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遺産分割3つの方法を徹底解説!現物・換価・代償分割の選び方

2025-05-23
目次

大切なご家族が亡くなられた後、遺された財産をどう分けるかという問題は、とてもデリケートで重要ですよね。この相続人全員での話し合いを「遺産分割協議」と言いますが、財産の分け方にはいくつかの方法があるんです。今回は、代表的な3つの分割方法である「現物分割」「代償分割」「換価分割」について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを優しく解説していきます。ご自身の状況に合った最適な方法を見つけるお手伝いができれば嬉しいです。

遺産分割の基本的な3つの方法

遺産分割は、相続人全員の合意のもとで進めるのが基本です。その具体的な分け方として、主に以下の3つの方法が用いられます。どの方法を選ぶかによって、手続きや税金、そして何より相続人間の公平感が大きく変わってきます。それぞれの特徴をしっかり理解して、ご家族にとって一番良い方法を選びましょう。

現物分割(げんぶつぶんかつ)

現物分割とは、遺産をそのままの形で、個々の財産ごとに「これは誰がもらうか」を決めていく方法です。例えば、「土地と建物は長男に、預貯金は次男に、有価証券は長女に」といった分け方ですね。手続きが比較的シンプルで、最も一般的に行われている分割方法なんですよ。

代償分割(だいしょうぶんかつ)

代償分割とは、特定の相続人が法定相続分を超える価値の財産(例えば不動産)を取得する代わりに、その超えた分を他の相続人に対して自分自身の現金などで支払う方法です。公平を保ちつつ、特定の財産を分けずに済むのが大きな特徴です。

換価分割(かんかぶんかつ)

換価分割とは、不動産などの遺産を売却してお金に換え、その売却代金を相続人間で分配する方法です。物理的に分けにくい財産でも、現金にすることで1円単位で公平に分けることができるため、相続人間のトラブルを防ぎやすい方法と言えます。

現物分割のメリット・デメリット

最もオーソドックスな現物分割ですが、メリットとデメリットの両方があります。特に相続財産の種類が少なかったり、価値に大きな偏りがあったりする場合には注意が必要です。

現物分割のメリット

一番のメリットは、手続きがシンプルで分かりやすい点です。財産を売却する必要がないため、仲介手数料などの余計な費用がかかりません。また、故人が大切にしていた家や土地などを、そのままの形で引き継ぐことができるので、思い出を大切にしたい方にとっては最適な方法かもしれませんね。

現物分割のデメリット

デメリットは、各相続人の取得分を法定相続分通りにきっちり分けるのが難しい点です。例えば、遺産が評価額4,000万円のご自宅と1,000万円の預金だけで、相続人が子ども2人だったとします。法定相続分は1人あたり2,500万円ですが、長男がご自宅を相続すると、次男は預金1,000万円しか相続できず、1,500万円もの差が生まれてしまいます。このような不公平感が、後のトラブルに繋がる可能性もあるんですね。

代償分割のメリット・デメリット

特定の財産を維持しつつ、公平性を保てる代償分割。家業を継ぐ方や、故人と同居していた方がご自宅を相続する場合などによく利用されますが、注意点もあります。

代償分割のメリット

代償分割のメリットは、不動産や自社株など、分けにくい財産を特定の相続人が引き継ぎながら、他の相続人には代償金を支払うことで公平な分割を実現できる点です。これにより、「家は長男が継いでほしい」といった故人の想いや、相続人の希望を叶えやすくなります。

代償分割のデメリット

最大のデメリットは、財産を取得する相続人に、代償金を支払うための十分な資力(現金)が必要になることです。例えば、先ほどの例で長男が4,000万円の自宅を相続する場合、次男に1,500万円の代償金を支払う必要があります。この現金を準備できないと、代償分割は利用できません。また、不動産の評価額をいくらにするかで相続人間の意見が対立しやすいという側面もあります。

換価分割のメリット・デメリット

最も公平に分けられると言われる換価分割ですが、大切な財産を手放すことになるという大きな決断が伴います。メリットとデメリットをよく考えて選びましょう。

換価分割のメリット

換価分割は、遺産を売却した現金を分けるため、1円単位で正確に、そして公平に分割できるのが最大のメリットです。相続人の中に代償金を支払える人がいなくても、公平な分割が可能です。また、相続する不動産を誰も利用する予定がない場合などには、管理の手間や固定資産税の負担がなくなるという利点もあります。

換価分割のデメリット

一番のデメリットは、先祖代々受け継いできた土地や、思い出の詰まったご自宅などを手放さなければならないことです。また、不動産の売却には時間がかかることもあり、すぐに現金化できるとは限りません。売却時には、不動産会社への仲介手数料(例:売却価格400万円超の場合、売却価格の3%+6万円+消費税が上限)や、売却によって利益が出た場合には譲渡所得税などの税金がかかることも理解しておく必要があります。

どの分割方法を選ぶべき?ケース別比較

ここまで3つの方法を見てきましたが、「結局、自分の場合はどれがいいの?」と迷いますよね。そこで、それぞれの方法がどんなケースに向いているのか、メリット・デメリットを一覧表にまとめてみました。

分割方法 特徴とメリット・デメリット
現物分割 メリット: 手続きが簡単で、財産をそのままの形で残せる。
デメリット: 財産の価値に差があると不公平になりやすい。
→こんな方におすすめ: 遺産の種類が多く、価値のバランスを取りやすい方。相続人間で多少の不公平があっても納得できる関係性がある場合。
代償分割 メリット: 不動産などを売却せずに、公平な分割が可能。
デメリット: 財産を取得する側に多額の現金が必要。不動産の評価額で揉める可能性がある。
→こんな方におすすめ: 特定の相続人が事業や住まいを引き継ぎたいと希望しており、その相続人に代償金を支払う資力がある場合。
換価分割 メリット: 1円単位で分けられ、最も公平性が高い。
デメリット: 思い出の財産を手放す必要がある。売却に手間や費用がかかる。
→こんな方におすすめ: 相続人全員が財産を必要としておらず、とにかく公平に分けたいと希望している場合。

まとめ

今回は、遺産分割の3つの主要な方法、現物分割代償分割換価分割について詳しく見てきました。どの方法にも一長一短があり、これが絶対に正しいという答えはありません。大切なのは、遺された財産の内容、そして相続人一人ひとりの今後の生活や想いを尊重し、全員が納得できる着地点を見つけることです。もしご家族だけでの話し合いが難しいと感じたら、弁護士や税理士などの専門家に相談するのも一つの有効な手段ですよ。円満な相続を実現するために、じっくりと、そして丁寧に対話を進めていってくださいね。

参考文献

国税庁 No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算

遺産分割方法のよくある質問まとめ

Q.遺産分割にはどんな方法がありますか?

A.主に3つの方法があります。財産をそのままの形で分ける「現物分割」、財産を売却して現金で分ける「換価分割」、特定の相続人が財産を取得する代わりに他の相続人へお金を支払う「代償分割」です。

Q.一番シンプルな遺産分割の方法はどれですか?

A.「現物分割」が最もシンプルです。例えば「不動産は長男、預金は次男」のように、遺産をそのままの形で各相続人に分配します。ただし、財産価値が均等になりにくいというデメリットがあります。

Q.不動産を公平に分けたい場合はどの方法が良いですか?

A.「換価分割」が適しています。不動産などの遺産を売却して現金化し、その現金を相続分に応じて分配する方法です。公平に分けやすいですが、売却に手間や費用、税金がかかる場合があります。

Q.代償分割とは、どのようなケースで使いますか?

A.事業用の資産や自宅など、分けられない財産を特定の相続人が引き継ぎたい場合に利用されます。その相続人が財産を取得する代わりに、他の相続人に対して自己の財産から代償金(お金)を支払うことで公平性を保ちます。

Q.代償分割で支払うお金がない場合はどうなりますか?

A.代償金の支払いが難しい場合、代償分割は成立しません。その場合は、他の分割方法(現物分割や換価分割)を再検討するか、家庭裁判所での調停や審判に移行する可能性があります。

Q.どの分割方法を選ぶべきか迷っています。

A.最適な方法は、遺産の種類、相続人それぞれの希望や状況によって異なります。まずは相続人全員で財産内容と希望を話し合うことが重要です。話がまとまらない場合は、専門家へ相談することも選択肢の一つです。

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