですか?

A.建築基準法で定められた幅4m未満の道路に接する土地で、建物を建てる際に道路の中心線から2m後退させる決まりです。この後退した部分が通路拡幅部分となり、建ぺい率や容積率の計算から除外されます。

Q.なぜ通路拡幅部分の地積を算定する必要があるのですか?

A.通路拡幅部分(セットバック部分)は、固定資産税や都市計画税が非課税または減免される対象となるためです。また、土地の売買や分筆登記の際にも、正確な敷地面積を確定させるために算定が必要になります。

Q.通路拡幅部分の地積はどのように計算するのですか?

A.最も基本的な計算方法は、後退する距離(幅)に、道路に接している土地の間口(長さ)を掛けて算出します。例えば、後退距離が0.5mで間口が10mの場合、0.5m × 10m = 5平方メートルとなります。

Q.道路の角にある土地(隅切り)の場合、地積の計算方法は変わりますか?

A.はい、変わります。隅切り部分は、角を頂点とする二等辺三角形として地積を計算するのが一般的です。自治体の条例によって隅切りの形状や寸法が定められているため、事前の確認が必要です。

Q.通路拡幅部分の地積算定は自分でもできますか?

A.概算であればご自身でも計算可能ですが、登記や税金の減免申請など、公的な手続きで正確な地積が必要な場合は、土地家屋調査士などの専門家に測量を依頼するのが一般的です。

Q.地積の算定に必要な資料にはどのようなものがありますか?

A.公図、地積測量図、全部事項証明書(登記簿謄本)などが必要です。これらの資料を基に、現地の状況と照らし合わせて正確な測量と計算が行われます。資料は法務局で取得できます。

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