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遺言書情報証明書とは?相続手続きをスムーズにするための完全ガイド

2025-07-04
目次

ご家族が亡くなられた後、「そういえば、遺言書を法務局に預けていると話していたかも…」と思い当たることはありませんか?あるいは、相続手続きを進める中で「遺言書情報証明書」という聞き慣れない書類が必要になり、戸惑っている方もいらっしゃるかもしれません。この証明書は、特定の制度を利用して保管された遺言書の内容を証明し、相続手続きをスムーズに進めるために欠かせない大切な書類です。この記事では、遺言書情報証明書の役割やメリット、具体的な取得方法まで、わかりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてくださいね。

遺言書情報証明書とは?

遺言書情報証明書とは、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用して預けられた遺言書の内容を証明する公的な書類です。遺言者が亡くなった後、相続人などがこの証明書の交付を請求することで、遺言書に何が書かれているかを確認でき、不動産の名義変更や預貯金の解約といった相続手続きに使用することができます。いわば、法務局に保管されている遺言書の原本の代わりになる証明書、とイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。

自筆証書遺言書保管制度との関係

遺言書情報証明書を理解するためには、まず「自筆証書遺言書保管制度」について知っておく必要があります。これは、自分で書いた遺言書(自筆証書遺言)を法務局で安全に保管してもらえる制度です。
従来、自筆証書遺言は自宅で保管されることが多く、紛失したり、誰かに隠されたり、書き換えられたりするリスクがありました。また、亡くなった後に遺言書が見つかると、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要でした。
しかし、この保管制度を利用すれば、遺言書の原本は法務局が厳重に管理してくれるため、そうしたリスクがなくなります。そして、相続が発生した際には、家庭裁判所の検認を経ることなく、遺言書情報証明書を使ってスムーズに手続きを進めることができるのです。

遺言書情報証明書の記載内容

遺言書情報証明書には、遺言に関する大切な情報が網羅されています。具体的には、以下のような内容が記載されています。

  • 遺言者の氏名、出生年月日、住所、本籍
  • 遺言書の作成年月日
  • 遺言書を保管している法務局の名称と保管番号
  • 受遺者(遺産を受け取る人)や遺言執行者(手続きを進める人)の氏名・住所
  • 遺言書の全文が写された画像情報
  • その他、財産目録など遺言書に添付された書類の画像情報

このように、遺言書の画像そのものが含まれているため、この証明書1枚で遺言の具体的な内容を正確に把握することができます。

遺言書情報証明書と遺言書保管事実証明書の違い

法務局で請求できる書類には、「遺言書情報証明書」とよく似た名前の「遺言書保管事実証明書」というものがあります。この2つは役割が異なるため、違いをしっかり理解しておきましょう。

簡単に言うと、「そもそも遺言書が保管されているかどうか」を確認するのが「遺言書保管事実証明書」で、「保管されている遺言書の内容」まで証明するのが「遺言書情報証明書」です。亡くなった方が遺言書を法務局に預けたかどうかわからない場合は、まず「遺言書保管事実証明書」を請求して遺言書の有無を確認します。

書類の種類 証明される内容
遺言書保管事実証明書 指定した遺言者に関する遺言書が法務局に保管されているか、いないかという「事実」のみ。
遺言書情報証明書 遺言書が保管されている事実に加え、遺言書の画像を含む「具体的な内容」すべて。

遺言書情報証明書を取得するメリット

自筆証書遺言書保管制度を利用し、遺言書情報証明書を取得することには、相続人にとって多くのメリットがあります。ここでは主なメリットを3つご紹介します。

家庭裁判所の検認が不要になる

最大のメリットは、家庭裁判所での検認手続きが不要になることです。自宅などで保管されていた自筆証書遺言の場合、相続手続きを始める前に、必ず家庭裁判所で相続人立ち会いのもと遺言書を開封し、内容を確認する「検認」という手続きが必要になります。この検認手続きは、申立てから完了まで1〜2ヶ月ほど時間がかかることもあり、戸籍謄本などの多くの書類を集める手間もかかります。遺言書情報証明書を使えば、この時間と手間を大幅に省くことができ、迅速に相続手続きを開始できます。

遺言書の紛失・改ざんリスクがない

遺言書の原本は法務局という公的機関で厳重に保管されるため、紛失、盗難、隠匿、改ざんといったリスクが一切ありません。自宅の金庫や引き出しで保管していると、「どこにしまったか忘れてしまった」「相続人の一人が自分に不利な内容だったため隠してしまった」といったトラブルが起こる可能性があります。法務局に預けておくことで、遺言者の最後の意思が確実に守られます。

相続人全員に遺言書の存在が通知される

相続人のうちの誰か一人が遺言書情報証明書の交付を受けたり、遺言書の内容を閲覧したりすると、法務局から他の相続人全員に対して「遺言書が保管されていますよ」という通知が送られます。これにより、「自分だけ遺言書の存在を知らされずに、不利な条件で遺産分割が進められてしまった」という事態を防ぐことができます。相続人全員が公平に情報を知ることができる、とても大切な仕組みです。

遺言書情報証明書でできる相続手続き

遺言書情報証明書は、遺言書の原本と同等の効力を持つ公的な証明書として、さまざまな相続手続きに利用できます。法務局に預けた遺言書の原本は、相続が発生しても返却されないため、この証明書が手続きの主役となります。

不動産の相続登記(名義変更)

亡くなった方名義の土地や建物を相続人の名義に変更する「相続登記」の手続きにおいて、遺言書情報証明書を登記原因証明情報として法務局に提出します。これにより、遺言の内容に従った不動産の名義変更が可能です。

預貯金の解約・名義変更

銀行や信用金庫などの金融機関で、亡くなった方の預貯金口座を解約したり、相続人の口座へ名義変更したりする際にも、この証明書を提出します。金融機関はこの証明書をもって、正当な相続手続きであることを確認します。通常、手続きが終われば原本は返却してもらえますので、1通取得すれば複数の金融機関で使い回すことが可能です。

遺言書情報証明書の交付請求の流れ

それでは、実際に遺言書情報証明書を取得するための手順を見ていきましょう。大前提として、この証明書は遺言者が亡くなった後でなければ請求できない点にご注意ください。

請求できる人

誰でも請求できるわけではなく、請求権者は法律で定められています。具体的には、以下の方々です。

  • 相続人
  • 受遺者(遺言によって財産を受け取る人)
  • 遺言執行者(遺言の内容を実現する人)
  • 上記の法定代理人(親権者や成年後見人など)

請求手続きのステップ

手続きは、全国どこの法務局(遺言書保管所)でも行うことができます。窓口で請求する方法と、郵送で請求する方法があります。

  1. 交付請求書の作成
    法務局のホームページから請求書をダウンロードするか、法務局の窓口で入手して必要事項を記入します。
  2. 法務局への予約
    窓口で手続きをする場合は、必ず事前に法務局の予約専用サイトや電話で訪問日時を予約する必要があります。予約なしで訪問しても対応してもらえないので注意しましょう。郵送の場合は予約不要です。
  3. 必要書類の準備
    次の項目で説明する、戸籍謄本などの必要書類を揃えます。
  4. 法務局へ提出・証明書の受け取り
    予約した日時に法務局へ行き、書類を提出して手数料を支払います。証明書はその日のうちに受け取れることが多いです。郵送の場合は、請求書と必要書類、返信用封筒などを法務局に送付します。

交付請求に必要な書類と費用

最後に、交付請求の際に必要となる書類と費用をまとめます。スムーズに手続きを進めるために、事前にしっかりと準備しておきましょう。

必要書類一覧

請求する方の立場(相続人、受遺者など)によって必要書類が少し異なりますが、相続人が請求する場合の一般的な書類は以下の通りです。戸籍謄本などは取得に時間がかかる場合があるので、早めに準備を始めると安心です。

書類名 備考
交付請求書 法務局のサイトで様式を取得できます。
遺言者の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等 遺言者の相続関係を証明するために必要です。
相続人全員の戸籍謄本 遺言者の死亡日以降に発行されたものが必要です。
請求者の住民票の写し 発行後3ヶ月以内のもの。マイナンバーの記載がないものを用意しましょう。
請求者の本人確認書類 窓口申請の場合、運転免許証、マイナンバーカードなどの顔写真付きのものが必要です。

※戸籍謄本一式の代わりに「法定相続情報一覧図の写し」を提出することも可能です。こちらの方が集める書類が少なくなる場合があります。

費用について

遺言書情報証明書の交付には、手数料がかかります。手数料は現金ではなく、収入印紙で納める必要がありますので、事前に郵便局などで購入しておきましょう。

  • 交付手数料:1通につき1,400円

ちなみに、遺言書の有無を確認する「遺言書保管事実証明書」の手数料は、1通800円です。

まとめ

今回は、遺言書情報証明書について詳しく解説しました。この証明書は、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用した際に、相続手続きを円滑に進めるための鍵となる非常に重要な書類です。家庭裁判所の検認が不要になるなど、相続人にとって大きなメリットがあります。亡くなったご家族がこの制度を利用していた可能性がある場合は、まずは法務局に問い合わせてみましょう。手続きには戸籍謄本などの準備が必要ですが、この記事を参考に一つひとつ進めていけば、きっと大丈夫です。もし手続きが複雑で難しいと感じた場合は、司法書士などの専門家に相談するのも良い選択肢ですよ。

参考文献

遺言情報証明書のよくある質問まとめ

Q.遺言情報証明書とは何ですか?

A.法務局(遺言書保管所)に保管されている自筆証書遺言の内容を証明する公的な書類です。家庭裁判所での「検認」が不要になるという大きなメリットがあります。

Q.遺言情報証明書はどこで取得できますか?

A.全国の法務局(遺言書保管所)で取得できます。遺言者の死亡後、相続人などが請求することができます。

Q.遺言情報証明書の取得に必要なものは何ですか?

A.主に、請求書、遺言者の死亡がわかる戸籍謄本、請求する方の戸籍謄本や住民票、本人確認書類などが必要です。詳しくは法務局のウェブサイトをご確認ください。

Q.遺言情報証明書の交付手数料はいくらですか?

A.1通あたり1,400円です。収入印紙で納付します。

Q.遺言情報証明書を取得するメリットは何ですか?

A.最大のメリットは、家庭裁判所での「検認」手続きが不要になることです。これにより、相続手続きをスムーズかつ迅速に進めることができます。

Q.遺言情報証明書は誰でも請求できますか?

A.請求できるのは、遺言者の相続人、受遺者、遺言執行者などに限られます。誰でも自由に閲覧・請求できるわけではありません。

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本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。