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遺言ができる者は誰?15歳から可能?満たすべき条件を優しく解説

2025-05-24
目次

ご自身の財産を誰にどのように遺したいか、その最終的な意思表示が「遺言」です。しかし、実は誰でも法的に有効な遺言を作成できるわけではありません。残されたご家族が円満に相続手続きを進められるよう、遺言には法律で定められたルールがあります。この記事では、「遺言ができる者」は誰なのか、年齢や判断能力といった具体的な条件について、わかりやすく解説していきます。

遺言ができる人の基本的な条件

法的に有効な遺言を作成するためには、主に2つの条件をクリアする必要があります。それは「年齢」と「意思能力」です。これらは民法という法律で定められており、どちらか一方でも欠けていると、せっかく作成した遺言が無効になってしまう可能性があります。具体的にどのような条件なのか、一つずつ見ていきましょう。

年齢の条件:満15歳以上であること

遺言ができる年齢は、満15歳以上と定められています(民法第961条)。一般的な契約などでは20歳(現在は18歳)からが成人として扱われますが、遺言はそれよりも若い年齢から認められています。これは、ご自身の死後のことについて意思表示をするのに、必ずしも成人である必要はないと考えられているためです。満15歳に達していれば、未成年者であっても親権者の同意なしに、単独で有効な遺言を作成することができます。

意思能力(遺言能力)があること

遺言を作成する上で最も重要なのが、「意思能力(遺言能力)」があることです。意思能力とは、「自分が作成する遺言の内容を正しく理解し、その結果どうなるのかを判断できる能力」のことを指します。例えば、「この財産を長男に相続させる」と書いた場合に、その意味や法的な効果を自分で判断できる状態である必要があります。この意思能力がない状態で作成された遺言は、たとえ形式が整っていても無効と判断されてしまいます。

判断能力に不安がある場合の遺言

高齢になると、認知症などで判断能力が低下してしまうことがあります。このような場合、遺言を作成できるのでしょうか。ご本人の状態や、成年後見制度の利用状況によって扱いが異なりますので、ケース別に解説します。

認知症と診断されたら遺言はできない?

「認知症」と診断されたからといって、直ちに遺言ができなくなるわけではありません。重要なのは、遺言書を作成した「その時点」で意思能力があったかどうかです。認知症の症状は常に一定ではなく、判断能力がはっきりしている時間帯もあります。もし、遺言作成時にご自身の意思で内容を決定できる状態であれば、その遺言は有効と認められる可能性があります。ただし、後から相続人の間で「遺言能力がなかったのでは?」と争いになることを防ぐため、医師に「遺言能力に問題なし」という内容の診断書を作成してもらうなどの対策をしておくと安心です。

成年後見制度を利用している場合

判断能力が不十分な方を保護・支援するための「成年後見制度」を利用している場合、遺言の可否は利用している制度の種類によって異なります。

以下の表にまとめましたので、参考にしてください。

制度の利用者 遺言の可否
成年被後見人
(判断能力を常に欠く状況の方)
原則として遺言はできません。ただし、一時的に判断能力が回復した時に、医師2人以上の立会いという厳格な条件を満たせば、例外的に有効な遺言を作成できます(民法第973条)。
被保佐人・被補助人
(判断能力が不十分・著しく不十分な方)
保佐人や補助人の同意は不要で、単独でいつでも遺言をすることができます。遺言は本人の一身専属的な行為(その人自身しかできない行為)と考えられているためです。

遺言の種類と作成時の注意点

遺言ができる条件を満たしていても、法律で定められた方式に従って作成しないと、その遺言は無効になってしまいます。ここでは、主な3つの遺言の種類とそれぞれの特徴を解説します。ご自身の状況に合った方法を選びましょう。

自筆証書遺言

遺言者が、遺言書の全文、日付、氏名をすべて自分で手書きし、押印して作成する遺言です。費用がかからず、誰にも知られずに作成できる手軽さがメリットです。ただし、書き方や日付の記載漏れなど、法律の要件を満たさないと無効になるリスクがあります。また、自宅で保管するため、紛失や、相続人によって改ざんされてしまう危険性もゼロではありません。なお、2020年からは法務局で自筆証書遺言を保管してくれる制度も始まり、紛失や改ざんのリスクを減らせるようになりました。

公正証書遺言

公証役場で、公証人と証人2人以上の立会いのもと作成する遺言です。公証人が内容を確認しながら作成するため、法律的な不備で無効になる心配がほとんどありません。原本は公証役場で厳重に保管されるため、紛失や改ざんの恐れもなく、最も安全で確実な方法といえます。相続開始後の家庭裁判所での「検認」という手続きも不要で、スムーズに相続手続きを進められます。ただし、作成に手数料がかかる点と、証人が2人必要になる点がデメリットです。判断能力に不安がある場合でも、公証人が本人の意思能力を確認した上で作成してくれるため、後のトラブル防止に非常に有効です。

秘密証書遺言

遺言の内容を誰にも知られたくない場合に利用される方法です。遺言者が作成・署名・押印した遺言書を封筒に入れ、遺言書と同じ印鑑で封印します。その封書を公証人と証人2人以上の前に提出し、自分の遺言書であることを申述して、その存在を公的に証明してもらいます。内容は秘密にできますが、遺言書自体に不備があれば無効になるリスクがあり、あまり利用されていないのが現状です。

遺言作成者に関するよくある質問

代理人に遺言を書いてもらうことはできますか?

いいえ、できません。遺言はご本人の最終的な意思を尊重するものであるため、代理人が作成することは法律で禁止されています(民法第962条)。たとえご家族であっても代筆は認められず、代筆された自筆証書遺言は無効となります。体が不自由で字が書けない場合は、公証人が本人の話した内容を筆記してくれる公正証書遺言を利用しましょう。

夫婦で一緒に1通の遺言書を作成できますか?

いいえ、できません。夫婦が連名で1通の遺言書を作成する「共同遺言」は法律で禁止されています(民法第975条)。これは、後から一方だけが遺言を撤回したり変更したりすることが難しくなり、個人の意思の自由を妨げる可能性があるためです。遺言は必ず、ご夫婦それぞれが別々に1通ずつ作成する必要があります。

遺言能力で争いにならないための対策

せっかく遺言書を作成しても、相続が始まった後に「作成当時は認知症で判断能力がなかったはずだ」と相続人の間で争いになってしまうケースがあります。そのような事態を避けるために、以下の対策をおすすめします。

判断能力がはっきりしているうちに作成する

最もシンプルで確実な対策は、心身ともに元気で、判断能力がはっきりしているうちに遺言書を作成しておくことです。「まだ早い」と思わずに、ご自身の意思を明確に示せるうちに準備を始めることが、ご家族のためにもなります。

公正証書遺言を利用する

後の紛争を防ぐ上で、最も効果的なのが公正証書遺言です。法律の専門家である公証人が、遺言者の本人確認と意思能力の確認を慎重に行った上で作成するため、遺言の有効性が争われる可能性が極めて低くなります。公証人が作成に関与したという事実が、遺言の信頼性を強力に裏付けてくれるのです。

医師の診断書を取得しておく

もし自筆証書遺言を作成する場合や、ご自身の判断能力に少しでも不安がある場合は、遺言書を作成する日と同じ日付で、医師から「意思能力(遺言能力)に問題がない」旨の診断書を取得しておくと良いでしょう。客観的な証拠として、遺言の有効性を補強する材料になります。

まとめ

法的に有効な遺言ができるのは、「満15歳以上」で「意思能力(遺言能力)」がある人です。認知症の診断を受けていたり、成年後見制度を利用していたりする場合でも、条件次第では遺言を作成することが可能です。しかし、残されたご家族が相続をめぐって争うことのないよう、遺言はできるだけ判断能力がはっきりしているうちに、信頼性の高い「公正証書遺言」で作成することをおすすめします。ご自身の最後の想いを確実に実現させるためにも、正しい知識を持って遺言の準備を進めましょう。

参考文献

遺言ができる人に関するよくある質問まとめ

Q.遺言は何歳から作成できますか?

A.満15歳以上であれば、誰でも遺言を作成することができます。未成年者であっても、法定代理人(親権者など)の同意は必要ありません。

Q.遺言を作成するために必要な能力はありますか?

A.遺言を作成するには「遺言能力」が必要です。これは、遺言の内容を理解し、その結果どうなるかを判断できる能力のことを指します。

Q.認知症と診断されたら、もう遺言は作成できませんか?

A.認知症と診断されたからといって、直ちに遺言が作成できなくなるわけではありません。遺言を作成した時点で遺言能力があれば、その遺言は有効です。ただし、後々のトラブルを避けるため、医師の診断書を取得しておくなどの対策が推奨されます。

Q.成年被後見人は遺言を作成できますか?

A.成年被後見人でも、一時的に判断能力が回復している状態であれば、遺言を作成することが可能です。ただし、その際には医師2人以上の立会いが必要という特別な要件があります。

Q.遺言能力がない状態で作成した遺言はどうなりますか?

A.遺言能力がない状態で作成された遺言は、法的に無効となります。遺言の有効性をめぐって、相続人間で争いになる可能性があります。

Q.外国人でも日本の方式で遺言を作成できますか?

A.はい、日本に在住している外国人でも、日本の法律(民法)に定められた方式に従って遺言を作成することができます。その遺言は日本の法律上有効です。

事務所概要
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対応責任者
税理士 島本 雅史

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