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相続が発生したらまず確認!期限内にやるべき手続きを完全ガイド

2025-04-25
目次

大切な方が亡くなられた後、ご遺族は悲しむ間もなく、さまざまな手続きに追われることになります。特に相続手続きは、期限が決められているものも多く、「何から手をつければいいのか分からない」と不安に感じてしまう方も少なくありません。このページでは、そんな方のために、相続が発生したときにやるべきことを時系列に沿って、わかりやすく解説していきますね。ひとつひとつの手続きを一緒に確認していきましょう。

まずは全体の流れを把握しよう!相続手続きのタイムスケジュール

相続手続きは、短期間に集中しているものから、少し時間的な余裕があるものまで様々です。まずは、いつまでに何をする必要があるのか、全体像をつかんでおくことが大切ですよ。大まかな流れを下の表にまとめましたので、チェックリストとしてご活用ください。

期限 主な手続き
死亡後7日以内 死亡届・火葬許可申請書の提出
死亡後14日以内 年金受給停止、健康保険・介護保険の資格喪失手続きなど
できるだけ早く 遺言書の有無の確認、相続人と相続財産の調査
3ヶ月以内 相続放棄限定承認の決定
4ヶ月以内 所得税の準確定申告
10ヶ月以内 相続税の申告・納税
1年以内 遺留分侵害額の請求
3年以内 不動産の相続登記(義務化)

死亡後すぐに!7日・14日以内に行う行政手続き

故人が亡くなられた直後は、葬儀の準備と並行して、市役所などでの行政手続きが必要になります。期限がとても短いので、落ち着いて一つずつ進めていきましょう。

7日以内の手続き

亡くなられた日から7日以内に、必ず提出しなければならない書類があります。まずは「死亡診断書」を医師から受け取ります。この死亡診断書と対になっている「死亡届」に必要事項を記入し、市区町村役場へ提出します。同時に、火葬を行うために必要な「火葬許可申請書」も提出しましょう。これらの手続きは、多くの場合、葬儀社が代行してくれますので、まずは相談してみてくださいね。

14日以内の手続き

次に、年金や健康保険などの手続きです。故人が年金を受け取っていた場合、「年金受給権者死亡届」を提出して受給を停止します。期限は、国民年金の場合は14日以内、厚生年金の場合は10日以内と少し早いので注意が必要です。ただし、日本年金機構にマイナンバーが登録されていれば、この届出は原則不要になります。また、「国民健康保険・介護保険の資格喪失手続き」も14日以内に行う必要があります。故人が世帯主で、残された世帯員が2人以上いる場合は、「世帯主変更届」の提出も忘れないようにしましょう。

落ち着いたら早めに着手!相続の基本調査

葬儀などが一段落したら、本格的な相続手続きの準備を始めます。ここでの調査が、後の遺産分割や相続税申告の基礎となるので、とても重要です。

遺言書の有無を確認する

まず最初に確認したいのが、遺言書の有無です。故人の遺志が記された遺言書があれば、原則としてその内容に従って遺産を分けることになります。遺言書には主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。まずは故人の自宅や貸金庫などを探してみましょう。公正証書遺言であれば公証役場に、法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言であれば法務局に問い合わせることで確認できます。もし、自宅などで自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかった場合は、勝手に開封せず、家庭裁判所で「検認」という手続きを受ける必要があるので注意してくださいね。

誰が相続人?相続人を確定させる

次に、誰が財産を受け継ぐ権利を持っているのか、相続人を確定させる必要があります。法律で定められた相続人(法定相続人)を確定するためには、故人(被相続人)が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本など)を取得する必要があります。本籍地が何度も変わっている場合は、それぞれの市区町村役場から取り寄せるため、少し時間がかかることもあります。この戸籍をたどることで、ご家族も知らなかった相続人が見つかる可能性もありますので、とても大切な手続きです。

何が遺産?相続財産を調査する

誰が相続するかが決まったら、次は「何を相続するのか」を明らかにします。相続財産には、預貯金や不動産、株式といったプラスの財産だけでなく、借金やローン、未払金などのマイナスの財産も含まれます。通帳や郵便物、不動産の権利証などを手がかりに、すべての財産をリストアップして「財産目録」を作成しておくと、後の手続きがスムーズに進みますよ。

重要な判断の期限!3ヶ月・4ヶ月以内に行う手続き

相続財産の調査が進むと、相続人にとって重要な判断を迫られる期限がやってきます。これらの手続きは期限を過ぎると選択できなくなる可能性があるので、特に注意が必要です。

3ヶ月以内:相続方法を決める(相続放棄・限定承認)

相続財産の調査の結果、借金などマイナスの財産がプラスの財産を上回ることがわかった場合、相続人は財産を一切引き継がない「相続放棄」を選ぶことができます。また、財産の全容がはっきりせず、プラスの財産の範囲内でのみ借金を返済したい場合は「限定承認」という方法もあります。これらの手続きは、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。この期限を過ぎると、すべての財産を引き継ぐ「単純承認」をしたとみなされてしまうので、慎重に検討しましょう。

4ヶ月以内:故人の所得税を申告する(準確定申告)

故人が個人事業主だったり、家賃収入などの不動産所得があったりした場合、亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、所得税の申告と納税が必要です。これを「準確定申告」といい、相続人が故人に代わって行います。申告の期限は、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内です。こちらも期限が短いため、早めに準備を進めましょう。

遺産分割から納税まで!10ヶ月・1年以内に行う手続き

相続手続きの最終段階です。相続税の申告・納税という大きな節目を迎えます。期限管理をしっかり行い、着実に進めていきましょう。

遺産分割協議と遺産分割協議書の作成

遺言書がない場合や、遺言書に記載のない財産がある場合は、相続人全員で遺産の分け方について話し合います。これを「遺産分割協議」と呼びます。相続人全員の合意が得られたら、その内容を「遺産分割協議書」という書面にまとめ、全員が署名・捺印(実印)をします。この協議書は、後の不動産の名義変更や預貯金の解約手続きなどで必要になる重要な書類です。遺産分割協議自体に期限はありませんが、相続税の申告期限である10ヶ月以内には終えておきましょう。

10ヶ月以内:相続税の申告と納税

相続財産の総額が基礎控除額を超える場合、相続税の申告と納税が必要になります。期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算できます。例えば、相続人が配偶者と子供2人の合計3人なら、基礎控除額は4,800万円となります。相続税の計算は複雑で、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、税負担を軽減できる制度もありますので、不安な場合は税理士などの専門家に相談するのも良い方法です。

1年以内:遺留分侵害額請求

「遺産のすべてを特定の一人に相続させる」といった遺言書があった場合でも、配偶者や子など一部の相続人には、法律で最低限保障された遺産の取り分があります。これを「遺留分」といいます。もし遺言などによって自分の遺留分が侵害されていると知った場合は、財産を多く受け取った人に対して、侵害された分に相当する金銭を請求することができます。この権利(遺留分侵害額請求権)は、相続の開始と遺留分が侵害されていることを知った時から1年で時効によって消滅してしまうので、注意が必要です。

各種財産の名義変更

遺産分割協議がまとまったら、それぞれの財産の名義を故人から相続人へ変更する手続きを行います。預貯金は金融機関、不動産は法務局、株式は証券会社で手続きします。特に不動産の相続登記は、これまでは任意でしたが、2024年4月1日から義務化されました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料が科される可能性があるので、忘れずに行いましょう。

まとめ

ここまで、相続が発生した後にやるべきことを時系列で見てきました。たくさんの手続きがあって大変に感じるかもしれませんが、一つ一つ期限を確認しながら着実に進めていけば大丈夫です。この記事が、皆さんの手続きの道しるべになれば嬉しいです。もし、手続きを進める中で分からないことや不安なことが出てきたら、一人で抱え込まずに、司法書士や税理士といった専門家に相談することも考えてみてくださいね。きっとあなたの力になってくれますよ。

参考文献

国税庁:No.4102 相続税がかかる場合

国税庁:No.4105 相続税がかからない財産

法務局:相続登記の申請の義務化について

日本年金機構:年金を受けている方が亡くなったとき

相続手続きのよくある質問まとめ

Q. 相続が発生したら、まず何をすればよいですか?

A. まずは死亡届を7日以内に提出します。その後、遺言書の有無を確認し、相続人を確定させるために戸籍謄本等を取り寄せます。同時に、相続財産の調査も開始しましょう。

Q. 相続手続きにはどのような期限がありますか?

A. 主な期限として、相続放棄や限定承認は相続開始を知った日から3ヶ月以内、所得税の準確定申告は4ヶ月以内、相続税の申告・納付は10ヶ月以内です。

Q. 遺言書を見つけたらどうすればよいですか?

A. 自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要です。勝手に開封すると罰則があるので注意してください。公正証書遺言の場合は検認は不要です。

Q. 相続人になるのは誰ですか?

A. 法律で定められた法定相続人です。配偶者は常に相続人となり、それ以外は子、親、兄弟姉妹の順で優先順位が決まっています。

Q. 相続放棄とは何ですか?

A. 借金などマイナスの財産が多い場合に、プラスの財産も含めて一切の相続権を放棄する手続きです。相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所への申立てが必要です。

Q. 遺産分割協議とは何ですか?

A. 相続人全員で、誰がどの遺産をどれくらいの割合で相続するかを話し合うことです。全員の合意が得られたら「遺産分割協議書」を作成します。

事務所概要
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税理士 島本 雅史

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