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【完全ガイド】父が亡くなった後の手続き|期限と流れをやさしく解説

2025-04-26
目次

お父様を亡くされ、心からお悔やみ申し上げます。深い悲しみの中、様々な手続きに追われ、何から手をつけていいか分からないと不安に感じている方も多いのではないでしょうか。この記事では、お父様が亡くなられた後に必要な手続きを、期限の早い順に、わかりやすく解説していきます。チェックリストとしてもご活用いただけますので、少しでも心の負担を軽くするお手伝いができれば幸いです。

まずやるべきことリスト|期限別に確認しましょう

お父様が亡くなられた直後は、悲しみに暮れる間もなく多くの手続きが必要になります。手続きには期限が設けられているものが多く、期限を過ぎると不利益が生じる可能性もあります。まずは全体像を把握し、優先順位をつけて落ち着いて進めていきましょう。ここでは、手続きを期限ごとにリストアップしました。ご自身の状況と照らし合わせながら、一つずつ確認していきましょう。

期限 主な手続き
7日以内 死亡届・死体火葬許可申請
14日以内 年金受給停止、健康保険・介護保険の資格喪失届、世帯主変更届
3ヶ月以内 相続放棄・限定承認の申述
4ヶ月以内 所得税の準確定申告
10ヶ月以内 相続税の申告・納付
2年以内 葬祭費・埋葬料の請求、高額療養費の還付請求
3年以内 生命保険金の請求
5年以内 遺族年金の請求
速やかに 遺言書の確認、ライフライン等の名義変更・解約

亡くなってからすぐに行う手続き(7日~14日以内)

まず、亡くなってから2週間以内という、比較的期限が短い手続きについて解説します。特に死亡届は7日以内と期限が短いため、最優先で進める必要があります。

死亡届・死体火葬許可申請(7日以内)

お父様が亡くなられたことを知った日から7日以内に、市区町村役場へ「死亡届」を提出する必要があります。通常、病院で医師から受け取る「死亡診断書」と一体になっています。

提出先 故人の本籍地、死亡地、または届出人の所在地の市区町村役場
必要なもの 死亡届(死亡診断書または死体検案書付き)、届出人の印鑑

多くの場合、葬儀社が提出を代行してくれますが、その場合は届出人(ご家族など)の印鑑が必要になります。死亡届を提出する際に、「火葬許可申請書」も一緒に提出し、「火葬許可証」を受け取ります。この火葬許可証がないと火葬ができませんので、忘れないようにしましょう。死亡届は年金や保険などの手続きで必要になることがあるため、提出前にコピーを数枚取っておくと安心です。

年金受給停止手続き(10日または14日以内)

お父様が年金を受給していた場合、年金の受給を止める手続きが必要です。手続きをしないと年金が支払われ続け、後で返還手続きが必要になるなど手間が増えてしまいます。

提出先 厚生年金:年金事務所(10日以内)、国民年金:市区町村役場(14日以内)
必要なもの 年金受給権者死亡届、故人の年金証書、死亡の事実がわかる書類(戸籍抄本など)

なお、日本年金機構にマイナンバーが登録されている場合は、原則として「年金受給権者死亡届」の提出は不要です。ただし、未支給年金がある場合は別途請求手続きが必要です。未支給年金とは、亡くなった月分まで受け取れるはずだった年金のことです。生計を同じくしていた遺族が請求できますので、忘れずに手続きしましょう。

健康保険・介護保険の資格喪失手続き(14日以内)

亡くなられると、健康保険や介護保険の資格も失われます。保険証を返却し、資格喪失の手続きを行いましょう。

手続きの種類 提出先
国民健康保険・後期高齢者医療制度 市区町村役場
会社の健康保険(社会保険) 故人の勤務先または年金事務所(5日以内)
介護保険 市区町村役場

保険料の未納分があれば支払いを、逆に払い過ぎていれば還付を受けることができます。お父様の扶養に入っていたご家族がいる場合は、ご自身で国民健康保険への加入手続きなどを速やかに行う必要がありますのでご注意ください。

世帯主変更届(14日以内)

お父様が世帯主だった場合、亡くなった日から14日以内に新しい世帯主を届け出る必要があります。これは住民票のある市区町村役場で行います。ただし、残された世帯員が1人だけの場合や、新しい世帯主が明らかな場合(例:母と未成年の子のみ)は、届出が不要なこともあります。詳しくは役場の窓口で確認してみてくださいね。

遺産相続に関する重要な手続き

ここからは、お父様の財産を引き継ぐ「相続」に関する手続きです。期限が数ヶ月単位と少し長くなりますが、内容が複雑なため、早めに準備を始めることが大切です。

遺言書の確認(できるだけ速やかに)

まずはお父様が遺言書を遺していないかを確認しましょう。遺言書があれば、原則としてその内容に従って遺産を分けることになります。遺言書は自宅の金庫や仏壇、付き合いのあった金融機関の貸金庫などに保管されていることが多いです。

公正証書遺言以外(自筆証書遺言など)が見つかった場合は、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所で「検認」という、遺言書の状態を確認する手続きが必要になります。検認をせずに開封すると5万円以下の過料に処される可能性があります。なお、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用している場合は、検認は不要です。

相続人と相続財産の調査(3ヶ月以内が目安)

遺言書の有無と並行して、「誰が相続人になるのか」と「どのような財産があるのか」を正確に把握する必要があります。

相続人の確定には、お父様の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等が必要です。ご家族が把握していない相続人が見つかる可能性もあるため、必ず取得して確認しましょう。

相続財産の調査では、預貯金、不動産、有価証券などのプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産もすべて調べます。これらの調査は、後の「相続放棄」の判断にも関わるため、3ヶ月以内を目安に完了させましょう。

相続放棄・限定承認の申述(3ヶ月以内)

相続財産の調査の結果、借金などマイナスの財産の方が多い場合は、「相続放棄」や「限定承認」を検討します。

相続放棄 プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継がない方法。
限定承認 プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぎ、もし財産が残れば相続する方法。

これらの手続きは、自分が相続人であることを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。この期間を過ぎると、すべての財産を相続する「単純承認」をしたとみなされてしまうため、非常に重要な期限です。

所得税の準確定申告(4ヶ月以内)

お父様が個人事業主だったり、年間2,000万円を超える給与収入や不動産収入があったりした場合など、生前に確定申告が必要だった方は、亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が代わりに確定申告を行う必要があります。これを「準確定申告」といいます。

申告と納税の期限は、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内です。提出先は、お父様の死亡時の住所地を管轄する税務署です。給与所得者でも、医療費控除などで還付が受けられる場合も対象となります。

遺産分割協議と遺産分割協議書の作成

遺言書がない場合、相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を行います。協議がまとまったら、その内容を証明するために「遺産分割協議書」を作成します。

この書類は、後の不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約手続きなどで必ず必要になります。相続人全員が署名し、実印を押印するのが一般的です。スムーズに手続きを進めるためにも、話し合った内容はきちんと書面に残しておきましょう。

相続税の申告・納付(10ヶ月以内)

相続した財産の総額が基礎控除額を超える場合、相続税の申告と納付が必要です。

基礎控除額は「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」で計算します。たとえば、相続人がお母様と子2人の合計3人なら、基礎控除額は4,800万円です。遺産総額がこれを超える場合は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に税務署へ申告・納税しなければなりません。

相続税の計算は非常に複雑です。「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」などを適用することで税額が0円になる場合でも、申告自体は必要になるケースが多いので注意しましょう。不安な場合は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

各種名義変更や解約などの手続き

公的な手続きや相続手続きと並行して、お父様名義の様々な契約の変更や解約も進めていきましょう。放置しておくと不要な料金が発生し続けることもあるので、気づいたものから早めに手をつけるのがおすすめです。

ライフライン(電気・ガス・水道など)

電気、ガス、水道、電話、インターネットなどの契約は、名義変更または解約の手続きが必要です。今後もその家に住み続ける方がいる場合は名義変更を、空き家になる場合は解約手続きを行います。契約先の会社に連絡し、手続き方法を確認しましょう。検針票や請求書に記載されているお客様番号が分かるとスムーズです。

金融機関(預貯金・証券など)

金融機関にお父様が亡くなったことを伝えると、その口座は凍結され、入出金ができなくなります。これは、相続財産を他の相続人の一人が勝手に引き出してしまうなどのトラブルを防ぎ、財産を保全するための措置です。

凍結を解除して預貯金を払い戻すためには、金融機関所定の書類のほか、故人の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書、遺産分割協議書などが必要になります。金融機関によって必要書類が異なるため、事前に問い合わせて確認しましょう。

クレジットカード・各種サービスの解約

クレジットカードは、カード会社に連絡して解約手続きを行います。年会費が発生するカードもあるため、早めに手続きしましょう。また、動画配信サービスや月額課金制のサービス(サブスクリプション)なども、不要であれば解約が必要です。預金通帳の引き落とし履歴などを確認して、契約しているサービスをリストアップすると良いでしょう。

忘れずにもらいたいお金の手続き

申請しないと受け取れないお金もあります。期限が設けられているものが多いので、忘れずに手続きを行いましょう。

葬祭費・埋葬料(2年以内)

お父様が加入していた健康保険から、葬儀費用の一部が支給されます。

国民健康保険・

後期高齢者医療制度

葬祭費として3万円~7万円程度(自治体による)が葬儀執行者に支給されます。
会社の健康保険 埋葬料として一律5万円が生計を維持されていた遺族に支給されます。

申請先は、国民健康保険なら市区町村役場、会社の健康保険なら健康保険組合や協会けんぽです。葬儀を行った日の翌日から2年以内が申請期限です。

高額療養費の還付(2年以内)

亡くなる前の入院などで、1ヶ月の医療費の自己負担額が上限を超えていた場合、その超過分が「高額療養費」として払い戻されます。申請先は加入していた健康保険の窓口で、期限は診療月の翌月1日から2年以内です。自動的に通知が来ることが多いですが、念のため確認しておくと安心です。

遺族年金(5年以内)

お父様によって生計を維持されていた遺族は、「遺族基礎年金」や「遺族厚生年金」を受け取れる場合があります。特に、18歳未満の子どもがいる配偶者や、お父様が厚生年金に加入していた場合などが対象となります。

請求先は年金事務所や市区町村役場で、請求期限は死亡日の翌日から5年以内です。ご家庭の状況によって受給要件が異なりますので、年金事務所に相談してみましょう。

生命保険金(3年以内)

お父様が生命保険に加入していた場合、指定された受取人が生命保険金を受け取れます。保険証券などを探し、契約している保険会社に連絡しましょう。請求期限は、一般的に死亡日から3年以内です。

死亡保険金は民法上の相続財産とはみなされませんが、税法上は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。ただし、「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠が設けられています。

まとめ

お父様が亡くなられた後の手続きは、多岐にわたり期限も様々で、本当に大変だと思います。まずは、この記事のリストを参考に、期限の短いものから優先順位をつけて一つひとつ着実に進めていきましょう。特に、相続放棄(3ヶ月)相続税申告(10ヶ月)といった期限は、その後のご家族の生活に大きく影響するため、特に注意が必要です。ご自身での手続きが難しい、何から手をつけていいかわからない、といった場合には、無理をせず、市区町村役場の相談窓口や、司法書士、税理士といった専門家に相談することも検討してみてください。大切な方を亡くされた悲しみの中で大変だと思いますが、少しでも落ち着いて手続きを進められるよう、心から願っています。

参考文献

父が亡くなった後の手続きに関するよくある質問まとめ

Q.父が亡くなりました。まず最初に何をすればいいですか?

A.まずは死亡診断書を受け取り、7日以内に市区町村役場へ死亡届を提出します。同時に火葬許可証の申請も行い、その後、葬儀の準備を進めます。

Q.葬儀が終わった後、どのような手続きが必要ですか?

A.年金受給停止、健康保険の資格喪失届、世帯主の変更届など、期限が設けられている手続きを優先的に行います。公共料金やクレジットカードの名義変更・解約手続きも忘れずに行いましょう。

Q.故人に借金があるようです。相続放棄はできますか?

A.はい、可能です。相続の開始を知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります。財産調査を行い、借金が多い場合は検討しましょう。

Q.遺産相続の手続きは、いつまでに何をすればいいですか?

A.遺言書の有無を確認し、相続人と相続財産を確定させます。その後、相続人全員で遺産分割協議を行います。相続税の申告・納付は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。

Q.故人の預貯金口座はすぐに解約できますか?

A.金融機関が死亡の事実を知ると口座は凍結されます。解約には戸籍謄本や遺産分割協議書などが必要です。必要書類は金融機関によって異なるため、事前に確認しましょう。

Q.不動産の名義変更(相続登記)は必要ですか?

A.はい、2024年4月から義務化されました。相続の開始を知った日から3年以内に申請が必要です。ご自身で法務局で手続きするか、専門家へ依頼することも可能です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。