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相続した隣接地で旗竿地の間口が拡幅!評価減は適用不可?

2024-11-23
目次

相続で土地を受け継ぐ際、その土地が「旗竿地」だと評価が複雑になりますよね。特に、今回の相続で旗竿地の隣の土地も一緒に相続することになった場合、「通路が広くなるから、旗竿地としての評価減は使えなくなるの?」と疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。このケース、実は評価の仕方に大切なポイントがあるんです。今回は、旗竿地と隣接地を同じ人が相続した場合の土地評価について、わかりやすく解説していきます。

そもそも旗竿地(はたざおち)とは?評価の基本

まずは、旗竿地とはどのような土地なのか、そしてなぜ相続税評価において特別な扱いを受けるのか、基本からおさらいしましょう。

旗竿地ってどんな土地?

旗竿地とは、その名の通り、竿のついた旗のような形をした土地のことです。道路(公道)に接している部分(間口)が細長い通路状になっていて、その奥に家などを建てるためのまとまった敷地が広がっています。竿にあたる部分が「路地状部分」、旗にあたる部分が「有効宅地部分」と呼ばれます。

なぜ旗竿地は評価が低くなるの?

旗竿地は、きれいな四角形の土地(整形地)と比べて、一般的に利用価値が低いと判断されるため、相続税評価額が低くなる傾向にあります。利用価値が低いと判断される主な理由は以下の通りです。

  • 車の出し入れがしにくい、駐車スペースが限られる
  • 日当たりや風通しが悪くなることがある
  • 重機が入りにくく、建築や解体のコストが割高になることがある
  • 周りを他の土地に囲まれているため、プライバシーや防犯面で不安がある

こうしたデメリットを考慮して、相続税評価ではさまざまな評価減の補正が適用されるのです。

旗竿地の基本的な評価方法

旗竿地のような不整形な土地は、路線価(道路に面した土地1㎡あたりの価額)を基準に、その土地の形状や条件に応じて評価額を補正(減額)して計算します。具体的には、以下のような補正が関係してきます。

  • 奥行価格補正:奥行きが標準的な長さに比べて長すぎたり短すぎたりする場合の補正
  • 不整形地補正:土地の形がいびつな場合の補正
  • 間口狭小補正:道路に接する間口が狭い場合の補正
  • 奥行長大補正:間口に対して奥行きが長すぎる場合の補正

特に「間口狭小補正」は、旗竿地の評価において重要なポイントとなります。

今回のケース:旗竿地と隣接地を同時に相続した場合

それでは本題です。相続によって、旗竿地とその通路部分に隣接する土地を、同じ一人の相続人が所有することになったケースを考えてみましょう。この場合、旗竿地特有の評価減は適用できるのでしょうか。

評価の原則は「一体利用」できるかどうか

相続税の土地評価では、複数の土地を同じ人が所有する場合、「一体として利用するのが合理的かどうか」という視点で評価の単位(1つの土地として見るか、別々の土地として見るか)を判断します。物理的に隣接していて、一緒に使うことで土地の価値が上がるような場合は、原則として「一体の土地」として評価されることになります。

通路拡幅で「旗竿地」ではなくなる?

今回のケースでは、旗竿地の通路部分と、相続した隣接地を一体として利用できます。つまり、隣接地の一部を通路として使うことで、実質的に間口を広げることが可能です。わざわざ隣地を買い取らなくても、通路を拡幅できる状態になるわけです。
このように、旗竿地特有のデメリットである「間口の狭さ」が解消されるため、税務上はもはや「旗竿地」とは見なされず、2つの土地を合わせた「一つの土地」として評価するのが原則となります。

通路拡幅による評価減が「適用できない」ケースとは

一体利用が合理的と判断されると、その土地は「間口が狭い土地」ではなくなります。そのため、間口狭小補正や不整形地補正といった、旗竿地であることを前提とした評価減は適用できなくなります。相続によって隣接地も自分のものになり、自由に通路を広げられるのですから、旗竿地としての不便さがなくなる、と考えるわけです。

評価単位の判断が重要!一体評価のポイント

では、どのような場合に「一体評価」されるのでしょうか。判断のポイントは以下の通りです。

所有者が同じになること

大前提として、旗竿地とそれに隣接する土地が、今回の相続によって同じ相続人の所有物になることが必要です。もし遺産分割の結果、別々の人が相続することになれば、この考え方は当てはまりません。

土地が隣接していること

当然ですが、2つの土地が物理的に隣り合っており、一体として利用できる位置関係にあることが求められます。通路部分を拡幅できるような隣接の仕方をしていることがポイントです。

一体利用の合理性

隣接地と一体にすることで、土地の利用価値が明らかに高まる場合は、「一体利用が合理的」と判断されやすくなります。例えば、以下のようなケースです。

  • 通路の幅が広がり、車の出入りが格段に楽になる
  • 建築基準法で定められた接道義務(原則として幅員4m以上の道路に2m以上接すること)を満たせるようになる
  • より大きな建物を建てられるようになる

このような場合、別々に利用するよりも一体で利用する方が明らかに価値が上がるため、一体評価の対象となります。

一体評価になった場合の評価額はどうなる?

一体評価されることになった場合、評価額の計算はどのように変わるのでしょうか。ここが最も気になる部分だと思います。

2つの土地を合わせた「1つの土地」として評価

一体評価では、旗竿地(A)と隣接地(B)を個別に評価するのではなく、2つを合算した全体の土地(A+B)を「1つの画地(かくち)」として評価します。旗竿地という不整形な土地ではなく、より形の整った、価値の高い土地として評価されることになります。

評価額が上がる可能性も

旗竿地としての評価減が適用されなくなるため、多くの場合、それぞれの土地を別々に評価した合計額よりも、一体評価した後の評価額の方が高くなります。これは相続税額に直接影響するため、非常に重要なポイントです。

評価額のイメージ比較

評価方法による違いを、下の表でイメージしてみてください。

評価方法 特  徴
個別評価(所有者が別々の場合) 旗竿地は間口が狭い土地として評価減を適用。それぞれの評価額の合計が全体の評価額となる。
一体評価(所有者が同じ場合) 旗竿地と隣接地を一つの土地として評価。旗竿地としての評価減は適用されないため、全体の評価額は高くなる傾向がある。

注意点と専門家への相談

この評価方法には、いくつか注意すべき点があります。自己判断で進めてしまうと思わぬ落とし穴にはまる可能性もあるため、慎重な対応が必要です。

遺産分割によっては評価方法が変わる

最も重要な注意点は、誰がどの土地を相続するかで評価額が大きく変わることです。もし遺産分割協議の結果、旗竿地をAさんが、隣接地をBさんが相続するように、別々の人が所有することになった場合はどうでしょう。この場合、一体利用はできませんので、それぞれを独立した土地として評価します。つまり、旗竿地は評価減が適用されたままの評価額となります。

状況 評価方法
旗竿地と隣接地を同じ人が相続 原則として一体評価(評価減は適用されにくい)
旗竿地と隣接地を別々の人が相続 個別評価(旗竿地は評価減を適用)

このように、遺産分割の方針次第で相続税評価額、ひいては納税額が変わる可能性があるため、分割協議を進める前に、どのような分け方が最も有利になるかを検討することが大切です。

自己判断は危険!税理士に相談を

土地の評価、特にどの範囲を一つの土地として評価するかという「評価単位」の判断は、非常に専門的で複雑です。仮に一体評価すべきところを個別評価で申告してしまうと、後の税務調査で申告漏れを指摘され、延滞税や過少申告加算税といったペナルティが課されるリスクがあります。
逆に、本当は個別評価できるケースなのに一体評価してしまい、相続税を払い過ぎてしまう可能性もゼロではありません。このような事態を避けるためにも、相続財産に旗竿地と隣接地が含まれる場合は、必ず相続税に詳しい税理士に相談しましょう。

まとめ

今回は、相続によって旗竿地とそれに隣接する土地を同じ人が所有することになった場合の評価方法について解説しました。ポイントをまとめます。

  • 旗竿地と隣接地を同じ人が相続する場合、原則として「一体評価」されます。
  • 一体利用が合理的と判断されると、通路が拡幅された状態とみなされ、旗竿地としての間口狭小などの評価減は適用できません
  • 結果として、別々に評価するよりも全体の評価額が上がり、相続税が増える可能性があります。
  • 遺産分割で誰がどの土地を相続するかによって評価方法が変わるため、分割協議の前に専門家のアドバイスを受けることが非常に重要です。

複雑な土地評価は、ご自身で判断せずに、経験豊富な相続専門の税理士に相談し、最適な方法で申告手続きを進めるようにしてくださいね。

参考文献

国税庁 宅地の評価単位

国税庁 接道義務を満たしていない宅地の評価

旗竿地と隣接地を同時相続した場合の評価に関するよくある質問まとめ

Q.相続で旗竿地と隣接地が同一所有者になります。間口が狭いことによる評価減は適用できますか?

A.いいえ、原則として適用できません。旗竿地と隣接地が一体として利用できる場合、それらを一つの土地として評価するため、間口の狭さによる減額は考慮されません。

Q.なぜ一体の土地として評価されるのですか?

A.土地の評価は、最も合理的で経済的な利用を前提とします。旗竿地と隣接地を合わせることで土地の利用価値が最大限に高まるため、一つの土地(一体地)として評価するのが原則です。

Q.一体地として評価されると、計算はどう変わりますか?

A.2つの土地を合わせた全体の形状で評価します。これにより、旗竿地特有の間口狭小補正や不整形地補正などが適用されず、評価額が単独で評価するより高くなる可能性があります。

Q.別々に評価される例外的なケースはありますか?

A.はい。2つの土地の間に大きな高低差がある、間に水路が流れている、法令上の制約で一体利用が不可能など、物理的・法的に一体利用が著しく困難な場合は、別々の土地として評価されることがあります。

Q.相続開始時点では別人所有でしたが、遺産分割で同じ人が取得する場合はどうなりますか?

A.相続税評価は相続開始時点の現況で判断するのが原則です。相続開始時に所有者が異なっていた場合は、別々の土地として評価される可能性が高いです。ただし、評価単位の判断は複雑なため専門家への確認が必要です。

Q.評価方法について、どこに相談すればよいですか?

A.土地の評価、特に旗竿地や一体利用の判断は非常に専門的です。正確な評価のためには、相続税に詳しい税理士や不動産鑑定士に相談することをおすすめします。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
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対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。