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相続財産をiDeCoで運用は無理?死亡時のメリット・デメリットを徹底解説

2025-04-02
目次

親から相続した大切な財産。これを老後資金のためにiDeCo(イデコ)で運用したいと考える方もいらっしゃるかもしれませんね。でも実は、相続した現金を直接iDeCoの口座に入れることはできないんです。しかし、iDeCoに加入している方が万が一亡くなった場合、その積み立てた資産はご遺族が受け取ることになり、相続と深く関わってきます。今回は、iDeCoの資産が相続される際のメリットやデメリット、そして気になる税金の扱いについて、優しく丁寧に解説していきますね。

iDeCoの資産は相続財産になるの?

結論から言うと、iDeCoに加入している方が亡くなった場合、それまで積み立ててきた資産は「死亡一時金」としてご遺族が受け取ることができます。そして、この死亡一時金は税法上「みなし相続財産」として扱われ、相続税の課税対象となります。iDeCoはご自身の老後のための私的年金制度ですが、万が一のことがあっても、これまでコツコツ積み立てたお金が無駄になることはなく、大切なご家族に遺すことができるので安心してくださいね。

相続財産としてのiDeCoのメリット

iDeCoの資産が「みなし相続財産」になることには、実は大きなメリットがあります。一般的な預貯金などとは違う、iDeCoならではの利点を見ていきましょう。

生命保険金の非課税枠とは別に「死亡退職金の非課税枠」が使える

iDeCoの死亡一時金は、税法上「死亡退職金」と同じ扱いを受けます。そのため、相続税を計算する際に非常に有利な非課税枠を利用できるんです。その金額は以下の計算式で決まります。

「500万円 × 法定相続人の数」

例えば、法定相続人が奥様とお子様2人の合計3人だった場合、500万円 × 3人 = 1,500万円までが非課税となります。もし死亡一時金が1,000万円であれば、全額非課税で受け取れるということです。さらに嬉しいことに、この非課税枠は生命保険金の非課税枠(こちらも「500万円 × 法定相続人の数」)とは別枠で使えます。つまり、生命保険とiDeCoの両方がある場合、それぞれで非課税枠が適用されるため、大きな節税効果が期待できるのです。

遺産分割協議の対象外になる

通常、亡くなった方の預貯金や不動産などの財産は、誰がどれだけ相続するのかを相続人全員で話し合う「遺産分割協議」を経て分けられます。しかし、iDeCoの死亡一時金は、法律で定められた受取人の「固有の財産」とみなされるため、原則として遺産分割協議の対象にはなりません。これにより、他の相続人の同意を得ることなく、受取人がスムーズかつ迅速に資産を受け取ることができます。相続時の手続きがシンプルになり、ご遺族の負担を減らせる点は大きなメリットと言えるでしょう。

受取人の順位をあらかじめ指定できる

iDeCoでは、万が一の時に死亡一時金を受け取る人をあらかじめ指定しておくことができます。これを「指定受取人」といいます。配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の中から指定でき、ご自身の意思で資産を遺したい相手を決められるのです。もし指定がない場合でも、法律で受取人の順位が定められているため安心です。この順位は、民法の法定相続順位とは少し異なるのが特徴です。

相続財産としてのiDeCoのデメリットと注意点

メリットの多いiDeCoの死亡一時金ですが、いくつか知っておくべきデメリットや注意点もあります。後で慌てないように、しっかり確認しておきましょう。

受け取るタイミングで税金の種類が変わる

死亡一時金を受け取るタイミングは非常に重要です。なぜなら、いつ受け取るかによって、かかる税金の種類が変わってしまうからです。

受け取るタイミング かかる税金の種類
加入者の死亡後3年以内 相続税(みなし相続財産として非課税枠が使える)
死亡後3年経過後~5年以内 所得税・住民税(受取人の一時所得となる)

多くの場合、非課税枠が使える相続税として受け取る方が有利になります。一時所得になると、他に所得があれば税負担が重くなる可能性があります。さらに、死亡後5年を過ぎてしまうと、死亡一時金としては受け取れなくなり、通常の相続財産として遺産分割協議が必要になるなど、手続きが複雑になりますので注意が必要です。

遺族が請求手続きをしないと受け取れない

iDeCoの死亡一時金は、自動的に支払われるものではありません。ご遺族の方が、iDeCoを運用していた金融機関に対して「裁定請求」という手続きを行う必要があります。この手続きをしない限り、いつまで経っても一時金を受け取ることはできません。ですから、iDeCoに加入していることをご家族に伝え、どの金融機関で加入しているのか、連絡先などを共有しておくことがとても大切です。

民法の法定相続順位と受取人順位が異なる

iDeCoの死亡一時金の受取人順位は、民法で定められた法定相続人の順位とは異なります。例えば、iDeCoでは事実婚の配偶者も受取人になれますが、民法では相続人になれません。逆に、民法では相続人になる兄弟姉妹も、iDeCoでは順位が低くなります。ご自身の意図しない人に資産が渡ってしまう可能性もゼロではありませんので、やはりあらかじめ受取人を指定しておくことをおすすめします。

iDeCoの死亡一時金の受取人について

誰が死亡一時金を受け取れるのか、その順位を詳しく見てみましょう。ご自身の意思を反映させるためにも、このルールを知っておくことは大切です。

受取人の法定順位

受取人を指定していない場合の法定順位は以下の通りです。上の順位の人が一人でもいれば、その人が受け取ることになります。

順位 対象者
第1順位 指定受取人(あらかじめ指定した人)
第2順位 配偶者(事実婚関係を含む)
第3順位 加入者の収入で生計を維持していた「子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹」
第4順位 加入者の収入で生計を維持していた「第3順位以外」の親族
第5順位 生計維持関係のなかった「子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹」

受取人を指定しておくことの重要性

この順位を見てわかるように、最も優先されるのは「指定受取人」です。ご自身の想いを確実に実現するため、また、ご遺族が迷わないようにするためにも、加入している金融機関に連絡し、受取人を指定しておくことを強くお勧めします。手続きは難しくありませんので、ぜひ一度確認してみてください。

相続した財産をiDeCoで運用することはできる?

ブログの冒頭でも触れましたが、この点について改めて整理しましょう。親などから相続した現金や有価証券を、ご自身のiDeCo口座に直接入金して運用することは制度上できません。iDeCoの掛金は、あくまで加入者ご自身の所得から拠出するというルールになっているからです。

ただし、相続した財産を一度ご自身の預金口座などに入れた後、その預金を原資として、毎月のiDeCoの掛金を支払っていくことはもちろん可能です。間接的ではありますが、相続財産を老後資金作りに役立てることはできる、と考えておくと良いでしょう。

まとめ

iDeCoの資産は、加入者が亡くなった場合でも「死亡一時金」としてご家族に遺すことができます。その際には、「死亡退職金の非課税枠」が使えたり、「遺産分割協議が不要」であったりと、税制面や手続き面で大きなメリットがあります。

一方で、受け取るタイミングで税金が変わってしまう点や、ご遺族による請求手続きが必要な点には注意が必要です。相続で後悔しないために最も大切なことは、「iDeCoに加入している事実」と「運用先の金融機関」をご家族に共有し、可能であれば「受取人を指定」しておくことです。これを機に、ご家族とiDeCoについて話す機会を持ってみてはいかがでしょうか。

参考文献

国税庁 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金

国税庁 No.4123 相続税等の課税対象になる年金受給権

相続財産とiDeCoに関するよくある質問まとめ

Q.相続したお金でiDeCoに加入できますか?

A.直接相続財産をiDeCo口座に入れることはできません。しかし、相続で得たお金をご自身の預金口座に移し、そこから掛金を拠出することは可能です。

Q.iDeCoの資産は相続税の対象になりますか?

A.はい、iDeCoの資産は加入者の死亡時に「死亡一時金」として扱われ、相続税の課税対象となります。ただし、「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠が適用されます。

Q.相続財産をiDeCoで運用するメリットは何ですか?

A.iDeCoの掛金は全額所得控除の対象となり、所得税・住民税が軽減されます。また、運用で得た利益も非課税で再投資されるため、効率的な資産形成が期待できる点がメリットです。

Q.相続財産をiDeCoで運用するデメリットは何ですか?

A.最大のデメリットは、原則60歳まで資金を引き出せない流動性の低さです。また、投資信託などで運用するため、元本割れのリスクもあります。

Q.iDeCoの死亡一時金の非課税枠は、生命保険の非課税枠と併用できますか?

A.はい、併用可能です。iDeCoの死亡一時金の非課税枠と、生命保険金の非課税枠は別々に計算されるため、両方の制度を活用することで相続税の負担をより軽減できます。

Q.相続対策としてiDeCoは有効ですか?

A.有効な手段の一つです。死亡一時金には非課税枠があるため、結果的に相続税の負担を減らす効果が期待できます。ご自身の老後資金準備と同時に相続対策にも繋がります。

事務所概要
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税理士 島本 雅史

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