土地の価格を調べると、「公示価格」や「路線価」、「固定資産税評価額」など、いくつかの異なる価格が出てきて混乱したことはありませんか?実は、土地の価格は目的によって使い分けられており、それぞれ評価する人や時期、決め方が異なります。この記事では、この3つの主要な土地の価格について、誰がいつ、どのように決めるのか、そしてそれぞれの関係性や調べ方を分かりやすく解説します。相続や不動産の売買を考える上で大切な知識ですので、ぜひ最後までご覧ください。
土地の価格「一物五価」とは?
不動産の世界には「一物五価(いちぶつごか)」という言葉があります。これは、一つの土地に対して5つの異なる価格が存在することを示しています。具体的には以下の5つです。
- 実勢価格(時価):実際に市場で取引される価格
- 公示価格(地価公示価格):国が示す土地取引の目安となる価格
- 基準地価(都道府県基準地価格):都道府県が示す土地取引の目安となる価格
- 相続税路線価:相続税や贈与税を計算するための価格
- 固定資産税評価額:固定資産税などを計算するための価格
このように多くの価格が存在するのは、それぞれの価格が異なる目的で使われるためです。この記事では、この中でも特に重要で、耳にすることも多い「公示価格」「路線価」「固定資産税評価額」の3つに絞って詳しく見ていきましょう。
公示価格(地価公示価格)
公示価格は、国が公表する土地の価格で、土地取引の際の客観的な目安となるものです。いわば、土地の「公的な物差し」のような役割を果たしています。
誰が、いつ、どのように決めるの?
公示価格は、国土交通省の土地鑑定委員会が決定します。具体的には、以下のような流れで決められます。
- いつ:毎年1月1日時点の土地の価格を評価し、3月中旬ごろに公表します。
- どのように:全国に設定された「標準地」と呼ばれる調査地点について、2人以上の不動産鑑定士が鑑定評価を行います。その結果を土地鑑定委員会が審査し、調整した上で、1平方メートルあたりの正常な価格として決定されます。
何のために使われるの?
公示価格は、以下のような様々な場面で基準として利用されます。
- 一般の土地取引における価格の目安
- 金融機関が不動産を担保評価する際の参考
- 国や地方公共団体が公共事業用地を取得する際の価格算定の基準
- 後述する相続税路線価や固定資産税評価額を算出する際の基準
このように、公示価格は他の公的な土地評価の基礎となる非常に重要な価格です。
路線価(相続税路線価)
一般的に「路線価」という場合、相続税路線価を指します。これは、相続税や贈与税を計算する際に、土地の価額を評価するために使われるものです。その名の通り、道路(路線)に面する宅地の1平方メートルあたりの価格が定められています。
誰が、いつ、どのように決めるの?
相続税路線価は、国税庁が決定します。
- いつ:公示価格と同じく、毎年1月1日時点の土地の価格を評価し、7月1日に公表します。
- どのように:公示価格や売買実例価格、不動産鑑定士の意見などを参考に、公示価格の約80%の水準になるように評価・決定されます。税金の計算に用いるため、時価よりも少し低めに設定されているのが特徴です。
路線価がない地域はどうするの?
都市部から離れた地域など、路線価が定められていない場所もあります。そのような地域は「倍率地域」と呼ばれ、土地の評価方法が異なります。倍率地域では、以下の計算式で土地の評価額を算出します。
土地の評価額 = 固定資産税評価額 × 国税庁が定める倍率
この倍率は、国税庁のウェブサイトで確認することができます。
固定資産税評価額
固定資産税評価額は、固定資産税や都市計画税を課税するための基準となる価格です。その他にも、不動産取得税や登録免許税といった税金の計算にも用いられます。
誰が、いつ、どのように決めるの?
固定資産税評価額は、各市町村(東京23区の場合は東京都)が決定します。
- いつ:3年に1度、「評価替え」と呼ばれる見直しが行われます。この評価替えの基準日は、評価替えが行われる年の前年1月1日です。
- どのように:国が定めた「固定資産評価基準」に基づいて、各市町村が個別の不動産の評価額を決定します。土地の場合、公示価格の約70%を目安とする固定資産税路線価などを基に計算されます。
どこで確認できるの?
ご自身の土地や建物の固定資産税評価額は、毎年4月~6月ごろに市町村から送られてくる「固定資産税・都市計画税 納税通知書」に同封されている「課税明細書」で確認することができます。また、市町村役場の窓口で「固定資産評価証明書」を取得することでも確認可能です。
3つの価格を比較!関係性と調べ方まとめ
これまでご説明した「公示価格」「路線価」「固定資産税評価額」の3つの価格について、ポイントを表にまとめました。
| 価格の種類 | 公示価格 |
| 評価する人(機関) | 国土交通省(土地鑑定委員会) |
| 評価時点 | 毎年1月1日 |
| 公表時期 | 毎年3月中旬ごろ |
| 主な使い道 | 一般の土地取引の目安、公共事業用地の取得価格算定の基準など |
| 価格水準の目安 | 実勢価格(時価)と同程度 |
| 価格の種類 | 路線価(相続税路線価) |
| 評価する人(機関) | 国税庁 |
| 評価時点 | 毎年1月1日 |
| 公表時期 | 毎年7月1日 |
| 主な使い道 | 相続税、贈与税の計算 |
| 価格水準の目安 | 公示価格の約80% |
| 価格の種類 | 固定資産税評価額 |
| 評価する人(機関) | 市町村(東京23区は東京都) |
| 評価時点 | 3年に1度(基準年度の前年1月1日) |
| 公表時期 | 基準年度の4月1日から縦覧可能(納税通知書で確認) |
| 主な使い道 | 固定資産税、都市計画税、不動産取得税などの計算 |
| 価格水準の目安 | 公示価格の約70% |
これらの価格は、一般財団法人資産評価システム研究センターが運営する「全国地価マップ」で調べることができます。公示価格、相続税路線価、固定資産税路線価を地図上で確認できるので、大変便利です。
まとめ
今回は、「公示価格」「路線価」「固定資産税評価額」という3つの公的な土地の価格について解説しました。それぞれに評価する機関や目的、価格水準が異なり、私たちの税金や資産価値に深く関わっています。これらの違いを理解しておくことは、不動産の相続や売買、資産管理において非常に重要です。もし相続税の申告などで土地の評価額を正確に計算する必要がある場合は、複雑な計算や補正が必要になることも多いため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
参考文献
土地の価格(公示価格・路線価・固定資産税評価額)に関するよくある質問まとめ
Q. 公示価格は誰がいつ決めるのですか?
A. 国土交通省が、毎年1月1日時点の価格を評価し、3月下旬頃に公表します。一般の土地取引の目安として利用されます。
Q. 路線価とは何ですか?誰が決めるのですか?
A. 相続税や贈与税を計算する際に基準となる価格です。国税庁が決定し、毎年1月1日時点の価格を7月1日頃に公表します。
Q. 固定資産税評価額はどのように決まりますか?
A. お住まいの市町村(東京23区は都)が、3年に1度評価替えを行います。固定資産税や都市計画税などの税額計算の基になる価格です。
Q. 公示価格・路線価・固定資産税評価額の価格水準の違いは?
A. 一般的に、公示価格を100とすると、路線価はその約8割、固定資産税評価額は約7割が目安とされています。ただし、これはあくまで目安であり、個別の土地によって異なります。
Q. 自分の土地の価格を知る方法はありますか?
A. 公示価格や路線価は、それぞれ国土交通省や国税庁のウェブサイトで調べられます。固定資産税評価額は、毎年市区町村から送付される固定資産税の納税通知書で確認できます。
Q. なぜ土地の価格は一つではないのですか?
A. 利用目的が異なるためです。土地取引の目安、相続税の計算、固定資産税の計算など、それぞれの目的に応じて公平な評価を行うために、複数の価格指標が設定されています。