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公示価格は時価と違う?建物がある土地の価格の考え方も解説

2025-05-31
目次

土地の価格について調べはじめると、「公示価格」や「時価」といった言葉がたくさん出てきて、少し混乱してしまいますよね。「公示価格って、実際に売れる価格(時価)と同じなの?」「そもそも土地だけの価格?」「家が建っている場合はどう考えればいいの?」など、たくさんの疑問が浮かんでくるかと思います。この記事では、そんな土地の価格に関する疑問を一つひとつ、優しく丁寧に解説していきますね。

公示価格ってそもそも何?

まずは基本の「公示価格」から見ていきましょう。公示価格とは、国土交通省が毎年1回(3月下旬ごろ)発表する、土地の「正常な価格」のことです。全国の標準的な地点(標準地)を選んで、「この土地は1平方メートルあたり、このくらいの価値ですよ」という目安を示してくれているんですね。これは、不動産の専門家である不動産鑑定士2名以上が評価した、とても客観的で信頼性の高い価格なんです。

公示価格は土地だけの価格

ここで大切なポイントが一つあります。それは、公示価格は、その土地に建物などが何もない「更地(さらち)」の状態を想定した価格だということです。つまり、純粋な土地だけの価格を示しています。そのため、もし評価対象の土地に立派な家が建っていたとしても、その建物の価値は公示価格には一切含まれていないんですね。

公示価格は時価(実勢価格)とは違うの?

「じゃあ、公示価格がそのまま時価になるの?」というと、実はそうではありません。時価(実勢価格とも呼ばれます)は、実際に市場で売買される価格のことです。売りたい人と買いたい人の間で「この価格なら売りたい」「この価格なら買いたい」という需要と供給のバランスによって決まる、いわば「生きた価格」です。
公示価格はあくまで国が示す「指標」や「目安」なので、実際の取引では、その土地の人気度や形、周辺環境といった個別の事情が加味されて価格が決まります。一般的には、時価(実勢価格)は公示価格の1.1倍から1.2倍程度になることが多いと言われていますよ。

なぜ公示価格が必要なの?

時価があるなら、なぜわざわざ公示価格というものが必要なのでしょうか。それは、公示価格が私たちの社会でとても大切な役割を担っているからです。例えば、以下のような場面で基準として使われています。

  • 公共事業(道路や公園など)のために国や自治体が土地を買い取るときの価格算定の基準
  • 土地の相続税や固定資産税を計算するときの評価の基準
  • 銀行が不動産を担保にお金を貸すときの担保価値評価の参考
  • 一般の人が土地を売買するときの価格の目安

このように、公平で客観的な取引や課税を行うための、大切な「ものさし」の役割を果たしているんですね。

土地の価格は1つじゃない?「一物四価」を理解しよう

実は、1つの土地には、これまでお話しした公示価格や時価のほかにも、いくつかの異なる価格が存在します。これを「一物四価(いちぶつよんか)」と言います。少し難しく聞こえるかもしれませんが、それぞれの価格がどんな目的で使われるのかを知ると、意外とすんなり理解できますよ。

4つの価格とその関係性

土地の代表的な4つの価格は、それぞれ以下のような目的で使われ、価格の水準にも違いがあります。公示価格を100とした場合の、それぞれの価格水準の目安を下の表にまとめてみました。

価格の種類 価格水準の目安(公示価格を100%とした場合)
実勢価格(時価) 実際の取引価格。110%~120%程度が目安。
公示価格 国が示す土地取引の指標。これが基準の100%です。
相続税評価額(路線価) 相続税や贈与税を計算するための価格。80%程度が目安。
固定資産税評価額 固定資産税や都市計画税を計算するための価格。70%程度が目安。

このように、同じ土地でも、使う目的によって価格の基準が違うんですね。税金の計算に使う価格は、実際の取引価格よりも少し低めに設定されているのが特徴です。

建物が建っている土地の価格はどう考える?

さて、ここからは「建物が建っている場合」について考えていきましょう。先ほどお話ししたように、公示価格はあくまで「更地」の価格です。では、実際に家が建っている土地の価値を知りたいときは、どうすれば良いのでしょうか。

更地としての評価が基本

不動産の価格を考えるとき、基本的には「土地」と「建物」を分けて評価します。まず、公示価格などを参考にして、その土地が更地だった場合の価格(土地の価格)を算出します。そして、その土地の価格に、建物の価値を足したり引いたりして、不動産全体の価格を考えていくのが一般的です。

建物の価値は「再調達原価」と「減価償却」で考える

建物の価値は、主に2つの考え方で評価されます。

  1. 再調達原価:その建物を今、新しく建てたらいくらかかるか、という価格です。
  2. 減価償却:建物は年数が経つにつれて古くなり、価値が下がっていきます。この価値の減少分を計算することを減価償却と言います。

つまり、「再調達原価」から、築年数に応じた「減価償却費」を差し引いたものが、現在の建物の価値ということになります。木造の一戸建ての場合、だいたい22年くらいで税法上の価値はゼロになるとされていますが、実際にはメンテナンス状態などによって価値は変わってきます。

古家がある場合は「解体費用」も考慮

もし土地の上に建っているのが、築年数がかなり経過した「古家(ふるや)」だった場合は注意が必要です。建物の価値がほとんどゼロ、あるいはマイナスになってしまうことがあるからです。
買主がその土地に新しい家を建てたいと考えている場合、古い家を解体する必要がありますよね。その解体費用は、土地の売買価格から差し引かれるのが一般的です。例えば、木造住宅の解体費用は1坪あたり4万円~5万円が目安と言われていますので、30坪の家なら120万円~150万円ほどの費用がかかる計算になります。この分、土地の価格が安くなってしまう可能性があるんですね。

自分で土地の時価を調べる方法

「自分の土地のおおよその価格を知りたいな」と思ったら、インターネットを使って自分で調べることもできます。公的なサイトを使えば、信頼できる情報を得ることができますよ。

「不動産情報ライブラリ」で公示価格を確認

公示価格は、国土交通省が運営する「不動産情報ライブラリ」というサイトで誰でも簡単に見ることができます。住所を入力して検索すると、近くの標準地の公示価格が表示されます。自分の土地の価格そのものではありませんが、周辺の相場を知る上でとても参考になります。

「全国地価マップ」で相続税路線価を確認

相続税や贈与税の基準となる相続税路線価は、国税庁のウェブサイトや「全国地価マップ」で確認できます。路線価は道路ごとに価格が設定されているので、公示価格よりも自分の土地に近い価格を知りやすいのが特徴です。先ほどの表にあったように、路線価は公示価格の80%程度が目安なので、「路線価 ÷ 0.8」という計算をすると、おおよその時価を推測することができますよ。

正確な時価を知りたいときはどうすればいい?

ここまで、ご自身で価格を調べる方法をお伝えしてきましたが、これらはあくまで目安を知るための方法です。土地の価格は、形がいびつだったり、接している道路が狭かったりといった個別の要因で大きく変わることがあります。より正確な時価を知りたい場合は、専門家に相談するのが一番です。

不動産会社の査定を利用する

最も現実的で正確な時価を知る方法は、不動産会社に査деを依頼することです。不動産会社は、公示価格や路線価、周辺の実際の取引事例(レインズという不動産会社専用のデータベースで確認します)などを基に、その土地のプラスの要素(日当たりが良い、角地であるなど)やマイナスの要素(騒音が気になる、高低差があるなど)を総合的に判断して、「実際に売れるであろう価格」を算出してくれます。もちろん、建物の状態もしっかり見てくれますよ。

複数の会社に査定を依頼しよう

査定を依頼するときは、1社だけでなく、できれば3社以上の複数の不動産会社にお願いすることをおすすめします。なぜなら、不動産会社によって得意なエリアや物件の種類が異なり、査定価格に差が出ることがあるからです。複数の査定結果を比較することで、より客観的で納得のいく時価を把握することができますし、信頼できる担当者を見つけることにもつながります。

まとめ

今回は、公示価格と時価の違いや、建物が建っている土地の価格の考え方についてお話ししました。最後にポイントをまとめておきますね。

  • 公示価格は時価ではなく、国が定める公的な「指標」です。
  • 公示価格は建物を含まない「更地」の価格です。
  • 土地には「公示価格」「時価」「相続税評価額」「固定資産税評価額」という4つの価格(一物四価)があります。
  • 建物がある場合、その建物の価値や解体費用を土地の価格に加味して考える必要があります。
  • おおよその価格は自分で調べられますが、正確な時価を知るには不動産会社への査定依頼が最も確実です。

土地の価格は少し複雑に感じるかもしれませんが、基本を押さえておけば大丈夫です。この記事が、あなたの土地の価値を知るための第一歩となれば嬉しいです。

参考文献

国土交通省 地価・不動産鑑定:地価公示

国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表

土地の公示価格に関するよくある質問まとめ

Q. 公示価格とは何ですか?

A. 国土交通省が毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を公表するものです。土地取引や資産評価の客観的な目安として利用されます。

Q. 公示価格は時価(実際の取引価格)と同じですか?

A. いいえ、必ずしも同じではありません。公示価格はあくまで目安であり、実際の取引価格(時価)は需要や個別の事情によって変動します。一般的に時価は公示価格の1.1倍〜1.2倍程度になることが多いです。

Q. 公示価格は土地だけの価格ですか?

A. はい、公示価格は土地のみの価格です。建物などの価値は含まれず、更地としての評価額が公表されます。

Q. 評価対象の土地に建物が建っていた場合、公示価格はどうなりますか?

A. 建物が建っていても、公示価格は「その土地が更地である」と仮定して評価されます。そのため、建物の価値や状態は公示価格に影響しません。

Q. 公示価格は何のために使われるのですか?

A. 公共事業用地の取得価格の算定基準や、不動産鑑定の規準として利用されます。また、相続税路線価や固定資産税評価額の目安としても活用されています。

Q. 公示価格はどこで調べられますか?

A. 国土交通省の「土地総合情報システム」内にある「標準地・基準地検索システム」で誰でも無料で確認することができます。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
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対応責任者
税理士 島本 雅史

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