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介護保険料の還付通知は相続税申告に必要?手続きと注意点を解説

2025-04-10
目次

ご家族が亡くなられた後、市役所や区役所から「介護保険料還付通知書」といった書類が届くことがあります。突然の通知に、「これは何のお金?」「相続税の申告に関係あるの?」と戸惑われる方も少なくないでしょう。実は、この介護保険料の還付金は、相続税の申告において正しく取り扱う必要があります。このページでは、介護保険料の還付金がなぜ発生するのか、そして相続税申告書でどのように扱えばよいのかを、優しく丁寧に解説していきます。

介護保険料の還付金は相続税の対象です

結論からお伝えしますと、亡くなられた方(被相続人)の介護保険料の還付金は、相続税の課税対象となります。つまり、故人の財産の一部として相続税申告書に記載する必要があるんですね。なぜなら、この還付金は「故人が生前に払い過ぎていた保険料が戻ってきたもの」だからです。本来は故人が受け取るはずだったお金なので、相続財産として扱われるのです。

なぜ介護保険料が還付されるの?

そもそも、なぜ亡くなった後に保険料が還付されるのでしょうか。主な理由は2つあります。

一つは、資格喪失による保険料の再計算です。介護保険料は月単位で計算されますが、亡くなられた場合、死亡日の属する月の前月分までを納めることになります。しかし、保険料は前もって納めていたり、年金から天引き(特別徴収)されていたりすることが多いため、死亡後の期間分まで払い過ぎている状態になるのです。この払い過ぎた分が、精算されて相続人に還付されます。

もう一つは、年金からの天引き(特別徴収)のタイムラグです。年金からの天引きは、通常2ヶ月ごとに行われます。そのため、亡くなられた時期によっては、すでに亡くなった後の期間分の保険料まで天引きされてしまっていることがあります。この場合も、差額が還付金として戻ってくることになります。

国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の還付金も同じです

この考え方は、介護保険料だけに限りません。国民健康保険料後期高齢者医療保険料についても同様です。もしこれらの保険料について還付通知が届いた場合も、介護保険料の還付金と同じように、故人の相続財産として申告する必要がありますので、覚えておきましょう。

相続税申告書での具体的な取り扱い

では、実際に相続税を申告する際、この還付金をどのように扱えばよいのでしょうか。具体的な手続きについて見ていきましょう。

申告書のどこに記載する?

介護保険料の還付金は、相続税申告書の「その他の財産」の欄に「未収入金」として記載します。具体的には、「相続税の申告書(第11表)」の「その他の財産(5)」の項目に、「〇〇市 介護保険料還付金」といった形で、金額と合わせて記入するのが一般的です。

金額はどうやって確認するの?

申告書に記載する金額は、市区町村から送られてくる「介護保険料過誤納金還付通知書」や「還付金支払通知書」といった書類で確認できます。この通知書には、還付される金額が明記されていますので、大切に保管しておきましょう。相続税の申告時には、この通知書のコピーを添付資料として提出することもあります。

申告漏れはNG!少額でも必ず計上しましょう

還付金の額は数千円から数万円程度であることが多く、「これくらいの金額なら申告しなくても大丈夫だろう」と思ってしまうかもしれません。しかし、金額の大小にかかわらず、相続財産である以上は必ず申告しなければなりません。税務署は市区町村との連携で情報を把握していますので、申告漏れがあると後から指摘を受ける可能性があります。たとえ少額であっても、正しく申告することが大切です。

逆に未払いの介護保険料があった場合は?

還付されるケースとは逆に、故人が介護保険料を滞納していたり、亡くなられた時点で未払いの保険料があったりする場合もあります。この場合はどうなるのでしょうか。

未納保険料は「債務控除」の対象になります

故人が亡くなった時点で支払う義務があった未払いの介護保険料は、故人の「債務(借金)」として扱われます。そのため、相続財産の総額からその金額を差し引くことができる「債務控除」の対象となります。債務控除を利用することで、相続税の課税対象となる財産額を減らし、結果的に相続税の負担を軽くすることができます。

債務控除の手続き方法

未払いの保険料がある場合、市区町村から相続人宛に納付書が送られてきます。その納付書に記載されている金額を、相続税申告書の「債務及び葬式費用の明細書(第13表)」に記載します。その際、支払った際の領収書や納付書を証拠書類として保管しておくことが重要です。

相続税の対象にならないケースとの違い

故人が亡くなられた後に入ってくるお金の中には、相続税の対象になるものとならないものがあり、少し複雑です。介護保険料の還付金と混同しやすいものを整理しておきましょう。

相続税の課税関係 早わかり表

項目 相続税の取り扱い
介護保険料・健康保険料の還付金 課税対象(相続財産)
高額療養費の還付金 課税対象(相続財産)
未納の介護保険料・健康保険料 債務控除の対象
葬祭費・埋葬料 課税対象外(受取人固有の財産で非課税)
未支給年金 課税対象外(受取人(遺族)の一時所得)

葬祭費・埋葬料との違い

国民健康保険や健康保険組合から支給される「葬祭費」や「埋葬料」(通常5万円程度)は、葬儀を行った人(喪主など)に対して支払われるものです。これは故人の財産ではなく、受取人固有の財産とされ、法律で税金を課さないと定められているため、相続税の対象にはなりません。

未支給年金との違い

故人が受け取るはずだったまだ支給されていない年金(未支給年金)は、遺族が受け取ることができます。これも故人の財産ではなく、遺族固有の権利として受け取るものと解釈されています。そのため相続税の対象にはなりませんが、受け取った遺族の「一時所得」として所得税の対象になる場合がありますので注意が必要です。

死亡後の手続きと還付金の受け取り方

最後に、ご家族が亡くなられてから介護保険料の還付金を受け取るまでの一般的な流れを確認しておきましょう。

死亡届の提出と資格喪失手続き

まず、ご家族が亡くなられたら、市区町村の役所に死亡届を提出します。これにより、故人の住民票が抹消され、介護保険の資格も自動的に喪失となります。通常、特別な手続きは必要ありません。

還付通知書の到着

死亡届の提出から1ヶ月~2ヶ月ほど経つと、相続人の代表者様宛に「介護保険料過誤納金還付通知書」などの書類が郵送されてきます。この通知が届いたら、内容と金額を確認してください。

還付金の請求と受領

通知書には、還付金を受け取るための請求書が同封されていることがほとんどです。その請求書に、相続人代表者の氏名や住所、還付金の振込先口座などを記入し、必要書類を添えて返送します。手続きが完了すると、後日、指定した口座に還付金が振り込まれます。

まとめ

市区町村から届く「介護保険料の還付通知」は、相続手続きの中で見落とされがちですが、相続税申告においては大切な書類です。今回の内容をまとめます。

  • 介護保険料や健康保険料の還付金は、故人の財産として相続税の課税対象になります。
  • 金額は市区町村から届く通知書で確認し、「未収入金」として申告書に記載します。
  • 逆に未払いの保険料がある場合は、相続財産から差し引ける「債務控除」の対象となります。
  • 金額が少額であっても申告漏れは税務調査で指摘される可能性があるため、必ず申告しましょう。
  • 葬祭費や未支給年金など、似ているけれど相続税の対象にならないものとの違いを理解しておくことが大切です。

相続税の申告は、専門的な知識が必要となる場面が多くあります。もし少しでも不安な点や分からないことがあれば、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

国税庁  No.4105 相続税がかかる財産

国税庁  No.4126 相続財産から控除できる債務

介護保険料の還付と相続税申告のよくある質問まとめ

Q.死亡後に市区町村から介護保険料の還付通知が届きました。これは相続税の申告対象になりますか?

A.はい、相続税の申告対象となります。故人が生前に納め過ぎた保険料が還付されるもので、相続開始時点ではまだ受け取っていない「未収金」として故人の財産に含まれるため、相続財産として申告が必要です。

Q.介護保険料の還付金は、相続税申告書のどこに記載すればよいですか?

A.相続税申告書の「その他の財産」の欄に「未収還付金(○○市 介護保険料)」などと記載します。金額は、市区町村から送られてくる還付通知書に記載されている金額を計上します。

Q.相続税の申告期限後に還付通知書が届きました。どうすればよいですか?

A.相続税の修正申告が必要です。還付金を財産に含めると納税額が増えるため、速やかに税務署へ修正申告書を提出してください。申告漏れとして扱われると、延滞税や過少申告加算税が課される可能性があります。

Q.介護保険料の還付金は誰が受け取るのですか?

A.通常、相続人の代表者が受け取ります。市区町村から送付される通知書に、還付金を受け取るための請求手続きに関する案内が記載されていますので、その指示に従って手続きを行ってください。

Q.還付金の金額は少額ですが、それでも申告は必要ですか?

A.はい、原則として金額の大小にかかわらず申告が必要です。ただし、還付金を含めた相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下であれば、相続税の申告自体が不要となります。

Q.還付通知書を紛失してしまいました。どうすればよいですか?

A.故人がお住まいだった市区町村の介護保険担当課に問い合わせることで、還付金の有無や金額を確認できます。必要に応じて、通知書の再発行手続きについても確認してください。

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