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法人保険の種類と損金算入ルール!節税効果はあるの?

2024-11-25
目次

会社の経営者様や経理担当者様の中には、「法人保険で節税ができるって本当?」「どんな種類の保険なら損金にできるの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。法人保険は、万が一の備えだけでなく、会社の財務戦略にも関わる大切なポイントです。しかし、特に2019年の税制改正以降、そのルールは少し複雑になりました。この記事では、法人が加入する生命保険の種類と、保険料を損金にできるかどうかのルールについて、わかりやすく丁寧にご紹介しますね。

法人保険の基本的な種類

まず、法人が契約する保険にはどんな種類があるのか見ていきましょう。法人保険は、会社のさまざまなリスクに備えるためのもので、目的によって大きく3つの分野に分けられます。

生命保険(第一分野)

経営者や従業員の「万が一」に備えるのが生命保険です。もし経営者の方が亡くなったり、重い障がいを負ったりした場合、会社の経営に大きな影響が出ることがありますよね。そんな時に、事業を守るためのお金(事業保障資金)や、借入金の返済資金を確保するのが主な目的です。代表的なものには、定期保険や養老保険、終身保険などがあります。

損害保険(第二分野)

事業活動の中で起こるさまざまな事故に備えるのが損害保険です。例えば、火災で社屋や設備が損害を受けたり、業務中の事故で第三者に損害を与えてしまい賠償責任を負ったりするリスクに備えます。火災保険や自動車保険、賠償責任保険などがこれにあたります。

第三分野の保険

経営者や従業員が病気やケガをした場合に備えるのが第三分野の保険です。生命保険と損害保険の中間のような位置づけで、医療保険やがん保険、介護保険などが含まれます。役員や従業員の福利厚生を手厚くする目的で活用されることも多いんですよ。

法人保険の保険料は損金にできる?基本ルールを解説

法人保険を検討する上で最も気になるのが、「支払った保険料が損金(経費)になるのか」という点ですよね。保険料を損金に算入できれば、その分会社の利益が圧縮され、結果的に法人税の負担を軽くすることができます。ただし、これは厳密には「節税」というより「課税の繰り延べ」という考え方が近いです。将来、保険を解約して解約返戻金を受け取った際には、そのお金は会社の利益(益金)として課税対象になるからです。この損金算入のルールは、2019年7月の税制改正で大きく変わりました。

2019年の税制改正で何が変わった?

以前は、貯蓄性が高い保険でも保険料の全額や半分を損金にできる商品が多くあり、それが「節税保険」として広く活用されていました。しかし、その状況を見直すため、国税庁は新しいルールを設けました。この改正のポイントは、「最高解約返戻率」に応じて、損金にできる割合が変わるようになったことです。最高解約返戻率とは、保険期間全体を通して、支払った保険料の累計額に対して解約返戻金が最も高くなる割合のことを指します。

最高解約返戻率に応じた損金算入ルール

新しいルールでは、貯蓄性の高さ(=最高解約返戻率の高さ)に応じて、保険料の経理処理が細かく定められました。具体的には、主に定期保険や第三分野保険が対象となり、以下のように分類されます。

最高解約返戻率 損金算入ルールの概要
50%以下 支払保険料の全額を損金に算入できます。
50%超~70%以下 保険期間の前半40%の期間は、支払保険料の60%を損金に、残りの40%を資産として計上します。
70%超~85%以下 保険期間の前半40%の期間は、支払保険料の40%を損金に、残りの60%を資産として計上します。
85%超 さらに細かなルールが適用され、損金にできる割合が低くなります。例えば、契約から10年間は支払保険料に最高解約返戻率を掛けた金額の10%しか損金にできません。

このように、解約返戻率が高い、つまり貯蓄性が高い保険ほど、契約当初に損金にできる金額が少なくなる仕組みになっています。

【種類別】生命保険の損金算入ルール

それでは、もう少し具体的に保険の種類ごとに損金算入のルールを見ていきましょう。経理処理は保険の種類や契約形態によって大きく異なります。

定期保険・第三分野保険

定期保険や医療保険などの第三分野保険は、基本的に先ほどご説明した「最高解約返戻率」に応じたルールが適用されます。ただし、例外として「30万円以下の特例」というものがあります。これは、被保険者1人あたりの年間の支払保険料の合計が30万円以下で、かつ最高解約返戻率が70%以下の保険であれば、支払保険料の全額を損金として処理できるというものです。

養老保険

養老保険は、死亡保障と貯蓄の両方の性質をあわせ持った保険です。この保険は、死亡保険金と満期保険金の受取人を誰にするかによって、経理処理が全く異なります。

契約形態(死亡保険金受取人/満期保険金受取人) 経理処理
法人/法人 貯蓄性が非常に高いため、支払保険料は全額資産計上となり、損金にはなりません。
被保険者の遺族/法人(福利厚生プラン) 全従業員を対象とするなどの一定の要件を満たせば、支払保険料の2分の1を損金(福利厚生費)に、残りの2分の1を資産として計上できます。
被保険者の遺族/役員・従業員 保険料は役員や従業員への給与として扱われるため、全額損金になります。ただし、受け取った側では所得税の対象となります。

終身保険

終身保険は、保障が一生涯続く貯蓄性の高い保険です。そのため、支払った保険料は原則として全額が資産計上となり、損金に算入することはできません。会社の資産形成の一環として活用されることはありますが、法人税の負担を軽くする目的には向いていないと言えるでしょう。

法人保険を活用するメリット

損金算入による課税の繰り延べも魅力的ですが、法人保険にはそれ以外にも経営に役立つたくさんのメリットがあります。

事業保障資金の確保

もし会社の経営に不可欠な経営者の方に万が一のことがあった場合、会社の信用が低下したり、金融機関からの借入金の返済を求められたりすることがあります。生命保険に加入していれば、死亡保険金を当面の運転資金や借入金の返済に充てることができ、会社の危機を乗り越えるための事業保障資金として役立ちます。

役員・従業員の退職金準備

貯蓄性のある保険を活用すれば、計画的に退職金の準備を進めることができます。経営者が勇退するタイミングに合わせて保険を解約し、その解約返戻金を退職金として支払う「出口戦略」は、多くの企業で活用されています。保険料の一部を損金にしながら、将来必要な資金を準備できるのは大きなメリットですね。

事業承継対策

事業承継の際には、後継者が先代の経営者から自社株を買い取るための資金や、相続税の納税資金が必要になることがあります。法人保険の死亡保険金や解約返戻金をこれらの事業承継資金に充てることで、スムーズな世代交代をサポートすることができます。

法人保険に加入する際の注意点

メリットの多い法人保険ですが、加入する前にはいくつか注意しておきたい点もあります。後で「こんなはずではなかった」とならないように、しっかり確認しておきましょう。

キャッシュフローの悪化

保険料の支払いは、毎月または毎年、会社の現金が外に出ていくことを意味します。保障内容を手厚くすればするほど、保険料の負担は大きくなります。会社の業績が良い時は問題なくても、将来的に業績が悪化した際に、保険料の支払いが資金繰りを圧迫する可能性があります。長期的に無理なく支払いを続けられるかを慎重に検討することが大切です。

解約返戻金の受け取り時に課税される

これはとても重要なポイントですが、保険料を損金に算入することは、あくまで「課税の繰り延べ」です。保険を解約して解約返戻金を受け取った年度には、その全額(または一部)が会社の利益(雑収入)として計上され、法人税が課税されます。そのため、退職金の支払いや大きな設備投資など、解約返戻金を受け取る年度に大きな損金が発生するような「出口戦略」をあらかじめ計画しておく必要があります。

解約時期によっては元本割れの可能性も

貯蓄性のある保険でも、契約してすぐの時期に解約してしまうと、解約返戻金がそれまでに支払った保険料の総額を下回ってしまう「元本割れ」のリスクがあります。解約返戻率が最も高くなるピークの時期は保険商品によって異なりますので、いつ解約すれば損をしないのかを事前に確認しておくことが重要です。

まとめ

今回は、法人が加入する生命保険の種類と損金算入のルールについてご紹介しました。2019年の税制改正によって、以前のような高い節税効果を期待することは難しくなりましたが、法人保険は今でも事業保障退職金準備事業承継対策など、会社の未来を守るための強力なツールであることに変わりはありません。大切なのは、自社の目的を明確にし、その目的に合った保険商品を選ぶことです。損金算入のルールは複雑な部分もありますので、この記事を参考にしながら、ぜひ専門家にも相談して、会社にとって最適な保険活用を検討してみてくださいね。

参考文献

国税庁 No.5364 定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)

国税庁 No.5364-2 定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合)の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)

国税庁 No.5363 養老保険の保険料の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)

法人向け生命保険の損金計上に関するよくある質問まとめ

Q.法人保険はすべて経費(損金)にできますか?

A.すべてが経費(損金)になるわけではありません。保険の種類や契約形態によって、全額損金、1/2損金、資産計上など経理処理が異なります。専門家への確認が必要です。

Q.全額損金になる法人保険にはどんな種類がありますか?

A.保険期間が短く、解約返戻金がごくわずかな掛け捨ての定期保険や医療保険などが該当します。ただし、最高解約返戻率などの条件によっては全額損金にならない場合もあるため注意が必要です。

Q.従業員の福利厚生で加入する保険は損金になりますか?

A.役員や従業員が全員加入するなどの一定の要件を満たす養老保険(ハーフタックスプラン)は、支払保険料の半分を福利厚生費として損金に算入できます。

Q.貯蓄性のある保険(養老保険など)の保険料はどう処理しますか?

A.満期保険金受取人が法人、死亡保険金受取人が被保険者の遺族である場合、一般的に支払保険料の1/2を資産に計上し、残りの1/2を損金として処理します。受取人によって経理処理は大きく異なります。

Q.保険を解約したときの解約返戻金には税金がかかりますか?

A.はい、かかります。解約返戻金は雑収入として益金に算入され、他の利益と合算して法人税の課税対象となります。それまで資産計上していた保険料積立金を取り崩すため、その差額が課税所得になります。

Q.役員退職金の準備で生命保険を使うメリットは何ですか?

A.保険料を損金に算入しながら、計画的に退職慰労金を準備できる点が大きなメリットです。解約返戻金を退職金支払いの原資に充てることで、会社のキャッシュフローへの影響を平準化できます。

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