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おひとりさまの相続、私の遺産は誰が相続人?知っておきたい対策と手続き

2025-05-20
目次

近年、生涯独身の方や、配偶者やお子さんがいらっしゃらない「おひとりさま」が増えています。ご自身が大切に築き上げてきた財産が、将来どうなるのか、誰の手に渡るのか、不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、おひとりさまの相続人が誰になるのかという基本から、安心して将来を迎えるために元気なうちからできる対策まで、優しくわかりやすく解説していきますね。

おひとりさまの相続、誰が相続人になるの?

まず、ご自身にもしものことがあった時、財産を誰が受け継ぐことになるのか、法律で決められたルールについて見ていきましょう。これを理解することが、相続対策の第一歩になります。

法定相続人の順位を知ろう

法律では、財産を相続できる人の範囲と優先順位が定められています。これを「法定相続人」と呼びます。おひとりさまの場合、通常最も優先順位の高い配偶者やお子さんがいないため、次のような順位で相続人が決まります。

順位 該当する人
第1順位 子、または子が先に亡くなっている場合は孫
第2順位 父母、または父母が先に亡くなっている場合は祖父母
第3順位 兄弟姉妹、または兄弟姉妹が先に亡くなっている場合はその子(甥・姪)

この順位は絶対で、例えば第2順位のご両親がご健在であれば、第3順位のご兄弟は相続人にはなれません。

兄弟姉妹や甥・姪が相続人になるケース

おひとりさまの相続で最も多いのが、このケースかもしれません。お子さん(第1順位)がおらず、ご両親や祖父母(第2順位)もすでに亡くなっている場合、第3順位であるご自身の兄弟姉妹が相続人になります。もし、ご兄弟姉妹の中に先に亡くなっている方がいれば、その方のお子さん、つまり甥や姪が代わりに相続することになります。これを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」と言います。

相続人が誰もいない場合はどうなる?

では、法定相続人にあたる親族が誰もいない場合はどうなるのでしょうか。この場合、最終的にご自身の財産は国のもの、つまり「国庫」に帰属することになります。毎年、数百億円もの遺産がこうして国に納められていると言われています。ご自身が頑張って築いた財産が、ただ国のものになってしまうのは少し寂しいと感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。

相続人がいない場合に起こりうること

法定相続人がいない場合、財産は自動的に国のものになるわけではなく、いくつかの法的な手続きが踏まれます。この過程で、思わぬ手間や費用がかかることもあるんです。

相続財産清算人の選任

相続人がいない、または全員が相続放棄をした場合、家庭裁判所は利害関係者(例えば、お金を貸していた人など)や検察官の申し立てによって「相続財産清算人(そうぞくざいさんせいさんにん)」を選任します。この清算人が、あなたの財産を調査・管理し、借金があれば返済し、最終的に残った財産を国庫に納める手続きを行います。この選任手続きには、裁判所に納める費用として数十万円から100万円程度の「予納金」が必要になることもあります。

特別縁故者への財産分与

法定相続人はいなくても、もしあなたに「特別な縁故」があった人がいれば、その人が財産を受け取れる可能性があります。これを「特別縁故者(とくべつえんこしゃ)」と言います。例えば、長年連れ添った内縁のパートナーや、あなたの療養看護に尽くしてくれた親族などがこれにあたります。ただし、特別縁故者として認められるには、家庭裁判所に申し立てを行い、その関係性を証明する必要があり、必ず認められるとは限らないのが実情です。

おひとりさまが元気なうちにできる生前対策4ステップ

「私の財産は、お世話になったあの人に渡したい」「社会のために役立ててほしい」そんな想いを叶えるためには、元気なうちからの準備が何よりも大切です。ここでは、具体的な4つのステップをご紹介します。

ステップ1:相続人の確認

まずは、ご自身の戸籍謄本(生まれてから現在までのすべて)を取得してみましょう。これにより、ご自身でも知らなかった相続人がいないか、誰が法定相続人になるのかを正確に把握することができます。これが、すべての対策のスタートラインになります。

ステップ2:財産の整理とリスト化(財産目録の作成)

次に、ご自身が持っている財産をすべてリストアップしてみましょう。預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、ローンなどのマイナスの財産もすべて書き出し、「財産目録」としてまとめておくと、後の手続きがとてもスムーズになります。市販のエンディングノートなどを活用するのも良い方法ですよ。

ステップ3:遺言書の作成

おひとりさまの相続対策で、最も重要で効果的なのが「遺言書」の作成です。遺言書があれば、法定相続人よりもご自身の意思が優先されます。そのため、法定相続人以外のお世話になったご友人や、応援したいNPO法人などに財産を遺す「遺贈(いぞう)」も可能になります。あなたの最後の想いを形にする、とても大切な手続きです。

ステップ4:信頼できる人を見つけておく(任意後見・死後事務委任)

もし将来、認知症などで判断能力が低下してしまった時の財産管理や、亡くなった後の葬儀・納骨、役所の手続きなどを誰にお願いするか、決めておくことも大切です。元気なうちに信頼できる人と「任意後見契約」「死後事務委任契約」を結んでおくことで、将来の不安を大きく和らげることができます。

遺言書を作成するときのポイント

遺言書は、あなたの想いを実現するための大切なツールです。せっかく作成しても無効になってしまっては意味がありませんので、作成時のポイントをしっかり押さえておきましょう。

自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

遺言書にはいくつか種類がありますが、代表的なのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。それぞれの特徴を理解して、ご自身に合った方法を選びましょう。おひとりさまの場合は、不備で無効になるリスクが低く、より確実に意思を実現できる「公正証書遺言」をおすすめします。

種 類 特  徴
自筆証書遺言 自分で手書きで作成する遺言。手軽で費用もかからないが、形式不備で無効になるリスクがある。法務局での保管制度を利用すると検認が不要になる。
公正証書遺言 公証役場で公証人に作成してもらう遺言。費用と手間はかかるが、法律の専門家が関与するため無効になる可能性が極めて低く、最も確実な方法。

遺留分に注意(兄弟姉妹にはない!)

遺言書を作成する際によく話題になるのが「遺留分」です。これは、特定の相続人(配偶者、子、親など)に法律上保障された最低限の遺産の取り分のことです。しかし、とても重要なポイントがあります。それは、第3順位の相続人である兄弟姉妹(および甥・姪)には、この遺留分がないということです。つまり、おひとりさまが遺言で「全財産を友人に遺贈する」と指定した場合、ご兄弟がいたとしても、遺留分を理由に異議を申し立てることはできないのです。これにより、ご自身の意思が尊重されやすくなります。

寄付や社会貢献という選択肢「遺贈寄付」

もし、特定の誰かに財産を遺すというよりは、ご自身の財産を社会のために役立てたい、というお考えがあれば「遺贈寄付」という素晴らしい選択肢もあります。

遺贈寄付とは?

遺贈寄付(いぞうきふ)とは、遺言書によって、ご自身の財産の一部または全部を、応援したいNPO法人、公益団体、学校、自治体などに寄付することです。動物愛護、環境保護、子どもの貧困問題など、ご自身が関心のある社会問題の解決に、最後の財産を役立てることができます。

遺贈寄付のメリット

遺贈寄付には、ご自身の財産の使い道を自分で決められる、という最大のメリットがあります。相続人がいない場合に、財産がただ国庫に入るのではなく、ご自身の意思で未来への投資として社会に還元できるのは、とても意義のあることではないでしょうか。

まとめ

おひとりさまの相続は、決して特別なことではなく、誰もが考えるべき身近なテーマです。ご自身の財産が誰の手に渡るのかを正しく知り、元気なうちから準備を始めることが、安心して未来を迎えるための鍵となります。特に遺言書の作成は、あなたの想いを未来へとつなぐ、最も確実で有効な方法です。まずは第一歩として、ご自身の戸籍謄本を取り寄せ、相続人が誰になるのかを確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。

参考文献

国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分

法務省 遺言書保管制度について

おひとり様の相続に関するよくある質問まとめ

Q. 独身で子供がいません。親もすでに他界している場合、誰が相続人になりますか?

A. ご兄弟姉妹が相続人になります。もし兄弟姉妹も亡くなっている場合は、その子供である甥や姪が代わりに相続人(代襲相続人)となります。

Q. 兄弟姉妹も甥や姪もいません。相続人は誰もいないのでしょうか?

A. 法定相続人が誰もいない場合、特別な関係があった人(特別縁故者)が家庭裁判所に申し立てることで財産を受け取れる可能性があります。誰もいなければ、最終的に財産は国庫に帰属します。

Q. 兄弟とは疎遠です。財産を渡したくない場合、どうすればいいですか?

A. 遺言書を作成することで、兄弟姉妹以外の人や団体(お世話になった友人、NPO法人など)に財産を遺贈することができます。遺言書の内容が法定相続より優先されます。

Q. 遺言書がない場合、甥や姪に財産はどれくらい相続されますか?

A. 亡くなった兄弟姉妹が受け取るはずだった相続分を、その子供である甥や姪が均等に分けて相続します。例えば、相続人が兄(故人)と妹の場合、兄の子供(甥姪)が1/2を、妹が1/2を相続します。

Q. 「特別縁故者」とは、具体的にどのような人ですか?

A. 生計を同じくしていた人、療養看護に努めた人など、被相続人と特別な縁故があった人のことです。内縁の配偶者や事実上の養子などが認められるケースがあります。

Q. 相続人が誰もいない場合、財産はどうなってしまうのですか?

A. 家庭裁判所が相続財産管理人を選任し、債権者への支払いや特別縁故者への分与を行った後、残った財産は国のもの(国庫に帰属)となります。

事務所概要
社名
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対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。