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秘密証書遺言は自筆じゃなくてOK?パソコン作成のメリット・デメリット

2025-11-24
目次

「遺言書を書きたいけど、手書きは大変…」「秘密証書遺言はパソコンで作れるのかな?」そんな疑問をお持ちではありませんか?遺言書にはいくつか種類がありますが、その中でも「秘密証書遺言」は少し特殊な方法です。この記事では、秘密証書遺言は自筆で作成しないといけないのか、という疑問に分かりやすくお答えしていきます。他の遺言書との違いや、作成方法も詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧くださいね。

結論:秘密証書遺言は自筆でなくても大丈夫です!

いきなり結論からお伝えしますね。秘密証書遺言は、本文を自筆で書く必要はありません。パソコンで作成したり、字を書くのが難しい場合はご家族などに代筆を頼んだりすることも可能です。これは、全文を自分で手書きしなければならない「自筆証書遺言」との大きな違いです。ただし、一つだけ絶対に守らなければいけないルールがあります。それは、遺言書への署名は必ず遺言者本人が自筆で行うということです。署名まで他の人が書いてしまうと、その遺言書は無効になってしまうので注意してくださいね。

秘密証書遺言とは?

そもそも「秘密証書遺言」がどのようなものか簡単にご説明します。これは、遺言の内容を誰にも知られることなく、その存在だけを公証役場で証明してもらうという方式の遺言書です。遺言書を作成して封筒に入れ、封をしたものを公証役場に持っていき、「これは確かに私が作成した遺言書です」というお墨付きをもらうイメージですね。内容のプライバシーを守りつつ、遺言書の存在を公的に証明できるのが特徴です。

秘密証書遺言のメリット

秘密証書遺言には、主に以下のようなメリットがあります。

  • 遺言の内容を秘密にできる:公証人や証人にも内容を見せる必要がないため、プライバシーを完全に守れます。
  • パソコンや代筆での作成が可能:手が不自由な方や、手書きが苦手な方でも作成しやすいです。(ただし署名は自筆)
  • 偽造・変造を防ぎやすい:公証役場で存在を証明してもらうため、遺言書が本人のものであるという証明力が高まります。

秘密証書遺言のデメリット

一方で、デメリットもいくつか存在します。これが、秘密証書遺言があまり利用されない理由でもあります。

  • 内容の不備で無効になるリスクがある:公証人が内容をチェックしないため、法律的な要件を満たしていなかったり、表現が曖昧だったりして、遺言が無効になる可能性があります。
  • 紛失・隠匿のリスクがある:遺言書は公証役場ではなく自分で保管するため、紛失したり、誰かに隠されたりする危険性があります。
  • 手間と費用がかかる:公証役場での手続きが必要で、手数料として11,000円がかかります。また、証人2名の立ち会いも必要です。
  • 死後に家庭裁判所の「検認」が必要:遺言書を開封する前に、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要になり、相続人に手間がかかります。

3種類の遺言書を徹底比較!あなたに合うのはどれ?

遺言書には主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。それぞれの違いを理解して、ご自身に合った方法を選びましょう。

遺言書の種類 特徴
自筆証書遺言 遺言者が全文、日付、氏名を自書し、押印して作成します。費用がかからず手軽ですが、要件を満たさないと無効になるリスクがあります。法務局で保管してもらう制度(手数料3,900円)を利用すれば、検認が不要になり、紛失のリスクもなくなります。
公正証書遺言 公証人が遺言者から内容を聞き取り、証人2名の立ち会いのもとで作成する遺言書です。法律の専門家が関与するため、最も確実で安全な方法です。費用は財産額に応じて変動しますが、検認は不要で、原本は公証役場で保管されます。
秘密証書遺言 内容を秘密にできますが、形式不備で無効になるリスクや紛失のリスクがあります。自筆証書遺言と公正証書遺言の、いわば中間的な位置づけですが、デメリットも目立ちます。

作成方法(自筆・パソコン)の違い

作成方法の自由度は、種類によって大きく異なります。

  • 自筆証書遺言:全文を手書きする必要があります。(財産目録はパソコン作成可)
  • 公正証書遺言:公証人が作成するため、自分で書く必要はありません。
  • 秘密証書遺言パソコンや代筆が可能ですが、署名だけは自筆で行う必要があります。

費用や手間の比較

費用や手間も大切なポイントですよね。

種類 費用と手間
自筆証書遺言 費用はほぼかかりません(紙とペン、印鑑のみ)。法務局保管制度を利用する場合は3,900円の手数料が必要です。
公正証書遺言 財産額に応じた手数料(数万円~)と、証人を依頼する場合はその費用がかかります。公証人との打ち合わせなど、手間はかかりますが確実です。
秘密証書遺言 公証役場の手数料として一律11,000円がかかります。証人2名も必要で、公証役場での手続きの手間も発生します。

秘密証書遺言の作成手順と注意点

それでも秘密証書遺言を作成したいという方のために、具体的な手順と注意点を解説します。

STEP1: 遺言書を作成し、署名・押印する

まず、遺言の内容を考え、書面にします。前述のとおり、パソコンで作成しても、誰かに代筆してもらっても構いません。完成したら、遺言書に必ず自分で署名し、押印します。この印鑑は認印でも構いません。

STEP2: 遺言書を封筒に入れ、封印する

作成した遺言書を封筒に入れます。そして、封筒の綴じ目に、遺言書に押したものと同じ印鑑で封印をします。違う印鑑を使うと無効になるので、絶対に同じ印鑑を使ってください。

STEP3: 公証役場で手続きを行う

封印した遺言書と、証人2名(※)とともに公証役場へ行きます。公証人と証人の前で、その封書を提出し、「これは自分の遺言書であること」と「自分の氏名・住所」を伝えます。すると、公証人が封紙に提出日と遺言者の申述内容を記載し、遺言者、証人、公証人がそれぞれ署名・押印して手続きは完了です。遺言書は自分で持ち帰り、保管します。

※証人になれない人:未成年者、推定相続人(相続人になる予定の人)、受遺者(遺贈を受ける人)およびその配偶者と直系血族などは証人になれません。

なぜ秘密証書遺言はあまり利用されないの?

実は、秘密証書遺言は年間で100件程度しか利用されておらず、非常にマイナーな遺言方式です。年間10万件以上作成される公正証書遺言と比べると、その差は歴然ですね。その理由は、これまで説明してきたデメリットにあります。内容の不備で無効になるリスクや、紛失のリスクがありながら、費用や手間はかかってしまうため、「中途半端」な制度と見なされがちなのです。特に、2020年から始まった自筆証書遺言の法務局保管制度により、自筆証書遺言でも紛失・改ざんのリスクがなくなり、検認も不要になりました。この制度の登場で、秘密証書遺言を選ぶメリットはさらに少なくなったと言えるでしょう。

まとめ

今回は、「秘密証書遺言は自筆で作成しなければならない?」という疑問について解説しました。結論として、秘密証書遺言はパソコンや代筆でも作成できますが、署名だけは自筆で行う必要があります。内容を秘密にできるメリットはありますが、無効になるリスクや紛失の危険性、死後の検認手続きの手間など、多くのデメリットも抱えています。ご自身の想いを確実に、そして残されたご家族に負担をかけない形で残すためには、多少費用がかかっても、専門家である公証人が作成する公正証書遺言が最もおすすめです。どの遺言方法が自分に合っているかよく考え、後悔のない選択をしてくださいね。

参考文献

日本公証人連合会|遺言

法務省|自筆証書遺言書保管制度

秘密証書遺言のよくある質問まとめ

Q.秘密証書遺言は全文を自筆で書く必要がありますか?

A.いいえ、全文を自筆で書く必要はありません。パソコンやワープロで作成したり、他人に代筆してもらったりすることも可能です。ただし、署名だけは必ず遺言者本人が自筆で行う必要があります。

Q.秘密証書遺言の署名は自筆でないと無効になりますか?

A.はい、その通りです。遺言の内容はパソコン等で作成できますが、署名は必ず遺言者本人が自筆で行わなければなりません。自筆の署名がない場合、その遺言は無効となります。

Q.秘密証書遺言を作成する際の注意点は何ですか?

A.署名は必ず自筆で行い、遺言書に押印することが必要です。また、遺言書を封筒に入れ、遺言書で使った印鑑と同じもので封印します。さらに、公証人と2人以上の証人の前で手続きを行う必要があります。

Q.秘密証書遺言と自筆証書遺言の違いは何ですか?

A.最も大きな違いは、本文を自筆で書く必要があるかどうかです。自筆証書遺言は原則として全文自筆ですが、秘密証書遺言はパソコン等での作成が可能です。また、秘密証書遺言は公証役場で手続きを行うため、遺言の存在を確実に証明できるメリットがあります。

Q.秘密証書遺言の作成に証人は必要ですか?

A.はい、2人以上の証人が必要です。証人は、公証役場での手続きに立ち会い、遺言者本人の申述が正しいことを確認する役割を担います。推定相続人などは証人になれないため、注意が必要です。

Q.秘密証書遺言が見つかった場合、すぐに開封してもいいですか?

A.いいえ、すぐには開封できません。秘密証書遺言は、自筆証書遺言と同様に、家庭裁判所で「検認」という手続きを経る必要があります。検認を受けずに開封すると過料に処せられる可能性があるため、注意が必要です。

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