税理士法人プライムパートナーズ

父が亡くなり遺言書が…慌てないで!見つかった後の手続きを解説

2025-04-29
目次

お父様が亡くなられ、遺言書が見つかったとのこと、心中お察しいたします。突然のことで、どうしたら良いのか戸惑ってしまいますよね。遺言書には故人の大切な想いが込められていますが、扱い方を間違えるとトラブルの原因にもなりかねません。この記事では、遺言書が見つかった際に、まず何をすべきか、そしてどのような手順で相続手続きを進めればよいのかを、分かりやすく解説していきます。落ち着いて、一つずつ確認していきましょう。

遺言書を見つけたら、まずやるべきこと

遺言書を見つけたら、まず内容を確認したくなるお気持ちはよく分かります。ですが、絶対に勝手に開封してはいけません。遺言書にはいくつか種類があり、種類によってその後の手続きが大きく変わるためです。まずは、どのような状態の遺言書かを確認し、正しいステップを踏むことが何よりも大切です。

封筒に入った遺言書は開封しない

封筒に入っていて、のり付けなどで封印されている遺言書は、家庭裁判所以外の場所で開封することが法律で禁止されています。もし勝手に開封してしまうと、5万円以下の過料(罰金のようなもの)が科される可能性があります。また、他の相続人から内容を改ざんしたのではないかと疑われ、トラブルに発展する恐れもあります。「遺言書」と書かれていなくても、それらしき封筒であれば、まずは開封せずに保管してください。

遺言書の種類を確認する

遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。どちらの遺言書かによって、その後の手続きが変わりますので、まずはどちらに該当するかを確認しましょう。

遺言書の種類 見分け方のポイント
自筆証書遺言 全文が手書きで作成されています。法務局の保管制度を利用していない場合、ご自宅の金庫や引き出しなどで保管されていることが多いです。
公正証書遺言 公証役場で作成され、公証人の署名・押印があります。通常、正本または謄本が手元にあり、ワープロで作成されたしっかりとした書面です。

特に「公正証書遺言」の場合は、原本が公証役場に保管されているため信頼性が高く、後述する家庭裁判所での「検認」という手続きが不要になります。

他の相続人に連絡する

遺言書を発見したことは、他の相続人全員に速やかに伝えましょう。黙って手続きを進めてしまうと、後々「なぜ教えてくれなかったのか」と不信感を持たれ、トラブルの原因になりかねません。相続は相続人全員で協力して進めるという意識を持つことが大切です。

家庭裁判所での「検認」手続きとは?

ご自身で書かれた「自筆証書遺言」が見つかった場合、家庭裁判所で「検認(けんにん)」という手続きが必要になります。これは、遺言書がどのような状態で発見されたかを裁判所が確認し、偽造や変造を防ぐための手続きです。遺言書の内容が有効か無効かを判断するものではない、という点に注意してください。

検認が必要な遺言書・不要な遺言書

全ての遺言書に検認が必要なわけではありません。以下の表で確認してみましょう。

検認の要否 遺言書の種類
必要 ・自筆証書遺言(自宅などで保管されていたもの)
・秘密証書遺言
不要 ・公正証書遺言
・自筆証書遺言(法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用していたもの)

2020年7月から始まった法務局の保管制度を利用している自筆証書遺言は、偽造の恐れがないため検認が不要です。保管されているかどうかは、法務局に問い合わせることで確認できます。

検認手続きの流れと必要書類

検認手続きは、以下の流れで進めます。

1. 申立て
亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。

2. 相続人への通知
裁判所から相続人全員に検認を行う日時が通知されます。

3. 検認当日
申立人は遺言書を持参して出席します。他の相続人は任意参加です。裁判官が相続人立会いのもと遺言書を開封し、内容を確認します。

4. 検認済証明書の発行
手続き後、遺言書に「検認済証明書」が付けられます。これがないと、不動産の名義変更や預貯金の解約などの相続手続きができません。

手続きには、主に以下の書類が必要となります。

  • 遺言書の検認申立書
  • 亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの全ての戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 収入印紙800円分(遺言書1通につき)
  • 連絡用の郵便切手(金額は事前に裁判所にご確認ください)

戸籍謄本の収集は時間がかかる場合があるので、早めに準備を始めましょう。

遺言書の内容に従って相続手続きを進める

検認が無事に終わったら、いよいよ遺言書の内容に沿って相続手続きを進めていきます。不動産の名義変更(相続登記)や、預貯金の解約・名義変更など、財産の種類に応じた手続きが必要です。遺言書で「遺言執行者」が指定されている場合は、その人が中心となって手続きを進めることになります。

遺言執行者がいる場合

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う権限を持つ人です。相続財産の調査、財産目録の作成、名義変更手続きなどを一手に担います。相続人は遺言執行者の手続きに協力する必要があり、その職務を妨害することはできません。遺言執行者が指定されていると、手続きがスムーズに進むことが多いです。

遺言執行者がいない場合

遺言書に遺言執行者の指定がない場合は、相続人全員で協力して手続きを進めるか、必要であれば家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることができます。手続きが複雑な場合や、相続人間で意見が対立しそうな場合は、弁護士や司法書士などの専門家を遺言執行者に選任することも一つの方法です。

複数の遺言書が見つかった場合の対処法

遺品整理をしていると、複数の遺言書が見つかることがあります。その場合、どちらが有効になるのでしょうか?法律では、日付が最も新しい遺言書が有効とされています。もし内容が矛盾する部分があれば、新しい遺言の内容が優先されます。ただし、矛盾しない部分については古い遺言も有効なままですので、見つかった遺言書はすべて保管し、必要に応じて検認手続きを行いましょう。

遺産分割協議の後に遺言書が見つかったら?

遺言書がないものと思って相続人全員で話し合い(遺産分割協議)を終えた後に、遺言書が見つかるケースもあります。この場合、原則として遺言書の内容が優先されます。そのため、一度行った遺産分割協議は無効となり、やり直す必要があります。
ただし、相続人全員が遺言書の内容を確認した上で、「遺産分割協議の内容のままで良い」と全員が合意すれば、協議の内容を優先することも可能です。ですが、遺言書で相続人以外の人に財産を渡す「遺贈」が記載されている場合などは、その人の同意も必要になるため注意が必要です。

まとめ

お父様が亡くなられて遺言書が見つかったら、まずは慌てずに「勝手に開封しない」「遺言書の種類を確認する」ことが大切です。特に手書きの自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所での「検認」という手続きが不可欠です。手続きには戸籍謄本の収集など時間のかかる作業もありますので、計画的に進めましょう。相続手続きは複雑で、不安に感じることも多いと思います。もし手続きに困ったり、相続人間でトラブルになりそうだと感じたりした場合は、弁護士や司法書士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。故人の大切な想いを円満に実現するために、正しい知識を持って対応していきましょう。

参考文献

裁判所|遺言書の検認

法務省|自筆証書遺言書保管制度

国税庁|No.4158 配偶者の税額の軽減

遺言書が見つかった時のよくある質問まとめ

Q.父の遺言書を見つけたら、まず何をすればいいですか?

A.遺言書を勝手に開封してはいけません。まず家庭裁判所で「検認」という手続きが必要です。ただし、法務局で保管されていた自筆証書遺言や、公正証書遺言の場合は検認は不要です。

Q.遺言書を勝手に開けてしまったらどうなりますか?

A.遺言書が無効になるわけではありませんが、5万円以下の過料に処せられる可能性があります。他の相続人とのトラブルを避けるためにも、開封せずに家庭裁判所に提出してください。

Q.遺言書の「検認」とは何ですか?

A.相続人に対し遺言の存在と内容を知らせ、遺言書の偽造・変造を防ぐための手続きです。遺言書の状態を確認・保存するもので、遺言の有効性を判断するものではありません。

Q.検認の手続きはどこで、どうやって行いますか?

A.亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。申立てには、申立書や戸籍謄本などが必要です。手続きには1〜2ヶ月程度かかる場合があります。

Q.公正証書遺言が見つかった場合も検認は必要ですか?

A.いいえ、公正証書遺言は公証役場で作成された信頼性の高い文書のため、検認は不要です。すぐに相続手続きを開始できます。

Q.遺言書の内容に納得できない場合はどうすればいいですか?

A.相続人には、法律で保障された最低限の遺産取得分である「遺留分」があります。遺言によって遺留分が侵害されている場合、「遺留分侵害額請求」を行うことができます。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。