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住宅取得等資金贈与とは?最大1000万円非課税!制度の要件や手続きを解説

2025-02-04
目次

マイホームの購入は大きな夢ですが、資金計画が大変ですよね。そんなとき、ご両親や祖父母から資金援助を受けられたらとても助かるものです。実は、住宅購入のための資金贈与には、「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」という、贈与税が一定額まで非課税になる、とてもお得な制度があるんです。この記事では、この制度について、誰が使えるのか、どんな要件があるのか、どうやって手続きするのかを分かりやすく解説していきます。

住宅取得等資金贈与の非課税特例とは?

「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」とは、ご自身の両親や祖父母など、直系尊属から、自分が住むための家を新築したり、購入したり、リフォーム(増改築)したりするためのお金をもらった場合に、一定の金額まで贈与税がかからなくなる制度のことです。通常、年間110万円を超える贈与には贈与税がかかりますが、この特例を使えば、より大きな金額を非課税で受け取ることができます。マイホームの初期費用を抑えることができる、とても心強い制度なんです。なお、この特例は令和8年12月31日までの贈与が対象となっています。

どれくらい非課税になる?非課税限度額をチェック

非課税になる金額は、購入する住宅の性能によって変わります。省エネ性能などが高い「質の高い住宅」かどうかで、非課税の限度額が大きく異なります。具体的には、以下のようになっています。

住宅の種類 非課税限度額
省エネ等住宅(質の高い住宅) 1,000万円
上記以外の一般住宅 500万円

質の高い住宅を選ぶことで、非課税枠が2倍になるのは大きなメリットですね。マイホームを検討する際は、住宅の性能にも注目してみてください。

省エネ等住宅とは?

非課税限度額が1,000万円になる「省エネ等住宅」とは、次のいずれかの基準を満たす住宅のことを指します。証明書などでその性能を証明する必要があります。

  • 省エネルギー性能:断熱等性能等級5以上 かつ 一次エネルギー消費量等級6以上(ZEH水準)であること。
  • 耐震性能:耐震等級2以上 または 免震建築物であること。
  • バリアフリー性能:高齢者等配慮対策等級3以上であること。

ただし、令和5年12月31日までに建築確認を受けた新築住宅や、令和6年6月30日までに建築された新築住宅については、断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上であれば対象となる経過措置があります。

誰が、どんな家なら使える?適用されるための要件

このお得な特例を利用するためには、お金をもらう人(受贈者)と、購入する住宅の両方で、いくつかの条件をクリアする必要があります。少し細かいですが、とても大切な部分なので、一つひとつ確認していきましょう。

お金をもらう人(受贈者)の主な要件

まず、贈与を受けるご自身に関する条件です。主に以下のような要件があります。

  • 贈与者が父母や祖父母などの直系尊属であること。(配偶者の父母や祖父母は対象外です)
  • 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること。
  • 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること。(※購入する住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下)
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、もらった資金の全額を住宅の購入などに使い、その住宅に居住すること。(遅くとも翌年末までに入居することが確実な場合も含まれます)
  • 配偶者や親族など、特別な関係にある人から住宅を取得したものではないこと。

対象となる住宅の主な要件

次に、購入したり新築したりする住宅に関する条件です。新築・取得の場合と、増改築(リフォーム)の場合で少し異なります。

新築または取得する場合

  • 日本国内にある住宅であること。
  • 住宅の登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下であること。
  • 床面積の2分の1以上が、ご自身の居住用であること。
  • 中古住宅の場合は、原則として昭和57年(1982年)1月1日以降に建築されたものであること。(それ以前の建物でも、新耐震基準に適合していると証明されればOKです)

増改築(リフォーム)する場合

  • 上記の床面積などの要件に加え、工事費用が100万円以上であること。
  • 工事費用の2分の1以上が、ご自身の居住部分の工事に使われていること。

手続きはどうすればいい?申告方法と必要書類

この特例を利用するために最も重要なポイントは、必ず贈与税の申告が必要だということです。たとえ計算した結果、贈与税が0円になったとしても、申告をしなければ特例は適用されません。申告を忘れると、後から多額の贈与税やペナルティが課せられる可能性があるので注意してください。申告は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、所轄の税務署で行います。

申告に必要な主な書類

申告の際には、贈与税の申告書と一緒に、以下のような書類を添付する必要があります。事前にしっかり準備しておきましょう。

  • 戸籍謄本:贈与者が直系尊属であることを証明するために必要です。
  • 源泉徴収票など:贈与を受けた年の合計所得金額を証明する書類です。
  • 登記事項証明書(登記簿謄本):取得した住宅の情報を証明します。
  • 売買契約書や工事請負契約書の写し:住宅の取得価格や契約日などを証明します。
  • 省エネ等住宅の証明書:非課税枠1,000万円の適用を受ける場合に必要です。(住宅性能証明書、建設住宅性能評価書の写しなど)

この他にも状況に応じて書類が必要になる場合がありますので、国税庁のホームページなどで確認してくださいね。

もっとお得に!他の制度との併用はできる?

住宅取得等資金贈与の非課税特例は、他の贈与税の制度と組み合わせることで、さらに非課税枠を広げることができます。代表的な2つの制度との併用について見ていきましょう。

暦年贈与との併用

贈与税には、誰でも年間110万円までなら税金がかからない「暦年贈与」の基礎控除があります。この特例は、暦年贈与と併用することができます。
例えば、省エネ等住宅を購入する場合、
1,000万円(住宅取得等資金贈与の非課税枠) + 110万円(暦年贈与の基礎控除) = 最大1,110万円
まで、贈与税をかけずに資金援助を受けることが可能になります。

相続時精算課税制度との併用

原則60歳以上の父母や祖父母からの贈与で利用できる「相続時精算課税制度」とも併用できます。この制度は、累計2,500万円までの贈与が非課税になる特別な制度です。(※)
この制度と住宅取得資金贈与の特例を組み合わせると、
1,000万円(住宅取得資金贈与) + 2,500万円(相続時精算課税の特別控除) + 110万円(相続時精算課税の基礎控除) = 最大3,610万円
まで、贈与の時点では税金がかからなくなります。
ただし、相続時精算課税制度の特別控除(2,500万円)を使って贈与された財産は、贈与者が亡くなったときに相続財産に加算して相続税を計算する必要があります。将来の相続税も考慮して、慎重に検討することが大切です。

まとめ

住宅取得等資金贈与の非課税の特例は、これからマイホームを建てる方にとって、非常に大きなメリットがある制度です。最大で1,000万円もの資金援助を非課税で受けられるのは、夢の実現への大きな後押しになりますよね。ただし、ご紹介したように、受贈者や住宅に関する細かい要件があり、期限内に贈与税の申告をすることが絶対条件です。利用を検討される際は、ご自身の状況が要件に当てはまるかを確認し、計画的に進めていきましょう。もし不明な点があれば、税務署や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

国土交通省 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置

住宅取得資金贈与のよくある質問まとめ

Q. 住宅取得資金贈与とは、どんな制度ですか?

A. 親や祖父母など直系尊属から住宅購入のための資金援助を受けた場合に、一定額まで贈与税が非課税になる制度です。

Q. 非課税で贈与できる金額はいくらですか?

A. 2024年1月1日以降の贈与では、省エネ等住宅の場合は1,000万円、それ以外の住宅の場合は500万円までが非課税限度額です。

Q. 誰でもこの制度を使えますか?

A. 贈与を受ける年の1月1日時点で18歳以上、合計所得金額2,000万円以下、贈与者の直系卑属(子や孫)であることなど、いくつかの要件を満たす必要があります。

Q. 中古住宅の購入でも利用できますか?

A. はい、中古住宅の購入でも利用可能です。ただし、床面積が40㎡以上240㎡以下であることや、一定の耐震基準を満たしていることなどの要件があります。

Q. 制度を利用するには確定申告が必要ですか?

A. はい、必ず必要です。贈与税が0円になる場合でも、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までの間に、必要書類を添付して税務署へ贈与税の申告をしなければなりません。

Q. 暦年贈与(年間110万円の非課税枠)と併用できますか?

A. はい、併用できます。住宅取得資金贈与の非課税枠とは別に、暦年贈与の基礎控除110万円も利用することが可能です。

事務所概要
社名
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

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