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不動産登記の対抗力と公信力、知らないと損!権利を守るための重要知識

2025-06-27
目次

不動産を購入したり相続したりするとき、必ず耳にする「登記」という言葉。特に「対抗力」や「公信力」といったキーワードは、とても重要です。でも、「なんだか難しそう…」と感じる方も多いのではないでしょうか。実はこの2つの力の違いを理解しておくことは、ご自身の大切な財産を守る上で欠かせない知識なんです。この記事では、不動産登記が持つ「対抗力」と、実は持っていない「公信力」について、具体例を交えながら優しく解説していきますね。

そもそも不動産登記って何のためにあるの?

不動産登記とは、土地や建物といった不動産が「どこにあって、どんな状態で、誰が所有しているのか」といった情報を、法務局という国の機関が管理する公の帳簿(登記記録)に記録し、一般に公開する制度のことです。これにより、不動産の取引が安全かつスムーズに行われるようになっています。

不動産は「公示」しないと権利がわからない

例えば、時計やバッグのような「動産」は、実際に持っていることで「これは私のものです」と周りに示すことができますよね。これを法律用語で「引渡し」と言います。しかし、土地や建物のような「不動産」は、物理的に持ち運ぶことができません。そこで、登記記録に所有者として自分の名前を記録することで、社会全体に対して「この不動産の所有者は私です!」と公に示すのです。これを「公示の原則」と呼びます。

登記でわかること

法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得すると、誰でもその不動産の情報を確認できます。具体的には、以下のようなことが記録されています。

  • 表題部:不動産の物理的な状況(土地の所在地、地番、面積や、建物の所在地、家屋番号、種類、構造、床面積など)
  • 権利部(甲区):所有権に関する情報(現在の所有者は誰か、いつ、どんな理由で所有権を得たのかなど)
  • 権利部(乙区):所有権以外の権利に関する情報(住宅ローンを組んだ際の抵当権や、地上権、賃借権など)

不動産取引を行う前には、この登記事項証明書を確認して、権利関係に問題がないかをチェックすることが基本となります。

登記の「対抗力」- 第三者に権利を主張する力

不動産登記が持つ最も重要な力の一つが「対抗力」です。これは、登記をしておくことで、当事者以外の第三者に対して「この不動産の所有権は私にあります」と正々堂々と主張できる力のことを指します。

怖い「二重譲渡」のケース

対抗力の重要性がよくわかるのが「二重譲渡」というケースです。例えば、ある売主Aさんが、自分の土地をBさんとCさんの両方に売却してしまったとします。

  1. BさんはAさんと5月1日に売買契約を結び、代金も支払いました。しかし、忙しくて所有権移転登記は後回しにしていました。
  2. その後、悪意のあるAさんは、同じ土地をCさんにも売却し、Cさんは5月10日に代金を支払い、すぐに所有権移転登記を済ませました。

この場合、BさんとCさんのどちらが本当の所有者になれるのでしょうか。答えは、先に登記を備えたCさんです。たとえBさんの方が先に契約し、代金を支払っていても、登記をしていなければ、後から契約したCさんに対して「この土地は私のものだ!」と主張すること(対抗すること)ができないのです。これが登記の対抗力の恐ろしさであり、重要性です。

対抗力を持つための条件

不動産の権利について第三者に対抗するための唯一の条件は、「所有権移転登記を完了させること」です。売買契約書を交わしただけ、代金を全額支払っただけでは不十分です。不動産を取得したら、司法書士に依頼するなどして、速やかに登記手続きを行うことが、自分の権利を守るために絶対に必要となります。

登記の「公信力」- なぜ日本の登記にはないの?

次にご説明するのが「公信力」です。「公に信じる力」と書く通り、これは「登記記録に書かれている内容を信頼して取引をした人は、たとえその登記内容が真実と異なっていたとしても、その権利が保護される」という力のことです。しかし、驚くべきことに、日本の不動産登記にはこの「公信力」が認められていません。

公信力がないと何が起こる?

「登記を信じても保護されない」とは、一体どういうことでしょうか。具体的な例を見てみましょう。

AさんがBさんの土地の登記関係書類を偽造して、勝手に自分名義に所有権移転登記をしてしまいました。その後、Aさんは登記上の所有者であることをいいことに、その土地を事情を知らないCさんに売却しました。Cさんは登記事項証明書でAさんが所有者であることを確認し、Aさんを真の所有者だと信じて代金を支払い、自分名義に登記を移しました。

この場合、Cさんは土地の所有権を取得できるでしょうか?もし登記に公信力があれば、Cさんは保護され、所有権を取得できます。しかし、日本の登記には公信力がないため、真の所有者であるBさんが「その登記は無効だ!」と主張した場合、CさんはBさんに土地を返さなければならず、所有権を失ってしまいます。

日本の登記に公信力がない理由

なぜ国は登記内容を保証してくれないのでしょうか。その理由は、登記申請の審査方法にあります。日本の法務局では、登記申請があった際に、提出された書類に不備がないかといった形式的な要件を審査する「形式的審査」が採用されています。その登記の原因となった売買契約が本当に有効か、当事者の意思は本物か、といった実質的な内容までは調査しません。

もし公信力を認めると、国はすべての登記内容の真実性を保証しなければならなくなり、登記手続きが非常に複雑で時間も費用もかかってしまいます。そのため、取引の迅速性を優先し、公信力は認めないという立場をとっているのです。

「対抗力」と「公信力」の違いを整理しよう

ここまでご説明した「対抗力」と「公信力」は、似ているようで全く異なるものです。混乱しないように、下の表でその違いを整理しておきましょう。

項目 対抗力
意味 登記をすることで、第三者に自分の権利を主張できる力
日本の不動産登記 ある
ポイント 自分の権利を他人から守るための力。「早い者勝ち」の原則。
項目 公信力
意味 登記内容を信じて取引した人が保護される力
日本の不動産登記 ない
ポイント 他人の登記を信じた自分を守るための力。日本では認められていない。

公信力がないリスクにどう備える?

登記に公信力がないとなると、不動産取引が不安に感じられるかもしれません。しかし、実際には専門家が取引の安全性を高める役割を担っていますのでご安心ください。

不動産会社(宅地建物取引業者)の役割

不動産会社は、売買を仲介する際に、その物件の権利関係などを調査し、買主に対して「重要事項説明」を行う義務があります。この調査を通じて、登記記録の内容はもちろん、現地調査や役所調査などを行い、取引に潜むリスクを事前に洗い出してくれます。

司法書士の役割

登記手続きの専門家である司法書士は、所有権移転登記の際に、売主と買主の本人確認を厳格に行います。運転免許証などの身分証明書はもちろん、不動産の権利証(登記識別情報通知)の確認などを通じて、「なりすまし」による不正な登記を防ぎ、取引の安全性を担保してくれます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。不動産登記の「対抗力」「公信力」について、ご理解いただけましたか。
自分の権利を守るためには、不動産を取得したら速やかに登記をして「対抗力」を持つことが絶対条件です。一方で、日本の登記には「公信力」がないため、登記記録を鵜呑みにするのは危険です。だからこそ、不動産取引では、信頼できる不動産会社や司法書士といった専門家のサポートが不可欠なのです。この2つの力の意味を正しく理解して、安全で安心な不動産取引に臨みましょう。

参考文献

法務省:不動産登記

不動産登記の対抗力と公信力に関するよくある質問

Q.不動産登記の「対抗力」とは何ですか?

A.自分がその不動産の所有者であることを、売主以外の第三者(例えば、同じ不動産を二重に買った人など)に対して主張できる法的な力のことです。先に契約したとしても、登記をしなければ第三者に所有権を主張することはできません。

Q.不動産登記に「公信力」がないとはどういう意味ですか?

A.登記簿の内容を信じて不動産を購入しても、その登記が真実の権利関係と異なっていた場合、買主は保護されないということです。つまり、登記上の名義人が本当の所有者でなかった場合、原則として所有権を取得できません。

Q.なぜ日本の不動産登記には公信力がないのですか?

A.登記官は書類の形式的な審査のみを行い、実質的な権利関係の真偽まで調査しないためです。これにより、真の権利者が意図せず権利を失うリスクを避け、取引の安全よりも真の権利者の保護を優先しているからです。

Q.不動産が二重譲渡された場合、誰が所有者になりますか?

A.契約日の先後にかかわらず、先に所有権移転登記を完了させた方が所有権を主張できます。これは登記の「対抗力」によるもので、早く登記を備えた者が法的に保護されます。

Q.登記を信じて不動産を買ったのに、所有権を失うことはありますか?

A.はい、あり得ます。登記に公信力がないため、登記簿上の所有者が偽の所有者(例:書類偽造などによる不正な登記)だった場合、その人から不動産を購入しても、真の所有者には所有権を主張できず、物件を失う可能性があります。

Q.不動産取引における「対抗要件」とは何ですか?

A.取引の当事者以外(第三者)に対して、自分が得た権利(所有権など)を法的に主張するために必要となる要件のことです。不動産の場合は、この対抗要件が「登記」にあたります。

事務所概要
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対応責任者
税理士 島本 雅史

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