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非線引区域とは?土地活用の自由度と相続前に知りたい注意点を解説

2025-03-28
目次

ご実家やご自身の土地について調べたとき、「非線引区域」という言葉を目にしたことはありませんか?あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、土地の活用や相続を考える上でとても大切なキーワードなんです。ここでは、非線引区域がどのような土地なのか、メリットやデメリット、そして相続税との関わりについて、わかりやすくお話ししていきますね。

非線引区域とは?都市計画のキホンから理解しよう

非線引区域を理解するためには、まず日本の土地がどのように区分されているかを知るのが近道です。これは「都市計画法」という法律で定められています。

都市計画区域と都市計画区域外

日本の国土は、まず大きく2つに分けられます。

都市計画区域 計画的に街づくりを進めていくエリアです。人々が暮らしやすいように、建物のルールなどを定めています。
都市計画区域外 都市開発の予定が少なく、厳しい規制を設けていないエリアです。主に山林や原野などが該当します。

今回お話しする非線引区域は、この「都市計画区域」の中にあります。

市街化区域と市街化調整区域(線引き)

次に、「都市計画区域」の中は、街づくりの方針によってさらにエリア分けされます。このエリア分けを「線引き」と呼ぶんですよ。

市街化区域 すでに市街地になっている、または今後10年以内に優先的に市街化を進めるエリアです。住宅や商業施設が多く、積極的に開発が進められます。
市街化調整区域 市街化を抑制するエリアです。農地や森林などを守るため、原則として新しい建物を建てることはできません。

「非線引区域」はどちらにも属さないエリア

そして、ここが本題です。非線引区域とは、都市計画区域の中で、市街化区域でも市街化調整区域でもない、つまり「線引き」がされていないエリアのことを指します。法律上の正式名称は「区域区分が定められていない都市計画区域」といいます。2000年の法改正前は「未線引き区域」とも呼ばれていました。
地方の小都市など、市街地と農地が混在していて明確に分けるのが難しい地域に見られます。「将来的に街づくりを進める予定はあるけれど、今すぐ開発を促進するか、抑制するかを決めるのは保留にしておこう」という、少しあいまいな位置づけの土地なんですね。

非線引区域が持つメリットとは?

非線引区域の土地には、他の区域にはないメリットがあります。その大きな特徴は、規制が比較的緩やかな点です。

建築や開発の制限が緩やか

市街化調整区域では原則として建物を建てられませんが、非線引区域では住宅などを建てることが可能です。もちろん、建ぺい率や容積率などの基本的なルールは守る必要がありますが、開発の自由度は高いと言えるでしょう。例えば、一定規模以上の開発(原則として3,000㎡以上)には都道府県知事の許可が必要になりますが、これは市街化区域(原則1,000㎡以上)と比べると緩やかな基準になっています。

土地活用の選択肢が広がる

規制が少ないため、住宅を建てるだけでなく、小規模な店舗や事務所など、さまざまな用途での土地活用を考えやすいのが魅力です。将来的に土地を売却したり、誰かに貸したりする際にも、活用の幅が広いことは有利に働く可能性があります。

知っておきたい非線引区域のデメリット

自由度が高い一方で、気をつけなければならないデメリットも存在します。メリットとデメリットの両方をしっかり理解しておくことが大切です。

周辺環境が変わりやすいリスク

規制が緩いということは、ご自身の土地だけでなく、周りの土地の使われ方も変わりやすいということです。静かな住宅地の隣に、ある日突然、予想していなかった施設が建ってしまう可能性もゼロではありません。将来の住環境が保証されにくい点は、デメリットと言えるでしょう。

インフラが整っていない場合がある

非線引区域は、まだ本格的な市街化が進んでいない地域が多いため、電気、ガス、上下水道、道路といった生活インフラが十分に整備されていないことがあります。家を建てる際には、インフラの引き込み費用が別途高額になるケースもあるので、事前の確認が不可欠です。

資産価値や売却のしやすさに注意

利便性の面から、市街化区域の土地と比べると資産価値が上がりにくかったり、売却時に買い手が見つかりにくかったりする傾向があります。また、金融機関によっては、非線引区域の物件に対する住宅ローンの審査が厳しくなることもあります。これは、担保としての評価が低めに見られることがあるためです。

非線引区域と「都市計画区域外」はどう違う?

規制が緩やかという点で、非線引区域と「都市計画区域外」は似ているように感じるかもしれません。しかし、この2つには明確な違いがあります。

非線引区域 「都市計画区域」の中にあり、将来的に計画的な街づくりを進める可能性がある「保留」エリア。
都市計画区域外 そもそも都市計画の対象外で、将来的な都市開発をほとんど想定していないエリア。

一番の違いは、「将来的な開発の可能性があるかどうか」です。非線引区域は、いつか市街化区域などに変更される可能性がありますが、都市計画区域外はそうした可能性が低いという点で異なります。

相続税を計算するときの土地評価はどうなる?

相続財産に非線引区域の土地が含まれる場合、その価値(相続税評価額)はどのように計算されるのでしょうか。実は、「非線引区域だから」という特別な評価方法があるわけではありません。

土地の実情に合わせた評価方法で計算

非線引区域の土地評価は、その土地が市街地的な地域にあるか、それとも郊外の農村的な地域にあるかなど、実情に応じて「路線価方式」または「倍率方式」のどちらかを用いて行われます。

路線価方式

主に市街地にある土地の評価方法です。道路に面した土地1㎡あたりの価格である「路線価」を基に計算します。土地の形(奥行き、間口の広さなど)に応じて評価額が補正されるのが特徴です。

倍率方式

路線価が定められていない郊外の土地などで用いられる評価方法です。その土地の固定資産税評価額に、国税庁が地域ごとに定めている一定の「倍率」を掛けて評価額を算出します。計算方法がシンプルでわかりやすいのが特徴です。

まとめ

非線引区域は、市街化区域市街化調整区域とは異なる特徴を持つ、少し特別なエリアです。建築などの規制が緩やかで自由度が高いというメリットがある一方で、周辺環境の変化やインフラの問題といったデメリットも抱えています。もし相続財産に非線引区域の土地が含まれている場合は、その価値を正しく評価し、将来どのように活用していくか、あるいは売却するのかを早めに検討することが大切です。メリットとデメリットをよく理解した上で、ご自身やご家族にとって最善の方法を見つけていきましょう。もし判断に迷うことがあれば、専門家に相談してみるのも良い方法ですよ。

参考文献

国税庁|No.4602 土地家屋の評価

国税庁|財産評価基準書 路線価図・評価倍率表

非線引区域に関するよくある質問まとめ

Q. 非線引区域とは何ですか?

A. 都市計画法に基づき、市街化区域と市街化調整区域の区分(線引き)が行われていない都市計画区域のことです。主に人口が少ない郊外や地方の自治体で設定されています。

Q. 市街化区域や市街化調整区域との違いは何ですか?

A. 市街化区域は「市街化を促進する区域」、市街化調整区域は「市街化を抑制する区域」です。非線引区域はこれらの区分がなく、一定のルールの下で開発や建築が比較的自由に行える点が大きな違いです。

Q. 非線引区域に家を建てることはできますか?

A. はい、可能です。ただし、用途地域などの規制は適用されるため、どのような建物でも自由に建てられるわけではありません。建築許可が必要な場合もあるため、事前に自治体への確認が必要です。

Q. 非線引区域のメリットは何ですか?

A. 市街化区域に比べて土地の価格が安い傾向にあり、固定資産税も低く抑えられることが多いです。また、市街化調整区域よりも建築の自由度が高い点もメリットです。

Q. 非線引区域のデメリットや注意点はありますか?

A. 水道やガス、下水道といったインフラが未整備の場所があることや、スーパーや病院などの生活利便施設が少ない場合があります。土地購入前にインフラの状況や周辺環境を確認することが重要です。

Q. 非線引区域の土地かどうかは、どうすれば確認できますか?

A. 土地が所在する市区町村の役所(都市計画課など)で確認できます。また、多くの自治体ではウェブサイトで都市計画図を公開しており、そちらでも確認することが可能です。

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