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「一般贈与」と「特例贈与」の違いは?贈与税の計算方法をわかりやすく解説!

2025-12-01
目次

ご家族から財産を受け取る「贈与」。実は、誰から誰に贈与するかによって、かかる税金の種類が変わることをご存知でしたか?贈与税には「一般贈与財産」「特例贈与財産」という2つの区分があり、それぞれ税率が異なります。この違いを知っているだけで、贈与税の負担を大きく減らせるかもしれません。今回は、この2つの贈与財産の違いと、具体的な計算方法について、わかりやすく解説していきますね。

「一般贈与財産」と「特例贈与財産」の基本的な違い

まず、2つの贈与財産がどのように分けられるのか、基本的なルールから見ていきましょう。ポイントは「誰から(贈与者)」「誰へ(受贈者)」財産が贈られたか、という点です。

特例贈与財産とは?

「特例贈与財産」とは、親や祖父母などの「直系尊属(ちょっけいそんぞく)」から、その年の1月1日時点で18歳以上の子や孫など「直系卑属(ちょっけいひぞく)」へ贈与された財産のことを指します。簡単に言うと、世代間の資産の受け渡しをスムーズにするための、少し税率が優遇された特別な贈与のことですね。

対象となる贈与の例 父母や祖父母から、18歳以上の子や孫への贈与
ポイント 贈与する人(直系尊属)と、受け取る人(18歳以上の直系卑属)の両方の条件を満たす必要があります。

※令和4年3月31日以前の贈与については、受け取る人の年齢要件は「20歳以上」でした。成人年齢の引き下げに伴い、ルールも変更されています。

一般贈与財産とは?

一方で「一般贈与財産」とは、特例贈与財産に当てはまらない、それ以外のすべての贈与を指します。範囲がとても広いので、具体的な例を見てみましょう。

対象となる贈与の例 ・夫婦間の贈与
・兄弟姉妹間の贈与
・親から18歳未満の未成年の子への贈与
・おじ・おばから甥・姪への贈与
・他人からの贈与
ポイント 特例贈与の条件に一つでも当てはまらない場合は、すべて一般贈与になります。

なぜ2つの区分があるの?

この2つの区分が設けられた背景には、親世代や祖父母世代が持つ資産を、より早い段階で子育てや住宅購入などでお金が必要となる若い世代に移しやすくするという目的があります。そのため、特例贈与財産は一般贈与財産に比べて税率が少し低く設定されており、税金の負担が軽くなるようになっています。

税率はどう違う?贈与税の計算方法

それでは、実際に税率がどれくらい違うのかを見ていきましょう。贈与税は、1年間(1月1日~12月31日)にもらった財産の合計額から、基礎控除額の110万円を差し引いた金額に対してかかります。計算式は以下の通りです。

(1年間の贈与額の合計 − 基礎控除110万円) × 税率 − 控除額 = 贈与税額

この「税率」と「控除額」が、「一般贈与財産」と「特例贈与財産」で異なります。

一般贈与財産の税率(一般税率)

夫婦間や兄弟間、親から未成年の子への贈与などに適用される税率です。

基礎控除後の課税価格 税率と控除額
200万円以下 税率10% (控除額なし)
300万円以下 税率15% (控除額10万円)
400万円以下 税率20% (控除額25万円)
600万円以下 税率30% (控除額65万円)
1,000万円以下 税率40% (控除額125万円)
1,500万円以下 税率45% (控除額175万円)
3,000万円以下 税率50% (控除額250万円)
3,000万円超 税率55% (控除額400万円)

特例贈与財産の税率(特例税率)

父母や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与に適用される、優遇された税率です。

基礎控除後の課税価格 税率と控除額
200万円以下 税率10% (控除額なし)
400万円以下 税率15% (控除額10万円)
600万円以下 税率20% (控除額30万円)
1,000万円以下 税率30% (控除額90万円)
1,500万円以下 税率40% (控除額190万円)
3,000万円以下 税率45% (控除額265万円)
4,500万円以下 税率50% (控除額415万円)
4,500万円超 税率55% (控除額640万円)

表を見比べると、課税価格が400万円を超えるあたりから、特例税率の方が税負担が軽くなるのがわかりますね。

ケース別!贈与税額シミュレーション

具体的な例で、どれくらい税額が変わるのか計算してみましょう。

ケース1:一般贈与財産のみの場合(夫から妻へ500万円の贈与)

夫婦間の贈与なので、一般贈与財産に該当します。

1. 課税価格を計算
500万円(贈与額) − 110万円(基礎控除) = 390万円

2. 贈与税額を計算
390万円 × 20%(税率) − 25万円(控除額) = 53万円

この場合の贈与税額は53万円です。

ケース2:特例贈与財産のみの場合(父から20歳の子へ500万円の贈与)

父から18歳以上の子への贈与なので、特例贈与財産に該当します。

1. 課税価格を計算
500万円(贈与額) − 110万円(基礎控除) = 390万円

2. 贈与税額を計算
390万円 × 15%(税率) − 10万円(控除額) = 48万5,000円

この場合の贈与税額は48万5,000円です。ケース1と比べて、4万5,000円も税額が低くなりました。

ケース3:両方の財産を受け取った場合(25歳の子が祖父から600万円、叔母から400万円の贈与)

このケースでは、祖父からの600万円は「特例贈与財産」、叔母からの400万円は「一般贈与財産」となり、計算が少し複雑になります。

1. まず、すべての贈与(合計1,000万円)を一般贈与として税額を計算し、一般贈与の割合をかけます。
(1,000万円 − 110万円)× 40% − 125万円 = 231万円
231万円 × (400万円 ÷ 1,000万円) = 92万4,000円 …①

2. 次に、すべての贈与(合計1,000万円)を特例贈与として税額を計算し、特例贈与の割合をかけます。
(1,000万円 − 110万円)× 30% − 90万円 = 177万円
177万円 × (600万円 ÷ 1,000万円) = 106万2,000円 …②

3. 最後に、①と②を合計します。
92万4,000円 + 106万2,000円 = 198万6,000円

この場合の贈与税額は198万6,000円となります。このように複数の人から贈与を受ける場合は、計算が複雑になるので注意が必要ですね。

特例贈与を利用する際の注意点

税制上有利な特例贈与ですが、利用する際にはいくつか注意しておきたい点があります。

贈与の年の1月1日時点で18歳以上であること

年齢の判定は「贈与を受けた日」ではなく、「贈与を受けた年の1月1日時点」で行われます。例えば、5月に18歳の誕生日を迎えた年に贈与を受けても、その年の1月1日時点では17歳のため、その年の贈与は「一般贈与財産」として扱われます。特例贈与が適用されるのは、翌年以降の贈与からとなります。

相続開始前7年以内の贈与は相続税の対象に

生前贈与加算というルールにも注意が必要です。これは、贈与した人が亡くなった場合、亡くなる前の一定期間内に行われた贈与は、相続財産に加算して相続税を計算するというものです。この期間は、令和6年1月1日以降の贈与から、段階的に3年から7年に延長されました。節税を目的とした生前贈与は、できるだけ早めに計画的に行うことが大切です。

贈与税の申告と納税を忘れずに

年間の贈与額が110万円を超えた場合、贈与を受けた人は、翌年の2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告と納税をしなければなりません。特に、特例税率の適用を受けるためには、申告書に加えて、贈与を受けた人が贈与者の直系卑属であることを証明する戸籍謄本などの書類が必要になりますので、準備を忘れないようにしましょう。

まとめ

今回は、「一般贈与財産」と「特例贈与財産」の違いについて解説しました。最後にポイントを振り返ってみましょう。

  • 特例贈与財産は、父母や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与。
  • 一般贈与財産は、それ以外のすべての贈与
  • 特例贈与財産は、一般贈与財産よりも税率が優遇されている。
  • 贈与税の計算は、自分の状況がどちらに当てはまるかを確認してから行うことが重要。
  • 生前贈与加算のルール変更により、早めの対策がより大切になっている。

贈与は、大切な資産を次世代に引き継ぐための有効な手段です。しかし、税金のルールは複雑で、少しの間違いが大きな負担につながることもあります。ご自身のケースで計算が難しいと感じたり、最適な贈与の方法に悩んだりした場合は、税理士などの専門家に相談してみることをおすすめします。

参考文献

国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

一般贈与と特例贈与のよくある質問まとめ

Q. 「一般贈与財産」と「特例贈与財産」の最も大きな違いは何ですか?

A. 贈与する人(贈与者)と贈与される人(受贈者)の関係性です。親や祖父母などの直系尊属から、18歳以上の子や孫への贈与が「特例贈与財産」、それ以外の贈与が「一般贈与財産」に該当します。

Q. 贈与税の税率は「一般贈与」と「特例贈与」でどのように異なりますか?

A. 同じ金額を贈与した場合、「特例贈与」の方が税率が低く設定されており、税負担が軽くなります。これは、世代間の資産移転をスムーズにするための優遇措置です。

Q. 「特例贈与」の対象となるのは、具体的に誰から誰への贈与ですか?

A. 贈与する人が父母や祖父母(直系尊属)で、贈与される人がその年の1月1日時点で18歳以上の子や孫など(直系卑属)である場合が対象です。※令和4年3月31日以前の贈与については20歳以上。

Q. 兄弟や夫婦の間での贈与はどちらに分類されますか?

A. 「一般贈与」に分類されます。特例贈与は直系尊属(親や祖父母)から直系卑属(子や孫)への贈与に限定されるため、兄弟間、夫婦間、おじ・おばから甥・姪への贈与などは一般贈与の税率が適用されます。

Q. 特例贈与の「18歳以上」という年齢は、いつの時点での年齢ですか?

A. 贈与を受けた年の1月1日時点での年齢で判断します。例えば、贈与を受けた年の途中で18歳の誕生日を迎えても、その年の1月1日時点で17歳だった場合、その贈与は「一般贈与」として扱われます。

Q. 贈与税の申告書では、一般贈与と特例贈与をどうやって区別するのですか?

A. 贈与税の申告書には、一般贈与財産用と特例贈与財産用の記入欄がそれぞれあります。受け取った財産の種類に応じて、正しい欄に金額を記入し、それぞれの税率で税額を計算する必要があります。

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