税理士法人プライムパートナーズ

亡くなった人の確定申告(準確定申告)の注意点|期限や手続きをわかりやすく解説

2025-04-28
目次

ご家族が亡くなられた後、悲しみの中でさまざまな手続きに追われることになりますが、その中の一つに準確定申告があります。これは、故人の生前の所得について、相続人が代わりに行う確定申告のことです。通常の確定申告とは異なり、期限が短く、特有のルールも存在します。この記事では、準確定申告の注意点を中心に、いつまでに、誰が、何をすべきかを具体的に解説していきますので、ぜひ参考にしてくださいね。

準確定申告とは?通常の確定申告との違い

準確定申告とは、亡くなった方(被相続人)に代わって、相続人が行う所得税の確定申告手続きのことです。所得税は、本来1月1日から12月31日までの1年間の所得に対して計算しますが、年の途中で亡くなった場合、その年の1月1日から亡くなった日までの所得を計算し、申告・納税する必要があります。通常の確定申告とはいくつか大きな違いがあるので、しっかり押さえておきましょう。

申告・納税義務者は「相続人全員」

通常の確定申告は本人自身が行いますが、準確定申告は相続人(遺言によって財産を受け取る包括受遺者も含む)全員で行うのが原則です。相続人が複数いる場合は、全員が申告書に連署して提出します。ただし、各相続人が個別に申告することも可能ですが、その場合は他の相続人に申告内容を通知する必要があります。

申告期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内」

通常の確定申告の期限は、翌年の2月16日から3月15日までです。しかし、準確定申告の期限は非常に短く、「相続の開始があったことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から4ヶ月以内」と定められています。例えば、6月10日に亡くなった場合、申告期限は10月10日となります。この期限までに申告と納税の両方を完了させる必要があるので、早めの準備が大切です。

申告先は「亡くなった方(被相続人)の住所地を管轄する税務署」

申告書の提出先も異なります。通常の確定申告では、申告者本人の住所地を管轄する税務署に提出しますが、準確定申告では、亡くなった方の死亡当時の住所地を管轄する税務署に提出します。相続人の住所地ではないので、間違えないように注意しましょう。

項目 準確定申告
対象となる所得期間 その年の1月1日から死亡した日までの所得
申告・納税する人 相続人および包括受遺者(全員)
申告・納税の期限 相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内
申告書の提出先 被相続人(故人)の死亡時の住所地を管轄する税務署

準確定申告が必要なケース・不要なケース

「相続が発生したら、必ず準確定申告をしなければならないの?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんね。実は、準確定申告はすべての場合に必要なわけではありません。故人の生前の状況によって、申告が必要なケース、不要なケース、そして義務ではないけれど申告した方がお得なケースに分かれます。

準確定申告を「しなければならない」ケース

故人が生前に確定申告をする必要があった場合、準確定申告が義務となります。具体的には、以下のようなケースが当てはまります。

  • 個人事業主や、不動産賃貸による所得(事業所得・不動産所得)があった方
  • 給与の年間収入金額が2,000万円を超えていた方
  • 2か所以上から給与を受け取っていた方
  • 給与所得や退職所得以外の所得(例:副業の収入など)の合計額が20万円を超えていた方
  • 公的年金等の収入金額が400万円を超えていた方
  • 株式や不動産を売却して利益(譲渡所得)があった方

これらの条件に一つでも当てはまる場合は、期限内に申告を済ませましょう。

準確定申告を「したほうが良い」ケース

申告義務はないものの、準確定申告をすることで、納めすぎていた税金が戻ってくる(還付される)可能性があります。これを還付申告といいます。次のような場合は、申告を検討してみるのがおすすめです。

  • 多額の医療費を支払っていた(医療費控除
  • 生命保険料や地震保険料を支払っていた(生命保険料控除・地震保険料控除
  • 給与や公的年金から所得税が源泉徴収されていたが、年の途中で亡くなったため年末調整を受けていない
  • 配偶者や扶養親族がいた(配偶者控除・扶養控除

還付金を受け取れる可能性があるかどうか、故人の領収書や控除証明書などを確認してみましょう。

準確定申告が「不要」なケース

以下のようなケースでは、基本的に準確定申告は不要です。

  • 収入が勤務先からの給与のみで、会社で年末調整が済んでいる(ただし年収2,000万円以下の場合)
  • 収入が公的年金のみで、その収入金額が400万円以下、かつ、年金以外の所得が20万円以下の場合

判断に迷う場合は、税務署や税理士などの専門家に相談すると安心ですよ。

準確定申告の手順と必要書類

準確定申告を実際に行う際の手順と、準備すべき書類についてご説明します。相続人が複数いる場合は、連絡を取り合いながら協力して進めることが大切です。

相続人の代表者を決める

相続人が2人以上いる場合、手続きをスムーズに進めるために代表者を一人決めると良いでしょう。代表者は、申告書の作成や提出、税務署とのやり取り、還付金の受け取りなどを主導します。全員で連名で申告書を提出する方法が一般的ですが、それぞれが個別に申告することも可能です。ただし、その場合も申告内容は統一する必要があります。

必要書類を準備する

準確定申告には、通常の確定申告で使う書類に加えて、準確定申告特有の書類が必要になります。

書類名 主な入手先・備考
所得税及び復興特別所得税の確定申告書 税務署、国税庁ホームページ。表題に「準確定」と追記します。
死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表 税務署、国税庁ホームページ。相続人が2人以上の場合に必要です。
故人の源泉徴収票(給与・公的年金など) 故人の勤務先、日本年金機構など。
各種控除証明書(生命保険料、地震保険料など) 保険会社などから郵送されます。
医療費控除の明細書と領収書 ご自身で作成。領収書は保管が必要です。
委任状 還付金を代表相続人が一括で受け取る場合に必要です。

この他にも、故人の所得内容に応じて、事業所得の青色申告決算書や収支内訳書などが必要になる場合があります。

申告書を作成・提出する

必要書類がそろったら、申告書を作成します。申告書の様式は通常の確定申告と同じものを使用し、表題(「確定申告書」の部分)の余白に「準確定」と書き加えます。氏名欄には「被相続人 〇〇 〇〇」のように故人の氏名を記載します。
作成した申告書は、以下のいずれかの方法で提出します。

  • 税務署へ持参:故人の住所地を管轄する税務署の窓口へ直接提出します。
  • 郵送:管轄の税務署へ郵送します。控えが必要な場合は、返信用封筒を同封しましょう。
  • e-Tax(電子申告):インターネット経由で申告します。ただし、相続人が複数いる場合は手続きが少し複雑になるため、事前に要件を確認しておく必要があります。

準確定申告の注意点

準確定申告には、いくつか注意すべきポイントがあります。申告漏れや計算ミスを防ぐためにも、しっかり確認しておきましょう。

所得控除の対象期間に注意

医療費控除や社会保険料控除、生命保険料控除などは、故人が亡くなった日までに支払った金額のみが対象となります。例えば、故人が入院していて、その入院費を亡くなった後に相続人が支払った場合、その費用は準確定申告の医療費控除には含めることができません。
一方で、配偶者控除や扶養控除は、亡くなった日の現況で判定します。条件を満たしていれば、控除額を月割り計算などはせず、満額を適用できます。

還付金は相続財産になる

準確定申告によって還付金が発生した場合、その還付金は故人が受け取るべき財産だったとみなされ、相続財産に含まれます。そのため、相続税の申告が必要な場合は、この還付金も財産として計上しなければなりません。逆に、準確定申告で納税が発生した場合、その納税額は故人の債務として、相続財産から差し引くことができます(債務控除)。

期限を過ぎるとペナルティがある

申告義務があるにもかかわらず、4ヶ月の期限を過ぎてしまうと、ペナルティが課される可能性があります。

  • 無申告加算税:期限内に申告しなかった場合に課される税金です。本来納めるべき税額に対し、最大で20%(300万円を超える部分は30%)が加算されます。
  • 延滞税:法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が課されます。

やむを得ない事情がある場合を除き、必ず期限内に申告・納税を済ませましょう。

まとめ

亡くなった人の確定申告(準確定申告)は、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に、相続人全員で行う必要がある大切な手続きです。特に期限が短いため、相続が発生したら、まずは準確定申告が必要かどうかを確認し、早めに準備を始めることが重要です。必要書類の収集や申告書の作成など、相続人だけで行うのが不安な場合は、税務署や税理士などの専門家に相談しながら進めると、よりスムーズで安心ですよ。

参考文献

準確定申告のよくある質問まとめ

Q.亡くなったのが年明けすぐの場合は?

A.例えば、故人が2月10日に亡くなった場合のように、前年分の確定申告期限(3月15日)よりも前に亡くなられたケースでは、前年分と当年分(1月1日から亡くなった日まで)の2年分の準確定申告が必要になる可能性があります。両方の申告期限は、どちらも「相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内」となるため、注意が必要です。

Q.相続放棄した場合も申告は必要?

A.家庭裁判所で相続放棄の手続きをした方は、初めから相続人ではなかったとみなされます。そのため、準確定申告を行う義務はありません。ただし、他の相続人の申告義務がなくなるわけではないので、残りの相続人全員で申告手続きを行う必要があります。

Q.還付申告の期限はいつまで?

A.税金が戻ってくる還付申告の場合、申告期限は通常の準確定申告とは異なり、亡くなった年の翌年1月1日から5年間となります。4ヶ月を過ぎてしまってもペナルティはありません。しかし、前述の通り、還付金は相続税の課税対象となります。相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)に間に合うように、早めに準確定申告を済ませておくことをおすすめします。

Q.準確定申告はいつまでに行う必要がありますか?

A.相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。通常の確定申告(翌年3月15日)とは期限が異なるので注意が必要です。

Q.準確定申告は誰が行うのですか?

A.相続人全員が連署により提出するのが原則です。ただし、他の相続人の氏名を付記して各人が別々に提出することも可能です。

Q.準確定申告が必要なのはどのような場合ですか?

A.亡くなった方が生前に確定申告をすべき状況だった場合(例:個人事業主、不動産収入があったなど)に必要です。また、医療費控除などで還付を受けられる場合も申告できます。

Q.準確定申告をしないとどうなりますか?

A.納税が必要な場合に期限内に申告・納税をしないと、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課される可能性があります。

Q.亡くなった人の医療費控除は申告できますか?

A.はい、できます。亡くなった日までに支払った医療費が対象となります。生計を一つにしていた親族の医療費も合算して申告できます。

Q.準確定申告で還付されたお金はどうなりますか?

A.還付金は相続財産の一部となります。そのため、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が受け取るかを決める必要があります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。