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固定資産税が半減!地主が法人から受け取る賃料、下げても大丈夫?

2025-06-25
目次

ご自身の土地を、ご自身が経営する会社に貸している地主様も多いのではないでしょうか。最近、このようなご相談がありました。「もともと会社が駐車場として使っていた土地に建物を建てたら、土地の固定資産税が120万円から60万円に下がったんです。会社の利益はむしろ大幅に上がっているのですが、固定資産税が安くなった分、会社から受け取る賃料を下げても税務上、問題ないでしょうか?」今回は、このケースをもとに、地主様とご自身の会社との間の賃料設定について、注意すべきポイントを優しく解説していきますね。

なぜ建物を建てると固定資産税が安くなるの?

まず、そもそもの疑問として「なぜ駐車場だった土地に建物を建てると固定資産税が安くなるの?」という点から見ていきましょう。これには、税金の負担を軽くするための「住宅用地の特例」という制度が関係しています。

住宅用地の特例とは

人々が生活するために必要な「住宅」が建っている土地については、固定資産税が軽減される特例があります。駐車場のような更地の状態ではこの特例は適用されませんが、住宅(人が住むための建物)が建つことで、土地の評価額が大きく引き下げられる仕組みになっているんです。

特例の種類 軽減内容
小規模住宅用地 200㎡以下の部分について、課税標準額が6分の1に軽減
一般住宅用地 200㎡を超える部分について、課税標準額が3分の1に軽減

つまり、建物を建てることで土地の税金上の評価がぐっと下がり、結果として固定資産税が安くなる、というわけですね。

今回のケースで見てみると

ご相談のケースでは、固定資産税が120万円から60万円へと半額になっています。これは、駐車場(更地)として課税されていた状態から、建物が建ったことで「住宅用地の特例」が適用された結果と考えられます。具体的な数字で見ると、その効果の大きさがよくわかりますよね。

土地の状態 固定資産税額
駐車場(更地) 120万円
建物あり(住宅用地) 60万円(半額に減少)

地主と法人の間の「適正な賃料」とは?

さて、ここからが本題です。固定資産税が安くなったからといって、地主様がご自身の会社から受け取る賃料を安易に下げてしまっても良いのでしょうか。実は、地主様(個人)とご自身が所有する会社(同族会社)との間の取引は、税務署から特別な目で見られることがあるため、注意が必要です。そのキーワードが「適正な賃料」です。

なぜ「適正な賃料」が必要なの?

地主様とご自身の会社は、いわば身内の関係ですよね。そのため、自由に賃料を決めてしまうと、個人の所得税を安くしたり、法人の利益を調整したりといった「所得移転」ができてしまいます。例えば、地主様の所得税を減らすために、相場より極端に安い賃料を設定したとしましょう。そうすると、地主様の所得は減りますが、その分、会社が支払う経費が減って利益が増え、法人税が増加します。それだけでなく、税務署から「個人から法人へ利益を供与した」と見なされ、「寄附金」として扱われてしまうリスクがあるのです。これを「寄附金認定課税」といい、思わぬ追徴課税につながる可能性があります。

適正な賃料の目安

では、適正な賃料とはいくらくらいなのでしょうか。明確な決まりはありませんが、実務上、いくつかの目安があります。特に個人と法人の間の土地の貸し借りでは、「その土地の固定資産税額の2~3倍程度」がひとつの目安と言われることがあります。これは、相続税の計算の際に、その土地が「使用貸借(無償での貸し借り)」ではなく、きちんと対価を得ている「賃貸借」であると認められるための、最低ラインの目安とされることが多いからです。ただし、これはあくまで目安の一つに過ぎず、絶対的な基準ではありませんので注意してくださいね。

固定資産税が下がったから賃料を下げてもいいの?

それでは、今回のケースに戻って考えてみましょう。固定資産税が半分になったのだから、それを基準に賃料も下げる、というのは一見すると合理的に思えるかもしれません。しかし、ここには大きな落とし穴があります。

結論:安易に下げるのは危険です!

結論から言うと、固定資産税が下がったことだけを理由に賃料を下げるのは、税務上のリスクが伴うためおすすめできません。 なぜなら、賃料を決める上で最も重要な基準は、固定資産税の額そのものではなく、「周辺の賃料相場」だからです。さらに、今回のケースでは「法人の収益性が大幅に向上している」という点も非常に重要です。収益が上がっているのに、地主への支払いをわざわざ下げるというのは、客観的に見ても不自然ですよね。

考えられる税務上のリスク

もし、以前の賃料(例えば、固定資産税120万円の3倍である年360万円)から、新しい固定資産税60万円の3倍である年180万円に下げたとします。この場合、以下のような問題が考えられます。

  • 周辺相場との乖離: もし周辺の同じような土地の賃料相場が年300万円~400万円だった場合、180万円という金額は不当に安いと判断される可能性があります。
  • 寄附金認定のリスク: 相場との差額分(この例でいえば120万円~220万円)が、地主個人から法人への「寄附」とみなされる可能性があります。そうなると、法人はその金額を「受贈益」として利益に計上しなくてはならず、余計な法人税がかかってしまうのです。

会社の利益が増えている状況で、あえて賃料を下げる合理的な理由を税務署に説明するのは、非常に難しいと言えるでしょう。

では、今回のケースではどう考えれば良い?

では、具体的にどのように賃料を考えれば良いのでしょうか。大切なのは、客観的な根拠を持って賃料を決めることです。

賃料を見直す際のポイント

賃料をどうするか決める際には、以下の点を総合的に考えてみましょう。

  1. 周辺の賃料相場を調査する: 何よりもまず、近隣で似たような条件の土地や建物がいくらで貸されているかを調べましょう。不動産会社のサイトで調べたり、専門家に相談したりするのが確実です。これが「適正な賃料」の最も強力な根拠となります。
  2. 以前の賃料設定の根拠を再確認する: もともとの賃料は、どのような根拠で決めたものでしたか?もし「固定資産税の〇倍」という基準で決めていたとしても、それはあくまで当時の状況判断です。状況が変わった今、その基準に固執する必要はありません。
  3. 賃料を維持、または相場に合わせることを検討する: 法人の収益性が上がっているのであれば、無理に賃料を下げる必要はありません。以前の賃料を維持するか、調査した周辺相場に合わせて見直す(場合によっては上げる)のが、最も安全で合理的な選択と言えます。

地主と法人の間で契約書をきちんと交わそう

最後に、こうした問題を未然に防ぐために、とても大切なことをお伝えします。それは、たとえご自身の会社であっても、必ず「土地賃貸借契約書」を正式に作成しておくことです。

契約書の重要性

「身内だから」と口約束で済ませてしまうと、税務調査が入った際に、賃料の根拠などを客観的に説明することができません。契約書は、地主様と会社の間の取引が正当なものであることを証明するための、非常に重要な証拠となります。

契約書に盛り込むべき項目

契約書には、少なくとも以下の項目を明記しておきましょう。

項目 内容の例
賃料の金額 月額〇〇円、年額〇〇円など。
賃料の算定根拠 周辺の賃料相場や、固定資産税額等を参考に決定した旨を記載。
賃料の改定条項 「公租公課(固定資産税等)の変動や、近隣相場の変動があった場合には、甲乙協議の上、賃料を改定することができる」といった一文を入れておくと安心です。
契約期間 契約の開始日と終了日を明記します。

こうしておくことで、将来的に賃料を見直す際にもスムーズに話し合いを進めることができます。

まとめ

今回のポイントを最後におさらいしましょう。

土地に建物を建てて固定資産税が安くなったとしても、安易にご自身の会社から受け取る賃料を下げるのは税務上のリスクがあります。賃料設定で最も重視すべきなのは、固定資産税額そのものではなく、あくまで「周辺の賃料相場」です。特に会社の収益が上がっている状況で賃料を下げるのは不自然と見なされやすいため、賃料は維持するか、相場に合わせて見直すのが賢明です。そして、どのような賃料に設定するにせよ、必ず正式な賃貸借契約書を作成し、その金額の根拠を明確にしておくことが、将来のトラブルを防ぐための最善の策となります。もしご判断に迷われる場合は、税理士などの専門家にご相談されることを強くおすすめします。

参考文献

地主と所有会社間の土地賃料設定のよくある質問まとめ

Q.土地に建物を建てたら固定資産税が安くなりました。自分の会社に貸している土地の賃料を下げても問題ないですか?

A.安易に賃料を下げることは税務上のリスクを伴います。固定資産税が下がったのは住宅用地の特例によるもので、土地の価値が下がったわけではないため、適正な賃料を維持することが重要です。

Q.なぜ自分の会社なのに、賃料を下げると税務上のリスクがあるのですか?

A.地主(個人)と会社(法人)は法律上別人格だからです。適正価格より低い賃料で貸した場合、その差額分が個人から法人への「寄附」とみなされ、法人が利益を受けたと判断される(受贈益課税)可能性があります。

Q.適正な賃料(相当の地代)とは、どのように計算するのですか?

A.一般的に、その土地の更地価額(相続税評価額など)の年6%程度が目安とされています。過去の固定資産税額を基準にする方法もありますが、客観的な根拠に基づき、専門家と相談して決めることをお勧めします。

Q.そもそも、なぜ建物を建てると土地の固定資産税が安くなるのですか?

A.住宅用の建物が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用されるためです。この特例により、土地の課税標準額が大幅に減額され、結果として固定資産税が安くなります。

Q.会社の収益は大幅に向上しています。この状況は賃料設定に関係しますか?

A.はい、関係します。会社の収益が上がっている状況で地主への賃料を下げると、利益を不当に法人へ移転していると見なされる可能性が高まります。事業の成功に見合った適正な賃料を支払うことが、税務上も健全です。

Q.結局、賃料はどう設定すれば良いのでしょうか?

A.固定資産税の変動に左右されず、近隣の地代相場や、税法上の「相当の地代」の考え方に基づき、客観的で合理的な賃料を設定・維持することが最善です。現在の賃料が適正であれば、変更しないのが基本となります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。